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魔王倒しに行くんだよね、うん、でもさ…

#4

酒屋のケンカ編

町の酒場はいつものように賑やかだった。壁には古びた酒のポスターが飾られ、木製のテーブルに集まった常連客たちが楽しげに話している。カウンターには、いつものようにバーテンダーの老人が座っていて、酒を注ぎながら人々の様子を見守っている。

「おい、今日も飲むか?」

戦士が椅子を引いてカウンターに腰を下ろすと、バーテンダーが微笑みながら酒を差し出した。

「まあ、ちょっとだけな。」

戦士はグラスを一気に飲み干し、無言でカウンターを見つめる。だが、その瞬間、酒場の入り口から、少し乱暴な声が響いてきた。

「おい、あんた!なんでそんなに大きな剣を持ってんだ?」

戦士はその声に振り向くと、荒っぽい男たちがグラスを片手に立っているのを見た。どうやら、酒場にやってきた新手の喧嘩好きな客らしい。

「お前みたいなゴツい奴がいると、何かと騒がしくなるだろ?」

一人が戦士に近づいてきて、笑いながら肩を叩いた。その手に持っていた酒が戦士の服に少しかかる。

「おい、気をつけろよ。」

戦士は眉をひそめて言ったが、男は気にする様子もなく、さらに挑発的な笑顔を浮かべた。

「お前、ちょっとしたことで怒るんだろ?それに、その剣で何かやってみろよ。戦士って言っても、ただの道具だろ?」

「なに?」

戦士は少し立ち上がり、拳を握る。しかし、その時、隣の席にいた魔法使いが静かに声をかけた。

「戦士、やめなよ。あの人、どう見ても酔ってるよ。」

魔法使いはアイスを手にして、優雅に座っていたが、その言葉に戦士は少し冷静さを取り戻した。

「でも、こんな奴、放っておけないだろ…」

その時、勇者が慌てて駆け寄ってきた。

「おい、ちょっと待て!喧嘩するつもりか?」

「なんだ、お前も来たのか?」

男たちは一斉に振り返り、少し驚いたような顔をした。どうやら、勇者の姿に見覚えがあるらしい。

「お前、魔王倒したっていうあの…勇者か?」

「う、うん、そうだ。」

「うーん、あんまり強そうには見えないな。こっちは戦士だぜ。」

その言葉に、戦士の顔が少し赤くなった。なんであんな奴らに挑発されてるんだろう、と思いながらも、口を閉ざしていた。

だが、事態は一気に悪化した。

「おい、せっかくここに来たんだから、もう少し楽しくやろうぜ?」

男たちは酒を一気にあおり、グラスを戦士に向かって投げつけた。戦士はそれを避ける暇もなく、酔った男たちが一気に彼に押し寄せた。

「やっぱりやる気か、戦士?」

戦士はカウンターを蹴り飛ばし、振り向きざまに腕を伸ばして男たちを一人ずつ払いのける。

「おい、やめろ!酒場で喧嘩するな!」

バーテンダーが必死で叫んだが、戦士は怒りのまま、男たちと一歩も引かずに対峙していた。と、その時、魔法使いが突然立ち上がり、冷静に呟いた。

「ちょっと、もういい加減にしてよ。」

魔法使いは一歩踏み出し、杖を振ると、突然空気が冷えた。氷の魔法が酒場の中に広がり、男たちを凍らせた。

「な、何だこれは!?」

男たちは一瞬、凍りついて動けなくなる。魔法使いは無表情で言った。

「ほら、これで静かにして。」

勇者も呆れたように溜息をついた。

「全く、二人とも…でも、助かったよ。」

戦士は腕を組みながら、少し気まずそうに言った。

「す、すまない。ちょっと挑発されてな…」

「いや、まあ…でも、あんた、また酒場で喧嘩しないようにしなよ。」

魔法使いはにっこりと微笑んだが、その目はどこか冷たかった。

「うん、ありがとう。」

戦士は少し照れながら頭をかいた。

結局、酒場は一時的に冷たい空気が漂ったが、男たちが解凍されると、騒ぎは収まった。そして、最後には何事もなかったかのように、みんなで改めて飲み直した。

「また次、酒場で喧嘩を売られたら、どうするかね?」

勇者がからかうように言うと、戦士は頭をかきながら答えた。

「その時は、魔法使いに頼むことにする。」

魔法使いは「また?」と笑いながらも、再びアイスを口にした。

作者メッセージ

次回は『魔法使いがアイス屋に就職⁉編』!いや、マジで何があったんだよ。魔王倒したばかりなのに、魔法使いが突然アイス屋に就職するとか。まさかの転職か!?何が彼女をここまで駆り立てたのか、次回が楽しみだ!

語り手

2025/04/23 21:10

月影 ID:≫ 5iUgeXQ3Vbsck
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