白鳥はある日のことを夢に見ていた。
車のドアを開けると、大きな音と共に火花とガラスが飛び散り、鉄の塊が白鳥の体に覆いかぶさった。
全身に火傷をし、頭にもひどい出血をしている。
体が震え、息が乱れる。手も痺れた様に動かない。
人が近づいてくるのがうっすらわかる。
自分が何か喋っている。
どくどくと血が流れ、視界が真っ暗になった。
…そんな夢だった。
確か数年前、連続爆弾魔に白鳥の車が爆破された時のことだった。
重傷を負いながらも白鳥は一命を取り止め、今もこうして生きている。
だが、今でもまだ頭痛と悪夢が来る時がある。
痛み止めを飲んで寝れば治るのだが、辛くてしょうがない。
そして、このことを澄子に話したことがない。
白鳥はこのことを言う勇気がない。
だが、今でも発作と戦っていて、もう結婚する以上、言わなければいけないのは確かだ。
そんなある日、白鳥は頭に違和感を感じた。
そのうち違和感は消えたので出勤し、仕事を進めていたその時だった。
突然、頭がかち割れるような痛みが襲ってきた。
「うっ…ぐっ！」
強烈な痛みに耐えかね、無理やり立ち上がると、何かが切れるような音がして倒れ、意識を無くしてしまった。
一方、近くで仕事をしていた佐藤は。
佐藤は白鳥の違和感に気づかず、仕事をしていた。しかし、彼が突然唸り出し、頭を押さえて立ち上がったことに驚き、千葉や高木と一緒に近づくと、白鳥が倒れた。
「だっ、大丈夫！？白鳥君！」
白鳥の意識がないことを確認すると、救急車を呼ぶ。
千葉は目暮警部に報告しに行った。
高木だけが留まり、慌てているうちに白鳥の顔は青ざめていく。
白鳥を仰向けに寝かせると、何回か声をかけてみる。
やがて、目暮がやってきた。
「し、白鳥君、大丈夫かね？！」
通報をした佐藤も駆け寄ってきて、捜査一課は大騒ぎとなった。
しばらくして救急隊が到着した。
苦しそうな表情をしたまま青くなっていく白鳥を見て、救急隊は目暮に
「助かるかは分かりません」
と告げ、ストレッチャーに乗せて行った。
そのまま白鳥は救急車に乗せられて行った。
「ストレスがかかったことにより、以前損傷した頭部が内出血を起こしています…かなり重症です。
手術をしていますが、ご主人が助かる可能性は五分五分でしょう。」
病院で医師は澄子に言う。
この言葉を聞き、澄子の胸は引き締まった。
もっと私が早く白鳥さんの違和感に気づいていれば…

そして2時間。ようやく白鳥の手術は終わった。
「上手くいきました、ご主人の命は大丈夫でしょう。幸い大きな後遺症などはないですが、リハビリなどを行う必要はあります。」
ほっ、とした澄子は、すぐに病室に向かった。
白鳥はまだ起きていない。
血まみれの包帯をつけて、眠っている。
明日、起きます様に。