1人の少女の忘れ物
#1
“思い出と忘れ物”
雨がザーザー降っている。
私は病院に居る。
いつもは気にしない雨の音すらもうるさいと感じた。
病院のジグザグは今日は真っ直ぐだった。
ーーー1人の少女は死んだ。
幼い少女だった。
まだ12歳だった。
その様子をまだ幼い少女は静かに見つめていた。
〜死ハ平等デアリ不平等ナ物ダ〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
空いた隙間は簡単に埋まってくれない。
貴方からもらった愛は誰に返せば良いの。
ねぇ、いつもすぐに答えてくれたくせになんで何も言ってくれないの。
なんでこんなにも冷たいの。
神様…神様、、もう一度…もう一回だけ、、チャンスをください。
〜信ジル者ニ救イハ無イ〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お姉ちゃんが倒れた。
幼くても意味は分かった。
周りに大人は居なくて先生を探しに行った。
どこ?どこにいるの?
…
居た!
零「先生!先生、お姉ちゃん、お姉ちゃんが…」
先生「落ち着いて。永さんがどうしたの?」
零「急に、急に遊んでたら、倒れて…」
先生「!そこに連れて行ってくれるかな?」
早く、速く、はやく、お姉ちゃん、お姉ちゃん。
先生を連れて行ってもお姉ちゃんは倒れたままで、…
先生は焦った様子で電話していた。
…
その後すぐに救急車が来た。大丈夫だよね…お姉ちゃん。
病院に着いたらすぐにお姉ちゃんは連れて行かれた。
私は待つことしかできなかった。
お母さんとお父さんもいつの間にか来て、隣に座っていた。
病院の先生が出てきた。
「お亡くなりになりました。」
その言葉は今でも覚えている。
その言葉は冷たく現実を突きつけてきた。
幼くても10歳だ。言葉の意味はすぐに分かった。けど、受け入れたくなかった。
お母さんとお父さんは葬儀屋を探し始めた。
後日、葬式が行われた。
…
ごめんなさい。
〜死ハ唐突ニ無慈悲ニ訪レル〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから月日が経った。当時10歳だった私は18歳になった。
それでも、今も覚えている。
ずっと泣いていた。泣いて、泣いて、その日は眠れなかった。
どれだけ出会いを繰り返しても、どれだけ今日を繰り返しても、親友ができようとできた穴は塞がらなかった。
後から知った。姉さんは不整脈によって死んだ。
だから姉さんは体育を見学していたのかも知れない。
自分で心臓が弱いと理解していたから…。
不整脈であると言われた事は無くても自分で調子は分かる。
なら、姉さんはなんらかの異常であると理解していたんじゃ無いのか。
私があの日遊びに誘わなかったら…
いろんな人に言われた。
お姉さんのことは残念だったね、と。
いろんな人に言われた。
それでも前を向いて歩いて行こう、と。
何も知らないくせに、分からないくせに。
親友もそれを知った時同じことを言うと思っていた。
けど違った。
⁇?「…そっか、ごめんね。辛い事聞いちゃって…」
⁇「零はさ、忘れ物しちゃったんじゃ無いかな?」
零「…忘れ物?」
⁇「そう、忘れ物。拾うのを忘れて、後悔してる事が今もある。だから答えが出せない。」
⁇?「⁇の言ってる事はよく分かんないけど、それを解決できるのは自分しかいない気がするな〜。赤の他人が何言ってんだよって感じかも知れないけど…忘れ物があるなら拾いに行ったら?留守は任せてよ!」
⁇「⁇?もこう言ってるし、拾い直しても良いんじゃ無いかな?」
零「…ありがとう。分かった。ちょっと休む。」
⁇「そうしときな!」
⁇?「ゆっくりで良いよ!」
