これぞ青春(?)
「ニワトリサバイバル、スタート!!!!!!」
『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!』
────ことは、一時間前に遡る。
大きな大きなどこまでも広がってゆくおおきく自然豊かな草原……
もとい、大きな大きなどこまでも広がってゆく校庭には、主に十代と思われる少年少女たちが続々と集まってきていた。
彼等の少し、いやけっこう奥には、洋風のでっかい校舎がみえる。
そして、そんなステキなところへやってきた彼らの共通点といえば
─────命の危機にあることだった。
汗ぐっしょりで膝に手をついているものもいれば、腰を抜かした様子で木陰に倒れ込んでいるもの、なんなら白目をむきながらブリッジしてる奴もいる。
なにせ、彼らは約700kmのぐらぐらで今にも壊れそうな橋を恐竜に追いかけられ、
魚に噛みつかれそうになり、
橋から落ちて泳いだり魚に噛みつかれたり
ピラニアやら人魚やらを発見したりして、やっとの思いでここにたどり着いたのだから。
これぞ、離島の難点である⭐️
そしてまあ、命も危うい状況をたえ抜いた彼らをこれから待ち構えているのは、おいしい焼き鳥
────ではなく、凶暴族なるにわとりである。
なぜなら、空から降ってきた壇上に上がる高級黒スーツに身を包んだ偉そうな人物がマイクを持つからだ(?)
「ごほん。私はこのグレース学園の学園長である。今からわが校の入学試験が始まる。
その名も────『ニワトリサバイバル』。
グレース島の土地の二割を占めるニワトリのことは知っているな?
その二割の土地の中でお前たちには三日間過ごしてもらう。
そこで最後まで残ったのが合格だ。なお、リタイアも可。
さあ、そこのトンネルを通ってサバイバルへ移動しろ」
そんなわけだが、ほとんどの人々は驚きのあまり腰が抜けていたり、早々に絶望して海に美しくダイビングして逃げていたり、ニワトリにアレルギー反応を示しておでこと土踏まずが赤く腫れたりしていた。
んが、数台のヘリコプターがどこからともなくやってきて、
「ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーーン」と嫌な音をたててぐるぐる回る刃物────チェーンソーが空から降り注いだ。
「チェーンソーだー! 逃げぐぼあー!」
男子のすぐ横にチェーンソーが突き刺さった。
「ヘイ! コンニチワンコソバ! みんなのお友達兼解説者兼プランクトンの統率者兼ティラノサウルスで〜す! 気軽にティラノって呼んでね〜〜〜〜〜〜〜〜〜! フギョッ……」
急に気球に乗って現れた謎の人物は受験者からのつめた〜い視線と投げ込まれたナイフ&爆弾により沈黙した。
ちなみにその間にもチェーンソーは降り注いでいたが、死体は一つもない。
どうやら(なぜか)、人に当たらない構造になっているようだ。
いや、受験生に当たったら学園の存続と園長の生死に関わることになる。
まあ、受験生らは気づいていないようだが。
そして最終的には海に飛び込んだものも腰が抜けたものも学園長お手製の圧縮機によって漏れなく全員、試験会場に連行された。
そして、今に至る。
グレース島名物の凶暴ニワトリ族。
これこそがグレース学園の入学希望者が毎年一万人以上いるのにも関わらず、実際に入学できるものが20人にも及ばない現象の元凶である。
なにせ、見渡す限りの大草原に、一億はいるだろうニワトリ。
ましてや、凶暴であるその結果──。
「ギャーーーー」
「コケッ」
「コケーコケー」
「があああああ「コルッケ~⭐️」ああああああああっ」
……うん。まあ、とにかく凶暴で、集団による一方的な暴力(脱毛)。
ニワトリサロンの開店である。
皆ニワトリに襲撃(脱毛)されて悲鳴をあげていた。
──────例外五名を除き。
一人目『枝毛』
「ニワトリサバイバル、スタート!!!」
一歩足を踏み出した枝毛の多い茶髪の少女は、
「うーん。困ったなぁ……あたしはニワトリよりも犬派なんだけど………………
あのねー、うちのバラニーちゃんはさあ、最初来た時はすごい大人しくて隅っこに居たんだけどね、半年くらいしたら体にすりすりしてくるし、
ティッシュいっぱい出したり、りんごとぱいなっぷるとくれよんをカレーにいれたり悪戯ばっかりするしでね、困ることもある……
いや! 困ってない! 可愛いんだよ! ほんとに可愛いんだからっ! んぅあぁ、ばぁらぁにぃちゃぁあああああんっ」
ニワトリにぐだぐだと惚気を聞かせるのんきなやつであった。
「ま、不平等は良くないよね。うん。まあニワトリだって可愛いし。バラニーちゃんよかおとるけどー」
そして、十数匹やってきたニワトリたちの先頭を走っていたニワトリに
───────────抱きついた。
「うーん、あなた、いいね。毛が長くてフサフサだあ」
唖然としているニワトリを置いて、次に飛びかかってくるニワトリもひょいっと軽く抱きとめる。
「うーん。今度のきみ、ちょっとふとってない? 気のせい? あたしどっちでもいいんだけどねぇ。あーこっちはなんか禿げてるよ?
