悪人の正義〜井手畑物語〜
直吉が目を覚ますと、真っ黒な空間にいた。
(ここは、どこだろう?)
全く見覚えのないところだ。戸惑いは不安、心細さに変わった。
「すいません!誰か、いませんか?」
大声で叫んでも、なにも反応がない。声が虚しく、闇に吸い込まれていくだけだ。場所が違うのかと思い、歩いてみることにした。歩きながら、彼は必死に叫んだ。
「お母さん!お母さん!ねえ、どこにいるの?ここは、どこ?ねえ、返事してよ!ねえ!」
それでも、自分の声しか聞こえない。ずっと叫んでいるうちに、とても不安になってとうとう、座り込んで泣き出してしまった。
「ねえー、ここどーこー。さみしいよー!こわいよー!うわーん」
そんなことを叫んでいると、後ろから足音が聞こえた。その足音は、どんどん近づいてくる。直吉は、涙でぐしゃぐしゃに濡れた顔を音のする方に向けた。
そこには、今まで誰もいなかったはずなのに、穏やかな感じの男の人が、心配そうな顔をして立っていた。20代前半くらいだろうか。しかも、その男性は少し見た目が、風変わりな人だった。時代劇でしか見たことがないような格好をしている。怪しさ満点だが、それでも、人に会えたということで、話しかけてみた。
「あ、あの!ここはどこですか?」
すると、その男の人はものすごく悲しそうな顔をして言った。
「すまない。私は、ここがどこなのか知らない。」
「そう、、、だよね。」
直吉がとてもがっかりしたのを見て、男性は隣に座った。普段だったら、知らない人が隣に座られるのは嫌なのに、この男性は、なぜか親近感があった。
「君の名前は?」
急に訪ねられてびっくりしたが、直吉は涙を拭いて、ニッコリして答えた。
「直吉!」
そう答えると、男性は目を見開いて頭を抱えた。
「そうか、そういうことだったのか。ごめん。本当に、ごめん。」
直吉が心配して、声をかけても気が付かないようだった。少しすると落ち着いて、また穏やかな人に戻った。
「すまない。急に取り乱したりして。もう大丈夫。ありがとう。」
そう言うと、男性は控えめに照れているように笑った。直吉も、笑い返した。
すると、直吉は遠くから呼ばれているような気がした。その声は男性にも聞こえているようで、ハッとした顔になった。
「直吉くん。君はもう、戻らなきゃ。」
直吉が、どこに?という質問をする前に、男性が口を開いた。その顔は、とても悲しそうだった。
「いい?この先、どんな事があっても焦るなよ。」
直吉は、男性の言った言葉が全く理解できなかった。その真相を聞こうと思った時には、彼は反対側に歩き出していた。
「ねえ、待ってよ。ねえ」
直吉は必死に追いかけたが、追いつく前に意識がなくなった。
(ここは、どこだろう?)
全く見覚えのないところだ。戸惑いは不安、心細さに変わった。
「すいません!誰か、いませんか?」
大声で叫んでも、なにも反応がない。声が虚しく、闇に吸い込まれていくだけだ。場所が違うのかと思い、歩いてみることにした。歩きながら、彼は必死に叫んだ。
「お母さん!お母さん!ねえ、どこにいるの?ここは、どこ?ねえ、返事してよ!ねえ!」
それでも、自分の声しか聞こえない。ずっと叫んでいるうちに、とても不安になってとうとう、座り込んで泣き出してしまった。
「ねえー、ここどーこー。さみしいよー!こわいよー!うわーん」
そんなことを叫んでいると、後ろから足音が聞こえた。その足音は、どんどん近づいてくる。直吉は、涙でぐしゃぐしゃに濡れた顔を音のする方に向けた。
そこには、今まで誰もいなかったはずなのに、穏やかな感じの男の人が、心配そうな顔をして立っていた。20代前半くらいだろうか。しかも、その男性は少し見た目が、風変わりな人だった。時代劇でしか見たことがないような格好をしている。怪しさ満点だが、それでも、人に会えたということで、話しかけてみた。
「あ、あの!ここはどこですか?」
すると、その男の人はものすごく悲しそうな顔をして言った。
「すまない。私は、ここがどこなのか知らない。」
「そう、、、だよね。」
直吉がとてもがっかりしたのを見て、男性は隣に座った。普段だったら、知らない人が隣に座られるのは嫌なのに、この男性は、なぜか親近感があった。
「君の名前は?」
急に訪ねられてびっくりしたが、直吉は涙を拭いて、ニッコリして答えた。
「直吉!」
そう答えると、男性は目を見開いて頭を抱えた。
「そうか、そういうことだったのか。ごめん。本当に、ごめん。」
直吉が心配して、声をかけても気が付かないようだった。少しすると落ち着いて、また穏やかな人に戻った。
「すまない。急に取り乱したりして。もう大丈夫。ありがとう。」
そう言うと、男性は控えめに照れているように笑った。直吉も、笑い返した。
すると、直吉は遠くから呼ばれているような気がした。その声は男性にも聞こえているようで、ハッとした顔になった。
「直吉くん。君はもう、戻らなきゃ。」
直吉が、どこに?という質問をする前に、男性が口を開いた。その顔は、とても悲しそうだった。
「いい?この先、どんな事があっても焦るなよ。」
直吉は、男性の言った言葉が全く理解できなかった。その真相を聞こうと思った時には、彼は反対側に歩き出していた。
「ねえ、待ってよ。ねえ」
直吉は必死に追いかけたが、追いつく前に意識がなくなった。