二次創作
色々投稿するやつ!!
私は、三姉妹の末っ子、[漢字]橋本 夏鈴咲[/漢字][ふりがな]はしもと かずさ[/ふりがな]![漢字]凪砂[/漢字][ふりがな]なぎさ[/ふりがな]小学校の5年生で、甘えん坊で泣き虫の元気モリモリ現役小学生!!恋愛小説が大好きで、一番上のお姉ちゃんから貰った、恋愛小説の、「極上男子は、地味子を奪いたい。」を愛読している。あっ家族構図は、さっき言ったけど橋本家は三姉妹がいて、もっと詳しく言うと、
父→[漢字]雅彦[/漢字][ふりがな]まさひこ[/ふりがな]はコンピューター会社、[漢字]伊木白[/漢字][ふりがな]いぎしろ[/ふりがな]で働いている。
母→[漢字]雛子[/漢字][ふりがな]ひなこ[/ふりがな]は[漢字]那比[/漢字][ふりがな]なび[/ふりがな]設備で働いていて、会社の人と仲が良い。
長女→[漢字]明日咲[/漢字][ふりがな]あずさ[/ふりがな]は[漢字]桜道[/漢字][ふりがな]さくらみち[/ふりがな]高校に通っていて、制服が可愛い。小説を書いていて、いつか読んでみたい。
次女→[漢字]那珠咲[/漢字][ふりがな]なずさ[/ふりがな]は凪砂中学校に通っていて、家から近いから羨ましい。ダンスが上手で、覚えたダンスは大体踊れる。
三女→[漢字]夏鈴咲[/漢字][ふりがな]かずさ[/ふりがな]は凪砂小学校に通っていて、恋愛小説が大好き。笑い方が独特(キモい)。
と、こんなふうに出来ている。でも、私達は三姉妹だけど、全然顔が違う。
私は、明日咲のことを「お姉ちゃん」と呼んでいて、那珠咲のことを「ねぇね」と呼んでいる。小さい頃にお姉ちゃんに紛らわしいと言われたから・・・。
今日は、お姉ちゃん達がテストが終わったら「お疲れ様」としてプレゼントを渡すために、さがらわショッピングモールに来ている。とりあえず買うものは決めているので、すぐに買い物は終わったから、ママの買い物が終わるまで、お店の前に設置されてある椅子に座って「極上男子は、地味子を奪いたい。」を読んでいた。そしたら、何やら歓声のような嬉しそうな悲鳴が少し遠くの方から聞こえてきた。少々気になるけど、私は本に集中したいので無視した。
やがて、声が大きくなってきた。騒がしくて正直、五月蝿いと思ってしまった。その五月蝿いと同時に、なんで声があちこちから上がっているのか興味が湧いてきてしまった。
思わず本から目を離して、声が上がる正体の方を見てしまった。
そこにあった姿は___
「___え?」
思わず、小さな声を上げてしまった。
「なぜここにいるのか。」それは誰もが思った。でも、私の「なぜここにいるのか。」は、他の人とは、違う。
何故なら、「極上男子は、地味子を奪いたい。」の「[漢字]長王院 天聖[/漢字][ふりがな]ちょうおういん てんせい[/ふりがな]」と「[漢字]一ノ瀬 花恋[/漢字][ふりがな]いちのせ かれん[/ふりがな]」、「[漢字]椿 仁斗[/漢字][ふりがな]つばき じんと[/ふりがな]」、「[漢字]榊 大河[/漢字][ふりがな]さかき たいが[/ふりがな]」、「[漢字]泉 充希[/漢字][ふりがな]いずみ みつき[/ふりがな]」の姿があったからだ。
私は困惑している頭で思ったことは、なぜ、本の登場人物が目の前にいるのか、というもの。本当に、顔や体型などが全て一致している。本はイラストで姿が描かれていたけど、現実でもこの世の人とは思えないオーラが漂っていた。
「なっなんで沼津に長王院様とカレンが!?しかも仁斗様と大河様と充希様まで・・・!」
「私、本物 初めて見た!やっぱり目の保養だわ〜!長王院様カッコよすぎ。」
「えっカレンがいるじゃん・・・マジで天使だ・・・かわい過ぎる・・・。」
などなど、極奪(極上男子は、地味子を奪いたい。の省略)に出てくる人達の名前がどんどんと出てきて、私は思わず息を呑んでしまった。
(ほっ本当に・・・実在したんだ・・・。)
しかし、私は目を逸らした。イケメンをずっと見ていると、目が潰れてしまうから。バルスみたいな感じで、「目がぁ目があぁ」となってしまう。(((無視してOKです!