家族喧嘩でもしたの? いやぁ、あたしが言うのもなんだけど、家族間は仲良いほうがいいよぉ」
愛でられにくる……もとい、襲いかかってくるニワトリを次々と抱っこして延々と愛でながら進出する枝毛の少女であった。
二人目『団子』
「ニワトリサバイバル(以下略)」
頭の右上に雑な団子をつくったおちゃめスタイルの白髪おてんば少女は一歩を踏み出す。
「おぉ〜!! こんな大量のニワトリ、初めて! わっしょおおいっ」
これまたのんきかつ意味不明なリアクションである。
そして彼女は少年Aくん(仮)を追いかけているニワトリを見て、
「ほへー。向こうは楽しそう……っと」
少しズレたリアクションを見せ、何やら耳に手をあてて耳を澄まし、
「うぅぐるうるーーーーああ! 良いことを思いついたぜい!」
乙女らしからぬ声でうめき、何やら悪そうな顔をすると、「コケーコケー」と自分に向かってくるニワトリに向かい合い──────鳴き出した。
「コケッ! コケッ!」
すると、まるでお化け屋敷でいつの間にか姉に置いて行かれた妹のような形相で向かってくるニワトリたちが、
まるで頑張ってひとりでお化け屋敷を切り抜け出たところでポップコーンを買っている姉を発見した時のようなブレーキをふみ、
まるで姉に「はい、ブロッコリー&ブルウハインータワイ味のポップコーンよ」といわれたかのように不思議そうに少女を見る。
目を向けられた少女は、ちょうど近くを通りかかったニワトリから逃げ惑っている少年を指差し、また鳴き出す。
「コケッコケコっケッコケー!」
すると、ニワトリたちが一斉に振り向き、少年を見ると、少女に「コケッコ?」と尋ねた(?)。
少女はコクリと頷く。そしてニワトリたちの先頭に立って、「コケーッ」と鳴く。
二ワトリたちが「コケー」と鳴き返すのを見ると、少女は四つん這いになって少年めがけて走っていく。
「え? え……。ん? 人??? ニワトリィ? グギャアーーーーーーーーーッ!」
「カランカラーン。いらっしゃいませー」
ターゲットにされた少年はニワトリサロンに来店した。ちなみにニワトリサロンは脱毛コース一筋。哀れなり、少年よ。
次々と他の受験者を脱落させていく、オチャメな少女であった。
3人目『存在感激薄子』
「ニワトリサ(以下略)」
何百人という少年少女が駆けていく中、なぜか力なく地面に倒れ伏していた、一歩どころか三十歩も遅れて足を踏み出したのは、異常に長いくせにさらさらな蒼い髪を一つに結った少女だ。
そんな少女のもとにも、スタートから百メートルほど進んだところで、奴らは来る。
「コケーコケーコケーッ!」
そう、皆さんご存知ニワトリである。
想定外の速度で進んできたニワトリを見て、少女は絶句する。
言葉が口から出てこない。
「リタイア」の一言を言えば上空から檻が降ってきてニワトリを捕獲するが、のどに突っかかって言葉が出てこない。
ああ、大したこともなかった平々凡々な人生だった……まさかニワトリ大群に踏み潰されて圧死なんて、なんてむなしいのだろう……。
とかとか考えながら、そろそろ彼女は死後の世界の手続きやら暮らしについて真面目に考え始めた。
生存本能が「死んだふりをしろ!」とか「息を止めろ!」とか叫んでいるが、聞こえない。
彼女の脳内にあるのは、身一つなのに三途の川を渡る料金をいかにして払うかということだけだ。約三秒かかって渡れずにさまよい始めた時、貯金箱から持っていけば良いと納得した。
だが、現実はそう簡単には行かない。ニワトリたちが目前に迫る。
ちょうど少女のもとにニワトリが到達するとき、思わず、少女は頭を抱えてしゃがみこんだ。
もうだめだ……さよなら人生……こんにちはエンマ様……とか思っていると────。
ニワトリたちは少女に飛びかかり────いや、『飛び越えて』いった。
そう、彼ら(ニワトリたち)が目指していたのは彼女の数十メートル後ろで逃げ惑っていた他の少年だった。
「え? どういうこと?」
ここで、簡単に説明しよう。
まず、ニワトリが少女を襲わなかったのには、2つの理由がある。
1つ目は、この島のニワトリの目はほとんどみえず、その代わりに優れた嗅覚で匂いを嗅ぐことで物を認識していた。
