これぞ青春(?)
「これより第118回、グレース学園中等部入学式をとりおこなう。では、園長より開会の言葉である。心して聞け」
「「「「「「はい」」」」」」
いいへんじ〜。
「あぁいあぁいさぁ〜」「ぜんしょはする」「左に同じー」「ふふふふふふふh」「こぉ〜こ〜ろをぉこぉ〜めぇ〜てぇ〜」
なんか異音が混じっている気がする。
素晴らしい背筋を保ったまま、壇上に園長が上がる。
礼。
ぱさっ。
しゅぱーん。
直れ。
まあ、なんだろう。その、かつらが落ちたり光の速さで回収してたりしてなかったりね。
「うぉっほん、本日は雲ひとつないイイ天気だな、うむ。
であるからして、さっさと寝ろ。ちなみに寮の部屋が使えるようになるのは明日からなので、玄関あたりでで寝るんだな。ふん。以上」
「園長先生、開会であり閉会の言葉ありがとうございました。というわけで、閉会である。はよ寝ろ」
「なお、電気が消えると窓は一切の光を通さず、肉食獣達が昼寝にくるのでお早めに出ることをおすすめいたしまぁす⤴!」
「それからー、授業が始まるのは1週間後でーすっ。りんごでもかじっとけー」
ああ、建物がなんか獣臭いのはそのせいか……。空から視ていた神さまは思った。
あわれなり、入学生よ。
こうして、早朝、というか深夜22時、試験中火山がぶっ飛でにわとりに乗って移動させられて8時間ほど礼拝堂にて待たされた後に執り行われた、真面目なセリフがちっとしかなかった入学式は、開始30秒でお開きとなった。
ちなみに待機時間の8時間には、奥の扉から「やったれい!」「うわ進みすぎー」「6でろ6っ」とかサイコロを振ってる音とかが聞こえていた。
世界がとりあうグレース学園が創立してから118年(仮)。今年も、個性あふれるものたちが入学した。その数、わずか11人(仮)。世界でも有数な個性あふれる問題児の集まる学園、グレース学園に栄光あれ(仮)。
★ ★ ★
グレース島の朝は、ニワトリたちによる「コォッケコッッコォォォオ」────ではなく、奇襲からはじまる。
グレース学園では、グレース島内にあるニワトリ領から連れてこられたものを、学園内で飼育しているのだ。なんでかは知らん。じょうそうきょういくがうんたらせんたらである。
話を戻して、早朝の学園は、毎朝通りに今日も襲撃を受けた。二年から六年の者たちは毎朝来るので慣れているが、一年は何しろ入学1日というか、一応入学5時間である。しかも玄関での雑魚寝。
まあ、結果はみなさまのご想像でドウゾー。
★ ★ ★
朝七時。朝からの訓練を生き延びた生徒達は、食堂へと旅立つ。ちなみにいうと、猛ダッシュで。
入学ほやほやぁ、の一年達は、せんぱいがたの気迫にのせられて一緒に猛ダッシュした。
そして最後のひとりがすごい勢いで入っていったあと、ドアがバタンとしまり、コック帽を被った髭おじちゃんが、鍵を閉めた。
がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん。
数え切れないほどの南京錠が閉まる。
まあ息切れながらも生徒達は全員食堂に入れたように見えたが────例外がいた。新入生の、くだんの5人である。
同じくスペース(玄関)で寝たはずの少女達は、それぞれ食堂の前に繋がる6本の廊下から別々に出てきた。
クソでかい厳重に南京錠をかけられた扉をみて、皆で顔を見合わせ、それからまたクソでかい、厳重に鍵をかけられた扉を見る。
「「「「「…………」」」」」
沈黙。
「「「「「………………」」」」」
そして沈黙。
「「「「「……………………」」」」」
そしてまた沈黙。
「「「「「ぐあぁぁぁぁあっ」」」」」
そして大声。
「もしもーし」「飯のにおいがするんだがあああぁっ?」
「がるるるるる」「ずいぶんお腹がすいてるんですね」「……おなかのおとだったんだ」
そしてまぶしい個性⭐
「よし! ここであったのもなにかの縁! いっしょにいくぞー!」
「「「「いえっさー」」」」
「いっちにっのさぁああんのしぃごぉろくで、しちはちきゅうのっっっじゅういちじゅうにじゅうさんっ」
ぼっこおぉおおおぉぉおおおおおんっ!!!!
