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みなさまへ。
あらすじを読んでいただければご理解頂けるかと思いますが、こちらは青春系……いえ、自称青春系らぶすとーりーとなっております。きゃっきゃうふふの自他共に認められる青春系らぶらぶすとーりーにしたいのは山々ですがまあ、がんばりますねー。

追伸失礼しますが、本作、一章ごと? ひとくくりごと?5000文字くらいあるかもなので、ご注意下さい

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これぞ青春(?)

#11

第10章 気を強く(以下略)

第10章

そして、一人だけ先に起きた(起こされた)不法侵入者は、他の生徒が置いて逃げた朝食をむさぼってお腹が満たされた5名に学園長としてまつりあげられた。
そしてただいま、学園長室にて自分たちの趣味を思い出した少女5人からの意味不明なご機嫌取りに対応中。
「へへぇ、学園長さぁん、ご飯食べますかぁ? ぜひともあたせに作らせてくださーい」「むへへ、われ今、肩をたたきたい気分〜」「あはは、学園長さん、おもしろいはなししますぅ。えと、ばなながぁ……」「……あ、このへや、ぺりかんいない……ぺりかんつれてくる……」「学園長殿、今からおれらを退学にしたときのデメリットを説くから退学届をすててくれ」
へこへこして揉み手で侵入者にずっと視線を向けながら少しずつ台所にスライドしていく枝毛。
謎にくねくねして侵入者の肩を目指してすり寄ってくる団子。
肩を竦ませ変なテンションでたぶん面白くないであろう話をしようとしている存在感。
ペリカンとか意味わからん理由をつけて居づらい空間からとりあえず抜け出そうとするアホ毛。
たぶん侵入者には理解できないであろうことを説いて所在がわからないであろう書類の破棄を求めてくる金髪。

「………………は?」

まあ、常人の反応はこうである。
なんかさっき征服しようとこの学校にノリノリで乗り込んだら(学校をちょっと破壊したら)七人の人がいて、何もしてないのになぜか一人は倒されて、一人は気絶して、五人がめっちゃへりくだってくる。
「…………どういうこった……昨日の日が暮れる頃には学校の制圧を完了していたはずなのに……今日の明け方には吉報をアジトに持って帰っていたはずなのに……」
「ふぇ? あじとぉ?」
「だぁーかぁーらぁーっ、俺様は学園長じゃないっつーの!」
思い切ってストレートに言った言葉で、誤解が解けると思ったらしい。
「あー、またまたぁ」
何がまたなのか意味がわからないが、とにかく第一のくれいじーには通じなかった。
「キャラ変ですかぁ? 否定形おれさま学園長!」
否定形おれさまって何だ? とか聞く暇もなく第二のくれいじーが口を開く。
「あ、われ、お姫さまけいもいいと思うっ」
は? とか言う前に第三のくれいじーが挙手する。
「そうですね、自分はきらきらのじゃらじゃらのふぁそふぁそが良いですね」
お前らまじ何言ってるんだ、とか言う前に第四のくれいじーも顎に手を当て、考える仕草をとる。
「そういや、きょうわこくに、ちゅうこきらきらおようふくてんがあった」
おいお前らまさか、とか言う前にも第5のラストくれいじーが指をぱちんとならす。
「あ、それいいな。それで許してくれよ、学園長」
いや、何の交渉材料にもならねぇよ? とか突っ込もうとする前に5人は部屋を出ていく。
「…………逃げようかな…………」
先ほど座らされた高そうなガラス製の椅子から立ち、全面ガラス張りでできている学園長室の近くのガラスを割ろうとすると、後ろから肩を掴まれた。
「ごごごごごご」
目が怖いくらいぎらぎらしているアホ毛。
「どこへいく? にがさない」
後ろのやばい圧から正しい判断をして、高そうなガラス椅子に腰をかける。うん、たぶん5人の中でこいつが一番強いんだろう、と察したからである。
どうやら、5人で高速会話を交わし、買い物当番、見張り当番を決めたのだろう。
ということで、共和国への航海が始まった────と思いきや、終わった。
「あー、申し訳ないけど、課外授業のとき以外は島からの外出は禁止なんだ」
グレース学園門番にばっさり切られ、探す組4人は落胆する。
「「「「どよーん」」」」
すると、枝毛の頭に電球がぽわぽわあ〜と出現した。
「あっ、あたしいい案思いついたぁ」
そしてぴっかーんと光った。
「「「お??」」」