では、なぜ彼女は匂い気づかれなかったのか。それが2つめだ。
それは、少女の行動のおかげといえる。
少女が朝寝坊し、寝ぼけたはずみで百キロメートルの橋の前でコケまくり(概数五百回)、スタート直前でも気づかずに他の参加者にぶつかられずっこけたおかげなのだ。
気づいた人もいるだろうが、そんな彼女には土や木の匂いがこびりついているのである。
そしてまあ、触れないでおいたのだが、彼女の存在感はかなり薄い。
これらの情報からわかるだろう?わかるよね〜?
今まで、不透明度7%くらいはあった彼女がニワトリにとっての不透明度が完全になくなる、つまり透明人間も同然になったということ!(?)
(もともとない)存在感を消し、サバイバル場内を堂々と(やけくそに)闊歩する少女であった。
『鋼なるアホ毛&アホ毛』
「ニワトリ(以下略)」
老(?)若男女、数いる受験者の中でも小学校低学年ほどの身長で、おそらく年齢も最年少と言えるその少
女。
彼女は数十メートル進んだところで「ここっけるぅうーコケーっ」と奇声を上げるニワトリが襲いかかってくると、十メートルほどニワトリが離れているのにも関わらず
────頭を振りかぶった。頭突きでもするつもりだろうか。それにしては遠すぎる。
他に気になるところと言えば、彼女の頭に生えている、デカくて鋼のようにテカっているアホ毛だけだが。
次の瞬間、ゴツンと鈍器で殴るような鈍い音がした。その音を筆頭に次々とニワトリの数、鈍い音が続く。
彼女は頭突きをしたのか、否、そうではない。
ニワトリを見ると気絶してるのか、ひっくり返って足をピクピクさせている。
もしかしたらきれいな青空見ようとしたら白目になっちゃって見れない現象だろうか。
そして、にまっ、と年相応な可愛らしいどや顔を決める彼女の頭からいつの間にやら消えていたアホ毛がひょっこり生えてきた。
一体何が起きたのだろうか。
まあ、簡単に言うとこうだ。
①彼女の頭に生えていたのは、みなさんご存知アホ毛である。
②そのアホ毛は長さ、硬さともに自由自在である。
③彼女は今、そのアホ毛を使い、硬さ、長さともに最大の強度にしひょっこりぶっと飛ばしてニワトリたちを一網打尽にした。
以上、手順は3つだけ。どうぞお試しあれ。
五人目『金髪美』
「以下略」
とてもこの世のものとは思えないほど美しい顔立ちをした少女は、走って駆けていく周りの受験者と違いのこのこと、これこれこれまたまたまた呑気に歩いていた。
うん、余裕があるってイイね⭐
そして他の少年少女同様、しばらく進むとニワトリの集団が走ってきた。
美なる少女に向かって駆けていたニワトリ達は、まあ早い話、彼女の数メートル前で突然気絶した。
なにやら頭から蒸気をだして、幸せそうな顔である。
彼女それほどまでに、彼女は美しい✨️
まあ目は見えないが、彼女は輝きすぎてしまったんだろう。
少女は、いつの間にか現れて勝手に倒れたニワトリを、甘いわさびをみるような目で振り返る。
「ん? なんだテメェら」
わぁお。見た目によらず、結構なお口である。
「ふん、オレの美しさにほれぼれして気絶したって?」
事実である、いや、事実ではあるがなんか違う。
まあ、にんげん、こせいはあるものさ⭐
『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!』
────ことは、一時間前に遡る。
大きな大きなどこまでも広がってゆくおおきく自然豊かな草原……
もとい、大きな大きなどこまでも広がってゆく校庭には、主に十代と思われる少年少女たちが続々と集まってきていた。
彼等の少し、いやけっこう奥には、洋風のでっかい校舎がみえる。
そして、そんなステキなところへやってきた彼らの共通点といえば
─────命の危機にあることだった。
汗ぐっしょりで膝に手をついているものもいれば、腰を抜かした様子で木陰に倒れ込んでいるもの、なんなら白目をむきながらブリッジしてる奴もいる。
なにせ、彼らは約700kmのぐらぐらで今にも壊れそうな橋を恐竜に追いかけられ、
魚に噛みつかれそうになり、
橋から落ちて泳いだり魚に噛みつかれたり
