「本当にいいときに流れるよな、この放送」

少し不満げに呟いてから、義瑠太は気持ちを入れ替え、遊んでいたリュールを呼び寄せた。

「リュール!いくぞ!」

目の前の自動ドアが開き、暗い通路の向こうに、眩いくらい白く照らされたスタジアムが見えた。高鳴る鼓動を抑えて、ゆっくり歩いていく。白い光に包まれた瞬間、観客の歓声や声援が聞こえてくる。後ろから、ビュンとリュールが追い越してきた。その突風に着ていたベストをはらませながらバトルスタジアムの中央に行く。自由に飛び回っていたリュールは義瑠太の隣に降りてきた。

すると、見計らったように反対側の扉が開く。その扉から烏龍がクローの背中に乗って出てきた。妖怪は自由に大きさを変えられるのだ。義瑠太からすればどこがいいのか全く分からないが、ファンがキャーキャー言っている。烏龍はスタジアムを一周すると義瑠太の目の前に降りてきた。烏龍はその背中から飛び降りると小さくなったクローを乗せ、義瑠太を見て言った。

「さっきのは、悪かったな。だが、バトルとそれとは別だ!楽しんでやろうぜ!」

義瑠太は不敵な笑みを浮かべて言った。

「もちろん、わかってますよ。盛大に楽しみましょう」

烏龍はその答えに満足したように頷き、今度は観客に向けて言った。

「お越しの皆さん!本日はありがとうございます!さあ、バトルを始めようか」

観客がワーッと沸いた。審判が出てきて、2人は握手をした。そして、クルッと背を向けると、お互いに反対の方へ歩き出す。立ち位置について、バトルコートの方を見る。審判が手を挙げ、ビシッと下におろした。

「バトル、スタート!」