あるお城のお姫様が好かれすぎてます？！　１


「姫様、朝食はどうなさいますか？」



お城の大理石の廊下に響く、タルタリヤの明るい声。彼は朝日が差し込む食堂に立ち、テーブルの上に並べられた色とりどりの料理を見つめていた。タルタリヤの爽やかな笑顔は、城の中でも特に明るい光を放っている。



「うーん、今日は何が食べたいかなぁ。やっぱり、フルーツの盛り合わせがいいかな！」



みさきは、絹のような髪を手でかき上げながら笑顔を見せる。彼女のその姿は、まるで朝露に濡れた花のように可憐だった。お城では「世界一可愛い女の子」と称されるみさきだが、自分の美しさにはあまり無頓着だった。彼女にとって、朝食のフルーツが一番の楽しみだったのだ。



「かしこまりました、姫様。すぐにご用意いたします。」



タルタリヤは微笑みを浮かべ、食堂を後にした。しかし、その背中には小さなため息が隠れていた。彼は放浪者で、今はお姫様の執事という立場であるが、時折心の中で葛藤を感じることがあった。みさきを守りたいと思う反面、彼女の周囲にはいつも人が集まりすぎて、その人気に圧倒されている自分がいたのだ。



「姫様、今日はお茶会を開く予定ですか？」



その時、放浪者としての経歴を持つもう一人の執事、みさきの親友である男が入ってきた。彼の名前は放浪者。なんとも奇妙な名だが、その性格は少しツンデレで、自分の気持ちを表に出すのが苦手なタイプだった。



「うん、タルタリヤが準備してくれるって言ってたよ。なんだか楽しみだな！」



みさきは期待に満ちた瞳で放浪者を見つめる。放浪者はその視線に恥ずかしさを覚えつつも、内心ではみさきの笑顔を守りたいという強い思いが渦巻いていた。



「でも、姫様。お茶会にはまたたくさんの人が来るでしょう。正直、少々面倒だとも思うのですが…」



放浪者は少し眉をひそめ、大きくため息をついた。彼の言葉には、少しの心配と共に、みさきを思う優しさが込められていた。



「大丈夫だよ、放浪者さん！みんな私のことを楽しんでくれるから！それに、あなたがいれば安心だもん！」



みさきは明るく笑い、その言葉に放浪者は少し驚いた。彼女のその無邪気さに、いつも心を掴まれていた。



「も、もちろん、私が何があっても守りますけれど…」



放浪者の口から出た言葉は、どこかぎこちなく、彼の心の中の複雑な感情を反映していた。彼はみさきを守ることを誓っているが、彼女の人気に圧倒されることに戸惑いを感じていた。



その日の午後、お茶会が始まると、お城は華やかな雰囲気に包まれた。各国からの貴族たちが集まり、みさきを囲んで様々な話題で盛り上がる。みさきは、彼らの注目を受けることに喜びを感じ、自然と笑顔がこぼれる。



しかし、放浪者はその様子を遠くから見守るしかなかった。自分だけでは彼女を満たすことができないと感じる一方で、彼女の笑顔を見られるのは幸せでもあった。タルタリヤもまた、みさきの周りに集まる人々の中で、彼女の美しさに魅了されているのだが、どこか冷静さを保とうとしていた。



「姫様、こちらにもお客様が。」



タルタリヤがみさきを呼ぶと、彼女は嬉しそうに足を運ぶ。その瞬間、放浪者は心の奥に芽生えた嫉妬を感じた。彼女が多くの人に愛されるのは素晴らしいが、同時に自分の存在が霞んでしまうことが恐ろしかったのだ。



「みんな、今日は来てくれてありがとう！私、すごく嬉しいよ！」



みさきはその場を明るく照らしながら、言葉を投げかけた。皆が歓声を上げる中、放浪者は自分の心を抑えきれずに、ふと立ち去りそうになる。しかし、そんな彼をタルタリヤが呼び止めた。



「放浪者、姫様を見守るのがあなたの役目だろう？」



放浪者はタルタリヤの言葉にハッとし、立ち止まる。彼は心の中で決意を固めた。自分の中の不安を乗り越え、みさきの笑顔を守るために、彼女のそばにいることを選ぶのだ。



「そうだね、みさきを守るのは、僕の役目だから。」



彼は心の中で自分に言い聞かせ、再びお茶会に目を向けた。みさきが笑顔で皆と楽しんでいる姿を見ていると、彼の心にも少しずつ安堵が広がっていくのを感じた。



その日から、放浪者はみさきの影となって彼女を守ることを決意した。しかし、彼の心には、まだ複雑な思いが渦巻いていた。彼女の人気と、自分の気持ちとの狭間で揺れ動く心。それが今後、どのように展開していくのかは、まだ誰にもわからなかった。



次の展開に胸を躍らせながら、物語は続いていく。