ピラニアやら人魚やらを発見したりして、やっとの思いでここにたどり着いたのだから。
これぞ、離島の難点である⭐️
そしてまあ、命も危うい状況をたえ抜いた彼らをこれから待ち構えているのは、おいしい焼き鳥
────ではなく、凶暴族なるにわとりである。
なぜなら、空から降ってきた壇上に上がる高級黒スーツに身を包んだ偉そうな人物がマイクを持つからだ(?)
「ごほん。私はこのグレース学園の学園長である。今からわが校の入学試験が始まる。
その名も────『ニワトリサバイバル』。
グレース島の土地の二割を占めるニワトリのことは知っているな?
その二割の土地の中でお前たちには三日間過ごしてもらう。
そこで最後まで残ったのが合格だ。なお、リタイアも可。
さあ、そこのトンネルを通ってサバイバルへ移動しろ」
そんなわけだが、ほとんどの人々は驚きのあまり腰が抜けていたり、早々に絶望して海に美しくダイビングして逃げていたり、ニワトリにアレルギー反応を示しておでこと土踏まずが赤く腫れたりしていた。
んが、数台のヘリコプターがどこからともなくやってきて、
「ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーーン」と嫌な音をたててぐるぐる回る刃物────チェーンソーが空から降り注いだ。
「チェーンソーだー! 逃げぐぼあー!」
男子のすぐ横にチェーンソーが突き刺さった。
「ヘイ! コンニチワンコソバ! みんなのお友達兼解説者兼プランクトンの統率者兼ティラノサウルスで〜す! 気軽にティラノって呼んでね〜〜〜〜〜〜〜〜〜! フギョッ……」
急に気球に乗って現れた謎の人物は受験者からのつめた〜い視線と投げ込まれたナイフ&爆弾により沈黙した。
ちなみにその間にもチェーンソーは降り注いでいたが、死体は一つもない。
どうやら(なぜか)、人に当たらない構造になっているようだ。
いや、受験生に当たったら学園の存続と園長の生死に関わることになる。
まあ、受験生らは気づいていないようだが。
そして最終的には海に飛び込んだものも腰が抜けたものも学園長お手製の圧縮機によって漏れなく全員、試験会場に連行された。
そして、今に至る。
グレース島名物の凶暴ニワトリ族。
これこそがグレース学園の入学希望者が毎年一万人以上いるのにも関わらず、実際に入学できるものが20人にも及ばない現象の元凶である。
なにせ、見渡す限りの大草原に、一億はいるだろうニワトリ。
ましてや、凶暴であるその結果──。
「ギャーーーー」
「コケッ」
「コケーコケー」
「があああああ「コルッケ~⭐️」ああああああああっ」
……うん。まあ、とにかく凶暴で、集団による一方的な暴力(脱毛)。
ニワトリサロンの開店である。
皆ニワトリに襲撃(脱毛)されて悲鳴をあげていた。
──────例外五名を除き。
一人目『枝毛』
「ニワトリサバイバル、スタート!!!」
一歩足を踏み出した枝毛の多い茶髪の少女は、
「うーん。困ったなぁ……あたしはニワトリよりも犬派なんだけど………………
あのねー、うちのバラニーちゃんはさあ、最初来た時はすごい大人しくて隅っこに居たんだけどね、半年くらいしたら体にすりすりしてくるし、
ティッシュいっぱい出したり、りんごとぱいなっぷるとくれよんをカレーにいれたり悪戯ばっかりするしでね、困ることもある……
いや! 困ってない! 可愛いんだよ! ほんとに可愛いんだからっ! んぅあぁ、ばぁらぁにぃちゃぁあああああんっ」
ニワトリにぐだぐだと惚気を聞かせるのんきなやつであった。
「ま、不平等は良くないよね。うん。まあニワトリだって可愛いし。バラニーちゃんよかおとるけどー」
そして、十数匹やってきたニワトリたちの先頭を走っていたニワトリに
───────────抱きついた。
「うーん、あなた、いいね。毛が長くてフサフサだあ」
唖然としているニワトリを置いて、次に飛びかかってくるニワトリもひょいっと軽く抱きとめる。
「うーん。今度のきみ、ちょっとふとってない? 気のせい? あたしどっちでもいいんだけどねぇ。あーこっちはなんか禿げてるよ?
