私立幻想学園の面々は今日も青春を謳歌したいようです。
此処は、私立幻想学園。どこかの世界線の人間界にある極東の国の首都、トーキョーシティの外れに位置している。
割と少人数の学校だが、そこは深く気にしてはいけない。
そしてこれは、どこかで見たことのあるような彼らが、なんでも無い日常を送る…ただそれだけの、ごくごく普通の日常譚だ。
「そういえば、ちょっと気になったコトがあるんだけどー…」
そう口を開くのは、高等部二年の火威陽。
ズゴゴ、と少しばかり派手な音と共に、昼食と共に頼んだタピオカを吸い込む。
その隣にいるのは、同じく高等部二年の六波羅単。今日も今日とて、すやすやと寝息を立てている。
「何すか?」
同じく高等部二年、影廼界人が聞き返す。今日も今日とて頑固なアホ毛をどうにか抑えようと、必死に髪を解かしながら。
「この世界に、神様っていると思う?」
「そりゃまた…急っすね。何でっすか?」
「駅前の宗教勧誘の人がねー…『貴方は神を信じますか?』って。」
それを聞くなり、またコッテコテな…と界人は呟く。おいおい、こいつ今世界中の宗教関係者を敵に回したぞ。
「まぁ…あくまでも俺個人としては、っつー前置きは付くっすけど…… うん。いると思うっすよ、神様。」
「へぇ…何でか、聞いてもいい?」
少しだけ不思議そうに、陽は聞き返す。
タピオカの量が減っていく。
「言って良いのかどうか分かんねぇんすけど…」
そう前置きして、界人は語り出す。
幼い頃に見た、不可思議な世界の夢の話を。
天才で無気力な[漢字]探偵[/漢字][ふりがな]ホームズ[/ふりがな]と、凡才で世話焼きな[漢字]助手[/漢字][ふりがな]ワトソン[/ふりがな]と、秀才で演技上手な[漢字]刑事[/漢字][ふりがな]レイモンド[/ふりがな]の物語を。
或いはソレは、バッドエンドのストーリー。
本編から転げ落ちた、ありえないハズのモノ。
___“カミサマ”に、採用されなかった世界線。
或いはソレは、ハッピーエンドのストーリー。
本編として選ばれた、ありえてしまったモノ。
___“カミサマ”に、採用されてしまった世界線。
「それは…夢、なんだよね?」
「そうっすね。全部、三人称の…[漢字]神様[/漢字][ふりがな]カミサマ[/ふりがな]の視点だったっす。」
そう言って、界人は自嘲気味に笑う。
顔も名前も分からない、登場人物達を?
いいや。
顔も名前も分からない/分からなかった、“己自身”に対して。
「自分でも上手く説明できないんすよ。単とかアンタと初めて会った日、あるじゃないっすか。入学初日。」
「あー…界人くん、思いっきり迷子になってたよねー。ココ、結構広いし。」
そうそう、と笑いながらも、界人の瞳はどこか虚だ。
たかが一年と少し前の出逢いを思い出していると言うには過分な…もっと遙か遠くを思い出そうとするような、そんな雰囲気がどこかにある。
「あの時実は俺、アンタらに対して、『どっかで会ったコトある気がするな』って思ったんすよ。 懐かしいっつーか…ずっと探してた、みたいな。」
「…界人くんも、だったんだ。」
陽は目を見張る。
界人も目を見張る。
呆けたような表情で、二人して目を見合わせて。
張り詰めた糸が切れたように、二人してゲラゲラと笑い出した。
その途端、むくり、と、単が起き上がる。
「五月蝿い…俺が寝てるのに態々起こすとか、一体全体何の積もりだ?あんたらの頭には、石でも詰まってるって訳?」
「いや、そんなつもりは無かったんすよ!?神様っているのか、みたいな話で…」
「そうそう、ちょっと気になっちゃってさー。 あ、でも…単くんにも関係ある話なのかな、コレ。聞く?」
頭を捻る陽。
いつの間にやらタピオカの氷はすっかり溶けて、ミルクティーの色は薄くなっている。
「別に。俺は如何でも良い。面倒くさいし、な。」
「もー!単くんはまたそーゆーコト言ってー……」
「まぁ良いじゃないっすか。そんなモンっすよ。」
そうは言うけどさー!と、尚も不満そうな陽を宥める界人。
そんな二人には…いや、誰にも聞こえないように、単はそっと呟いた。
「本当に、馬鹿だな。」
天才とは、自己と他者を明確に分つモノだ。
それは即ち、他者には共感できない視点を持つモノであるとも言えるだろう。
つまる所、「天才」というひとりぼっちの生き物は。
ある意味で…或いは酷く残酷な迄に、“[漢字]神様[/漢字][ふりがな]カミサマ[/ふりがな]”と言う存在に、似ているのだった。
彼は何処から聴いていたのか。
彼は何処まで覚えているのか。
それは誰にも…