★  ★  ★

「「「「ツハーン……?」」」」
「うん。ツハーンはねぇ、共和国と帝国が共同開発してぇ、でも連邦が盗んでキソされたけどぉ、さいばんかんを買収してねぇ、それを知った王国の幹部に圧力をかけてぇ結局ぅ連邦のものになったぁ、デンワいっぽんでモノがちゅーもんできちゃぅー、新しいせいどだよぉ」
なんか連邦の罪がいくつかぽろっと露呈したが、今目を向けるべきはそこではないだろう。
なんかカタカナにしたり伸ばし棒つけたりしているが、まあ要するに通販である。
「われっ注文してみるっ」
「ふくはわたすのせんすにまかせな⭐️」
「お金ってどうなんすかね」
「学園長のふところからだろ」
そんなこんなで部屋に一旦戻ってきた一同により、侵入者──もといカンチガーイ・学園長の財布は盗られた。
そんなこんなで、通販を頼んでさっき終わった航海をなんとか通信さーふぃんで立て直せ───なかった。
「「「「「デンワどこっ」」」」」
そう、デンワキがないのである。
そう、ここは離島。あんまりそういうのない。
「「「「「どよーん……」」」」」
「いや、デンワならあるぞ」
侵入者くんは自分の首を絞める一言になると知らず、あったので教えたげた。正直者がバカ見る世界である。
「「「「「え? どこ?」」」」」
「ここ」
そう、学園長の机の上にはおそらく学園長作の透明ガラス電話が!
「「「「「いざっ」」」」」

ぽち

『ツウー。シヨウスルナラ、アンショウバンゴウヲウチコンデネ♡』
みんな大好きテカ寮父の声がでてきた。
「あ? 暗証番号なんか設定してやがるのか。おい、教えろ学園長殿」
殿とかの敬称と雑な言葉づかいが混ざっているのは彼女のプライドとなんか申し訳ない気持ちのあらわれだろう。それにしても変な感じだ。
まあそれは置いとき、変な感じの金髪が首根っこを掴み、アホ毛の力を借りて窓をばりぃんと割り、「教えなかったら落とすぞ」とでも言わんばかりの視線を向けてくる。なんかアホ毛の力を借りるところ、可愛らしいが本人に言ったらたぶんぼこぼこのめちょめちょだろう。
気迫に押された彼は、落とされたくないばかりに組織の認証コード『2る²8k゛』となんか2乗とか平仮名とかローマ字とか濁点とか入っている、入力が困難そうな番号を教えてしまった。
まあそのあとに番号のところに濁点はもちろん、平仮名なんてあるわけない、そう気づいたが後の祭りだーっ、と思ったが。
「あ、ひらいた」
「はあぁっ!?」
なんでそんなの入力できたのか、なんで組織の認証コードと学園長デンワの暗証番号が同じなのか、疑問は山積みだった。
「ぴ、ぽ、ぱ、ぽ」と受け取ったデンワ番号を呑気かつ(こう見えて)慎重に打ち込んでいく枝毛。ちなみにやりたがった団子は脇におしのけられくちびるをとんがらせている。団子は今までの所為からかなり雑いことがわかっているので、言うまでもなくそれが原因である。
「あえ? あーはいはーい、わたしだよう、わたしい。え? ああ、そうそう、グレース島管理者ですぅー。 え? 声が高い? 電話越しだからだよー。それより、ツハーンで頼みたいのあるんだけどぉー、一覧表見せてくださらなぁーい? ……お、おぅ、て、テーレビデンワなんてものが! えー、いやいやぁ、知ってましたよそんなのぉ……あっ、こちら側のカメラはオフにしてもらっていいー? えー? っと、メイクが……じゃなくて、お、おヒゲがもう大草原のように生い茂ってるからぁ……」
語尾が統一されていない。あとカメラオフの口実が口実になってない。
あわててアホ毛が割って入る。
「かわ@#¥%#(小声)
あー、これはこれはーどうもーえっと、がくえんちょうせんせいの、いとことちがつながっていないもの。えと、ぷりんせすていあらと、」
「あと、でんじゃらすぱーちードレスもくださーいっ」
「えっ? なんでかって? ……えと」
「か&@¥#*そんなの決まってるぅじゃあねぇですかぁぁー、天から授かった幼い命(要するに子ども)とうるわしきまいはにーべいべーへのプレゼントぉ?」
金髪によってなんかとんでもなくきざったらしい男になってしまった。ちなみに学園長は独り身だ。
「ん、いーじーめいくせっとも。……あ? ぱふぱふするやつだけ送れ。他はいらん」
「鏡も買おー、あー、われ、ウィッグもよきと思う。ぴらみっどみたいなのがよき」
なんか注文しているもので侵入者の行く先がありありと想像できる。
このあともはもはになった髪を3時間かけてセットし、そのご自慢のモヒカンヘアが秒でピラミッド頭になってそこにプリンセスさながらのティアラが雑に乗り、ファンデーションないのにほっぺとかお鼻とか侵入者くんの微々たる毛を切ったやつとか組織の頭領とかをぱふぱふされて、でんじゃらすぱーちーな出で立ちになる自身の姿が脳裏に浮かんだカンチガーイ・学園長。
そろそろこの学園に侵入したことを心から悔い始めた。
彼はそんなくれいじーぱふぱふズの行動を終始見つめ、「……もう俺様の頭じゃついていけねぇぜ。……ったくもう……」と、理解することを諦め、肩を落とす。
そして彼は、全面ガラス張り部屋の一角のガラスを覗き込み、僅かに映るバクハツされぐしゃくしゃのもはもはのぺたぺたになった自身の姿に眉をハの字に曲げる。
「あーもう……俺様もう組織で死んだ扱いになってるのかな……」
なんか悲しい気持ちになるとネガティブなことがいろいろと考えつく。
「……気晴らしに髪セットするか……」
自殺ならぬ自ぱふぱふばれーどは幕を開ける。
一方のくれいじーズ。
「届くの2時間半ぐらいかかるってぇ〜」
「あーその間暇だな?」
「ごこてぶくろもってる」
「寝袋ですよね」
「われ、眠くなってきたっ」
と、いうことだ。と、いうことなので、
「「「「「ねよう」」」」」
と、いうことらしい。