家族喧嘩でもしたの? いやぁ、あたしが言うのもなんだけど、家族間は仲良いほうがいいよぉ」
愛でられにくる……もとい、襲いかかってくるニワトリを次々と抱っこして延々と愛でながら進出する枝毛の少女であった。
二人目『団子』
「ニワトリサバイバル(以下略)」
頭の右上に雑な団子をつくったおちゃめスタイルの白髪おてんば少女は一歩を踏み出す。
「おぉ〜!! こんな大量のニワトリ、初めて! わっしょおおいっ」
これまたのんきかつ意味不明なリアクションである。
そして彼女は少年Aくん(仮)を追いかけているニワトリを見て、
「ほへー。向こうは楽しそう……っと」
少しズレたリアクションを見せ、何やら耳に手をあてて耳を澄まし、
「うぅぐるうるーーーーああ! 良いことを思いついたぜい!」
乙女らしからぬ声でうめき、何やら悪そうな顔をすると、「コケーコケー」と自分に向かってくるニワトリに向かい合い──────鳴き出した。
「コケッ! コケッ!」
すると、まるでお化け屋敷でいつの間にか姉に置いて行かれた妹のような形相で向かってくるニワトリたちが、
まるで頑張ってひとりでお化け屋敷を切り抜け出たところでポップコーンを買っている姉を発見した時のようなブレーキをふみ、
まるで姉に「はい、ブロッコリー&ブルウハインータワイ味のポップコーンよ」といわれたかのように不思議そうに少女を見る。
目を向けられた少女は、ちょうど近くを通りかかったニワトリから逃げ惑っている少年を指差し、また鳴き出す。
「コケッコケコっケッコケー!」
すると、ニワトリたちが一斉に振り向き、少年を見ると、少女に「コケッコ?」と尋ねた(?)。
少女はコクリと頷く。そしてニワトリたちの先頭に立って、「コケーッ」と鳴く。
二ワトリたちが「コケー」と鳴き返すのを見ると、少女は四つん這いになって少年めがけて走っていく。
「え? え……。ん? 人??? ニワトリィ? グギャアーーーーーーーーーッ!」
「カランカラーン。いらっしゃいませー」
ターゲットにされた少年はニワトリサロンに来店した。ちなみにニワトリサロンは脱毛コース一筋。哀れなり、少年よ。
次々と他の受験者を脱落させていく、オチャメな少女であった。
3人目『存在感激薄子』
「ニワトリサ(以下略)」
何百人という少年少女が駆けていく中、なぜか力なく地面に倒れ伏していた、一歩どころか三十歩も遅れて足を踏み出したのは、異常に長いくせにさらさらな蒼い髪を一つに結った少女だ。
そんな少女のもとにも、スタートから百メートルほど進んだところで、奴らは来る。
「コケーコケーコケーッ!」
そう、皆さんご存知ニワトリである。
想定外の速度で進んできたニワトリを見て、少女は絶句する。
言葉が口から出てこない。
「リタイア」の一言を言えば上空から檻が降ってきてニワトリを捕獲するが、のどに突っかかって言葉が出てこない。
ああ、大したこともなかった平々凡々な人生だった……まさかニワトリ大群に踏み潰されて圧死なんて、なんてむなしいのだろう……。
とかとか考えながら、そろそろ彼女は死後の世界の手続きやら暮らしについて真面目に考え始めた。
生存本能が「死んだふりをしろ!」とか「息を止めろ!」とか叫んでいるが、聞こえない。
彼女の脳内にあるのは、身一つなのに三途の川を渡る料金をいかにして払うかということだけだ。約三秒かかって渡れずにさまよい始めた時、貯金箱から持っていけば良いと納得した。
だが、現実はそう簡単には行かない。ニワトリたちが目前に迫る。
ちょうど少女のもとにニワトリが到達するとき、思わず、少女は頭を抱えてしゃがみこんだ。
もうだめだ……さよなら人生……こんにちはエンマ様……とか思っていると────。
