幻花

夢の中に消えていった、優しく甘い日々。

いつの日の幻を僕は見ていたのでしょう。
偽りのない笑顔を浮かべた優しそうなあなたに
笑い返した。
声をあげて笑い合って、些細なことに喜んで。
色とりどりの花に囲まれながら。
手を伸ばしてあなたに触れようとする、瞬間に壊れてしまう幻だとも知らずに。
きっといつかあの日々に戻れる、また笑い合える未来があると信じていて。
そんな日々は過去にも未来にもない。
作り出した幻だとも知らずに。

言葉で伝わらない想いを誰かを殴って伝えようとして。
殴られる方の想いは誰に伝えればいいのだろう。
現実と幻の境を見失ってしまったようだ。
今いる場所がどこかさえ、たびたび忘れてしまいそうになる。
咲き乱れる幻花に身を包み、美しくなれたなら。
温度のないその瞳に色をつけられたなら。
現実から逃げ出す道を示す道標は、どこにもなくて。

いつかあなたが気づいてくれると信じていた。
心の中にできた傷に、痛みにそっと手を置いてくれると。
あの日夢に見た、あなたの笑顔はいつか現実になると信じていたよ。
何もかもが僕自身が作り出した幻だと気付かなければ。
よ、かった、のにさ。