忘れ物、か。拾い直す、…ぼんやりと歩き続けた。気付いたら海辺の道路に居た。そういえば昔、姉さんと遊んだっけ…。なんとなく砂浜へ向かう。
砂浜は真っ白で美しかった。波の音が鳴り響く。風が静かに頰を撫でた。冬の砂浜には誰も居なかった。水の冷たさを、風の冷たさを感じながらゆっくりと歩き始める。白以外の色を見つけ、視界を落とす。下を見ると桜色が落ちていた。落ちていたのは貝殻だった。そういえば昔全く同じ種類の貝を拾って姉さんに渡したっけ…。姉さんはいつもより少し嬉しそうに笑った。なんとなく、その貝殻を拾って家に帰った。
〜幸運ノ送リ物ハ少女ヲ待ツ〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝起きたら、ベットの机の上に貝殻があった。それを見て昨日の会話を思い出す。思い出をなぞっていけば答えが見つけられるだろうか…。久しぶりに実家に帰ろうかな。
大学に行く為に私は生まれ育った家を出て行って大学に近い場所に住む事にした。この事から分かる様に実家はだいぶ遠い。まぁ仕方ないか。
それから私は電車に揺られまずは県を出た。その後、バスに乗って次の駅へ行き、また電車に揺られ実家へと向かって行く。何回も乗り換えないといけないのは面倒だけど…懐かしくも思えた。私が大学に通う前の高校卒業後にこんな風に新しい家へ、生活へ向かったのだ。それに大学付近は旅行でもよく来た。夏休みはあの砂浜でよく遊んだ。今は住み慣れた物だがあの時は1回1回が楽しみなワクワクしたものだった。
ついた。そこまで経ったわけではないが懐かしいと思えた。歩き始めると、赤い鳥居が見えた。古くてボロボロな神社がそこにはあった。森の中にある神社で時々野生の狐が居たな。姉さんが居なくなってから来なくなってしまったけど…。久しぶりに神社にでも行こうか。
あの頃から思っていたがやはりボロボロだな。とても古く、もう倒れてしまいそうな建物があった。風が吹く。もう枯れた木の葉が舞い上がる。狐だ。確かにそこには狐が居た。私を見ると少し止まって永遠にも思える時間が続いたがやがて去ってしまった。私は姉さんが去ったことと重ねてしまう。嗚呼、涙が止められなくなりそうだ。これ以上はもう…辞めよう。私はその場を去った。
〜導キノ灯ハ少女ノ心ニ灯ル〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
家は見つける途中に公園を見つけた。懐かしいな。遊具が少ない小さい公園だけど、桜がとても綺麗に見えた。春はよくここで花見をしたっけ…。
冬だからもちろん桜なんて咲いていなかった。だけどよく見ればつぼみがあるのが分かった。もう直ぐ春だ。桜は直ぐに散ってしまう。まるで、まるで…人の命の様に…。もう辞めよう。とっとと実家に帰ってとっとと大学に戻ろう。
〜別レト出会イハ少女ヲ見ツメル〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
実家に帰るとお母さんとお父さんは私を見て喜んだ。
おかえり、と優しく包み込んでくれる。良い親の元に育ったと実感する。お昼は過ぎ、太陽は沈みかかっていた。この時間帯が私は嫌いだ。お願いだから沈まないでくれ。頼むから、まだ私を照らしていてくれ。姉さん、まだ消えないで。私がそう言ったことを考えていると分かったのかお母さんはカーテンを閉めてくれた。少し早い夕飯を食べながら優しく聞いてきた。
母「やっぱり永の事かしら。」
ゆったりとした安定感のある優しい声。安心するこの声の問いに私はこれまでの経緯を話した。
母「…そう。向き合うと決めたのなら、止める権利は無いわね。…永の部屋に行きなさい。そこに答えはあると思うわ。」
その声に背中を押され私は姉さんの部屋へ歩き始めた。
