『トワイライト』が作戦会議中、『幽園地』では＿＿＿。

「クソっ！なんで上手く行かないんだっ！？」

一人の男が声を荒げていた。藍媚茶色の短髪に、朽葉色の三白眼。実年齢の28歳よりやや老けて見える容姿だ。両腕に纏わりつくような入れ墨があり、とてもじゃないが、表社会の人間ではない雰囲気を放つ。彼の名前は、カイマ。この社会の人間には『宴遊の頭人』と呼ばれている。このマフィア組織『幽園地』の現在ボスである。
そんな、取り乱す彼に声が掛ける者がいた。

「ボスゥ。大丈夫ですヨォ〜！目的の為にもう一踏ん張りでス♪」

なんともふざけた、滑稽なピエロの格好をした者だった。服と同じく青と黒を基調とし、フリル、レース、リボンなどが使われた大きなシルクハットを被り、額から後頭部まですっぽりと覆う。その下には、濁った青藍色の髪と光のない藍墨色の瞳が揺れる。目元には涙のメイクがあるが、口端には笑いの線が引かれ、もとがどのような顔なのか予想が出来ない。肌は不健康なまでに白く、靴先やマントの端に鈴がついており、動く度に耳障りに鳴る。彼は、ジェスター。こんなにも狂った言動をする者だったが、この『幽園地』の参謀、及び副ボスである。

「っ！そうだな、もう一踏ん張りか……」
ジェスターに言われ、カイマは冷静さを取り戻す。
「おそらく『トワイライト』にも目をつけられた。このままじゃ目的を達成する前にこっちが滅ぶ。これからどうするか？」
「んー？そうですねェ〜。ワタシにと〜っても良い案がありますヨォ……」

カイマには、絶対に負けられない理由がある。ここまで、悪行をやってきた目的だった。


＿＿＿カイマには、娘がいた。血は繋がっていない。奴隷の子だった。

とはいえ、ずっと一人で生きていたカイマにとって、ただ一人の家族であり、大切なものだ。
しかし、運命とは時に残酷。彼女には持病があった。とても珍しい病気であり、一般的な治療薬では治らない。カイマはなんとか娘を治そうと、辺境の村に行き薬を探したり、見つけた薬を奴隷に試し効果があるか調べた。このままでは、彼女は死に絶える。自分はまた一人きり。残された時間は少ない。

「＿＿＿『トワイライト』を倒し、アイツを救ってやる。」

それが、カイマを動かす燃料だった。