魔王倒しに行くんだよね、うん、でもさ…
魔王の城──それは、幾多の勇者たちが目指し、そして倒れていった終焉の地。だが今、新たな伝説が始まる…はずだった。
「さあ、魔王の城だ!ついに来たぞ!みんな、準備はいいか!」
興奮気味に叫ぶのは、進行役――もとい、語り手である俺。苦労してここまで連れてきたパーティの面々に、ついにそのときが来たことを告げた。
が。
「うーん、ちょっと待って!準備、準備……ちょっと、もう少しメンタルを整えてからにしよう!」
と、勇者。剣を握る手は震えており、顔はやや青ざめている。
「何を整えてんだよ!魔王が待ってるんだぞ!早く行けよ!」
俺がキレ気味に突っ込むも、その横からさらに驚きの声が。
「ちょっと待って!トイレ行ってくる!」
言ったのは戦士。豪快な斧を担いでいるくせに、トイレは豪快には済ませられないらしい。
「トイレ!?今!?ダンジョンの中でかよ!お前、絶対魔王倒す気ないだろ!」
俺の怒号もむなしく、戦士はダッシュで引き返していった。
「じゃあ、私もその間に……ちょっと魔法の練習しようかな?」
のんびりと呟く魔法使い。こちらはマイペースの極みで、空に向かって火の玉をちょこちょこ飛ばして遊んでいる。
「魔法の練習!?今、やるべきことは魔王を倒すことだろうが!!」
俺はもう、怒鳴り疲れていた。
「でもさ、よく考えたら魔王って本当に倒すべきなのか……ちょっと心の準備が……」
勇者が言う。いやもう準備何回目だ。お前の心は迷子か。
「心の準備!?お前、どんだけ時間かけんだよ!倒すなら今だろ!!」
俺の声が響き渡る中、ようやく戦士が戻ってきた。
「よし、トイレ終わった!じゃあ、準備万端!」
満面の笑みで言う戦士に、俺は叫んだ。
「準備万端!?お前、トイレ行ってる間に魔王に支配されてるわ!!」
「ところで、魔王ってどんな感じなんだろう?怖いのかな?」
と、魔法使い。まるで動物園にでも行く感覚である。
「怖いも何も!お前、魔王のこと考えてる暇があったら、さっさと倒せよ!!」
全員が揃ってなお、前に進まないこの状況。俺の忍耐が限界に達した瞬間だった。
「もういい!!」
俺は腰の剣を抜き放った。パーティを無視して、魔王の部屋へと突撃する。
「俺が倒す!!」
ドアを蹴破り、突入。中には、不敵に笑う魔王がいた。
「ふふふ……よく来たな、勇者よ――」
ズバン。
語り手(俺)の一撃が、魔王のセリフをぶった切った。あっけなく倒れる魔王。
「う……うそだろ……速すぎる……!」
魔王の最後の言葉を背に、俺は部屋を後にした。
「終わった。これが勇者だよ。お前ら、今からでもちゃんと働け。」
ようやく追いついてきたパーティを睨みつけながら言うと――
「え?倒しちゃったんだ……じゃあ、帰るか。」
と戦士が言い、
「ふーん、もう終わっちゃったんだ。じゃあ帰り道にアイス買おう!」
と、魔法使いがのんびりと笑う。
勇者は、しばらく黙ったあと言った。
「……よかった。メンタル整ってないまま行かなくて。」
俺は、もう何も言わなかった。
いや、正確にはもう言う気力がなかった。
「さあ、魔王の城だ!ついに来たぞ!みんな、準備はいいか!」
興奮気味に叫ぶのは、進行役――もとい、語り手である俺。苦労してここまで連れてきたパーティの面々に、ついにそのときが来たことを告げた。
が。
「うーん、ちょっと待って!準備、準備……ちょっと、もう少しメンタルを整えてからにしよう!」
と、勇者。剣を握る手は震えており、顔はやや青ざめている。
「何を整えてんだよ!魔王が待ってるんだぞ!早く行けよ!」
俺がキレ気味に突っ込むも、その横からさらに驚きの声が。
「ちょっと待って!トイレ行ってくる!」
言ったのは戦士。豪快な斧を担いでいるくせに、トイレは豪快には済ませられないらしい。
「トイレ!?今!?ダンジョンの中でかよ!お前、絶対魔王倒す気ないだろ!」
俺の怒号もむなしく、戦士はダッシュで引き返していった。
「じゃあ、私もその間に……ちょっと魔法の練習しようかな?」
のんびりと呟く魔法使い。こちらはマイペースの極みで、空に向かって火の玉をちょこちょこ飛ばして遊んでいる。
「魔法の練習!?今、やるべきことは魔王を倒すことだろうが!!」
俺はもう、怒鳴り疲れていた。
「でもさ、よく考えたら魔王って本当に倒すべきなのか……ちょっと心の準備が……」
勇者が言う。いやもう準備何回目だ。お前の心は迷子か。
「心の準備!?お前、どんだけ時間かけんだよ!倒すなら今だろ!!」
俺の声が響き渡る中、ようやく戦士が戻ってきた。
「よし、トイレ終わった!じゃあ、準備万端!」
満面の笑みで言う戦士に、俺は叫んだ。
「準備万端!?お前、トイレ行ってる間に魔王に支配されてるわ!!」
「ところで、魔王ってどんな感じなんだろう?怖いのかな?」
と、魔法使い。まるで動物園にでも行く感覚である。
「怖いも何も!お前、魔王のこと考えてる暇があったら、さっさと倒せよ!!」
全員が揃ってなお、前に進まないこの状況。俺の忍耐が限界に達した瞬間だった。
「もういい!!」
俺は腰の剣を抜き放った。パーティを無視して、魔王の部屋へと突撃する。
「俺が倒す!!」
ドアを蹴破り、突入。中には、不敵に笑う魔王がいた。
「ふふふ……よく来たな、勇者よ――」
ズバン。
語り手(俺)の一撃が、魔王のセリフをぶった切った。あっけなく倒れる魔王。
「う……うそだろ……速すぎる……!」
魔王の最後の言葉を背に、俺は部屋を後にした。
「終わった。これが勇者だよ。お前ら、今からでもちゃんと働け。」
ようやく追いついてきたパーティを睨みつけながら言うと――
「え?倒しちゃったんだ……じゃあ、帰るか。」
と戦士が言い、
「ふーん、もう終わっちゃったんだ。じゃあ帰り道にアイス買おう!」
と、魔法使いがのんびりと笑う。
勇者は、しばらく黙ったあと言った。
「……よかった。メンタル整ってないまま行かなくて。」
俺は、もう何も言わなかった。
いや、正確にはもう言う気力がなかった。