‐RAY‐ 『参加型 ‐ボス枠終了‐』
あれから、棣棠とは三日に一回のペースでいつもの場所に待ち合わせをし、軽く雑談し、時間が経てば帰ると習慣になっていた。
幸せに溢れていた。彼女の一挙一動に胸が高鳴り、見惚れてしまう。恋とは、愛とはこのことだろう。
そんな素晴らしい幸せと出会ってから三ヶ月が経った頃だった。
昼間、何もすることがなく、ぼんやりと壁の模様を見ながら、今日は棣棠と何を話すか考えていた時。
突然、扉の外から轟音が聞こえた。
そして、両親の叫び声。それもすぐ聞こえなくなり、あたりは静寂に包まれた。
身構えていると、勢いよく扉が開いた。
外の様子がよく見えた。両親は血溜まりに身を伏していた。ピクリとも動かず、一目でその生命が消えていることがわかった。その二人を数人の大人が囲むように立っていた。皆、それぞれ武器を持ち、返り血を全身に浴びていた。どうやら、両親を殺した犯人らしい。この世のものとは思えない地獄のような光景だったが、自分にとっては天国に感じられた。
「やぁ。君__饕餮を助けに来たよ。」
なぜなら、山吹色の天使__棣棠が立っていたから。
そのまま、棣棠に連れられ、数人の大人たちと外に出る。生まれて始めて車に乗り、家から距離を取る。
「ふん。実の子供を監禁するなんてナンセンスだねぇ。全くだよ。」
隣に座る棣棠は呆れたように呟く。そして、こちらに破顔した。
「__ねぇ?饕餮。ボクと一緒に来ない?」
言っている意味がわからず呆然としていると、けらけらと音を立て笑う。
「ボクはね『サンライズ』っていう殺し屋組織に入ってるんだ。世界の悪者をぶっ殺そう!って組織で、ボクもその考えに賛同して働いているんだけど、君も一緒に来ない?」
願ってもみないお誘いだった。反射的に頷くと、頭を撫でられた。彼女とこれからも一緒に居られると考えるだけで、酷く心が踊った。
「__それじゃぁ、これからもよろしくね。」
あれから、いくつもの時を過ごした。
棣棠は、人を思いのままに操るという人間離れした能力を持っていた。
しかし、能力が強すぎて、体が持たず、身体も小さいままだという。
まず、自分は近距離戦が苦手な棣棠をもしもの時、守るため、格闘術を学んだ。
訓練中突然現れ、「へー、随分強くなったじゃん。ボクの右腕にしてやるよ。」と偉そうに棣棠は笑った。嬉しくて涙を流すと、「泣くなよー」とからかわれた。
しかし、自分にとっては唯一無二の想い人でも、棣棠からしてみると数ある駒のうち一人に過ぎない。もし、自分は人並みの容姿をしていたら。もし、自分に一握りの勇気があったら。彼女と愛し合えていたかもしれない。だが、現実はそう上手くいかない。たとえ、部下の中で一番強くても、彼女と自分は両思いではない。それが猛烈に哀しく感じることもあった。
それでも、彼女を守れたら。彼女の隣に立てたなら。
自分は幸せものだな、と心からそう言える。
[太字]「__棣棠ッ!?!?」[/太字]
任務中だった。棣棠の小柄な体から鮮血が溢れ出す。
どうしようもないほどに大量の血。必死に止血を試みるが、その手を棣棠に止められた。
「……うる…さい。ボクは…だいじょうぶだから…。」
大丈夫?その言葉は嘘だろう。もう取り戻しがつかないほど、大切な生命は零れ落ちていた。
「お前はぁ…っ、いつでもそうだな……。十年前も…ボクが居なきゃ、なぁんも出来ないんだから。」
十年前のあの日。自分は棣棠に助けられた。
「__頑張ってこいよ。」
彼女なりの激励だろうか?それとも、部下への応援だろうか?それとも__。
その言葉を残し、彼女は糸の切れた人形のように動かなくなった。息はしている。が、このままでは出血死だろう。
自分はなんのために生きているのか? 自分はなんのために存在しているのか?
