【our fantasy】聞こえなくなった声を辿って
「ハアッ、ハァッ、…ハァ、ハァッ…!」
雲が月を隠していた。
少女の人生に光はないと嗤うように。
走り続ける少女の足は生傷と泥に塗れ、
ぼろ布のようなワンピースは飾り一つ付いていなかった。
「はやく、だれか…だれか、助けて…!」
来るかもわからない助けを、少女は必死に求め、もがいた。
[水平線]
カラカラカラ……
ガタガタと特に舗装もされていない道を通る荷車があった。
畳まれた「なんでも屋」の幟はぬるく風に揺れていた。
「はぁ…今日も客来ぉへんかったなぁ…」
深緑色の髪の毛を下で束ね、ため息をついてみせた青年の名は[太字][漢字]玲陵寺楽座[/漢字][ふりがな]れいりょうじらくざ[/ふりがな][/太字]と言う。
楽座「なーにが悪いんやろか。顔か?この顔か?
そんなん言われたら俺泣いてまうで~…あー…今月もカツカツや~…」
薄く光るランタンは荷車に引っかかったままがたがたと揺れ、
その明かりが路地裏の入り口を照らした、その時だった。
「ハァッ、ハァ…ッ、ハァ、ッ、!!」
楽座「どわっ!?」
ごちんと音が聞こえそうなほどに強く衝突した。
楽座「な、なんやなんや……?」
尻もちをつき、軽くちかちかする彼の目が、捉えたのは少女だった。
楽座「……はぁ?!」
「…っ!あの、ごめんなさ、…あの、」
見知らぬ人にぶつかってしまい相当焦っているのか、
少女は目をまんまるにして楽座を見つめる。
その瞳は虹色で、この薄暗い空気の中でも思わず見とれてしまうほど綺麗であった。
楽座「…あんさん、何しよるん?」
今は夜の1時を過ぎている。お世辞にも早い時間とは言えない中、どうして幼い少女が一人でいるのだろう。
「あ、の、私、いそいでるので、…」
「にげなきゃいけない人がいるんです、追われているんです」
楽座「…!」
不慣れなのか焦りからか、カタコトと喋る少女。
楽座「…ただ事じゃなさそうやな、おせっかいかもやけどついといで」
「へ…?」
楽座は細い少女の腕を引くと、早歩きでどこかへと連れて行った。
楽座「大丈夫や、あんさんはぜ~ったい無事に生かしたる」
心配を取り払うように、笑ってみせると、少女のこわばった顔も少しほぐれた。
[水平線]
楽座視点
道端で出会った少女の腕を引いた。
細すぎる。ちゃんと食べてるんか?((
しっかしま~…この出会った困ってる人拾う癖は直したほうがええんかな?
[太字]アイツ[/太字]にもよく「不注意だ」とか言われるしなぁ…
楽座「…((」
ちらっと、腕を引いた少女のほうを見てみる。
…あぁ、安心してそうやな。…じゃ、まぁええか。
[水平線]
楽座「ついたで、ここならひとまず安心や」
明かりの漏れないドアを開いて、少女を招き入れる。
ここは…俺の家。うん。俺の家。
ちょっと1人居候はいるけど。
「……」
楽座「…ごめんな、急にこんなところ連れてきて。」
楽座「けどな、外も寒いし、あんな中ずっと走り回っとるよりは、
屋内に居れた方がええかなと思って。…もし嫌やったら、逃げてくれて大丈夫やから」
「……うん、…」
ぺたりと座り込む。嫌…ではなさそうやな。よかった。
楽座「せや、名前教えてくれる?なんて呼んだらええ?」
「……[太字][漢字]音無[/漢字][ふりがな]おむ[/ふりがな][/太字]。」
楽座「音無……珍しい名前やな。」
音無「あの、…あなたは、?」
楽座「あぁ、せやった。俺の名前は玲陵寺楽座。なんて呼んでくれてもかまへんよ?」
音無「…楽座、さん…」
音無「………あのね、ここ安全って言ってた、けど」
音無「私を追ってる連中は、いつも私のこと見てる、から…」
音無「今も、ここ来る可能性、0じゃない…」
楽座「………」
おっかない連中やな…噂の[太字]ハニートラップス[/太字]とかそこらの組織のやつか?
楽座「…そうやとしても_____
バァン!!!!
刹那、ドアがぶち破られて大勢何かが押しかけてくる。…俺の家のドア…。
「[太字]おとなしくその子を渡してくれるぅ?[/太字]」
ムチをしならせ、猫なで声で女性が言った。