義瑠太たちはなんとか時間に間に合ったが、烏龍たちがまだ来ていない。義瑠太と莉央奈は、スタジアムの裏の選手用ドアのところで待っている。義瑠太の傍らにはリュール、莉央奈の肩にはレードが座っている。

「まだかなあ」

莉央奈は腕時計で時間を確認して言った。

「あと十分で始まっちゃうのになあ」

その時、義瑠太のケータイにメッセージが届いた。

「なになに、ファンがいっぱい来たから逃げるために先に中に入っちゃった。ゴメンネ。だって!先言ってくれよ!もう、中入ろう」

そう言って義瑠太は足早に歩き始めた。その後をすがるようにして、リュールがついていく。

「じゃ、バトルで負けるわけにはいかないね」

歩きながら莉央奈がそう言うと、義瑠太はガン無視してきた。機嫌が最高に悪い状態だ。触らぬ神に祟りなしと莉央奈はもうなにも話しかけなかった。

待合室に行くと、確かにベンチに座った烏龍たちがいた。義瑠太はすぐに抗議を始めた。

「先に言ってくださいよ!そしたらあんなくっそ暑い中ま待たなくたって良かったじゃないですか!」

「悪い、悪い」

烏龍はヘラヘラ笑いながら謝る。さらに義瑠太が抗議をしようとしたとき、放送が流れた。

「スタジアムの準備が整いましたので、選手は合図があり次第、入場できる用意をしてください」

義瑠太は不承不承といった感じで抗議をやめ、準備を始めた。やっと抗議から解放された烏龍はここの反対のドアから出るために、移動していった。その一連の流れを見ていた莉央奈と凰神は顔を見合わせて苦笑いをした。

「凰神さんは、公式戦やらないの?」

義瑠太は気を紛らわすためか、急にそんなことを聞いてきた。凰神は面食らいながら答えた。

「う、うん。やらないよ。どうして?」

「いやだって、凰神さん、めっちゃ強いじゃん」

事実、現チャンピオンと、2位の義瑠太がまとめてかかったて、1度も勝てた試しがない。

「エットが乗り気じゃないからね」

ベンチの横でレード、リュールと追いかけっこしているエットを見ながら答えた。義瑠太がもっと追求しようとしたとき、またもや放送が流れる。

「それでは、準備が万全になりましたので、義瑠太さんから入ってください」