これぞ青春(?)
第9章
さて、そこに天井からテカ寮父が降りてきた。
「おいあんたら、食堂は7時半でしまってんだz────」
天井から寮父。破壊された総額4000万円。美しい少女。それに惚れたニワトリ第5軍。鋼なるアホ毛。ねぐせと枝毛。存在感の存在感による存在感のための存在感。白髪団子。とそのぐーぱん。その奥のこぼれかけたラーメンとカレー。を持っている純白服集団。とぷるぷる腕のおばちゃん。
⭐️⭐️⭐️KAOSU!⭐️⭐️⭐️
前回の破壊は「ニワトリガツッコンデキタンダ」「キィヤぶア、あたしコワカッター」「すごく……えとぉ、いいかんじだった⭐️」「ツクエの下にアワッワッテてて隠れたんデえースヨーぉ」「ソウダソウダ、ソウナンダ。シンジテオクラ⭐️」
……といういっせいの言い訳プラス、まわりにアホ毛とせっちゃくりょうと枝毛を見せつけることで繰り出される圧でやり過ごしたが今回は言い逃れられない。
「おい,これを学園長に報告して、飛んでくるくつしたを避けて洗濯するのは誰だと思ってる」
頭を抱えるテカ寮父に、同情の目を向けるあほうども。
そこに5人……とテカ寮父が今1番会いたくない人物。
「……これはなんだ、阿呆ども」
「「「「「え、えへへ…………」」」」」
学園長のおでましである。
テカ寮父が大きなため息をつく。
「えと、あのぉう……か、かんりのもんだい?」
枝毛が指をすり合わせてちらっと寮父を見た。
「ああ!?」
学園長の口から罵詈雑言とくつしたが炸裂した。
どこおおおおおぉぉぉぉぉんっ
天井がくずれる。寮父が餌食になる。無情なことにそばにいた少女5人はそれを見つめるだけ。今度こそ純白の制服にカレーとラーメンをこぼす生徒たち。破片が飛び散る。逃げ惑う生徒たち。地獄絵図。
「「「「「あれまぁー」」」」」
のんきな5人組。
天井に一つの影。
「ふへへへへっ、俺様はこの島を占拠しにきたぜ。死にたくなければ海に逃げて沈みな!」
謎の言葉を放つ大柄の男。特徴として、腕がうめつくされるほどの量がある腕輪のじゃらじゃらが目立つ。
「あ? だれだおめえ」
金髪が物怖じせずに対応する。
アホ毛がさっと金髪の後ろに隠れる。
「んだよ」
「きにするな」
アホ毛は金髪から団子、団子から存在感、と背中を渡りながら移動し、アホ毛を縮ませターザン一式を外に出し、自分がリュックに収納される。そして枝毛に閉めるよう指示して完全に隠れたかったが、小さくしてもアホ毛が入りきらず、アホ毛付きリュックが爆誕した。
枝毛はアホ毛を今までの強気な姿を重ね合わせて不思議に思うが、「年相応」というのと、初めて会ったバラニーちゃんに似ててかぁいいという結論に落ち着いた。
「だぁかぁらぁ、ここからいなくなれっつってんだよ!」
不審者はいらだち気につばを飛ばした。不潔〜。
「は? こっちの質問に答えろやバカ」
「おまえに話す義理はねえっ」
「あー、じゃあこっちも退去する義理はねぇなあ?」
生意気に眉を曲げて顎を上げる金髪。
「ああん? なんだあこの生意気なガキはあ? テメエら教育どうかしてっぞ」
金髪と変な男の問答を背にしてこそこそ逃げる生徒たち。
残ってるのはチーム⭐️くれいじーと、がれきの餌食寮父と無言直立学園長である。
「われ、おじさんはブガイシャだとおもうっ」
「ああ!? だぁれがおじさんだってぇ!?」
「うーん? きみしかいないと思うけどぉ?」
枝毛が悪意のない笑顔(ムカつく笑顔)で男を指さした。
「ぐふ」「おい……」
見る限り不審者と同年代と思われる、なんともいえない学園長と寮父さん。
どうやら流れ弾がクリティカルヒット⭐️したらしい。
「えっとぉ、不法侵入ですよんね?」
「じゃあ逮捕だー。一生牢屋だー」
「は? 死刑だろ」
「え? 井戸の中で3日間逆さ吊りからの七日間ぶっとおし拷問からのごちそうに即死しない程度の猛毒であがいてからの炙り焼きじゃないんですか?」
この島は、4つの国の共有物。それぞれの国から生徒がやってくる。ちなみにどこも個性が弾んでいるので、法律でもなんでも結構違かったりする。
不審者に背を向け、不法侵入の罪の重さについてケンカを始める5人にぷるぷるしだした侵入者。
