二次創作
白鳥警部の日常
澄子に婚約を申し出てから1ヶ月ほど。暑い夏の日である。
今日の白鳥の目的は、ズバリ澄子と住む物件を探すことであった。
非番の彼はいつも着こなしているスーツと違って、ワイシャツと空色のサマージャケット、そしてこの季節には不似合いな黒い長ズボンである。今日はどうも日差しが強いので、日焼け止めを塗ってサングラスをかけている。
そして今彼は、愛車の白いセダンの中で、髪を整えている最中であった。
「ここはあと2ミリほど右にやって…こんなもんかな。」
ワックスで丁寧に固められた髪は、今日も仕上がっている。ミラーで身だしなみを確かめると、白鳥は外に出た。約束の10時まであと20分。少し早すぎただろうか。
5分もすれば、白鳥は汗ばんできた。
「こいつはまずい。髪が乱れてしまうな。」
襟をパタパタさせながら白鳥は一旦車に戻る。
「ここまで暑いとは思わなかったな…澄子さんもバテてしまったりしていなければ良いんだが…」
独り言を言っているうちに時間はもう9時49分。
そろそろ出るか…
と思い、再び身だしなみを整えると、白鳥は米花不動産の前に立つ。
そして10時55分。サングラスをかけてグレーになっている視線の先から、可憐な彼女が走ってきた。
「任三郎さぁん!」
はぁはあと息を切らしながら走ってくると、驚きながら澄子は喋り出す。
「待たせてしまってすいません…!任三郎さんはいつからいたんですか?汗…かいてますけど。」
「いえいえ、僕もつい5分前に来たばかりなので、お気になさらず!」
もう結婚まできたのに、2人はまだ話すだけでドキドキしてしまう。
「ありがとうございます…!あっ、サングラスもお似合いですね。」
「気合を入れるためのもの何ですが…似合ってると言ってもらえて嬉しいです。」
頬を赤くした2人は米花不動産に入っていった。
(涼しい…生き返るな。)
心の中で白鳥はそう思いつつ、紹介してもらう物件の書類を見る。
「私、不動産屋の藤澤と言います。右にいるのは不動産鑑定士の佐嘉君です。」
「不動産鑑定士の佐賀と申します。本日はよろしくお願いします。」
白髪の不動産屋と、眼鏡をかけた青年らしい鑑定士であった。
「こちらの家は2LDKでして…」
親切な不動産屋とと鑑定士が話をしてくれる。
「なるほど…こちらの物件のお値段はいくらなんでしょうか。」
「新築なので、1億7980万円といったところでしょうか。かなり高くても構わないというご要望でしたので…」
白鳥はしばらく澄子と話し合うと、不動産屋に顔を向けた。
「こちらの物件、購入を希望します。」
こうして白鳥と澄子のマイホームは決まった。
2日後には婚姻届を書き、トントン拍子で結婚式が始まろうとしていた。
翌年の春先。白鳥は数時間後の結婚式のために明るいグレーのタキシードを着ようとしていた。
袖に手を通す時、自分が緊張しきっていることに気づいた白鳥は鏡を覗くと、普段の自信が溢れる顔ではなく、なかなかに歪んだ顔となっていた。
「新郎がこんな顔じゃ、式も台無しだな。」
顔を直すと、誰にというわけでもなく笑ってみせた。
「身だしなみはこんな感じかな…」
白鳥が式場の廊下に出ると、警視庁のメンツが勢揃いしていた。
高木に佐藤、千葉に目暮、由美に苗子である。
「よっ、白鳥君、おめでとう。」
冷やかすように由美が切り出すと、心底喜んだように白鳥から
「はははっ、ありがとうございます。」
と返事が返ってきた。
「いやぁ本当におめでたいことだよ、白鳥君。」と目暮。
「おめでとう!」佐藤。
「白鳥さん、おめでとうございます!」千葉と高木。
「おめでとうございます!白鳥警部!」苗子。
こうして6人の警官に祝われ、喜びながら白鳥は澄子の待つ部屋に向かった。
「澄子さん、お待たせしてしまっていたら申し訳な…」
澄子の可憐なウェディングドレス姿を見て、思わず白鳥は涙を流してしまった。
これまで冷静なキャリア警部としての白鳥以外見てこなかった澄子は驚き、
「だ、大丈夫ですか、任三郎さん!?」
と困惑しているようだった。
「嬉しくて…つい。」
「そうですか…わ、私も、任三郎さんのタキシード姿、素敵だと思います!」
「えっ…」
ここにきて白鳥は感情のコントロールが出来なくなってしまった。