★ ★ ★

寝てる間に配達きて、誰かが受け取っちゃうハプニングが起こると思いきや起こらなかった2時間半後。

ぱぴらぶばりびあーん♡

奇抜な音のインターホンが鳴る。
「うえーい……」
まだ寝起きでとろんとしている存在感が対応する。
「こちらグレース学園管理者様宛のプリンセスティアラと、でんじゃらすぱーちードレスと、イージーメイクセットの以上3点です」
配達員がインターホン越しに話していく。存在感はインターホンの音量を最大限まで上げ、他のみなさん(カンチガーイ・学園長を除く)を起こすことを試みる。
「あ……? もう3時間も経ちやがったのかあぁぁ……?」
唯一起きた金髪に対応を頼む。なぜか。
「ふぁい……配達来てます……たいおうよろです……」
「あぁ……あ? もっかい見せろ」
カメラから顔を覗かせて「お〜い」とか手を振ってくるいーじーめいくせっと(※幻覚)。その光景に金髪の目がかっと開く。
「おれが頼んだのはセットじゃねぇっ! 単品なんでぁよっ! くたばれっ!」
配達員に暴言を吐いて「とりあえず出てきてください……」とショックを受ける配達員に言われる金髪。
でも相変わらず「あ? お前間違えた分際でおれに指図してんじゃねえ」とか理不尽な(?)毒を吐いてくる。めいくせっとが内臓(ぱふぱふ)をもぎとられて、「ア゛ァ゛ー」とか断末魔を上げながら後ろに下がっていく(※幻覚)。
選手交代。
金髪の怒号を聞いたアホ毛(固有名詞)が目覚め、ふしゅーってしてるインターホン越しに配達員へ威嚇中の金髪を後ろに下げ、アホ毛(名詞)を踏み台にしてインターホンを覗き込んだ。

