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魔王倒しに行くんだよね、うん、でもさ…

#2

帰り道編

魔王を一撃で倒した俺たちは、魔王城をあとにした。……いや、「俺が倒した」んだったな。
パーティはというと、相変わらずのグダグダぶりである。

「いやー、魔王の部屋って意外と狭かったね!」

戦士が楽しそうに言う。お前は何しに来たんだ。

「魔法一発も使わなかったの、ちょっと心残りかも。せっかく新しい火の玉覚えたのに~」

魔法使いは道端の石ころに魔法を撃ちながら歩いている。石がかわいそうだ。

「なんかさ、結局、俺って勇者だったのかな…?」

勇者はうつむき加減で、靴の先で地面を擦っている。

「少なくとも“主人公”ではなかったな」

俺がぽつりと呟くと、勇者はさらにしょんぼりした。

「じゃあさ、帰ったらどうする?凱旋パレードとかあるのかな?」

戦士がワクワクしながら聞くが、俺は首を振った。

「いや、たぶん『魔王がもういない』って話、誰も信じねぇよ。お前らが信用される気配ゼロだからな」

「うわ、それつら……」

戦士は頭をかきながら、ふと立ち止まる。

「てか、今さらだけど……道、合ってる?この森、さっきと同じ木しか見えないんだけど」

……。

「……それ、早く言えよおおおおおおおおお!!!」

俺の怒号が森に響く。鳥が一斉に飛び立つ音がした。

「ごめんごめん、でもほら、迷ったっていうより、冒険っぽくない?こういうの!」

「迷子は冒険じゃねぇよ!それはただの遭難だ!!」

「でも、今からでも新しいクエスト始められるんじゃない?」

魔法使いがきょろきょろと周囲を見回す。

「例えば“この森の出口を見つけろ”とか。“失われた村を探せ”とか!」

「いや、それ“魔王討伐の帰り道”だぞ!?スピンオフ始めんな!!」

勇者はというと、静かに草の上に座り込んでいた。

「もう…ぼく、帰ったらパン屋になろうかな…」

「パン屋!?急すぎるだろ職種変更!!」

「なんか向いてない気がしてさ…世界救うとか、荷が重かったよ……」

そのときだった。

「……あっ」

魔法使いが何かに気づいたように指をさした。

「道、見つけた」

「どこに!?ていうか最初から見えてただろそれ!!なんでスルーしたんだよ!!」

「だって、雰囲気よかったから……ちょっと寄り道したくなって」

「寄り道で魔王城から迷う奴いるか!!」

そうして、迷いと脱線と怒号を繰り返しながら――

俺たちは、少しずつ、確実に、いやなんとなく帰路についていた。

世界は救われた(多分)。
だが、俺の精神は、もうすでに限界だった。

作者メッセージ

やっと魔王を倒したと思ったら、帰り道でまた無駄なことが続くんだよな。
戦士は相変わらず迷子になって、魔法使いはアイス屋でバイトの話ばっかしてるし。
勇者もまた変なこと言い出すし、もうみんなほんとに大丈夫かって感じ。
でもまあ、こういう連中だからこそ、ちょっとした冒険も面白くなるんだよな。
次回も、お楽しみに!もう少しだけ、付き合ってくれよな。

語り手

2025/04/23 21:03

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