轟音。
「「「「「たのもぉぉぉぉう!!!」」」」」
5人はそれぞれにぶん殴ったり爆弾投げたりけっとばしたり、噛みまくりの呪文唱えたりして、『鋼なるアホ毛』の一撃でトドメを刺し鉄製扉&南京錠(総額1200万)は破壊されたのだった。
よくわからんが食堂に入れていた新入生供はひっくり返ってしまった目玉を直そうと必死であったが、それと反対に落ち着いて朝ごはんを食しているせんぱい達。
「おいおいお前ら、そんなんでびびってたら心臓が3日ももたないぜ」
「そうだぞ、食事中でも運動中でもテスト前日であろうと恐竜に追っかけ回されるし」
「抜き打ちだとか言われて朝おきたらほぼ直角の崖のてっぺんでおちかけてるし」「時間厳守だ、5分前行動だとか言って5分前に集合場所と校舎以外爆発するし」
どうやらこの学園はなにからなにまでステキ♡な学校のようだ。
「いやぁ、あたしたちよく会うねぇ」
「そうですね。試験といい今日といい」
「われ、朝ごはんにありつけてよかった!」
「うん。にゅうがくしきといいきょうといい、くれいじー」
「全くだ。なんでじゃがいもがこんなに固いのか」
おなかがでたおばちゃんから鍵をしめたコック帽、ニワトリ、腕がぷるぷるしたおじちゃんによりバケツリレー方式で運ばれてきたカレーを、なんだかんだ仲良く一緒の机で食べている5人。
ちなみに食堂の入り口付近の看板には、
入学おめでたいので、特別げすとにりょうりしてもらいまーす
とかいてある。
そのカレーはにわとりに食べさせると(物理的に)火を吹いて3日寝込むというほどの辛さだ。あと普通にじゃがいもは咀嚼できなくて下手したら窒息する。
なぜこの人たちが普通に食べられているのかは不明だが、きっと、あれだろう、あの、くれいじーは風邪ひかないみたいな理屈だろう。
他の新入生は、まあ、みなさんのご想像どおり、辛さに悶えて床でみっともなくごろごろ転がっている。せんぱいがたに冷めた目で見られている。アア、ナンテアワレナノダロウ。
そして喉の火傷2名、嘔吐2名、窒息未遂2名というかたちでいつも通りの朝は幕を閉じた。
朝8時。
朝ごはんを食べ終わって校庭(じゃんぐる)に集められた一年ズ。
横に整列する彼らの前に、毒々しい紫りんごの木の枝からりんごをかじりながら逆さまにぶら下がって登場した変な人。
「あ、こんちわ。これから1週間、授業がないからチミたちひまなのね。
んで遠足があるんだわ、遠足が。寮の部屋が同じく人たちごとで好きなとこ行っから、行き先自由に決めてにょ。付き添いてぃーちゃーはボク行きたくないから寮部屋ごとの寮母さんといってちょ。あ、ちな、おれっち担任だからたのんますー。じゃあ諸事情あるんでわたすぃ帰るっちょ」
そうして消えてった担任らしき人。最後まで語尾が統一されなかった。
この人は、まだ彼ら1年ズが寮の部屋さえ決まってないことを知ってるのだろうか。
ちなみに諸事情とは先生方が園長の机に直径25センチの広範囲にわたり珈琲を零してしまい、証拠隠滅係と園長足止め係で教職員が総動員しているためである。
そんな訳だが、彼らは担任が遠足付き添い行きたくないと言い出したころにはもう恐竜とたわむれたり昼寝をしたりニワトリに追っかけられたり土に埋もれたり木を燃やしたりと、思い思いに過ごしていたので、脳内は『遠足』『自由』で埋まっていた。
★ ★ ★
入学約初日、お昼すぎ。
寮室とご対面だー。
きっときれいで大きな個室に違いない。なにせ島1個分の学園だ。5分の1くらいは寮室だっていいはずだ。生徒も少ないのだからきっとそうだー。お昼まで我慢してからのご対面だしー。フラグというものを知らない新入生共はそう思ったりして、胸を弾ませながらなっがい廊下をスキップして進む。
するとどうだろう。
スキップしてるんるんと進んできた一階廊下の突き当りには、大人一人がギリ入るくらいのぼろっちい歪んだ木製扉が2つだけ並んでいた。
「ヘーイ!!コンニチワンコソバー!! みんなのお友達解説者兼プランクトンの統率者兼ティラノサウルスで〜す! ここで解説でえーす! ナゼこんなに寮室がぼろっちいのか!