其れこそ“[漢字]神様[/漢字][ふりがな]サクシャ[/ふりがな]”にすらも、分からないモノなのです。
割と少人数の学校だが、そこは深く気にしてはいけない。
そしてこれは、どこかで見たことのあるような彼らが、なんでも無い日常を送る…ただそれだけの、ごくごく普通の日常譚だ。
「そういえば、ちょっと気になったコトがあるんだけどー…」
そう口を開くのは、高等部二年の火威陽。
ズゴゴ、と少しばかり派手な音と共に、昼食と共に頼んだタピオカを吸い込む。
その隣にいるのは、同じく高等部二年の六波羅単。今日も今日とて、すやすやと寝息を立てている。
「何すか?」
同じく高等部二年、影廼界人が聞き返す。今日も今日とて頑固なアホ毛をどうにか抑えようと、必死に髪を解かしながら。
「この世界に、神様っていると思う?」
「そりゃまた…急っすね。何でっすか?」
「駅前の宗教勧誘の人がねー…『貴方は神を信じますか?』って。」
それを聞くなり、またコッテコテな…と界人は呟く。おいおい、こいつ今世界中の宗教関係者を敵に回したぞ。
「まぁ…あくまでも俺個人としては、っつー前置きは付くっすけど…… うん。いると思うっすよ、神様。」
「へぇ…何でか、聞いてもいい?」
少しだけ不思議そうに、陽は聞き返す。
タピオカの量が減っていく。
「言って良いのかどうか分かんねぇんすけど…」
そう前置きして、界人は語り出す。
幼い頃に見た、不可思議な世界の夢の話を。
天才で無気力な[漢字]探偵[/漢字][ふりがな]ホームズ[/ふりがな]と、凡才で世話焼きな[漢字]助手[/漢字][ふりがな]ワトソン[/ふりがな]と、秀才で演技上手な[漢字]刑事[/漢字][ふりがな]レイモンド[/ふりがな]の物語を。
或いはソレは、バッドエンドのストーリー。
本編から転げ落ちた、ありえないハズのモノ。
___“カミサマ”に、採用されなかった世界線。
或いはソレは、ハッピーエンドのストーリー。
本編として選ばれた、ありえてしまったモノ。
___“カミサマ”に、採用されてしまった世界線。
「それは…夢、なんだよね?」
「そうっすね。全部、三人称の…[漢字]神様[/漢字][ふりがな]カミサマ[/ふりがな]の視点だったっす。」
そう言って、界人は自嘲気味に笑う。
顔も名前も分からない、登場人物達を?
いいや。
顔も名前も分からない/分からなかった、“己自身”に対して。
「自分でも上手く説明できないんすよ。単とかアンタと初めて会った日、あるじゃないっすか。入学初日。」
「あー…界人くん、思いっきり迷子になってたよねー。ココ、結構広いし。」
そうそう、と笑いながらも、界人の瞳はどこか虚だ。
たかが一年と少し前の出逢いを思い出していると言うには過分な…もっと遙か遠くを思い出そうとするような、そんな雰囲気がどこかにある。
「あの時実は俺、アンタらに対して、『どっかで会ったコトある気がするな』って思ったんすよ。 懐かしいっつーか…ずっと探してた、みたいな。」
「…界人くんも、だったんだ。」
陽は目を見張る。
界人も目を見張る。
呆けたような表情で、二人して目を見合わせて。
張り詰めた糸が切れたように、二人してゲラゲラと笑い出した。
その途端、むくり、と、単が起き上がる。
「五月蝿い…俺が寝てるのに態々起こすとか、一体全体何の積もりだ?あんたらの頭には、石でも詰まってるって訳?」
「いや、そんなつもりは無かったんすよ!?神様っているのか、みたいな話で…」
「そうそう、ちょっと気になっちゃってさー。 あ、でも…単くんにも関係ある話なのかな、コレ。聞く?」
頭を捻る陽。
いつの間にやらタピオカの氷はすっかり溶けて、ミルクティーの色は薄くなっている。
「別に。俺は如何でも良い。面倒くさいし、な。」
「もー!単くんはまたそーゆーコト言ってー……」
「まぁ良いじゃないっすか。そんなモンっすよ。」
そうは言うけどさー!と、尚も不満そうな陽を宥める界人。
そんな二人には…いや、誰にも聞こえないように、単はそっと呟いた。
「本当に、馬鹿だな。」
天才とは、自己と他者を明確に分つモノだ。
それは即ち、他者には共感できない視点を持つモノであるとも言えるだろう。
つまる所、「天才」というひとりぼっちの生き物は。
ある意味で…或いは酷く残酷な迄に、“[漢字]神様[/漢字][ふりがな]カミサマ[/ふりがな]”と言う存在に、似ているのだった。
彼は何処から聴いていたのか。
彼は何処まで覚えているのか。
それは誰にも…
其れこそ“[漢字]神様[/漢字][ふりがな]サクシャ[/ふりがな]”にすらも、分からないモノなのです。