「おいっ。俺様を放置するんじゃねぇっ」
のんきに振り返る5人。ぷりぷりしてた顔たちが同時にいびつな笑顔へ。
「ちょっとまて、すぐ終わるからな」
「お、おう」
5人によるいびつな笑顔の圧に気圧されたらしい。
そしてまたぷりぷり顔に戻った5人。
「てか一生牢屋ってなんだ。甘すぎだろ」「なっ」「まあ、なんでもいいじゃないですかぁ」「それもそうか」「ふんっべぇええ」「そういやぁ、オレたち朝ごはん食い損ねてるぞ」「あああああああああっ」「ドコカのダレカサンたちがネボウするからー」「ぐはあっ」「ふんっ」「あぁー、寝坊といえば、ばらにいちやんがぁ────」ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ
そうして、不法侵入の罪の重さから朝ごはん、寝坊の責任の押し付け合いとバラニー、そして雲のかたちと海に浸したりんごがおいしー的な話になっていくおしゃべり。
こいつら、買い物かごぶら下げたおばちゃんをも凌駕する話の長さ。そして、置いてけぼりくらった学園長と寮父さんと不法侵入者は、なんか仲間ムードができていた。
★ ★ ★
「あ、あのぉ……そろそろよろしいでしょうか…………」
学園長の腕の高級そうな腕時計の長い針が30周ほど回り、日が沈んでから起き上がってきてちょっと経った頃、そろそろ耐えられなくなった不法侵入者がぺちゃくちゃしてる5人に話しかけた。いや、今までよく耐えたな。
ちなみに敬語なのはずぅっと微妙に噛み合わない話を続けられる彼等への尊敬と呆れと恐怖が現れたのだろう。
後に彼は、「俺様はあのとき、女という生物のもつ『無限おしゃべり機能』というものの真の恐ろしさを知った」と語ることになる。
「あれ、だれですか?」「あ? 学園長だろ」「われもそう思うっ」「っあ、えとおっ、その、コノ扉ハけっしてわれわれガやったわけデハなくテデスね」「……わたしはここにいるが」「ばばばばばばば」「が、学園長がふたりいますぅううう」「ん? どっちだっけ」「われっどっちもしらないっ。げへ」
……憐れむべきは、はりきって派手に登場したのになぜか忘れられている侵入者か、意外と登場頻度多いのに顔覚えられていない学園長か。
「どっちかがニセモノだねぇ」「われ、ふたりはダメだと思うっ」「よし、ニセモノは井戸へぶち込みましょう」「でも、どっちがニセモノかなぁ? お顔忘れちゃったあ」「ふん。どっちもぶち込めば100パー正解だろ」「うむ。それはそう」「んあ? がくえんちょうと、てかっちと、あれ? だれがどれ?」
ん? てかっち?
どうやら一同はオーロラとスフィンクスとばななの関係を話し込んでいる間に侵入者の存在と学園長の顔とお世話をしてくれている人への敬意というものを忘れてしまったようだ。
少女たちは3人のおっさんをじーっと見つめる。誰が誰だったか思い出すように。
と、急にバックの中のやつを含む合計10個の目玉が金髪のスクールバッグからはみ出ている小型爆弾に視線を集める。
「「「え?」」」
哀れムード3名はなんかイヤな予感がして身構える。
「よーっし。みーんなっでいっしょに突っ込ぉめばー」
「「「「どーんっなやつでもこーわくっなぁい」」」」
「みーんなっでいっしょにいーるのっならー」
「「「「いーっしょにみーんなっでバークハーツだーーーっ」」」」
アホ毛付きリュック含む5体の血迷ったくれいじー。そして謎リズム。
「「「「「誰が誰だかぁわかーんなーいならみーんなろーうやにぶーちこーもぉーうっ」」」」」
彼等は結局どっちもぶち込めば100パー正解金髪理論に落ち着いたようだ。
「へいっ」「ていっ」「せうっ」「ぱむ」「ぴぃ」
ぱむぷこおおおおおおおおぉぉぉぉぉんっ
毎回恒例の小規模でありながら爆音の爆弾炸裂である。砂埃がまき散る。
「むふふん」「これで100パーだっ」「げへ」「あれ、今思ったんですけど」
「む?」
「てかっちたち、生きてますかね」
「「「「アッ」」」」
「に、ニセモノを盾に生き残っているはずっ」「われたち、殺人犯っ」「そういやてかっち……」「やべッ」