ニワトリたちは少女に飛びかかり────いや、『飛び越えて』いった。
そう、彼ら(ニワトリたち)が目指していたのは彼女の数十メートル後ろで逃げ惑っていた他の少年だった。
「え? どういうこと?」
ここで、簡単に説明しよう。
まず、ニワトリが少女を襲わなかったのには、2つの理由がある。
1つ目は、この島のニワトリの目はほとんどみえず、その代わりに優れた嗅覚で匂いを嗅ぐことで物を認識していた。
では、なぜ彼女は匂い気づかれなかったのか。それが2つめだ。
それは、少女の行動のおかげといえる。
少女が朝寝坊し、寝ぼけたはずみで百キロメートルの橋の前でコケまくり(概数五百回)、スタート直前でも気づかずに他の参加者にぶつかられずっこけたおかげなのだ。
気づいた人もいるだろうが、そんな彼女には土や木の匂いがこびりついているのである。
そしてまあ、触れないでおいたのだが、彼女の存在感はかなり薄い。
これらの情報からわかるだろう?わかるよね〜?
今まで、不透明度7%くらいはあった彼女がニワトリにとっての不透明度が完全になくなる、つまり透明人間も同然になったということ!(?)
(もともとない)存在感を消し、サバイバル場内を堂々と(やけくそに)闊歩する少女であった。
『鋼なるアホ毛&アホ毛』
「ニワトリ(以下略)」
老(?)若男女、数いる受験者の中でも小学校低学年ほどの身長で、おそらく年齢も最年少と言えるその少
女。
彼女は数十メートル進んだところで「ここっけるぅうーコケーっ」と奇声を上げるニワトリが襲いかかってくると、十メートルほどニワトリが離れているのにも関わらず
────頭を振りかぶった。頭突きでもするつもりだろうか。それにしては遠すぎる。
他に気になるところと言えば、彼女の頭に生えている、デカくて鋼のようにテカっているアホ毛だけだが。
次の瞬間、ゴツンと鈍器で殴るような鈍い音がした。その音を筆頭に次々とニワトリの数、鈍い音が続く。
彼女は頭突きをしたのか、否、そうではない。
ニワトリを見ると気絶してるのか、ひっくり返って足をピクピクさせている。
もしかしたらきれいな青空見ようとしたら白目になっちゃって見れない現象だろうか。
そして、にまっ、と年相応な可愛らしいどや顔を決める彼女の頭からいつの間にやら消えていたアホ毛がひょっこり生えてきた。
一体何が起きたのだろうか。
まあ、簡単に言うとこうだ。
①彼女の頭に生えていたのは、みなさんご存知アホ毛である。
②そのアホ毛は長さ、硬さともに自由自在である。
③彼女は今、そのアホ毛を使い、硬さ、長さともに最大の強度にしひょっこりぶっと飛ばしてニワトリたちを一網打尽にした。
以上、手順は3つだけ。どうぞお試しあれ。
五人目『金髪美』
「以下略」
とてもこの世のものとは思えないほど美しい顔立ちをした少女は、走って駆けていく周りの受験者と違いのこのこと、これこれこれまたまたまた呑気に歩いていた。
うん、余裕があるってイイね⭐
そして他の少年少女同様、しばらく進むとニワトリの集団が走ってきた。
美なる少女に向かって駆けていたニワトリ達は、まあ早い話、彼女の数メートル前で突然気絶した。
なにやら頭から蒸気をだして、幸せそうな顔である。
彼女それほどまでに、彼女は美しい✨️
まあ目は見えないが、彼女は輝きすぎてしまったんだろう。
少女は、いつの間にか現れて勝手に倒れたニワトリを、甘いわさびをみるような目で振り返る。
「ん? なんだテメェら」
わぁお。見た目によらず、結構なお口である。
「ふん、オレの美しさにほれぼれして気絶したって?」
事実である、いや、事実ではあるがなんか違う。
まあ、にんげん、こせいはあるものさ⭐