さあ! みなさんは物語冒頭の解説を覚えていらっしゃるでしょうかぁ! そうでぇす! この学園は4つの国がとりあっているのでぇす! どっかの国がのっとったそのときはこの学園なんて取り壊しでぇす! 地下に眠る資源の収穫にジャマだからあぁっ! いつか壊されるものをキレイに作るヒツヨウありますかぁ!? んなのもちろん! はぁい! ありませーん! はぁい、そうですー! お察しの通りぃ、生徒の生活環境なんてぇ、にのつぎいぃっ! フヘヘ、ドンマァーイ!!」
終始ハイテンションで理由を語ったティラノは11人の冷たい視線とナイフ&爆弾によって「デジャヴッ」とか叫びながらまたまた撃沈された。
まあ、そういうことである。
「2つしか1年の寮室はないので、5と6で分かれてくれ。じゃあ、健闘を祈る」
先導していたせんぱいがたの一人が吐き捨てて帰っていく。
生徒たちの口をついて出る言葉はただ一つ。
「……ケチ……」
気落ちした生徒たちはとりあえずグーとパーのへろへろばーあで分かれるやつをやってそれぞれの部屋にのそのそと入っていった。
「「「「「…………」」」」」
こちら、5人部屋の前である。
「縁、だねぇ。いいねぇ」「われ、さわがしいの好きっ」「よくあいますねぇ。試験といい朝といい今といい」「めしいっしょにくっただけ……」「このオレと同じ部屋で過ごせることを感謝しろ」
コイツらである。いやー、個性が光ってマスネ―⭐️
ちなみにこいつらはみんなでちょきをだして一緒になった。決して合わせたわけではない。
まあみなさんも薄々展開が予想できたかもしれませんが、コイツら、同部屋です。
「おい枝毛、ドア開けろ」
「ほいほーい」
ナチュラルにパシられているが、枝毛は無駄のない身のこなしで金髪と他の三人も入れて、最後に自分が入室し、ぱたんとドアを閉め、電流トラップ(アホ毛持参)と、開けたら小火力で爆発する爆弾トラップ(枝毛持参)を仕掛けた。
「んー? それだいじょぶ?」
「ふえ? にわとり来るからこんぐらいしとかなきゃじゃない?」
「ん、そういういみじゃなくて、そのばくだん、」
「わー、われ、べっとはじめてなりい」
「あ゙ー、この部屋時計ねぇーのかー」
「たしかにですね、わたしパクってきます」
ガチャッ。
「「アッ,ヤベ」」
どっっごぉぉぉおぉん。びりびりびりびえい。
枝毛が仕掛けたのは、一旦仕掛けると解く術が無くなる爆弾である。
アホ毛と枝毛たちの汗もむなしく、5人部屋にしては狭い部屋は新入生の入場10秒で爆散した。
「「「「「「はい」」」」」」
いいへんじ〜。
「あぁいあぁいさぁ〜」「ぜんしょはする」「左に同じー」「ふふふふふふふh」「こぉ〜こ〜ろをぉこぉ〜めぇ〜てぇ〜」
なんか異音が混じっている気がする。
素晴らしい背筋を保ったまま、壇上に園長が上がる。
礼。
ぱさっ。
しゅぱーん。
直れ。
まあ、なんだろう。その、かつらが落ちたり光の速さで回収してたりしてなかったりね。
「うぉっほん、本日は雲ひとつないイイ天気だな、うむ。
であるからして、さっさと寝ろ。ちなみに寮の部屋が使えるようになるのは明日からなので、玄関あたりでで寝るんだな。ふん。以上」
「園長先生、開会であり閉会の言葉ありがとうございました。というわけで、閉会である。はよ寝ろ」
