魔王倒しに行くんだよね、うん、でもさ…
魔王を一撃で倒した俺たちは、魔王城をあとにした。……いや、「俺が倒した」んだったな。
パーティはというと、相変わらずのグダグダぶりである。
「いやー、魔王の部屋って意外と狭かったね!」
戦士が楽しそうに言う。お前は何しに来たんだ。
「魔法一発も使わなかったの、ちょっと心残りかも。せっかく新しい火の玉覚えたのに~」
魔法使いは道端の石ころに魔法を撃ちながら歩いている。石がかわいそうだ。
「なんかさ、結局、俺って勇者だったのかな…?」
勇者はうつむき加減で、靴の先で地面を擦っている。
「少なくとも“主人公”ではなかったな」
俺がぽつりと呟くと、勇者はさらにしょんぼりした。
「じゃあさ、帰ったらどうする?凱旋パレードとかあるのかな?」
戦士がワクワクしながら聞くが、俺は首を振った。
「いや、たぶん『魔王がもういない』って話、誰も信じねぇよ。お前らが信用される気配ゼロだからな」
「うわ、それつら……」
戦士は頭をかきながら、ふと立ち止まる。
「てか、今さらだけど……道、合ってる?この森、さっきと同じ木しか見えないんだけど」
……。
「……それ、早く言えよおおおおおおおおお!!!」
俺の怒号が森に響く。鳥が一斉に飛び立つ音がした。
「ごめんごめん、でもほら、迷ったっていうより、冒険っぽくない?こういうの!」
「迷子は冒険じゃねぇよ!それはただの遭難だ!!」
「でも、今からでも新しいクエスト始められるんじゃない?」
魔法使いがきょろきょろと周囲を見回す。
「例えば“この森の出口を見つけろ”とか。“失われた村を探せ”とか!」
「いや、それ“魔王討伐の帰り道”だぞ!?スピンオフ始めんな!!」
勇者はというと、静かに草の上に座り込んでいた。
「もう…ぼく、帰ったらパン屋になろうかな…」
「パン屋!?急すぎるだろ職種変更!!」
「なんか向いてない気がしてさ…世界救うとか、荷が重かったよ……」
そのときだった。
「……あっ」
魔法使いが何かに気づいたように指をさした。
「道、見つけた」
「どこに!?ていうか最初から見えてただろそれ!!なんでスルーしたんだよ!!」
「だって、雰囲気よかったから……ちょっと寄り道したくなって」
「寄り道で魔王城から迷う奴いるか!!」
そうして、迷いと脱線と怒号を繰り返しながら――
俺たちは、少しずつ、確実に、いやなんとなく帰路についていた。
世界は救われた(多分)。
だが、俺の精神は、もうすでに限界だった。
パーティはというと、相変わらずのグダグダぶりである。
「いやー、魔王の部屋って意外と狭かったね!」
戦士が楽しそうに言う。お前は何しに来たんだ。
「魔法一発も使わなかったの、ちょっと心残りかも。せっかく新しい火の玉覚えたのに~」
魔法使いは道端の石ころに魔法を撃ちながら歩いている。石がかわいそうだ。
「なんかさ、結局、俺って勇者だったのかな…?」
勇者はうつむき加減で、靴の先で地面を擦っている。
「少なくとも“主人公”ではなかったな」
俺がぽつりと呟くと、勇者はさらにしょんぼりした。
「じゃあさ、帰ったらどうする?凱旋パレードとかあるのかな?」
戦士がワクワクしながら聞くが、俺は首を振った。
「いや、たぶん『魔王がもういない』って話、誰も信じねぇよ。お前らが信用される気配ゼロだからな」
「うわ、それつら……」
戦士は頭をかきながら、ふと立ち止まる。
「てか、今さらだけど……道、合ってる?この森、さっきと同じ木しか見えないんだけど」
……。
「……それ、早く言えよおおおおおおおおお!!!」
俺の怒号が森に響く。鳥が一斉に飛び立つ音がした。
「ごめんごめん、でもほら、迷ったっていうより、冒険っぽくない?こういうの!」
「迷子は冒険じゃねぇよ!それはただの遭難だ!!」
「でも、今からでも新しいクエスト始められるんじゃない?」
魔法使いがきょろきょろと周囲を見回す。
「例えば“この森の出口を見つけろ”とか。“失われた村を探せ”とか!」
「いや、それ“魔王討伐の帰り道”だぞ!?スピンオフ始めんな!!」
勇者はというと、静かに草の上に座り込んでいた。
「もう…ぼく、帰ったらパン屋になろうかな…」
「パン屋!?急すぎるだろ職種変更!!」
「なんか向いてない気がしてさ…世界救うとか、荷が重かったよ……」
そのときだった。
「……あっ」
魔法使いが何かに気づいたように指をさした。
「道、見つけた」
「どこに!?ていうか最初から見えてただろそれ!!なんでスルーしたんだよ!!」
「だって、雰囲気よかったから……ちょっと寄り道したくなって」
「寄り道で魔王城から迷う奴いるか!!」
そうして、迷いと脱線と怒号を繰り返しながら――
俺たちは、少しずつ、確実に、いやなんとなく帰路についていた。
世界は救われた(多分)。
だが、俺の精神は、もうすでに限界だった。