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二次創作
ONE PIECE多め短編集【単発多め】

#3

泡沫の夢幻を見た。【改】

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沈む。深く、深く、深淵へと沈んでゆく。意識があるようでないような、不可思議な感覚に陥る。心地いい。



「ロー!」


霧が晴れるような、電撃が走るような気がした。あの人の声がする。続き、コケるような音と、燃える音。

思っていた声と少し違くて、ああ、あんたが死んでから13年もたってしまったんだなと実感させられる。


「ロー!起きろって!コラさんだぞ!」



呼びかけられる。その声のほうが思っていた方より懐かしくて、胸がぐっとなり、涙腺がゆるむ。

そうだ、そうだったな、あんたはガキだったおれよりガキくさくて、自分のことをさん付けで呼ぶお茶目な人だった。

自分でドジっ子とか言ってしまう人だった。でもふとした時に慈愛の目を、大人の目をするんだ。

ガキくさいのもあんただろうけど、笑わなかったおれを心配して、道化になっていたんじゃないか。時々、不安になるんだ。

あんたは最期までおれを愛してくれて、世界を敵にするのも厭わなかったけど、けれど、不安になる。強欲だ。

おれは結局、あんたの素顔も、何もかも知らなかった。どうせ死ぬと思っていたから、人と深く関わろうとしなかった。




馬鹿みたいだよな。自業自得、だ。


「ロー、起きろって。朝飯が冷めちまうぞ!もしかして体、痛いのか?大丈夫か?さすったほうがいいか?」






どうせあんたはもういないのに。都合のいい夢だ。淡い、あまい、夢。

ずうっと浸っていたい、ぬるま湯のような、泡沫のような、やさしい、夢。

優しくて、ずるい人。おれの心臓。いのちをくれた人。

起きたいのに、起きられない。あんたにいっぱいもらって、本懐も遂げた。信頼できる仲間だって出来たんだ。

話したい事がいっぱいある。



なあ、コラさん。




コラさん。いかないで。一緒にいて欲しい。



そう言ったはずなのに、口は言葉を紡ぐことができなかった。








ぽちゃり。



ふわ、ふわり、ぐるぐる、沈む。また不可思議な感覚に陥る。まるで生まれる前の、母様のお腹の中のようで、安心する。

瞼が、重くて、





目が覚める。ここは、ポーラータング号の自室だ。



コラさん。あんたに話したいこといっぱいあるんだ。

でもおれがすぐに行ったらあんたはきっと泣いて怒るから。

もっと思い出を作って、精一杯生きてから、会いに行くよ。どこに行っても何をしても、もうおれの自由だから。







頭の端でコラさんがふわりと微笑んで、あ、コケた。ちょっとは感動的にさせてくれよ、ドジっ子め。

作者メッセージ

改訂版。

2025/04/21 15:21

檸檬/気まぐれもん ID:≫ 63BteQXBljVls
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