好きな小説の登場人物がこっちに来ているとはいえ、〇〇様〜とか言うつもりはない。〇〇様〜なんて、ただの超超超超オタクな人だけが言うことだから、私には関係ない。そのまま引き続き本を読み始めた。そしたら、周りにいた人の、ある声が私の耳にスッと入ってきた。
「そういえば、[漢字]星ノ望学園[/漢字][ふりがな]ほしののぞみがくえん[/ふりがな]、こっち(※どこの都道府県にするかめんどくさかったためこっちorここにします。)に移転する予定らしいよ。」
「あっ確かに、ニュースでやってたね。新しい大きなショッピングモールを作るために、星ノ望学園の土地が欲しかったらしいって言ってたよね。」
「そうそう。それで、星ノ望学園の理事長がすぐに受け止めて、こっちに新しい星ノ望学園を建てるって、大ニュースだったよね。私、その時発狂しちゃったもん!長王院様がここに来るなんて思っていなかったから!しかもカレンまで来るのよ?えげつないって。」
その会話を聞いて私は正直、「えー」と思ってしまった。なんで快く受け止めちゃうの。・・・なんて納得してる場合かああぁぁ!なんでこんな平凡なここに移転するの!?私のクラスのことだけど、多分ここヤンチャな人多いし。それにしても、小説には、理事長は出てきてなかったけど、あんなに優しかったの?
そう自分の心の中で早口で言っていたけど、考え過ぎて汗がダバダバと出てきた。
冬よりの秋なのに、夏なのかというぐらい汗が吹き出してきた。
そして、その後は、汗が止まらなくなるという現象のピークに達した。人生最大の歓喜と困惑がきたからだ。
「あっ天聖さん。あの子、私と似ているイラストが描かれてる小説読んでます![小文字]あっちの絵の方が可愛いな・・・私なんて可愛さの欠片なんて・・・。[/小文字]」
「確かに似てっけど、花恋とは比べ物になんねぇな。花恋の方が可愛っ_」
ゴッ
「って・・・なんだよ天聖!」
「気安く可愛いと言うな。言って良いのは俺だけだ。」
「は!?」
充希が花恋を自慢しているように喋っているときは、顔を赤らめていたけど、その言葉を聞いて、確かに近くにいる花恋はこの世の人かと思えるぐらい綺麗だ。
けれど、正直ガッカリした。なぜなら、小説の方だって私は好きだからだ。思わず唸ってしまった。充希にほんのちょっと、嫌気がさしちゃった・・・。
そう思っていたら、隣から大いなる圧みたいなのを覆った足音が聞こえた。まさか、とは思ったけど、そのまさかのまさかだった。
(ママ・・・早く買い物終わって!)
心からの叫びだったけど、ジャストタイミングでやってきてしまった。
「ねぇ、何読んでるの?恋愛小説?」
目の前に神々しい人が座った。
花恋だ。華麗な歌で人々を虜にさせる、世界に一人の美女。その超超超超超超凄い人が、私の隣に座り、話しかけてくれたんだ。
返事をしないと、天聖に殺されると思った。 それは瞬時に察知した。まるで、返事をしなければ殺すことを悟るオーラが、天聖の周りに纏わりついていた。
「ぁっ・・・はいっ恋愛小説です。恋愛小説好きなので。」
私はできるだけ冷静に答えた。でも、私の頭の中は、地球外生命体がウニョウニョしているかのようだ。目の前に超超超超美人な花恋がいるのだから。しかも、そのすぐ後ろに、美形のモデルでもやってんのかレベルの仁斗達がいる。
でも、充希は私のことをまるでGを見ているかのような目でこっちを見てた。
多分、大好きな花恋が知らんチビに、花恋と一緒にいる時間が取られてしまったから私を恨んでるんだ。
「夏鈴・・・あっ。」
このタイミングで!?っていうタイミングでママがやって来てしまった。どうしよう。なんでめっちゃ有名な長王院 天聖が、我が娘の夏鈴咲に絡んでいるのかと。絡まれてる私でさえ困惑しているのに、ママも困惑してしまっては状況が理解できない。あのぅ・・・マジで誰か助けてください。
周りの人も、そんな羨ましそうな目で見ないでほしいし。私だって話しかけてくれ、なんて願ってないもん!会いたいとは思っていたけどさ!嫌な奇跡としかいいようがないよこの状況!