「澄子さん!」
そう言うと、いきなり白鳥は澄子を抱きしめた。いつもよりも何倍も強く、熱く。
「に、任三郎さん…」
「澄子さん…僕はこれまでずっと不安だったんですよ…」
「え?」
澄子は驚きを隠せない。白鳥の自信家の仮面の下をあまり知らないからである。
「澄子さんは本当に僕のことが好きなのか…結婚したいといったら受け入れてくれるのか…僕と本当に幸せに過ごしているのか…なんてグルグル考えたりもしました。」
「でも澄子さん…貴方は自分と付き合ってくれたし、好きだといってくれたし、結婚も承諾してくれた。
それで今日、不安が消えて、何かが切れてしまったんでしょうね。」
「そ、そうなんですか…」
(全然知らなかった。任三郎さんがこんなことを考えてたなんて…)
恋人の素顔に、澄子は驚きを隠せない。
「幻滅…されてしまいますよね。」
「いえ、そんな事ないですよ…どんな任三郎さんも、大好きです。」
「そう…ですか?ありがとうございます。」
2人は照れながら、それぞれの部屋に戻った。
服装の最終チェックをしたところで司会役の高木がやって来た。
「白鳥さん、そろそろっすよ。」
「あぁ、ありがとう。」
そして、ついにこの時がやって来た。
「新郎新婦、入場です!!」
ジャジャジャジャーン!!という華やかな音楽とともに、白鳥と澄子が出てきた。
場内から拍手が起こる。
ゲストには少年探偵団や小田切警視総監や松本管理官もいると言う。
「…私白鳥任三郎は、小林澄子さんへの永遠の愛を…誓います。」
「…私小林澄子は、白鳥任三郎さんへの永遠の愛を…誓います。」
「それでは、新郎新婦の、誓いのキスです!」
2人は緊張し、顔が真っ赤になっている。
そして、澄子の唇に白鳥の熱い唇が近づく。
「…んっ」
ヒューヒュー!!と冷やかす声が上がる。
2人はうっとりと目を開けた。
「以上、新郎新婦誓いのキスでした!お次は、ウェディングケーキを2人で切っていただきます!
夫婦初めての共同作業、紆余曲折のあった2人が、ようやく結ばれました!!」
そして、式は終わった。
こうして…2人の新婚生活が始まった。
今日の白鳥の目的は、ズバリ澄子と住む物件を探すことであった。
非番の彼はいつも着こなしているスーツと違って、ワイシャツと空色のサマージャケット、そしてこの季節には不似合いな黒い長ズボンである。今日はどうも日差しが強いので、日焼け止めを塗ってサングラスをかけている。
そして今彼は、愛車の白いセダンの中で、髪を整えている最中であった。
「ここはあと2ミリほど右にやって…こんなもんかな。」
ワックスで丁寧に固められた髪は、今日も仕上がっている。ミラーで身だしなみを確かめると、白鳥は外に出た。約束の10時まであと20分。少し早すぎただろうか。
5分もすれば、白鳥は汗ばんできた。
「こいつはまずい。髪が乱れてしまうな。」
襟をパタパタさせながら白鳥は一旦車に戻る。
「ここまで暑いとは思わなかったな…澄子さんもバテてしまったりしていなければ良いんだが…」
独り言を言っているうちに時間はもう9時49分。
そろそろ出るか…
と思い、再び身だしなみを整えると、白鳥は米花不動産の前に立つ。
そして10時55分。サングラスをかけてグレーになっている視線の先から、可憐な彼女が走ってきた。
「任三郎さぁん!」
はぁはあと息を切らしながら走ってくると、驚きながら澄子は喋り出す。
「待たせてしまってすいません…!任三郎さんはいつからいたんですか?汗…かいてますけど。」
「いえいえ、僕もつい5分前に来たばかりなので、お気になさらず!」
もう結婚まできたのに、2人はまだ話すだけでドキドキしてしまう。
「ありがとうございます…!あっ、サングラスもお似合いですね。」
「気合を入れるためのもの何ですが…似合ってると言ってもらえて嬉しいです。」
頬を赤くした2人は米花不動産に入っていった。
(涼しい…生き返るな。)
心の中で白鳥はそう思いつつ、紹介してもらう物件の書類を見る。
「私、不動産屋の藤澤と言います。右にいるのは不動産鑑定士の佐嘉君です。」
「不動産鑑定士の佐賀と申します。本日はよろしくお願いします。」