怖かった。姉さんと向き合うのが怖かった。だから部屋に行くことができなかった。…ドアノブに手をかけた時、私の手は震えていた。それを見てようやく理解した。私は今、怖いと思っている。
深呼吸して、姉さんの部屋に入る。
それは当時の部屋のままで子供らしい人形があったり、教科書にノートに、勉強道具もそのままでランドセルもあった。部屋は整理されておらず、お母さんとお父さんも手をつけていない事が分かった。机にきらりと輝く物があった。近づくとそこにはアメジストが会った。姉さんの瞳と同じ色の宝石。物を欲しがらない姉さんが初めて欲しいと言って買ってもらった宝石。
涙が止まらない。泣いて、泣いて、泣いて。泣き疲れて…。
その宝石は美しく光り輝いていた。姉さんの瞳の様に…
「…い、…い!…零!」
目を開く。でもそこには何も無い暗闇が広がるだけ。夢なのだと理解した。でも聞こえた声は確かに…
「れーい!このお寝坊さんめ!」
楽しそうで優しくて、暖かくて、高い声。後ろを振り返るとそこには姉さんが居た。
「姉、さん」
驚いたがやがて夢だと理解した。都合の良い夢だ。姉さんは居なくなって…
永「零は私に居なくなって欲しかったの?」
零「違っ、」
永「でも零は私が居なくなった事しか見ていないでしょう。優しい友達も親友も皆そこに居るのに貴方は私を探している。」
零「…だって姉さんが、姉さん、が1番、大切だったから…」
永「知ってるよ。ごめんね。さっきのは意地悪だったね。色んな零の気持ち、ちゃんと分かってる。前を向くのが辛い。過去をずっと後悔してしまう。でもさ、零は答えを知ってるでしょ。私は貴方。私はね、知ってるよ。貴方なりの答え。良いと思うよ。きっと、それは貴方にとって最適で美しい答えだから。」
…そっか。答えは直ぐそばにあった。居てくれた。姉さんに手を伸ばす。その手は姉さんに触れ、そして、目が覚めた。
アメジストは今も美しく輝いていた。
〜四個ノ光ハ少女ヲ照ラス〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつもの日常の中。1人の少女がある店から出てきた。その少女のネックレスには紫が光り輝いていた。
過去を振り払える人なんていない。人は過去に縋るのは辞めなさいと言う。けど、それは悪いことなんかじゃない。本当に愛するのなら、信じてみてはどうでしょう。その人は私を愛してくれていたと。苦しくて、つまずいてしまう事もある。そんな時、愛する人は貴方に手を差し伸べ、貴方の背中を押すのではないでしょうか。過去に縋ったって良い。辛い時は振り返れば良い。直ぐそばには愛する人が居る。何回だって振り返って、迷えばいい。愛する人と一緒に進んでいけば良い。
〜二人ノ少女ハ明日へ向カウ〜
私は病院に居る。
いつもは気にしない雨の音すらもうるさいと感じた。
病院のジグザグは今日は真っ直ぐだった。
ーーー1人の少女は死んだ。
幼い少女だった。
まだ12歳だった。
その様子をまだ幼い少女は静かに見つめていた。
〜死ハ平等デアリ不平等ナ物ダ〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
空いた隙間は簡単に埋まってくれない。
貴方からもらった愛は誰に返せば良いの。
ねぇ、いつもすぐに答えてくれたくせになんで何も言ってくれないの。
なんでこんなにも冷たいの。
神様…神様、、もう一度…もう一回だけ、、チャンスをください。
〜信ジル者ニ救イハ無イ〜
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お姉ちゃんが倒れた。
幼くても意味は分かった。
周りに大人は居なくて先生を探しに行った。
どこ?どこにいるの?
…
居た!