「ぐっっぷん、お゛いといてぐれ゛」

最大限声を低くしてみたが、逆効果というべきか、ぱぴぱぴの声となってしまった。
配達員は「あれ? なんか声ぱぴぱぴじゃね? あれ、もしかして管理者の人じゃない? あっ、でも中年のおっさんの声ってかれてんのか」とかかなり失礼な事を考えたりして、「お支払いはどうされますかー」と声を張った。まあインターホンあんだから声はんなくてもいいだろ、というツッコミはおいておき、返事を待った。そうして裏玄関のドアの隙間からカンチガーイ・学園長の財布をまるごとねじり込んでお支払い。
置いときまーすとか言い、汁BECK王国製の今にも沈みそうな「ちゅうこきらきらおようふくてん♡」とかいてある船に乗り、オールを漕ぎ出した。
ちなみに彼の裏ポケットに入っているカンチガーイ・学園長の財布。カンチガーイ・学園長は、あれでもれっきとした、とあーるヤバーい組織の結構良いとこで、もちろん実力も伊達ではない。レキセンノハシャであるからこそ、前例から物事の背景を組み立てて考えるため、まあ前例のない個性弾ける斬新なくれいじーに弱くてぱふぱふになってしまうのだろうが、とりあえず、カンチガーイ・学園長はヤバメのやつ。財布にはさまざまな仕掛けや爆弾等爆弾等爆弾等々……。配達員は仕事場に帰ってから夜家に帰り良い酒飲もうかなあとか思っているが、彼が向かっているのはさまざまな困難を乗り越える大冒険だ。
それはどうでもいいとして(?)。
それを窓からぎりぎり頭を出して覗いているアホ毛。
これだけ見るととても可愛らしい画だが、支払いは侵入者のポケットから奪った財布からである。
そして商品開封。
「おお、ばっちりとどいてる」
「若干さぎっぽいのもありますね」
なんかでんじゃらすぱーちーどれすとか、数個のホンモノ宝石がついているっていう画像と字が表示されていたのに、近くで見れば誰でも分かるようなワンコインで数十個買えそうなニセモノ宝石であった。
「いや、こっちはちゃんど見た目どーりだな?」
ぴらみっどがたのウィッグはホントにそのままだ。画面からそっくりそのまま出てきた感じでそのままだ。
わちゃわちゃと会話が盛り上がる。三十分が経過した。
注文してからきっかり三時間が経過。
「ふー……やっとセット終わったぜ。いや~、きまってるぅ」
侵入者が運悪く三人の前に出てきて、さっきと同様にガラスに僅かに映る自身の姿を見てポーズを決める。
侵入者の声に反応する三名。首が180度くらいぐるんとまわる。たぶんこれ夜に見たら心臓止まりかけるやつ。
「え?」

ばっ

アホ毛を筆頭に、組織でけっこう訓練してきた侵入者くんにも目で追うのが精一杯な速さで突進してくる。
その動きは訓練されたものか、目の前のやつをぱふぱふしたいという衝動に突き動かされてのものか。
真偽はわからないが、なんか危機的状況に置かれていることはわかったらしい。
侵入者の、安否はいかに。

★ ★ ★

「ふっ」「おお?」「むっふん」「ぐふへ」「まあとりあえず」

「「「「「かんっせーいっ!」」」」」

歓喜の声を上げる5人の少女。
魂抜かれたような顔してる男。
その男、侵入者は、見事にぱふぱふおんぱれーど第一章第1節の餌食となったのだった。

ちょうど2分前、「かくほーぉっ」と3人に飛びかかられ、情けなく抵抗できなかった侵入者。
「……………………………………………………」
口を開けて呆然とする。
自分の財布から根こそぎ小銭やら紙幣というか財布そのものを奪われ、その金で買われた無駄な装飾がついた貴族用のお鏡。
首を45度傾け、自分の姿を見る。
「んがあああああああああああああああっ!!」
咆哮。
(俺様の髪が……)


以下、回想。
『あ……? んだよ、こっち見て………………』
180度首を回した少女たちに少々恐怖心を覚えたが強がって睨んだ。
『『『かくほーぉっ!』』』
『あ!?』
完全に拘束された侵入者。もしや、自分が学園長じゃないとバレたのか。そんなことを危惧したが、
『はい、じゃあ切りまーすっ』
なんか軽いノリでたぶん髪切り用じゃないはさみでさっきセットした、命の次の次の次の次の次の次の隣くらいは大事にしていた髪が切られた。
驚愕とショックでぐでーんとなった侵入者は『もうどうにでもなーれ……♪』と、うわ言をつぶやいた。
言質をとったくれいじーたちは、残る仲間を起こし始めた。
以上、回想。