「なお、電気が消えると窓は一切の光を通さず、肉食獣達が昼寝にくるのでお早めに出ることをおすすめいたしまぁす⤴!」
「それからー、授業が始まるのは1週間後でーすっ。りんごでもかじっとけー」
ああ、建物がなんか獣臭いのはそのせいか……。空から視ていた神さまは思った。
あわれなり、入学生よ。
こうして、早朝、というか深夜22時、試験中火山がぶっ飛でにわとりに乗って移動させられて8時間ほど礼拝堂にて待たされた後に執り行われた、真面目なセリフがちっとしかなかった入学式は、開始30秒でお開きとなった。
ちなみに待機時間の8時間には、奥の扉から「やったれい!」「うわ進みすぎー」「6でろ6っ」とかサイコロを振ってる音とかが聞こえていた。
世界がとりあうグレース学園が創立してから118年(仮)。今年も、個性あふれるものたちが入学した。その数、わずか11人(仮)。世界でも有数な個性あふれる問題児の集まる学園、グレース学園に栄光あれ(仮)。
★ ★ ★
グレース島の朝は、ニワトリたちによる「コォッケコッッコォォォオ」────ではなく、奇襲からはじまる。
グレース学園では、グレース島内にあるニワトリ領から連れてこられたものを、学園内で飼育しているのだ。なんでかは知らん。じょうそうきょういくがうんたらせんたらである。
話を戻して、早朝の学園は、毎朝通りに今日も襲撃を受けた。二年から六年の者たちは毎朝来るので慣れているが、一年は何しろ入学1日というか、一応入学5時間である。しかも玄関での雑魚寝。
まあ、結果はみなさまのご想像でドウゾー。
★ ★ ★
朝七時。朝からの訓練を生き延びた生徒達は、食堂へと旅立つ。ちなみにいうと、猛ダッシュで。
入学ほやほやぁ、の一年達は、せんぱいがたの気迫にのせられて一緒に猛ダッシュした。
そして最後のひとりがすごい勢いで入っていったあと、ドアがバタンとしまり、コック帽を被った髭おじちゃんが、鍵を閉めた。
がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん。
数え切れないほどの南京錠が閉まる。
まあ息切れながらも生徒達は全員食堂に入れたように見えたが────例外がいた。新入生の、くだんの5人である。
同じくスペース(玄関)で寝たはずの少女達は、それぞれ食堂の前に繋がる6本の廊下から別々に出てきた。
クソでかい厳重に南京錠をかけられた扉をみて、皆で顔を見合わせ、それからまたクソでかい、厳重に鍵をかけられた扉を見る。
「「「「「…………」」」」」
沈黙。
「「「「「………………」」」」」
そして沈黙。
「「「「「……………………」」」」」
そしてまた沈黙。
「「「「「ぐあぁぁぁぁあっ」」」」」
そして大声。
「もしもーし」「飯のにおいがするんだがあああぁっ?」
「がるるるるる」「ずいぶんお腹がすいてるんですね」「……おなかのおとだったんだ」
そしてまぶしい個性⭐
「よし! ここであったのもなにかの縁! いっしょにいくぞー!」
「「「「いえっさー」」」」
「いっちにっのさぁああんのしぃごぉろくで、しちはちきゅうのっっっじゅういちじゅうにじゅうさんっ」
ぼっこおぉおおおぉぉおおおおおんっ!!!!