白髪の不動産屋と、眼鏡をかけた青年らしい鑑定士であった。
「こちらの家は2LDKでして…」
親切な不動産屋とと鑑定士が話をしてくれる。
「なるほど…こちらの物件のお値段はいくらなんでしょうか。」
「新築なので、1億7980万円といったところでしょうか。かなり高くても構わないというご要望でしたので…」
白鳥はしばらく澄子と話し合うと、不動産屋に顔を向けた。
「こちらの物件、購入を希望します。」
こうして白鳥と澄子のマイホームは決まった。
2日後には婚姻届を書き、トントン拍子で結婚式が始まろうとしていた。
翌年の春先。白鳥は数時間後の結婚式のために明るいグレーのタキシードを着ようとしていた。
袖に手を通す時、自分が緊張しきっていることに気づいた白鳥は鏡を覗くと、普段の自信が溢れる顔ではなく、なかなかに歪んだ顔となっていた。
「新郎がこんな顔じゃ、式も台無しだな。」
顔を直すと、誰にというわけでもなく笑ってみせた。
「身だしなみはこんな感じかな…」
白鳥が式場の廊下に出ると、警視庁のメンツが勢揃いしていた。
高木に佐藤、千葉に目暮、由美に苗子である。
「よっ、白鳥君、おめでとう。」
冷やかすように由美が切り出すと、心底喜んだように白鳥から
「はははっ、ありがとうございます。」
と返事が返ってきた。
「いやぁ本当におめでたいことだよ、白鳥君。」と目暮。
「おめでとう!」佐藤。
「白鳥さん、おめでとうございます!」千葉と高木。
「おめでとうございます!白鳥警部!」苗子。
こうして6人の警官に祝われ、喜びながら白鳥は澄子の待つ部屋に向かった。
「澄子さん、お待たせしてしまっていたら申し訳な…」
澄子の可憐なウェディングドレス姿を見て、思わず白鳥は涙を流してしまった。
これまで冷静なキャリア警部としての白鳥以外見てこなかった澄子は驚き、
「だ、大丈夫ですか、任三郎さん!?」
と困惑しているようだった。
「嬉しくて…つい。」
「そうですか…わ、私も、任三郎さんのタキシード姿、素敵だと思います!」
「えっ…」
ここにきて白鳥は感情のコントロールが出来なくなってしまった。
「澄子さん!」
そう言うと、いきなり白鳥は澄子を抱きしめた。いつもよりも何倍も強く、熱く。
「に、任三郎さん…」
「澄子さん…僕はこれまでずっと不安だったんですよ…」
「え?」
澄子は驚きを隠せない。白鳥の自信家の仮面の下をあまり知らないからである。
「澄子さんは本当に僕のことが好きなのか…結婚したいといったら受け入れてくれるのか…僕と本当に幸せに過ごしているのか…なんてグルグル考えたりもしました。」
「でも澄子さん…貴方は自分と付き合ってくれたし、好きだといってくれたし、結婚も承諾してくれた。
それで今日、不安が消えて、何かが切れてしまったんでしょうね。」
「そ、そうなんですか…」
(全然知らなかった。任三郎さんがこんなことを考えてたなんて…)
恋人の素顔に、澄子は驚きを隠せない。
「幻滅…されてしまいますよね。」
「いえ、そんな事ないですよ…どんな任三郎さんも、大好きです。」
「そう…ですか?ありがとうございます。」
2人は照れながら、それぞれの部屋に戻った。
服装の最終チェックをしたところで司会役の高木がやって来た。
「白鳥さん、そろそろっすよ。」
「あぁ、ありがとう。」
そして、ついにこの時がやって来た。
「新郎新婦、入場です!!」
ジャジャジャジャーン!!という華やかな音楽とともに、白鳥と澄子が出てきた。
場内から拍手が起こる。
ゲストには少年探偵団や小田切警視総監や松本管理官もいると言う。
「…私白鳥任三郎は、小林澄子さんへの永遠の愛を…誓います。」
「…私小林澄子は、白鳥任三郎さんへの永遠の愛を…誓います。」
「それでは、新郎新婦の、誓いのキスです!」
2人は緊張し、顔が真っ赤になっている。
そして、澄子の唇に白鳥の熱い唇が近づく。
「…んっ」
ヒューヒュー!!と冷やかす声が上がる。
2人はうっとりと目を開けた。
「以上、新郎新婦誓いのキスでした!お次は、ウェディングケーキを2人で切っていただきます!
夫婦初めての共同作業、紆余曲折のあった2人が、ようやく結ばれました!!」
そして、式は終わった。
こうして…2人の新婚生活が始まった。