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少女は遅刻して、トラックと運命を果たす

#1


「いっけなーい、ちこくちこくー!」

今日もギリギリで飛び出したあかり。バッグを斜めに掛けて、スマホを片手に持ちながら、学校に向かって必死に走る。目の前に広がる通学路を、心の中で「間に合うかな…」と焦りながら駆け抜ける。

「大地に送ったメッセージ、読んでるかな…? でも今返信来るわけないか。」あかりは、スマホ画面をちらりと見ながら、自分でもよくわからない思いに取り憑かれている。

──彼には、どうしても言いたいことがあった。でも、いつも言えない。いつも、そのタイミングを逃してしまう。あかりはそんな自分に苛立ちながらも、でも、少し期待している気持ちもある。

その時、視界の端に何かが大きく迫ってきた。ドキッとして、顔を上げると、そこにはものすごいスピードで走ってくるトラックの姿が。

「えっ、ヤバっ!」目の前に迫るトラックに、あかりは驚き、思わず一歩足を踏み出す。

──もう、ぶつかる!?

反射的に足を踏み込んだその瞬間、あかりはただ立ちすくむわけにはいかないと感じた。命がけだと悟ったその瞬間、驚くべき行動に出る。

「ふっ!」

あかりは、トラックが迫る中、まるで何事もなかったかのように背筋をピンと伸ばして立ち、両手を腰にあてて、しっかりと姿勢を作った。どこか戦士のような雰囲気を醸し出し、その場で堂々と立ち尽くす。

トラックの運転手は一瞬、全く理解できない表情を浮かべ、焦りながらも急ブレーキを踏む。そのタイヤが地面を引きずり、ゴーッという音と共に車体が滑りながら止まる。

──ギリギリ、間に合った!

運転手は、その異常事態に完全に呆然としていた。目の前に立つあかりの姿を見つめると、何が起こったのか理解しようと必死で考える。しかし、あかりは微動だにせず、まるでその場にいるのが当然のように胸を張って立ち続ける。

運転手はやっと反応し、窓を少し開けて声をかける。

「おい! 何してるんだ!? こんなところにいきなり立ちはだかるなんて…!」

あかりはその言葉をまるで耳に入れず、顔を軽く背け、ひらりと髪を揺らして、あっけらかんと言った。

「はぁ? ぶつかりそうだったんだから、ちょっとくらい気をつけなさいよ。」

運転手は驚きのあまり、言葉が出ない。冷や汗をかきながら、あかりの言葉に耳を傾けることしかできない。しかし、あかりはそんな彼の反応を気にもせず、軽く手を振りながら歩き出す。

「まぁ、ありがとう。命拾いしたわね。」と、冗談交じりに言って、さっさとその場を後にする。

運転手はただ呆然とし、まるで何かに引き寄せられるようにあかりを見つめ続ける。あかりが背中を向けて歩き去るその姿に、運転手の目は釘付けになっていた。

「本当に…大丈夫だったのか?」運転手は心の中でつぶやきながら、あかりの後ろ姿を見つめる。その時のあかりは、まるで何事もなかったかのように、軽やかに歩いているだけだった。

──こんなこと、あり得るのか? あんな風に立ち向かってくる人、見たことない…。

運転手は、完全に混乱しながらも、思わず呟くように言葉を漏らした。

「まさか、こんなに冷静な人がいるなんて…」

あかりがその言葉を聞くことなく、さらに歩みを進める。彼女は自分の道を、ただ淡々と歩き続けていた。

その時、運転手は何かが引っかかるような感覚に襲われ、気がつくとあかりの姿を目で追っていた。

──こんな風に、あんなに堂々とした人、久しぶりに見たな…。

運転手は、ぼんやりとその思いを抱えたまま、トラックのエンジンを再びかける。何度もその場で確認しながら、あかりの背中を見送る。

作者メッセージ

第1章では、主人公あかりの自由で無邪気な性格を描きました。実は、私自身もかつて車に引かれたことがあるのですが、幸いにも無傷でした。そして、その時ぶつかってきた車のサイドミラーを壊すという、なかなか衝撃的な体験をしました。この体験があかりの強さや瞬時の判断力、そして運命を引き寄せる力を描くインスピレーションとなりました。運命は時に予想もしない形で訪れるもの。次回、どんな展開が待っているのか、ぜひ楽しみにしていてください!

月影

2025/04/05 21:41

月影 ID:≫ 5iUgeXQ3Vbsck
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