轟音。
「「「「「たのもぉぉぉぉう!!!」」」」」
5人はそれぞれにぶん殴ったり爆弾投げたりけっとばしたり、噛みまくりの呪文唱えたりして、『鋼なるアホ毛』の一撃でトドメを刺し鉄製扉&南京錠(総額1200万)は破壊されたのだった。
よくわからんが食堂に入れていた新入生供はひっくり返ってしまった目玉を直そうと必死であったが、それと反対に落ち着いて朝ごはんを食しているせんぱい達。
「おいおいお前ら、そんなんでびびってたら心臓が3日ももたないぜ」
「そうだぞ、食事中でも運動中でもテスト前日であろうと恐竜に追っかけ回されるし」
「抜き打ちだとか言われて朝おきたらほぼ直角の崖のてっぺんでおちかけてるし」「時間厳守だ、5分前行動だとか言って5分前に集合場所と校舎以外爆発するし」
どうやらこの学園はなにからなにまでステキ♡な学校のようだ。
「いやぁ、あたしたちよく会うねぇ」
「そうですね。試験といい今日といい」
「われ、朝ごはんにありつけてよかった!」
「うん。にゅうがくしきといいきょうといい、くれいじー」
「全くだ。なんでじゃがいもがこんなに固いのか」
おなかがでたおばちゃんから鍵をしめたコック帽、ニワトリ、腕がぷるぷるしたおじちゃんによりバケツリレー方式で運ばれてきたカレーを、なんだかんだ仲良く一緒の机で食べている5人。
ちなみに食堂の入り口付近の看板には、
入学おめでたいので、特別げすとにりょうりしてもらいまーす
とかいてある。
そのカレーはにわとりに食べさせると(物理的に)火を吹いて3日寝込むというほどの辛さだ。あと普通にじゃがいもは咀嚼できなくて下手したら窒息する。
なぜこの人たちが普通に食べられているのかは不明だが、きっと、あれだろう、あの、くれいじーは風邪ひかないみたいな理屈だろう。
他の新入生は、まあ、みなさんのご想像どおり、辛さに悶えて床でみっともなくごろごろ転がっている。せんぱいがたに冷めた目で見られている。アア、ナンテアワレナノダロウ。
そして喉の火傷2名、嘔吐2名、窒息未遂2名というかたちでいつも通りの朝は幕を閉じた。
朝8時。
朝ごはんを食べ終わって校庭(じゃんぐる)に集められた一年ズ。
横に整列する彼らの前に、毒々しい紫りんごの木の枝からりんごをかじりながら逆さまにぶら下がって登場した変な人。
「あ、こんちわ。これから1週間、授業がないからチミたちひまなのね。
んで遠足があるんだわ、遠足が。寮の部屋が同じく人たちごとで好きなとこ行っから、行き先自由に決めてにょ。付き添いてぃーちゃーはボク行きたくないから寮部屋ごとの寮母さんといってちょ。あ、ちな、おれっち担任だからたのんますー。じゃあ諸事情あるんでわたすぃ帰るっちょ」
そうして消えてった担任らしき人。最後まで語尾が統一されなかった。
この人は、まだ彼ら1年ズが寮の部屋さえ決まってないことを知ってるのだろうか。
ちなみに諸事情とは先生方が園長の机に直径25センチの広範囲にわたり珈琲を零してしまい、証拠隠滅係と園長足止め係で教職員が総動員しているためである。
そんな訳だが、彼らは担任が遠足付き添い行きたくないと言い出したころにはもう恐竜とたわむれたり昼寝をしたりニワトリに追っかけられたり土に埋もれたり木を燃やしたりと、思い思いに過ごしていたので、脳内は『遠足』『自由』で埋まっていた。
★ ★ ★
入学約初日、お昼すぎ。
寮室とご対面だー。
きっときれいで大きな個室に違いない。なにせ島1個分の学園だ。5分の1くらいは寮室だっていいはずだ。生徒も少ないのだからきっとそうだー。お昼まで我慢してからのご対面だしー。フラグというものを知らない新入生共はそう思ったりして、胸を弾ませながらなっがい廊下をスキップして進む。
するとどうだろう。
スキップしてるんるんと進んできた一階廊下の突き当りには、大人一人がギリ入るくらいのぼろっちい歪んだ木製扉が2つだけ並んでいた。
「ヘーイ!!コンニチワンコソバー!! みんなのお友達解説者兼プランクトンの統率者兼ティラノサウルスで〜す! ここで解説でえーす! ナゼこんなに寮室がぼろっちいのか!
