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魔王倒しに行くんだよね、うん、でもさ…

#1

魔王討伐、最速の無駄遣い

魔王の城──それは、幾多の勇者たちが目指し、そして倒れていった終焉の地。だが今、新たな伝説が始まる…はずだった。

「さあ、魔王の城だ!ついに来たぞ!みんな、準備はいいか!」

興奮気味に叫ぶのは、進行役――もとい、語り手である俺。苦労してここまで連れてきたパーティの面々に、ついにそのときが来たことを告げた。

が。

「うーん、ちょっと待って!準備、準備……ちょっと、もう少しメンタルを整えてからにしよう!」

と、勇者。剣を握る手は震えており、顔はやや青ざめている。

「何を整えてんだよ!魔王が待ってるんだぞ!早く行けよ!」

俺がキレ気味に突っ込むも、その横からさらに驚きの声が。

「ちょっと待って!トイレ行ってくる!」

言ったのは戦士。豪快な斧を担いでいるくせに、トイレは豪快には済ませられないらしい。

「トイレ!?今!?ダンジョンの中でかよ!お前、絶対魔王倒す気ないだろ!」

俺の怒号もむなしく、戦士はダッシュで引き返していった。

「じゃあ、私もその間に……ちょっと魔法の練習しようかな?」

のんびりと呟く魔法使い。こちらはマイペースの極みで、空に向かって火の玉をちょこちょこ飛ばして遊んでいる。

「魔法の練習!?今、やるべきことは魔王を倒すことだろうが!!」

俺はもう、怒鳴り疲れていた。

「でもさ、よく考えたら魔王って本当に倒すべきなのか……ちょっと心の準備が……」

勇者が言う。いやもう準備何回目だ。お前の心は迷子か。

「心の準備!?お前、どんだけ時間かけんだよ!倒すなら今だろ!!」

俺の声が響き渡る中、ようやく戦士が戻ってきた。

「よし、トイレ終わった!じゃあ、準備万端!」

満面の笑みで言う戦士に、俺は叫んだ。

「準備万端!?お前、トイレ行ってる間に魔王に支配されてるわ!!」

「ところで、魔王ってどんな感じなんだろう?怖いのかな?」

と、魔法使い。まるで動物園にでも行く感覚である。

「怖いも何も!お前、魔王のこと考えてる暇があったら、さっさと倒せよ!!」

全員が揃ってなお、前に進まないこの状況。俺の忍耐が限界に達した瞬間だった。

「もういい!!」

俺は腰の剣を抜き放った。パーティを無視して、魔王の部屋へと突撃する。

「俺が倒す!!」

ドアを蹴破り、突入。中には、不敵に笑う魔王がいた。

「ふふふ……よく来たな、勇者よ――」

ズバン。

語り手(俺)の一撃が、魔王のセリフをぶった切った。あっけなく倒れる魔王。

「う……うそだろ……速すぎる……!」

魔王の最後の言葉を背に、俺は部屋を後にした。

「終わった。これが勇者だよ。お前ら、今からでもちゃんと働け。」

ようやく追いついてきたパーティを睨みつけながら言うと――

「え?倒しちゃったんだ……じゃあ、帰るか。」

と戦士が言い、

「ふーん、もう終わっちゃったんだ。じゃあ帰り道にアイス買おう!」

と、魔法使いがのんびりと笑う。

勇者は、しばらく黙ったあと言った。

「……よかった。メンタル整ってないまま行かなくて。」

俺は、もう何も言わなかった。

いや、正確にはもう言う気力がなかった。

作者メッセージ

さて、魔王を倒したはずの俺たち、でも帰り道に問題が!?
勇者、ついに「俺、何で勇者やってるんだろ?」と悩み始める。
戦士はまたしても迷子になり、魔法使いはアイス屋でバイト募集を探し始める!?
魔王倒した後もまだまだ無駄遣いは続く……。
次回、帰り道編、お楽しみに!

――『魔王討伐、最速の無駄遣い:帰り道編』乞うご期待!

語り手

2025/04/23 21:02

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