‐RAY‐ 『参加型 ‐ボス枠終了‐』
理不尽極まりないこの世界に生まれ落ちた頃から、自分には醜い痣があった。
本当に幼い頃は、まだ色は薄く、大きさも小さかったのであまり気にはならなかったし、親も友達も一応人として接してくれた。あの頃はまだ良かった。しかし、世界は残酷だった。八歳頃からだろうか?痣が呪いのように体中に広がってきた。それに相対して、色はどす黒く変色し、自分で言うのも何だが、化け物のような有り様だった。
「お前のような息子は愛せない。」
いつだろう。実の親にそう吐き捨てられたのは。
「顔を見せるな。死体め。」「何あれ!?ゾンビみたい!怖い!」「もうおれ達に関わんな。」
いつだろう。肌を晒して歩くとゴミを投げつけられるようになったのは。
そんな酷く醜い俺が十二歳になった時、親は自分を監禁し始めた。
子どもの落書きのような俺を誰の目にも触れさせないために、二階の一室に閉じ込めたのだ。必要最低限の食事を渡し、すぐさま扉の向こうに消える者たちを家族と自分は呼べなかった。
時折、夜になると外に出ることがあった。
まだ、子どもとして年相応の冒険をしてみたったし、
夜なら誰とも会わず、醜悪な自分に気づく人が居ないと思ったからだ。
忘れもしないあの夜。自分は運命の出会いを果たした。
その日、いつも通り、人通りのない裏道を歩き、ぼんやりと星空を眺め、寝静まった街を見ていた。そんな時だった。
__美しい彼女と会ったのは。
自分と同じくらいの年齢だろう。さらさらと揺れる細い山吹色の髪に、運動なんかしたことがないような華奢な身体つき、眩い白い肌。大きな瞳。
全てが一瞬で眼球に焼き付いた。バクバクと心拍数が上がる。喉がカラカラに乾き、全身が熱くなる。
__これが俗に言う『一目惚れ』か。雷に打たれたように見ていると、彼女はこちらに気づいたようで、振り返った。
目があった。
反射的に顔を覆う。そして、姿勢を低くし、頭を抱える。これは、物が飛んできた時、一番大切な脳を守るためだ。その脳では、終わったという文字が回転していた。こんな美しい人に見られた。初めて人を好きだと思えたのに。
が、いつまで経っても、叫び声が聞こえてくることも、罵倒されることも、ましてや物が飛んでくることはなかった。
恐る恐る顔を上げると、優雅に微笑む君が居た。
その時の顔が、とても優しげだったのは自分の願いでそう見えただけだろうか。
「また、三日後おいで。」
この時だろう。世界が色づいて見えるようになったのは。
この時だろう。彼女の隣に居るのは自分であってほしい心の底から願ったのは。
三日後、ドキドキとその場所に向かった。言われた直後から、今すぐ三日後にならないかと今か今かと待っていたのだ。期待を胸に訪れると同じ場所に彼女は立っていた。今日も美しい。
「君、名前は?」
「…………」困ってしまった。自分には名前がない。彼女と沢山話したいのに上手く返答することができない。
「ん?もしかして、名前がないの?」
コクリと頷くと、彼女は眉間にシワを寄せ、思考顔を作る。
「うーん、なんて呼べばいいかね…。なんかあだ名的なのないの?」
それなら、よく『化け物』と言われていると伝えると更に彼女は困ったような顔をした。
「__よし!決めた!今日から君は饕餮だ!ボクが考えてあげたんだから、これから使ってね?」
どうやら饕餮が名前らしい。とうてつ、とうてつ、と心の中で繰り返す。彼女に名前をつけてもらったという事実に、脳天から足の先端まで幸せが満ちていた。
「ボクは棣棠だよ。よろしくね。」
彼女__棣棠は笑みを見せた。
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