さあ! みなさんは物語冒頭の解説を覚えていらっしゃるでしょうかぁ! そうでぇす! この学園は4つの国がとりあっているのでぇす! どっかの国がのっとったそのときはこの学園なんて取り壊しでぇす! 地下に眠る資源の収穫にジャマだからあぁっ! いつか壊されるものをキレイに作るヒツヨウありますかぁ!? んなのもちろん! はぁい! ありませーん! はぁい、そうですー! お察しの通りぃ、生徒の生活環境なんてぇ、にのつぎいぃっ! フヘヘ、ドンマァーイ!!」
終始ハイテンションで理由を語ったティラノは11人の冷たい視線とナイフ&爆弾によって「デジャヴッ」とか叫びながらまたまた撃沈された。
まあ、そういうことである。
「2つしか1年の寮室はないので、5と6で分かれてくれ。じゃあ、健闘を祈る」
先導していたせんぱいがたの一人が吐き捨てて帰っていく。
生徒たちの口をついて出る言葉はただ一つ。
「……ケチ……」
気落ちした生徒たちはとりあえずグーとパーのへろへろばーあで分かれるやつをやってそれぞれの部屋にのそのそと入っていった。
「「「「「…………」」」」」
こちら、5人部屋の前である。
「縁、だねぇ。いいねぇ」「われ、さわがしいの好きっ」「よくあいますねぇ。試験といい朝といい今といい」「めしいっしょにくっただけ……」「このオレと同じ部屋で過ごせることを感謝しろ」
コイツらである。いやー、個性が光ってマスネ―⭐️
ちなみにこいつらはみんなでちょきをだして一緒になった。決して合わせたわけではない。
まあみなさんも薄々展開が予想できたかもしれませんが、コイツら、同部屋です。
「おい枝毛、ドア開けろ」
「ほいほーい」
ナチュラルにパシられているが、枝毛は無駄のない身のこなしで金髪と他の三人も入れて、最後に自分が入室し、ぱたんとドアを閉め、電流トラップ(アホ毛持参)と、開けたら小火力で爆発する爆弾トラップ(枝毛持参)を仕掛けた。
「んー? それだいじょぶ?」
「ふえ? にわとり来るからこんぐらいしとかなきゃじゃない?」
「ん、そういういみじゃなくて、そのばくだん、」
「わー、われ、べっとはじめてなりい」
「あ゙ー、この部屋時計ねぇーのかー」
「たしかにですね、わたしパクってきます」
ガチャッ。
「「アッ,ヤベ」」
どっっごぉぉぉおぉん。びりびりびりびえい。
枝毛が仕掛けたのは、一旦仕掛けると解く術が無くなる爆弾である。
アホ毛と枝毛たちの汗もむなしく、5人部屋にしては狭い部屋は新入生の入場10秒で爆散した。