‐RAY‐ 『参加型 ‐ボス枠終了‐』
「アイツラどこ行ったんだよ!?」
とりあえず、残された六人は三人一組で組を作り、二人が居そうな場所を片っ端から当たることにしたのだった。が、全く検討もつかない。
「こういう時、指揮を取ってくれるデシジョンがないからね……。どうする?」
改めてデシジョンの有能性を感じる。緊急事態にはいつも彼女を頼っていた。
「うーん、そうねぇ…。やっぱり『ドール・ダンス』が怪しい気がするわ…」
現在、レイ、ミリョカ、モニカの三人で怪しげな場所を行ったり来たりしている。何も成果はあげられてないが。
「そうだな…じゃあ、教会に行ってみるか!」
確かに、行方不明になる前日、フィルアが気にしていたようだった。無理して明るい声を出し、二人に呼びかける。二人はこくりと頷き、三人で教会に向かった。
「くそ…無事でいてくれよ……」
「きっと、あの二人なら大丈夫よ。」
二人が不安そうに歩いていると、モニカがジッとこちらを眺めてきた。
「どうしたんだ?」
「いや…なんでもないよ。ただ…誰も死んでほしくないね」
「本当にどうしたんだよ。当たり前だろ」
どうかしたのだろうか?レイが追求する前に、モニカは会話を打ち切り、そっぽを向いてしまった。
「居ないね……」 「そうねぇ……」 「そうだな……」
教会には、フィルアもデシジョンも居なく、何もなかった。
流石にこんなすぐには見つからないか…と肩を下ろしていると、声をかけられた。
「おや?皆さん、どうしたんですか?」
案内をしてくれた信者__名前はガリーだったか?__が尋ねてきた。この前と同様、人当たりが良さそうな笑顔を浮かべる。
しかし、前回と決定的に違う部分があった。
「頭に巻いていたスカーフはどうした?」
そうなのだ。特徴と言っていいほど、目立っていたヒジャブが取り払われ、薄くなった赤毛がよく見えるようになっている。相手は少し照れたように、頭を掻き、教祖様がもう良いと言ったんですよ、と言う。そんな突然決まりを変えても良いのだろうか?疑問に思っていると、ガリーはふわふわと笑う。
「実はなんですが、皆さんに教祖様が会いたいそうです!教祖様自ら頼むなんて、これは信者でも珍しいことなんですよ?流石です!」
いつもより声量が上がり、頬が赤くなる。興奮しているようだった。
「それじゃぁ、こちらに着いてきてください__」
礼拝堂の奥にある豪華な扉を開け、中に入った。想像していたよりも広く、美しい空間だ。天井は高く、赤いカーペットが敷いてあり、柱には天使や女神などの彫刻が施されている。
部屋の端には、幾人もの信者たちが自分たちに道を開け、頭を下げている。
( 全員、赤髪____?)
老若男女居るが、全ての信者が真紅のような見事な赤髪だった。はて?あの髪色を何処かで見たことがあるような? 首を傾げていると、教祖の居る最奥部に着いたらしい。ガリーが立ち止まり、奥に立つ人に向かって深々と頭を下げる。
「__お呼びいたしました。」
口調が先ほどとは異なった。声質もだ。機械のような、人間ではない人工物が喋るような違和感がある。
後ろで扉が大きく耳障りな音を起てて閉まった。扉の両端の者が、鍵を閉めている。
最奥部は、まるで王座のようだった。シートは鮮やかな紅で染められており、その周りを縁取っているフレームは金色。赤と金。王様の王冠やチャイナドレスなどに代表される、おめでたさの象徴のような配色である。そこに堂々と座り、足を組んでいる者こそ、ガリー達の言う教祖様だろう。教祖様は、教祖というよりも、王というよりも、どちらかと言うと学者のような装いだった。マントのように羽織るは、純泊の白衣。恐らく、骨格的に男だろうか。翡翠色の髪を長く伸ばしているが、おしゃれを意識した髪型というよりも、『気づいたらこんなになってました』という感じだった。人生で一度も日を浴びたことがないのではと思ってしまう真っ白過ぎるな頬に架かる黒縁メガネが顔の印象を大きく左右している。
そして、その王座の隣には一人が立っていた。教祖が王だとするなら、彼は腹心の騎士か。頭からすっぽりと黒いベールで全身を覆い、顔も体格も性別もわからない。
教祖はこちらにヤサシイ ヤサシイ笑みを向ける。
「__よく来たね。『トワイライト』の愚者共。」
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