だけど、頭の隅で状況を理解する。できる限り、冷静に理解する。
「スゥ・・・で、私になんか・・・用ですか?母が待って・・・るので・・・。」
あーヤバい殺されるかもしれませんすいませんママ。だって・・・天聖がこっちをめっちゃ不機嫌そうに見てるし、殺気しか察知できない。ヤバい。死ぬ、以外に頭の中にはなかった。しかし、花恋が殺気を消してくれた。
「その小説、好きなの?」
しかし、話しかけてくれた花恋でさえ、冷や汗をかいていた。多分、花恋も天聖の殺気を感じて、必死に和らげようとしてくれているのだろう。それでも、花恋はその雰囲気を感じさせないような声でみんなを圧倒した。
「あの子いいなぁ。カレンに話しかけられて。」
「羨ましい。」
いや別に私は羨ましく思われたくないからね!?まるでコントみたいにツッコんでしまった。
でも、羨ましく思われたくないのは事実だ。有名人になりたくて花恋に金渡して話しかけてくれなんて私は一切やらないし、そもそも金が無いから無理です、断言できます。しかし、誤解されるのだけは御免だ。だって恨みで殺されるのはマジで嫌だもん。ストーカーだって、相手が他の奴と接触したら、独占したいからって相手を殺すことだってあるからマジのマジのマジで警戒しかできなくなる。
本当に誤解だけでも解きたい・・・けれど、今ここで宣言するのも自分でも恥ずかしいし嫌だ。花恋には申し訳ないけれど、話しかけないでほしかった。
「あの・・・母が待っているのでそろそろ・・・宜しいですか?」
そう言うと、花恋はハッとして、突っ立っている私のママを見た。そしたら、花恋に見られたママはギョッとして。一歩後ろに下がった。そうしたら、花恋が申し訳無さそうに天聖の方を見て、ママの方に駆け寄り
「申し訳ございませんお母さん。私つい・・・すみませんご迷惑おかけして。」
「・・・!?!?えあっぅえ!?」
深々と頭を下げた花恋の後、3秒くらい黙って、驚いた顔をして少し醜い声を上げて声に答えたママ。ママは、あの由姫に何をしたんだという顔で私を見た。そしたら、花恋の後ろにいた天聖が声をかけた。その一言は、私と花恋、仁斗達でさえも驚いた一言だった。
「しばらくあいつを借りる。帰りは送るから電話番号教えろ。」
私はめちゃめちゃ焦ったし、なぜ借りるの!?と思わず口に出そうなほどツッコみたくなった。
ママも、案の定困惑していた。そしたら、ママは少し震えている口を開けてやっと言葉を発した。
「あの、なんで夏鈴咲・・・私の娘を借りる?のでしょうか。」
私は驚愕した。今まで、家族ではない人にしか言わない甲高い声で人に話しかけていたけど、今のママは、誰かを恐れているときのような声で言った
でも、口を震わせて、誰かを恐れているときのような声で言うのも無理はない。私だってこの状況で普通の声で言葉を発することは出来ない。こんな状況で冷静に言える人は・・・天聖しかいないだろう。恐るべし、長王院 天聖・・・。
私のことをガン見している周りの人たちでさえ困惑している。
最悪、としか言いようがない。
「わからないのか?花恋があいつに興味があるから借りるんだ。理解しろ。」