零「先生!先生、お姉ちゃん、お姉ちゃんが…」
先生「落ち着いて。永さんがどうしたの?」
零「急に、急に遊んでたら、倒れて…」
先生「!そこに連れて行ってくれるかな?」
早く、速く、はやく、お姉ちゃん、お姉ちゃん。
先生を連れて行ってもお姉ちゃんは倒れたままで、…
先生は焦った様子で電話していた。
…
その後すぐに救急車が来た。大丈夫だよね…お姉ちゃん。
病院に着いたらすぐにお姉ちゃんは連れて行かれた。
私は待つことしかできなかった。
お母さんとお父さんもいつの間にか来て、隣に座っていた。
病院の先生が出てきた。
「お亡くなりになりました。」
その言葉は今でも覚えている。
その言葉は冷たく現実を突きつけてきた。
幼くても10歳だ。言葉の意味はすぐに分かった。けど、受け入れたくなかった。
お母さんとお父さんは葬儀屋を探し始めた。
後日、葬式が行われた。
…
ごめんなさい。
〜死ハ唐突ニ無慈悲ニ訪レル〜
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それから月日が経った。当時10歳だった私は18歳になった。
それでも、今も覚えている。
ずっと泣いていた。泣いて、泣いて、その日は眠れなかった。
どれだけ出会いを繰り返しても、どれだけ今日を繰り返しても、親友ができようとできた穴は塞がらなかった。
後から知った。姉さんは不整脈によって死んだ。
だから姉さんは体育を見学していたのかも知れない。
自分で心臓が弱いと理解していたから…。
不整脈であると言われた事は無くても自分で調子は分かる。
なら、姉さんはなんらかの異常であると理解していたんじゃ無いのか。
私があの日遊びに誘わなかったら…
いろんな人に言われた。
お姉さんのことは残念だったね、と。
いろんな人に言われた。
それでも前を向いて歩いて行こう、と。
何も知らないくせに、分からないくせに。
親友もそれを知った時同じことを言うと思っていた。
けど違った。
⁇?「…そっか、ごめんね。辛い事聞いちゃって…」
⁇「零はさ、忘れ物しちゃったんじゃ無いかな?」
零「…忘れ物?」
⁇「そう、忘れ物。拾うのを忘れて、後悔してる事が今もある。だから答えが出せない。」
⁇?「⁇の言ってる事はよく分かんないけど、それを解決できるのは自分しかいない気がするな〜。赤の他人が何言ってんだよって感じかも知れないけど…忘れ物があるなら拾いに行ったら?留守は任せてよ!」
⁇「⁇?もこう言ってるし、拾い直しても良いんじゃ無いかな?」
零「…ありがとう。分かった。ちょっと休む。」
⁇「そうしときな!」
⁇?「ゆっくりで良いよ!」
忘れ物、か。拾い直す、…ぼんやりと歩き続けた。気付いたら海辺の道路に居た。そういえば昔、姉さんと遊んだっけ…。なんとなく砂浜へ向かう。
砂浜は真っ白で美しかった。波の音が鳴り響く。風が静かに頰を撫でた。冬の砂浜には誰も居なかった。水の冷たさを、風の冷たさを感じながらゆっくりと歩き始める。白以外の色を見つけ、視界を落とす。下を見ると桜色が落ちていた。落ちていたのは貝殻だった。そういえば昔全く同じ種類の貝を拾って姉さんに渡したっけ…。姉さんはいつもより少し嬉しそうに笑った。なんとなく、その貝殻を拾って家に帰った。
〜幸運ノ送リ物ハ少女ヲ待ツ〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝起きたら、ベットの机の上に貝殻があった。それを見て昨日の会話を思い出す。思い出をなぞっていけば答えが見つけられるだろうか…。久しぶりに実家に帰ろうかな。
大学に行く為に私は生まれ育った家を出て行って大学に近い場所に住む事にした。この事から分かる様に実家はだいぶ遠い。まぁ仕方ないか。
それから私は電車に揺られまずは県を出た。その後、バスに乗って次の駅へ行き、また電車に揺られ実家へと向かって行く。何回も乗り換えないといけないのは面倒だけど…懐かしくも思えた。私が大学に通う前の高校卒業後にこんな風に新しい家へ、生活へ向かったのだ。それに大学付近は旅行でもよく来た。夏休みはあの砂浜でよく遊んだ。今は住み慣れた物だがあの時は1回1回が楽しみなワクワクしたものだった。
ついた。そこまで経ったわけではないが懐かしいと思えた。歩き始めると、赤い鳥居が見えた。古くてボロボロな神社がそこにはあった。森の中にある神社で時々野生の狐が居たな。姉さんが居なくなってから来なくなってしまったけど…。久しぶりに神社にでも行こうか。
