‐RAY‐ 『参加型 ‐ボス枠終了‐』
(本当に参ったな…。こっちは戦闘が得意な訳じゃ無いんだぜ……)
ルーザは笑みを浮かべたまま静かに焦る。こちらは工作ボスに情報ボスに拷問ボスに誘惑ボスと、戦闘が苦手な職業ボスのオンパレードである。そして、更に絶望的な事実として、相手はどうやら戦闘型だという事であった。先程の銃の腕前、気配の消し方などフィルアなどと似ている部分があり、近距離戦の一流なのだろう。ルーザが悩んでいるとミリョカが一歩前に出た。
「___降伏するわ。」
「ミリョカっ!?」
衝撃の一言だった。ルーザが驚いていると、ミリョカは更に言葉を続けた。
「言うことも聞くわよ。今の組織を裏切るわ。私はあなたの敵じゃない。__だから、もう少し近くに寄ってくれないかしら?」
ルーザは気づく。これは彼女の交渉なのだ。先日、ミリョカは自身の能力について教えてくれた。『感情を操れる』。これは、ミリョカが仕掛けた罠か。
__これなら戦闘も無く、穏便に済ませられるなと期待したが、現実はそう上手くは行かない。
「__否。興味無し。無駄な小細工をするな……。」
ガスマスク男はそう明確な拒絶を表した。悪手を恥じるようにミリョカは息を呑み、後退する。やはりこの男、只者ではない。
「動物ちゃん達!」モニカが動き始める。自身が操る機械達を敵に向かわせた。これだけ聞くとなんてことない動作だが、実際は鋭い刃や槍、ましてや爆弾が取り付けられた小さい鉄の塊が高速で突っ込んでいくという恐怖以外のなんでもないことだった。
「…これだけで、抑え込むことができると思ったのか………?」
ガスマスク男は身体全体を覆うマントから、巨大な槌を取り出し、いとも簡単に動物たちを壊してみせる。
「我の名前は、饕餮だ…。『華鬘草』とも最近は呼ばれているがな………。」
ゆっくりと槌を肩に掛け相手はこちらにそう名乗った。
「余裕かよ〜。自己紹介なんかしちゃって。」
ルーザが煽ると、ガスマスク男__饕餮は分厚いレンズの下からこちらを睨まれた。
「別に偽名だからな……。それに、あの人が敵と合ったら名乗れと決めたんだ…。覚えなくても良い………。」
「さっきから言ってる『あの人』って誰のことだ?勿体ぶらないで教えてくれよぉ」
ガスマスクに包まれた口が動く。
「お前らが捕まえて情報を聞き出そうとしていた棣棠のことだ……。我は棣棠のボディーガードみたいなものさ……。」
声音がやや寂しそうだったのは聞き間違えだろうか。ルーザは情報になるほどなるほどと頷く。
「あぁー、納得だわ〜!ありがとうな。[太字]____時間稼ぎは終わりだっ![/太字]」
突然、ルーザが叫んだことに饕餮は驚く。それよりも、彼は時間稼ぎと言わなかったか?自分は相手の思うつぼだったのか?そうだ。普段なら雑談などしなかった。棣棠のことも話さなかった。何故だ。何だこの違和感は。
そして、やっと饕餮は気づいた。
____操られていたのか。自身の感情が。
あの女。確か味方からはミリョカと呼ばれていたか。アイツに交渉を持ちかけられた時、確かに心情に異変があった。
(__ッ!だが、時間を増やしたって何になる。このまま拘束して___)
次の瞬間、饕餮の目に催涙ガスが直撃した。
「はぁ、はぁ、はぁ。これぐらい離れれば大丈夫か!」
「あー、ちかれたぁぁ!」
「かなり危機一髪だったわねぇ……」
「全く持って同感です。肝が冷えました。」
四人は路地に座り込んだ。全速力で饕餮から距離を取ったので息も絶え絶えであり、もう走れないと足が悲鳴をあげていた。
「いやー、にしても皆ありがとうな〜!これは、誰一人欠けていても出来なかったぜ!」
「んにゃ!ほんとだよ!すっごくドキドキしたぁ!」
「ふふふっ、ルーザもお手柄だったわぁ。」
「……別に仕事を全うしただけですから。」
行ったこととしてこうである。
モニカが機械動物を飛び込ませた時。あの時、動物たちに饕餮が気を取られている間にミリョカは能力を発動させていた。とはいえ、露骨に操るのでは失敗する。あくまで、彼が喋りやすくなるほどの効果だけだった。しかし、これが吉と出たのだ。彼がルーザの話術に乗せられ、情報を口走っている時、ムギは密かに持っていた缶と乾燥ハバネロを使い、簡易式催涙スプレーを作っていた。もちろん、常人は即席で催涙ガスなど作れるわけがない。神業である。また、何故缶と乾燥ハバネロを持っていたかと言うと、とある依頼で催涙スプレーを作れとあったからで、これは全くの偶然だった。なんとも悪運の強い。
かなりギリギリだったが、上手く行き、逃げ切ることが出来た。
あくまでも正規品ではないので、効果は一時的だろう。治ったらすぐ追ってくるに違いない。
「それじゃ、アイツが追ってきたら____」
これからの作戦を立てようとした時。
