[大文字]第一話　本当は強いのに・・・[/大文字]
　「はぁ・・・」
ある王城に、ため息を付く女性が一人。頭に角を生やしており、彼女が座っているのは、いわゆる玉座だった。
　魔王城当主、魔王その人。名を●●○○という。
　彼女がため息を付いている理由は大まかに２つ、いや３つある。
　１つ、一般人が魔王より強いこと。
　２つ、魔王城の周りが人間の街ということ。
　３つ、魔物が滅びかけているということ。
　「はぁぁ・・・、ため息を付いても致し方ない。いつもの鍛錬に出るとしよう・・・」
○○は人間になんとか勝利するため、常に自分を磨くことを忘れない。魔王は気づていない、いや気づくこともできないのだが。魔王が弱いのではなく、人間側が、あからさまに強すぎるのだ。[漢字]現実世界的[/漢字][ふりがな]ゲーム的[/ふりがな]に言うと、すべての人間がレベル１００００まで鍛錬しているから、と言えよう。人間と魔族の争いは、一万年にわたる。そのたびに、明らかな強さを持って生まれてくる勇者がおり、幾度となく魔王側が敗北する。
　人間はこのプロセスを、一万年にわたり研究してきた。そのうえで、勇者と呼ばれる個体が生まれる法則性を見つけ出し、「「生まれてくる全員が勇者」」、という、魔王が聞いたらひっくり返るような現象を起こしていたのである。もはや、魔王に勝ちはないのだ。
「ふっ、はぁ！はぁぁぁ！！どりゃあぁ！」
嗚呼、無知というのはなんと残酷なのだろうか・・・。せめてこの現状を知ってさえいれば諦めもついたろうに、魔王は鍛錬をやめない。
「はぁ、はぁ、今日はこのくらいにしておくか・・・」
かつてはこの鍛錬を影から応援する眷属もいたのだが、いまとなっては、人を襲わないという判断ができる一部の、ごくごく一部の魔族しか残っていないゆえ、この鍛錬に意味を見いだせず、どこかへいなくなってしまった。
「ふぅぅ〜どうしたらいいのだろうな...」
○○は、幾日も途方に暮れていた。