侵入者くん改造計画、もといぱふぱふおんぱれーどは、5人のくれいじーによって本格始動した。

第一章第2節、ティアラ抗争編。
「われっ、寝たから元気もりもり!」
そんな団子と向き合っているのは、
「いえ、早起きのほうが元気もりもりです」
存在感。
みんなで意気投合していつも奇行をやらかすやつら5人の間で、珍しく意見がわれたらしい。
話の争点は、元気もりもり──────ではなく、ティアラの位置である。
なんか元気もりもりの話をしていた理由は、「武力で解決することになったらこっち強いぞ」みたいな威嚇行為である。
「われ、つむじに沿って置いたほーがいーと思うっ」
「いーや、もうコレは耳にかけたほうがいーと思いますけどねっ」
つむじに沿うとは。耳にかけるとは。
「つむじに沿うって何ですか!?」
「えと……こうして、こう………………あり?」
なんか実演している最中に自分の発言の意味がよくわからなくなった団子。
二人の口論は大喧嘩に発展するかと思いきや、ここらで沈静化した。
「お二人さん、そこまでねぇ。耳にかけよっか」
は? なにすんだこいつら、とか思っている間にも、くれいじーたちは隙がない動きで周りを包囲してくる。
もう本日何百回目か、額に汗が浮かぶ。
「とりゃあああいっ!!」
枝毛の声とともに五人が飛びかかってくる。
さっきと同様に組み伏せられ、耳がちぎれるくらい引っ張られ、シリコン製のプリンセスティアラが雑にかけられた。
彼が三十年ぶりくらいに泣きそうになったところで、第一章第2節ティアラ抗争編は幕を閉じたのであった。

ぱふぱふおんぱれーど第二章第一節、不侵入者の黄昏とその邪魔。
「おうおう、ぱふぱふするぜぇ」
何やら黒くて楽しそうな笑顔をして、じりじりと後ろに下がっていくカンチガーイ・学園長を一歩ずつ壁へ壁へと追い詰めていく金髪。
「うおぅぅぅぅりあやぃぁぁっ」
「ぴぎゃーーっ!!」
奇声を発して跳躍する金髪に、男──いや、人類らしからぬ奇声で対応する侵入者。
(ん? 俺様なにしてんだ?)
その最中、なんか根本的なことに気づいてしまったカンチガーイ・学園長は、自分向かって真っ直ぐに跳躍する金髪に対し、冷静を取り戻してきて、「見切ったぜ」とか言わんばかりにどやぁっとして首をひねってふぁんーでしょんがついていない意味無しのぱふぱふを軽く避ける。
学園に来てからは、自分の中にある「学生」という単語データと「が」の文字も一致しないやつらと「寮母」ならぬ「寮父」という存在と、部屋からみる限り、「あいらぶ♡がらす」な学園長がいて、普通なら自分とばちばち戦うはずの学園長がなぜか守るべき教え子と戦い、敗れ、そんなやべえやつらになぜかへこへこされて、なぜか自分がこの学園の頂点に君臨させられて、なぜかお姫さまメイクされる自分。そんななぜかだらけのこれまでを振り返っていると、振り回されていた自分がばかばかしく、恥ずかしくなり、腹立たしくなり、なんか冷静さを取り戻してきた。
(ふっ……俺様はこんなことしてる場じゃねぇぜ……)
一回突撃に失敗したくれいじーは仲間のもとに戻り、「なにあいつ黄昏ムードかましてんだよ」とか嫌気が差した顔で発言する。
すっ、とオシゴトモードの冷徹な顔に戻ると、また表情を崩してにたぁ、と悪い顔をした。
(何やってんだ、俺様は。やることなすことすべて狂っているこいつらに怯んでたが、何をしようが結局はガキ。俺様の功績に比べればどうってこたない……)
思い出す。あの漢検準一級の大物政治家と対峙して密談の証拠を突きつけて情報を吐かせた夜。オカシタベタラタメーヨ宗教の信者の前でせんべいをばりぼり食べてやったあの23歳の朝。こちらに不利益しか生じない契約を無理矢理取り付けようとしたオシウリーマン(仮)にイラッときて世界征服の土台にしてやった(詳細は控える)あとに見たあの煌めかんばかりの夕日。
頭で全て情報をリセットし、目の前にいるのはただのガキ5人、と捉えた。
「──────制圧対象だ」
冷静さを取り戻した侵入者は、視界の中に5人の年端もいかない少女たちを映す。
「あ? 何しゃべってやがる」
気だるげに振り向く少女に無言で奇襲を仕掛ける。
「のわっ」
思わぬ人物からの思わぬタイミングで思わぬ攻撃を受けた金髪は、思わず体勢を崩してしまった。
「んだよ……」
がらす張りの床に打ちつけたであろう後頭部を押さえながら、むくっと起き上がる少女を冷徹な目で見下ろす。
「われ、なんだかやばい気がするっ」
ぽつりと団子がもらし、戦闘態勢に入ろうとする。
真・学園長のときとは何か違う圧を感じる。
まあ全員知らないが、彼はもともとやばい組織のやばい幹部たちの中でもやばい構成員なのだ。
つまるところ、彼は暗殺……というか、闇の中でこう、わっとやるタイプのやつだ。悪い言い方をすれば真正面から戦わない、どんな手段を用いてでも勝つやつである。
「………………」
「あ? んだよその目」
一言も話さず不気味な角度で首を傾けている侵入者に微かな苛立ちを覚えたのか、物怖じせず睨み返す金髪。
「なんとか言えやコラ」
すくっと立ち上がり、かかとを浮かせてつま先立ちし、襟を掴んだ。
その時点で早くも、「わわわあ、た、たいがくぅ……」とか言って泡を吹き倒れかける存在感。
「………制圧対象に情けをかける必要はない。それがたとえガキだったとしてもな」

