ー思えば自分は、最初は佐藤刑事に恋してたんだったな。深夜、自宅に帰る前に白鳥はふと考えた。
僕が子供の頃に書店で確か参考書を買っていたんだよな…すると、青年達が入ってきて漫画本を万引きした。それを見た同じく幼い頃の小林先生が止めに入った。僕は青年達に突き飛ばされた小林先生を助け、青年達を止めた。…僕が彼女に恋をしたのはその後だ。
彼女は僕にコーラをくれた。ストローの紙で桜の花飾りを作り、「桜はね、警察の人がみんなつけてる正義の花なんだよ！強くてかっこいい正義の花！」
と言ってもらったのがきっかけで僕は刑事にもなった。今や警部だ。
そして僕は運命を感じた。捜査一課に初めて入った時、あの時の少女によく似た女性がいた。
彼女こそが佐藤刑事だった。本名は佐藤美和子。
あの時の少女にまた会えたと思うと、胸の高鳴りは抑えられなかった。僕の運命の人だと思った。
お見合いもしたが、その時は高木君のおかげで失敗してしまったな。
しかし佐藤刑事との距離は縮まらなかった。避けられてる様にすら感じた。程なくしてその間違いがとけた。あれはいつだったか。
確か近所の少年探偵団と一緒に映画に行った後だったな。事件の捜査に子どもたちが付いてきたから、解決した後に担任の先生に引き取ってもらうつもりだった。すると驚いた。あの時の少女は、少年探偵団たちの担任、小林先生に間違いないと僕は思った。
その後の関係は良好だ。お弁当をつくってもらったら、お礼も返す。車いっぱいのチョコレートだ。
…だが、彼女はどう思っているのだろうか。迷惑になったりしていないだろうか。嫌われたらなんかしてしまったら、この世の終わりだ…
だが、僕はそうなってもめげないぞ。小林さんと…絶対に結婚するんだ。
「白鳥君！白鳥君！」
…ん？頭が少し痛い…寝不足かな？目暮さんが呼んでるから行かないと…
「はい…」
「白鳥君、君が遅刻するなんて珍しいじゃないか。何かあったのかな？」
「いえ、目暮さん。別に何も…昨日もいつも通り寝たし…」
「顔色が悪いぞ。少し休んでいたまえ。」
そうは言われても、休むわけにはいかない。管理職は仕事が多いのだ。多くの書類にサインして、ハンコを押す。部下に指示を出し、事件の情報を集める。
しかし、最近少し働き過ぎているのも事実だ。この2か月ほど、小林さんともメールでしかやり取りしていない。頭も痛いし、腹もムカムカする。体中が重い。まさか疲れてるのか？元気な僕がそんなはずはない。
「おーい高木君、この書類2階の交通課に…」バサバサバサッ！体がぐらつき、書類を落としてしまった。書類を拾う手にも力が入らない。
「うわぁ！派手にやっちゃいましたね…拾います！」
「いや、いいんだよ。僕がやる。」
申し訳なさそうに高木君が見てくる。だが、また体がふらついてくる。ようやく拾い終わって立ち上がったと思うと、ぐらっとなって倒れてしまった。
「白鳥さん！白鳥君！」
高木君や佐藤さん、目暮さんまで来てしまった…
前が見えない…立ち上がらなくては。
…口に力が入らない。何も言えないぞ。
その後のことは覚えていない。
ー目が覚めると、病室にいた。ここに来るのは、車の爆発事件以来じゃないか？
僕は何をしてしまったんだろう…