お前が泣いたって、僕は拭ってなんかやらない。だってお前は、僕に涙を拭ってもらうために泣いてるんじゃないだろ。

分かるか？僕たちは一つにはなれない。腐るほど使われた言葉だけどさ、普遍的なものは大体正しいんだよ。偉大なる先人たちは僕とお前みたいな関係をそれこそ腐るほど見てきただろうさ。いくら僕のこれをお前の穴に出し入れしたって、僕たちが別の個であることに違いはないんだよ。だってそうだろ？僕たちは歯の粒揃いも視力も思考回路もそれぞれ違うんだから。

考えてみろ。潰れた内臓に興奮する女子高生がいたとして、誰が彼女を裁ける？彼女の視点からものを見れば、濡れた臓物も婦人裸画も大差ないだろ。それと同じ。周りと見てる世界を同じにしようとするから、お前はそんなに苦しいんだよ。

お前は「太宰治」だっていうそれだけで飾りなんだ。なのにお前は、お前だけはその価値に満足しない。お前は全部が足りてるように見えて、何もかも足りないんだな。お前は誰もを愛してる、だから誰のことも平等に憎んでる。オルターエゴ。お前は望みすぎたよ。世界がそんなに大切なのか。余りに大きすぎるものを失って、何もかも放り投げて、それでもお前は足りないって泣くんだ。まだ希望が見えて、それが悲しくて仕方ないんだな。だってそれは、少しずつ親友の死から立ち直っている証だから。お前は親友を過去の思い出の中で熔けさせたくないんだ。

でもさ、お前の思考も、僕の思考も、大したことないんだよ。所詮僕らが生涯かけて狂いまわるこの世界だって、たかが12756㎞の球体だ。ただの、ただの物体だよ。そこで馬鹿みたいな小さい可愛い家に住んだ、二つの肉塊が僕たちだ。その肉塊の脳みそにある、米粒よりもまだ小さくて、粒子と言ってもまだ足りないくらいのそれが思考で、お前が流してる水だよ。何が言いたいかって、お前は他の人より可哀想だってこと！

分かったらもう泣くのはやめにして、暖かいご飯でも食べようよ。