うわーなんだその上から目線。ドス黒い上から目線だーママに謝れー・・・なんて思ってる場合じゃない。花恋が私に興味を持ってる!?天聖の言葉だけど、天聖の後ろで少し顔を赤らめている花恋がいるから、本当のことだろう。信じたくないけど。
「えっと・・・xxx-xxxx-xxxxです。」
いやマジで言いやがったと思ってしまった。でも気持ちはわかる。天聖の圧は、仁斗と大河以外、誰も耐えられないだろう。
「夏鈴咲・・・。」
ママが心配そうな顔で私の名前を呼んだ。
「ママ、大丈夫だよ!何かあったらすぐ連絡するから!」
私は、そう言った。でも、本当は大丈夫じゃない。本当の本当は整形をして天聖や花恋、仁斗達になりすましている可能性もある。でも、これ以上心配させたくないから大丈夫と言った。
花恋達と買い物をする直前に、ママと私はハグをした。いつもより少し、強く。
「ママも気をつけてね!」
「また後でね。」
私は何故、ママが「また後でね。」と言ったのはすぐにわかった。それは、私が寂しがらないように、あえて「また後で」と言ってくれたんだ。視界が水っぽくなった。涙を一粒流した。これ以上出したら不自然に思われてしまうから、全部拭き取った。
「じゃあね。」
今は、もう何も言いたくない。ママも泣いてしまうから。
花恋達について行った。もう泣きたくないから。
でも、花恋達について行ったことが、私の人生を大きく変わったことは、まだ誰も知らない___
ママと別れてから一分間、私は突っ立ってた。何をしていいのか分からず、蓮達の会話を聞いているしかなかったからだ。
「えっと・・・天聖さん少し強引だったんじゃ・・・。」
「そうだぞ。花恋がこの子の母親を、天聖が強引に離したもんだから心配してるぞ。」
仁斗が天聖を責めた。そしたら、天聖がほんの少し眉毛を下げて、驚くほど甘い声で由姫に言った。
「強引だったか?すまないな花恋。」
私は思わず、「謝る相手は私だろ!!」とツッコむところだったけど、今はそんな状況じゃない。
もちろん、小説で天聖が花恋にものすごく甘いことは知っていたけれど、こんなに重症なんて思ってなかった。あはは・・・気まず。
買い物に行きたいところに花恋達がついてきてくれるが、視線がすごい。私は正直、目立つことが苦手だから、花恋が変装した姿で来てくれれば良かった、なんて心の中で、愚痴を言ってしまった。
多分、言ったら天聖に殺されるだろうな。怖い・・・。
「て、天聖さん、謝るのは私じゃありませんよ!この子です!」
「花恋が天聖のせいで困っているぞ。しかも花恋の言う通り、この子に謝るんだぞ。・・・ってそういえば名前聞いてなかったね。」
この状況で名前を言わなければならないのはおかしいが、確かに仁の言う通り、「この子」と言われるのは嫌だから言っとくか。
「えっと・・・橋本 夏鈴咲です。夏に鈴、咲くと書いて夏鈴咲です。宜しくお願いします。」
「へぇ可愛い名前だね。俺達の名前は、知ってる?」
申し訳ないけど・・・絶対こう思ったよね?「まだ小学生だから、流石に知らないか。」って。
馬鹿にしないでよ!さっき説明したけど、あなた達は私が愛読している、恋愛小説の登場人物です!なので名前ぐらい知ってるよ!