ぴき。

なにやら青筋が顔に巡る音がした。
そう、この男、5人の少女の地雷を踏んだ。
「あ? ガキだって?」「われたち、もう立派な大人だと思うっ」「自分のっ身長がっ小さいとっ言いたいんですね?」「ちょっとそれは許せないかなあ」「このりっぱなあほげがみえないか」
「……制圧対象………」
決して平常心を崩さない。
「まだ終わってないんですからあ」「大人しく座っててください」「そうだね」「まだ第二弾があるんだからな」「われ、ぱふぱふやるっ」
「制圧、対象……」
決して、崩されない……。
「だいさんだんはどうする」「うーむ」「ぺまぺま度をもっとあげたいですね」「われ、ぷぬぷぬやるっ」「あたまをもっと盛るか」
「制、圧……対…しょ…う…」
決して、崩されない………………………ハズ。 
くれいじーの速攻怒りからの速攻忘却。
そしてちょっと思い出したくない黒歴史第一位くらいいけちゃうぱふぱふおんぱれーどがまだあれ第一弾でこれからも続くと言う事実。
だが、それもこれもこいつら制圧しちゃえばたぶんどうにかなる(?)だろう。
「うああああぁぁぁっ!」
失敗したら……とかの妄想を取り払うように高速で頭を振り、団子に突進していく。
「あ、ちょっと。動いたらかみ崩れちゃうでしょぉ?」
団子の顔面に拳が到達する前に枝毛の横やりが入り、肩を掴まれた。
「そうそうっ、ぱもぱもの実験体になってくれないとですっ」
「いいいいいぃぃぃぃやあああぁぁぁぁっ!!」
このごろ情緒不安定な中年幹部。情けなく叫んでだんだん強くなってくる肩をつかむ力に抵抗する。
(くそぅっ……どうすりゃいいんだっ……)
彼女等間でしか使われない「ぺまぺま」とか「ぷぬぷぬ」やら「ぱもぱも」などの隠語(?)にもはや体が拒否反応を示している。
「ほらあ。はやくこっちきてくださいよお」「もーう、しかたないなー」「つぼつぼまっさーじつけてやろう」「1秒百万えんでーす」「たあまあやあ」
数百万円を強奪しようとすり寄ってくるくれいじー5人組。
だが、彼の財布にはもうそんなに入っていない。というか財布自体今ごろ絶賛配達員さんに大冒険を歩ませていることだろう。
彼が逃げ出す手段を熟考している間にも、その手段は一つずつハイペースで奪われていく。
「たいまあすたあとっ」
アホ毛のぽちっとな、という掛け声を合図に4人の少女、合計8本の腕、40本の指が足裏をおしてくる。
そのあしつぼは、マジで効くやつやつで全然痛くない金とれるレベルのものもあれば、痛いのにまったく効かないであろう逆に金とられるくらいのマッサージもあったりする。
その中間点で熟考している侵入者。
「んあっ!?」
あしつぼされてることに気づく。
時すでに遅し。
「やめろやめろっ、いてぇよ!?」
「ん、おわり……」
アホ毛が残念そうにタイマーを止める。
4人は侵入者の足から鼻をつまんで素早く離れ、タイマーに駆け寄った。失礼なガキどもめ。
「おっ、2分56秒っ」「つまり……60、60、56、だからぁ……」「180秒ひく4秒だな」「じゃあ176秒ですね」「えと、いちびょうひゃくまんえんだから、つまり?」
さっきの冗談ぽい存在感の言葉を拾い、どんどん計算をしていく。
「「「「「1億7600万円」」」」」
五人の少女は歓喜の声を上げたり奇声を上げたりして顔を見合わせる。
「いやあ、夢がふくらみますねぇ」「んだなあぁ。まずは飛行機を買おう……」「いやさきにぎうにう」「牛乳って背のびるもんねぇ~」「われっ、ぱれーど開きたいっ」
待て、えっと、さっきも言ったが。
「おまえら俺様の財布持ってただろ」
「「「「あ」」」」
動きを止める少女たち。
「こ……これは……」
存在感が口を開く。他の全員もうなずく。
「(カンチガーイ)学園長の、」
「「「「おうちに取り立てに行こうっ!」」」」

