…僕は彼女とデートらしいデートをしたことがないな。
白鳥警部(以下白鳥)は朝、白く光るマイカーに乗りながら考えた。
しばらく悩んだ末、白鳥は恋人の小林先生(以下小林)にメールすることにした。
「今日の夕方、米花警察署前の広場で、待ち合わせできますか。」
すぐに小林からは返信が来た。
「17時までに仕事終わらせるので、なんとか行けそうです。」
「ありがとうございます。ご無理なさらず。」
…よし。ここでデートの打ち合わせをして、うまく行けば、だな。
今日は高木君が非番らしいから、早帰りして昼は映画でも観るか。
時間は11時55分。
「白鳥さぁん！お待たせしました。」
「…遅いじゃないか、高木君。」少し苛立ちながら僕が言うと、彼はヘラっとしながら謝った。
憎めない、羨ましい男だ。
高木刑事side story
急いで走ったが、時間に6分間に合わなかったな。白鳥さんに謝りつつ、米花映画館に入る。
「いやぁ俺、たまに映画見るの好きなんっすよ。はっ！」
「…へぇ、高木君。一人称は俺なのか。」
白鳥さんは鋭いなぁ。と思いつつ、一人称のことをバラす。
「ハハッ！面白いことを聞かせてもらったよ、高木君。だがこの事は誰にも言わないでおくよ。」
「あは、あははははは…」俺はつい照れて苦笑いをしてしまった。
チケットを発券しながら喋っていると、白鳥さんが並びから外れた。
「あれ？白鳥さん？」
「すまない高木君、コーラを買ってくるよ。」
白鳥さんってコーラを飲むような人だったかな、と思いながらじっと見ていると、どうやら顔に書いてあったらしい。
「…コーラはね、僕の思い出の飲み物なんだよ。このストローの紙もね。」
「へぇー。あっ白鳥さん！コーラこぼれてます…！あーー！！」
「…なんて事だ、ビショビショだよ…上着だけ脱ぐから、先行っててくれ。」
席に座ってしばらくすると、ワイシャツ姿の白鳥さんがやってきた。
「遅れてすまない、はい、高木君の分のポップコーンとコーラ。」
ありがとうございます、と言って受け取ると、2人で映画を楽しんだのであった。