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午前6時13分の君へ

#2


第2章:すれ違う記憶

 次の日も、七瀬は千陽駅のホームに立っていた。

 昨日の出来事が夢だったのか確かめるように、同じ時刻、同じ場所で電車を待つ。
 けれど、やはり彼は現れた。

「おはよう、朝倉。今日も寒いな」

 穏やかな声、変わらない笑顔。まるで昨日の続きのように、神谷悠真はそこにいた。

 電車が滑り込んできて、二人は並んで乗り込む。座席に座り、何気ない話を交わす。

「朝倉って、まだミルクティー派? 昔、いつもそれ飲んでたよね」

「え……なんで覚えてるの、それ……」

 記憶の断片を、彼は鮮明に語る。七瀬自身がすっかり忘れていたような、些細なことまで。

「だって、気になってたから」

 不意にそう言って、悠真は照れくさそうに笑った。

 七瀬は一瞬、返す言葉を失う。

 ――高校の頃、確かに彼と話した時間はあった。でも、そこまで深い関わりがあったわけじゃない。
 文化祭のときの話も、妙に細かい描写を添えて語るのに、七瀬にはぼんやりとした記憶しかなかった。

 それなのに、どうして彼はそんなに鮮明に“過去”を語れるのだろう。

 そして――“今”の話になると、途端に曖昧になるのは、どうして?

 

 日が経つにつれて、その違和感はじわじわと濃くなっていった。

 流行の音楽の話をしても、彼は知らない。

 最近放送されているドラマの話題も、まるで初めて聞いたような反応を返す。

「俺、あんまりテレビ観ないんだよな。時間が止まってるっていうか……昔のやつばっか観返してる」

 その言い回しに、七瀬は引っかかる。

 まるで、本当に“時間が止まっている”のは、彼自身のほうではないか――そんな気がしてならなかった。

 

 決定的なきっかけが訪れたのは、数日後の夜だった。

 

 ちょっとした買い物のために立ち寄ったコンビニ。温かいお茶と夜食を買って、レジを済ませたとき、店の片隅にある新聞ラックに目が留まった。

 それは、ただの偶然だった。

 けれど、目に飛び込んできた白黒の小さな写真が、七瀬の足を止める。

 神谷悠真。

 見間違えようがない。高校の制服姿、どこかぎこちない笑顔のまま、紙面の隅に写っている。

 手が勝手に新聞を取った。恐る恐るページをめくる。

 



 《一年前の早朝、高校生が駅で飛び込み死亡――周囲に兆候なし》
 ――千陽駅にて、17歳の高校生・神谷悠真くんが電車に飛び込み死亡。事故が起きたのは、午前6時13分。遺書はなく、事件性もないとされているが、遺族は「彼が思い詰めているようには見えなかった」と語る――



 七瀬の手が、新聞のページを持ったまま、震えた。

 記事に書かれた日付は、ちょうど一年前の今週。
 時間も、場所も、何もかもが――一致している。

 毎朝、私が悠真に会っている、あの場所で。
 毎朝、私が乗っている、その時刻に。

 

 七瀬はふらふらと新聞を戻し、コンビニを出た。

 吐く息が白く凍りつく中、震える手でジャケットのポケットをぎゅっと握りしめる。

 耳の奥で、あの声がこだまする。

 

 「また会えてよかった。ほんとに、嬉しいよ」

 

 それは、懐かしい人にかける言葉じゃない。

 **“この世からいなくなった誰かが、もう一度会いに来た”**ときの言葉だった。

 

 七瀬の足元が、夜の駅前のアスファルトの上で、かすかに揺れた気がした。

2025/04/20 16:36

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