そんなこんなで、ぱふぱふおんぱれーど第二章二節は幕を開ける。
ついにぱふぱふおんぱれーども中盤。少女たちはどのようなぱふぱふを見せてくれるのか────。

★ ★ ★

ぱふぱふおんぱれーど第二章二節、1億7600万と新たな旅の予感。
「む、身分証明書みっけっ」
財布を押し込む際に落としたであろう身分を証明するやつがあった。
「じゃー、そこに住所かいてあるはずだよねぇ」
枝毛がいろんなところに目をやる。
「あたー。えと、あ、連邦だぁ」
「んじゃあ、連邦行くしかねえなあ?」
「お、おい、お前ら何しやがる……ま、まさか……」
頭をぽりぽりとかいている金髪に恐る恐る聞く。
「さっき言ったろ。お前んちいって金とりんいくんだよ。耳死んでんのか? あ?」
嫌悪の目を向けてくる金髪に侵入者の顔はさーっともうそれはそれは地球が青かったときのように青くなる。
カンチガーイ・学園長の実家、それは世界征服を企むやばい組織である。
「お、おい。その、あの、えと、その、あと、えて、だばばばばあっばあbバ」
テンパる侵入者。
なんかそれが面白くなってにまにまするくれいじーたち。
「あー、われ、寮から連邦に引っ越せちゃうかもなぁー、にまにま」「できない話じゃねぇな、にまにま」「ふふ、面白くなってきましたね、にまにま」「すべてはぎうにうのため。わるくおもうな、にまにま」「1人だいたい3500万円だねぇ、
にまにま」
「…………もうやだあ」
かわいそうに頭を抱える侵入者さんだが、頭では冷静に喜怒哀楽は『怒哀』いっぱいつかったからあとはもう『喜楽』だけだぜ! とか考えている。
そんなよくわかんないこと考えている侵入者をよそに、くれいじー五人組は連邦へ出発の手筈を整えている。
(はっ、でもよく考えりゃこの学校の外には出れねぇじゃんか! ふぅ、危ないところだった)
えーと、安心してるとこ申し訳ないんだが、君の後ろに立っているのは……。
……この瞬間をもって、ぱふぱふおんぱれーどは一時休止に陥った。

2025/06/29 13:58

われらくれいじーs ID:≫ d0uVxmKq6pgSg
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