あわあわしながら迫ってくる砂埃をふぅふぅする。
「「「「「た、たいがく……?」」」」」
そこで、砂埃の上から人影が見える。もさもさしている。
「「「おぉまぁえぇらあああああああッ」」」
『仲間外れにされて、爆発されたよ⭐️ってひとのかわいそうな会』に同時入会した立場の全く違う3名は、『仲間外れにされて、爆発されたよ⭐️ってひとのかわいそうな会』の心情、『立場はそれぞれだけど、苦労はみんなおんなじなんだっ⭐️』に基づき、いっしょに砂埃の中もさもさと立ち上がる。
ちなみにあいつら、
「「「「「アレ、生きてる……?」」」」」
てっきりみんなまとめて殺っちまったと思って墓をほり、(なぜか)遺書と献花を用意していた。
「ふんっこの俺様がこんなボロい爆弾でやられてたまるか」
「頭はもはもになってますよ、学園長(仮)」
「……ぱむ」
侵入者くん自慢のモヒカンヘアがあっという間に黒アフロになってしまったようだ。
そして、【学園長🟰なんか強そう🟰むきむき🟰まんなかにいる】という謎の思考ルートに入っていた5名は学園長とてかっちにはさまれている侵入者を学園長と勘違いしてしまっているようだ。
「……」
次に無言でこめかみをピクピクさせながら今にも「こらー」とか言いそうな顔で侵入者の右に立ち上がったのは、テカ寮父。
「てかっち生きてたー⭐️」
テカ寮父の顔は思い出せたらしい。なぜって? テカってるからさ。
「あれ? じゃあ残ったのがニセモノか」「そうっぽいですねぇ」「われもそう思うっ」「てじょう持ってるぅ」「たいほだ」
……この彼らにどう声をかければいいだろうか。
残っているのは言うまでもなく本物の学園長である。
むくっと立ち上がる人影。
「「げーんこーうはーんたあぁーいほぉーっ」」
どこがとう現行犯なのかいまいちよくわからないが、団子と枝毛が飛びかかる。
取り押さえられて倒れこむ人影。
侵入者の顔を拝もうとするくれいじー・枝毛 と くれいじー・団子。
髪と耳を掴んで顔を見る。
「おー、はんにんってかおー」そして禁句。
「ほんじゃ、てじょうー」からの手錠。
「あ、まて、オレの飯後まわしにさせたバツだ。一発……いや、もう少し……まあ、殴らせろ。今行くから」「われ、バクハツがいいっ」「抜け駆けは駄目ですー」「ばらにーちゃーあああん」「あんまゆらさないで……」遠くからの声援。
「やめえぇいぃいいいっ」
ものすごい形相で、ものすごい力を込めて枝毛と団子の肩を掴んでくる寮父。
「「お?」」
振り返る枝毛と団子。真・学園長から目を離す。一瞬取り押さえている手の力が緩む。
むくっ。
ご自慢の黒スーツは砂埃にまみれ、すっきり短く切りそろえた髪はぐちゃぐちゃに乱れ、獲物を見つけた獣のごとく、目はあり得ないほど見開かれぎらぎらと怖いほど光っている。
「「あ、あば、ばばばばばばばばばばばばば」」
学園長だとはまだ気づいていないようだが、なんかヤバくて自分たちの生死に関わることだけはわかったらしい。めちゃくちゃあせる2名。
そんな顔面蒼白の二人を差し置いて、後で飛びかかろうとしていたアホ毛リュック含む三人はしらーっとして元天井にあったのに地に落ちた落ちこぼれ破片に身を隠し、やらかしたせっかち二人の無事を祈る。
ここで学園長さんの経歴を語ろう。
共和国にあるピーマン生産大手の社長である父の跡を継ぐべく3歳の頃から家に家庭教師を招いての英才教育。と、ピーマン利き教育。10歳にもなると、バレリーナの母を継ぐ(?)べく体操教室、バレー教室に嫌々通い、体が柔らかすぎて生徒のみならず先生にも引かれる。中学に入学すると、空手教室に通い始める(通わされる)。はまりすぎて引かれる。世界チャンピオンが教室に来たとき秒で勝っちゃってなんか気まずくなる。
まあ、こんな学園長である。
1番ぴったりなオチとしては、こいつら全員が完膚なきまでにめこめこにされて、退学コース一直線であるが。
そんで、そんな学園長よりお言葉。
「…………………………ゴフッ」
まあそんなオチを覆しちゃうのがくれいじーってもんである。
「あり? 意外とよわい? しんにゅうはん」
「なんかぼーっとしてたねぇ」