____すぐ近くでマシンガンの連射音が聞こえた。
ルーザは笑みを浮かべたまま静かに焦る。こちらは工作ボスに情報ボスに拷問ボスに誘惑ボスと、戦闘が苦手な職業ボスのオンパレードである。そして、更に絶望的な事実として、相手はどうやら戦闘型だという事であった。先程の銃の腕前、気配の消し方などフィルアなどと似ている部分があり、近距離戦の一流なのだろう。ルーザが悩んでいるとミリョカが一歩前に出た。
「___降伏するわ。」
「ミリョカっ!?」
衝撃の一言だった。ルーザが驚いていると、ミリョカは更に言葉を続けた。
「言うことも聞くわよ。今の組織を裏切るわ。私はあなたの敵じゃない。__だから、もう少し近くに寄ってくれないかしら?」
ルーザは気づく。これは彼女の交渉なのだ。先日、ミリョカは自身の能力について教えてくれた。『感情を操れる』。これは、ミリョカが仕掛けた罠か。
__これなら戦闘も無く、穏便に済ませられるなと期待したが、現実はそう上手くは行かない。
「__否。興味無し。無駄な小細工をするな……。」
ガスマスク男はそう明確な拒絶を表した。悪手を恥じるようにミリョカは息を呑み、後退する。やはりこの男、只者ではない。
「動物ちゃん達!」モニカが動き始める。自身が操る機械達を敵に向かわせた。これだけ聞くとなんてことない動作だが、実際は鋭い刃や槍、ましてや爆弾が取り付けられた小さい鉄の塊が高速で突っ込んでいくという恐怖以外のなんでもないことだった。
「…これだけで、抑え込むことができると思ったのか………?」
ガスマスク男は身体全体を覆うマントから、巨大な槌を取り出し、いとも簡単に動物たちを壊してみせる。
「我の名前は、饕餮だ…。『華鬘草』とも最近は呼ばれているがな………。」
ゆっくりと槌を肩に掛け相手はこちらにそう名乗った。
「余裕かよ〜。自己紹介なんかしちゃって。」
ルーザが煽ると、ガスマスク男__饕餮は分厚いレンズの下からこちらを睨まれた。
「別に偽名だからな……。それに、あの人が敵と合ったら名乗れと決めたんだ…。覚えなくても良い………。」
「さっきから言ってる『あの人』って誰のことだ?勿体ぶらないで教えてくれよぉ」
ガスマスクに包まれた口が動く。
「お前らが捕まえて情報を聞き出そうとしていた棣棠のことだ……。我は棣棠のボディーガードみたいなものさ……。」
声音がやや寂しそうだったのは聞き間違えだろうか。ルーザは情報になるほどなるほどと頷く。
「あぁー、納得だわ〜!ありがとうな。[太字]____時間稼ぎは終わりだっ![/太字]」
突然、ルーザが叫んだことに饕餮は驚く。それよりも、彼は時間稼ぎと言わなかったか?自分は相手の思うつぼだったのか?そうだ。普段なら雑談などしなかった。棣棠のことも話さなかった。何故だ。何だこの違和感は。
そして、やっと饕餮は気づいた。
____操られていたのか。自身の感情が。
あの女。確か味方からはミリョカと呼ばれていたか。アイツに交渉を持ちかけられた時、確かに心情に異変があった。
(__ッ!だが、時間を増やしたって何になる。このまま拘束して___)
次の瞬間、饕餮の目に催涙ガスが直撃した。
「はぁ、はぁ、はぁ。これぐらい離れれば大丈夫か!」
「あー、ちかれたぁぁ!」
「かなり危機一髪だったわねぇ……」
「全く持って同感です。肝が冷えました。」
四人は路地に座り込んだ。全速力で饕餮から距離を取ったので息も絶え絶えであり、もう走れないと足が悲鳴をあげていた。
「いやー、にしても皆ありがとうな〜!これは、誰一人欠けていても出来なかったぜ!」
「んにゃ!ほんとだよ!すっごくドキドキしたぁ!」
「ふふふっ、ルーザもお手柄だったわぁ。」
「……別に仕事を全うしただけですから。」
行ったこととしてこうである。
モニカが機械動物を飛び込ませた時。あの時、動物たちに饕餮が気を取られている間にミリョカは能力を発動させていた。とはいえ、露骨に操るのでは失敗する。あくまで、彼が喋りやすくなるほどの効果だけだった。しかし、これが吉と出たのだ。彼がルーザの話術に乗せられ、情報を口走っている時、ムギは密かに持っていた缶と乾燥ハバネロを使い、簡易式催涙スプレーを作っていた。もちろん、常人は即席で催涙ガスなど作れるわけがない。神業である。また、何故缶と乾燥ハバネロを持っていたかと言うと、とある依頼で催涙スプレーを作れとあったからで、これは全くの偶然だった。なんとも悪運の強い。
かなりギリギリだったが、上手く行き、逃げ切ることが出来た。
あくまでも正規品ではないので、効果は一時的だろう。治ったらすぐ追ってくるに違いない。
「それじゃ、アイツが追ってきたら____」
これからの作戦を立てようとした時。
____すぐ近くでマシンガンの連射音が聞こえた。
このボタンは廃止予定です