あの頃から思っていたがやはりボロボロだな。とても古く、もう倒れてしまいそうな建物があった。風が吹く。もう枯れた木の葉が舞い上がる。狐だ。確かにそこには狐が居た。私を見ると少し止まって永遠にも思える時間が続いたがやがて去ってしまった。私は姉さんが去ったことと重ねてしまう。嗚呼、涙が止められなくなりそうだ。これ以上はもう…辞めよう。私はその場を去った。
〜導キノ灯ハ少女ノ心ニ灯ル〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
家は見つける途中に公園を見つけた。懐かしいな。遊具が少ない小さい公園だけど、桜がとても綺麗に見えた。春はよくここで花見をしたっけ…。
冬だからもちろん桜なんて咲いていなかった。だけどよく見ればつぼみがあるのが分かった。もう直ぐ春だ。桜は直ぐに散ってしまう。まるで、まるで…人の命の様に…。もう辞めよう。とっとと実家に帰ってとっとと大学に戻ろう。
〜別レト出会イハ少女ヲ見ツメル〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
実家に帰るとお母さんとお父さんは私を見て喜んだ。
おかえり、と優しく包み込んでくれる。良い親の元に育ったと実感する。お昼は過ぎ、太陽は沈みかかっていた。この時間帯が私は嫌いだ。お願いだから沈まないでくれ。頼むから、まだ私を照らしていてくれ。姉さん、まだ消えないで。私がそう言ったことを考えていると分かったのかお母さんはカーテンを閉めてくれた。少し早い夕飯を食べながら優しく聞いてきた。
母「やっぱり永の事かしら。」
ゆったりとした安定感のある優しい声。安心するこの声の問いに私はこれまでの経緯を話した。
母「…そう。向き合うと決めたのなら、止める権利は無いわね。…永の部屋に行きなさい。そこに答えはあると思うわ。」
その声に背中を押され私は姉さんの部屋へ歩き始めた。
怖かった。姉さんと向き合うのが怖かった。だから部屋に行くことができなかった。…ドアノブに手をかけた時、私の手は震えていた。それを見てようやく理解した。私は今、怖いと思っている。
深呼吸して、姉さんの部屋に入る。
それは当時の部屋のままで子供らしい人形があったり、教科書にノートに、勉強道具もそのままでランドセルもあった。部屋は整理されておらず、お母さんとお父さんも手をつけていない事が分かった。机にきらりと輝く物があった。近づくとそこにはアメジストが会った。姉さんの瞳と同じ色の宝石。物を欲しがらない姉さんが初めて欲しいと言って買ってもらった宝石。
涙が止まらない。泣いて、泣いて、泣いて。泣き疲れて…。
その宝石は美しく光り輝いていた。姉さんの瞳の様に…
「…い、…い!…零!」
目を開く。でもそこには何も無い暗闇が広がるだけ。夢なのだと理解した。でも聞こえた声は確かに…
「れーい!このお寝坊さんめ!」
楽しそうで優しくて、暖かくて、高い声。後ろを振り返るとそこには姉さんが居た。
「姉、さん」
驚いたがやがて夢だと理解した。都合の良い夢だ。姉さんは居なくなって…
永「零は私に居なくなって欲しかったの?」
零「違っ、」
永「でも零は私が居なくなった事しか見ていないでしょう。優しい友達も親友も皆そこに居るのに貴方は私を探している。」
零「…だって姉さんが、姉さん、が1番、大切だったから…」
永「知ってるよ。ごめんね。さっきのは意地悪だったね。色んな零の気持ち、ちゃんと分かってる。前を向くのが辛い。過去をずっと後悔してしまう。でもさ、零は答えを知ってるでしょ。私は貴方。私はね、知ってるよ。貴方なりの答え。良いと思うよ。きっと、それは貴方にとって最適で美しい答えだから。」
…そっか。答えは直ぐそばにあった。居てくれた。姉さんに手を伸ばす。その手は姉さんに触れ、そして、目が覚めた。
アメジストは今も美しく輝いていた。
〜四個ノ光ハ少女ヲ照ラス〜
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いつもの日常の中。1人の少女がある店から出てきた。その少女のネックレスには紫が光り輝いていた。
過去を振り払える人なんていない。人は過去に縋るのは辞めなさいと言う。けど、それは悪いことなんかじゃない。本当に愛するのなら、信じてみてはどうでしょう。その人は私を愛してくれていたと。苦しくて、つまずいてしまう事もある。そんな時、愛する人は貴方に手を差し伸べ、貴方の背中を押すのではないでしょうか。過去に縋ったって良い。辛い時は振り返れば良い。直ぐそばには愛する人が居る。何回だって振り返って、迷えばいい。愛する人と一緒に進んでいけば良い。
〜二人ノ少女ハ明日へ向カウ〜
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