__是。全ては棣棠の為。あの日、自分は棣棠に全てを捧げた。
決意ができた。
目の前の敵を倒し、すぐさま棣棠を『サンライズ』のメンバーに見せれば助かる見込みも充分あるはずだ。
もしも、これで棣棠と自分二人で、生きて帰れたら、
自分の恋心を明かしても悪くわねぇな、と饕餮は痣に覆われた顔で微笑んだ。
幸せに溢れていた。彼女の一挙一動に胸が高鳴り、見惚れてしまう。恋とは、愛とはこのことだろう。
そんな素晴らしい幸せと出会ってから三ヶ月が経った頃だった。
昼間、何もすることがなく、ぼんやりと壁の模様を見ながら、今日は棣棠と何を話すか考えていた時。
突然、扉の外から轟音が聞こえた。
そして、両親の叫び声。それもすぐ聞こえなくなり、あたりは静寂に包まれた。
身構えていると、勢いよく扉が開いた。
外の様子がよく見えた。両親は血溜まりに身を伏していた。ピクリとも動かず、一目でその生命が消えていることがわかった。その二人を数人の大人が囲むように立っていた。皆、それぞれ武器を持ち、返り血を全身に浴びていた。どうやら、両親を殺した犯人らしい。この世のものとは思えない地獄のような光景だったが、自分にとっては天国に感じられた。
「やぁ。君__饕餮を助けに来たよ。」
なぜなら、山吹色の天使__棣棠が立っていたから。
そのまま、棣棠に連れられ、数人の大人たちと外に出る。生まれて始めて車に乗り、家から距離を取る。
「ふん。実の子供を監禁するなんてナンセンスだねぇ。全くだよ。」
隣に座る棣棠は呆れたように呟く。そして、こちらに破顔した。
「__ねぇ?饕餮。ボクと一緒に来ない?」
言っている意味がわからず呆然としていると、けらけらと音を立て笑う。
「ボクはね『サンライズ』っていう殺し屋組織に入ってるんだ。世界の悪者をぶっ殺そう!って組織で、ボクもその考えに賛同して働いているんだけど、君も一緒に来ない?」
願ってもみないお誘いだった。反射的に頷くと、頭を撫でられた。彼女とこれからも一緒に居られると考えるだけで、酷く心が踊った。
「__それじゃぁ、これからもよろしくね。」
あれから、いくつもの時を過ごした。
棣棠は、人を思いのままに操るという人間離れした能力を持っていた。
しかし、能力が強すぎて、体が持たず、身体も小さいままだという。
まず、自分は近距離戦が苦手な棣棠をもしもの時、守るため、格闘術を学んだ。
訓練中突然現れ、「へー、随分強くなったじゃん。ボクの右腕にしてやるよ。」と偉そうに棣棠は笑った。嬉しくて涙を流すと、「泣くなよー」とからかわれた。
しかし、自分にとっては唯一無二の想い人でも、棣棠からしてみると数ある駒のうち一人に過ぎない。もし、自分は人並みの容姿をしていたら。もし、自分に一握りの勇気があったら。彼女と愛し合えていたかもしれない。だが、現実はそう上手くいかない。たとえ、部下の中で一番強くても、彼女と自分は両思いではない。それが猛烈に哀しく感じることもあった。
それでも、彼女を守れたら。彼女の隣に立てたなら。
自分は幸せものだな、と心からそう言える。
[太字]「__棣棠ッ!?!?」[/太字]
任務中だった。棣棠の小柄な体から鮮血が溢れ出す。
どうしようもないほどに大量の血。必死に止血を試みるが、その手を棣棠に止められた。
「……うる…さい。ボクは…だいじょうぶだから…。」
大丈夫?その言葉は嘘だろう。もう取り戻しがつかないほど、大切な生命は零れ落ちていた。
「お前はぁ…っ、いつでもそうだな……。十年前も…ボクが居なきゃ、なぁんも出来ないんだから。」
十年前のあの日。自分は棣棠に助けられた。
「__頑張ってこいよ。」
彼女なりの激励だろうか?それとも、部下への応援だろうか?それとも__。
その言葉を残し、彼女は糸の切れた人形のように動かなくなった。息はしている。が、このままでは出血死だろう。
自分はなんのために生きているのか? 自分はなんのために存在しているのか?
__是。全ては棣棠の為。あの日、自分は棣棠に全てを捧げた。
決意ができた。
目の前の敵を倒し、すぐさま棣棠を『サンライズ』のメンバーに見せれば助かる見込みも充分あるはずだ。
もしも、これで棣棠と自分二人で、生きて帰れたら、
自分の恋心を明かしても悪くわねぇな、と饕餮は痣に覆われた顔で微笑んだ。
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