〜学園長、ただいま回想中⭐️〜という中年が青春時代を思い出している大事なときに空気が読めず首チョップした団子。
「形勢ぎゃくてん、このわれには簡単なもの!」
「やったねぇ、しななくてよかったねぇ」
「無事でよかったですぅ……」
「もごごごごごごご、もごぐっ」
「ふん、牢屋にぶちこむぞ」
鼻の下を伸ばしている団子にかけよるアホ毛付き含む四名。
まあオチを覆しても、この5人の退学に拍車をかけただけなのだが。
テカ寮父もどこかの誰かさんたちによる学園長をKOするという奇行に泡吹いて倒れてしまった。
「ありまぁ…………」
「てかっち、倒れちゃいました……」
「まあ、どうにかなるっしょ⭐️」
うん、まあ普通にどうにかならないのだが。というかいまだに顔がこんがらがん。
「うむ、あさめしたべよう」「何でも良いからたべたいです……」「こないだの砂糖菓子だけはやだなあ?」「われ、赤い緑茶のみたいっ」「めんたまやき食べたいんだが」
学園長(偽)を殺人未遂した後ろめたさは心に存在しながらも、お腹の声を無視してはいられない5人であった。
「ま、とにかくこれで、」
「「「「「不審者討伐、完遂⭐️」」」」」
全員で高らかに両腕を突き上げ清々しい顔をする。
そんなこんなで、食堂の天井が粉砕され、まぶしい朝日とうつくしい夕陽ときらめく星空とつややかなニワトリが見えるようになり、入学したての生徒たちは授業を受けることはおろか、食堂で学食をいただくことすらできなくなり、寮父1名気絶、真・学園長は昏倒状態、謎の不審人物がすんばらしき学園長としてまつりあげられるという、なんとも言えないカオスな世界が爆誕したのだった。
間章パートいち
〜食後の運動に噴火を添えて〜
「みなさんこんにちは! 『時系列整理人』を今日は『鶏靴下』がお送りします! 時系列整理人遠方専用レポーターこと、ク・ツシタと申します。わたくしより少々閑話を挟ませていただきます。はい、例の方たちは相性があまりよくない様子で、長い針30周分ほどけんかとかいいあいとかMY理論のおしつけあいとかしてたわけなので、実はもう入学式3日目の14時ごろ……いやあ、まことに尊敬にあたいしm……あ、現地と繋がった模様です!繋いでいただきましょう、ニッワ・トリーさぁん」
「はーい、こちら、グレース島にある、グレース学園です。えー、こちらガサッ、グレース島では、3日ほど前から爆音が定期的になっていると、視聴者であるニワトリ様から報告をいただきました」
「3日前といいますと、グレース学園の入学試験が執り行われた日ですね?」
「ええ、そう記憶しています。そして、その視聴者様曰く、3日前夕刻に噴火が予測されていた『ニワトリ記念ガサッ火山』が、その日の昼前に大きな爆音と共に丸々なガサッくなったそうです」
「それは……噴火したということでしょうか?」
「いえ、我ら『グレース学園を愛してやまない会』が、グレース島の火山の噴火ごときを1分1秒間違ガサうはずがありませんっ。昼前にガッザ予測なんてザッかったです」
「確かにその通りすね」
「えぇガサッ」
「そういえば、火山へはグレース島名物の1つ、『一本橋』を使って向かったんですか?」
「いえ、こちらへはヘリで……『どっこっぉおぉおおん』あ」
「どうされましたっ?」
「『われ、新ガサッ入者2号はっけぇええガサッん』『こんどはわガサッたしも……』『おーいオガサッェ、それどこガサッ繋げてやがる』『ヘリは……部屋に持っガサッこうっ』『ですね。さっきガサッので多少壊ガサッれましたけど』」
「ど、どうされました? トリーさん?」
「『おーおー、食後のガサッ動は大事だぞ』『まだガサッゴハンたべてないっ』『かわいそうだね』『われ、しらんっ』『まあ、ヘリはいガサッだきます』『はーい、てなわけですのんでねー』『まあねー、かえりみちはねえー』
『『『『『グレース島名物、『一本橋』、どうぞご堪能ください』』』』』ブツっ」
……うん、なんやかんや言ってるが、作者たちは現在時刻が入学式3日目の2時であるということを伝えたかったらしい。あとク・ツシタの宣伝も兼ねている(らしい)。
『間章パートいち〜食後の運動に爆発を添えて〜』完。