でも、怒りは顔に出さずに答えてみる。
「えーと、金髪の綺麗なお兄さんが泉 充希さんで、赤髪の優しそうな人が椿 仁斗さん。そして、緑色のメガネのお兄さんが榊 大河さん・・・ですよね?合ってますか?」
私は、わざと「合ってますか?」と言った。なぜなら、「絶対そうですよね!?」なんて言ったら私も仁斗達もイラつくから。そしたら、仁斗がほんの少しだけ驚いた顔をした。でも、それを感じさせないように冷静に口を開けた。
「そうだよ。よくわかったね!漢字も難しいのに。」
「おい、気安く俺の名前を言うんじゃねえぞ!」
充希が突然大きな声を出すからビクッとしてしまったけれど、私が通っている学校のクラスの男子よりにはあまり達していなかったので、まぁまぁと思った。
「充希さん、あまりここで大きい声を出したら・・・。夏鈴咲ちゃんも吃驚してますよっ。」
夏鈴咲ちゃん・・・も?ということは、花恋も吃驚した、ということかな?まぁオタク以外の叫び声はあまり聞いたことがない環境で育ったと思うから、さほど驚くことではないな。
「え〜っと・・・買い物したいのでそろそろ進みましょうか?」
「あっごめんね!で、どこ行くの?」
「もうお姉ちゃんちへのプレゼントはもう済ましたので、あとは自分が欲しいものを買おうと思いまして。」
「お金は?」
「ぅっ・・・だいじょうっぶだとおもいま・・・す。」
「絶対大丈夫じゃないでしょ。お金はどうしたの?」
仁斗が、ズイズイ質問してくるから心が傷んだ。正論で質問をしてくるから、まともに返事ができない。
「うぅ・・・お姉ちゃん達が欲しいものが少し高くて・・・。あま・・・り・・・・。」
「やっぱり。プレゼントだからって、お金をかけるものではないよ。」
うっ・・・やっぱりバレてたか・・・。実は、プレゼントでお金を使いすぎてしまったんだ。でも、仁斗は鋭いな。ここまで見通すとは想定外だった。
「ちょっとATM行ってくるよ。」
「・・・???」
なぜこのタイミングで?さっき行けばよかったのに・・・と、思いつつも、お金の話をしたらお金関係を思い出すこともあるんだから別に気にすることじゃないか、と思った。
そしたら、大金を持ってきて、私に差し出した。羨ましがる庶民の姿を見たいから、見せびらかしてんのかと思った。
「はい、あげる。これで買いな。」
・・・・・・・・ん?え?「これで買いな」?何を言ってるんだ?
だって、大金をこんなに軽々とATMから持ってきて、人にあげるなんて、余っ程金持ちじゃない限りできない。
小説でも、仁斗は椿グループという、有名なグループの御曹司で、金持ちで頭が良いのは知っているけれど、簡単にお金を渡すという、少し頭が欠けた人だとは思わなかった。
お金は欲しいけれど、受け取ったらママになんと言われることか・・・。
私は、絶対に奮発して買い物しすぎてママに怒られる、という未来が見えている。
「ほっ欲しいですけれど、受け取れません!ママに怒られてしまいますし、仁斗さんのお金がなくなってしまうかもしれないので、受け取れません。」
思わず正直に喋ってしまったけれど、本心をそのまま言ったので、気持ちは伝わっただろう。欲しいは欲しいけれど、ママに怒られる、というのが本当に嫌なので、受け取れない。隠したとしても、すぐに見つかると思うから、貰えない。そもそも、恋愛小説や漫画、推しグッズで机がいっぱいで置く場所もない。
「引っ越せばいいだろ。」
サラッと言った一言が、色んな意味でデカい。部屋を造る、ではなく引っ越す、という発想は無かったから、めちゃくちゃ吃驚した。
「引っ越せませんよ!家族と離れるの寂しいし、友達と離れるのも嫌ですよ!」
「「流石に引っ越すはないんじゃないか?」」
仁斗と大河がカバーしてくれたのは良かったけれど、サラリと規格外を言ってしまう天聖はどうかしていると思う。家族や友達と別れる勇気があるならば引っ越すけれど、私は泣き虫だしホームシックだし一人は怖いし・・・引っ越すと、色々と嫌なことがあるから、引っ越しはしたくない。せめて、家を近くにするとかにしてくれよ。
「てっ天聖さんっ、今は買い物をしましょう!調べてみたんですけど、さがらわショッピングモールって、可愛いものが沢山あるらしいんです!私も、丁度来たかったので、時間がある限りまわってみませんか?」
少し重い空気が出ていたところを、花恋が見事に花を咲かせてくれたので助かった。しかも、花恋がさがらわショッピングモールに来たいって聞いたのは、正直嬉しかった。私が住んでいる沼津市は、正直に言うと、富士山が綺麗に見えるのと、さがらわショッピングモール以外魅力が無いと思ったから、嬉しい。
でも・・・もう一つ私にとっての問題がある。私の手元にある__
「この大金・・・どうしたらいいですか?」
そう、さっき仁斗から貰ったこの大金。
さっきからずっと持っていたけれど、どうすればよいのか分からない。
「あー持ってて。」
「使えません。欲張って全部使ってしまうので。」
「自覚はあるんだね。」
仁斗の言う通り、お年玉を使い過ぎてねぇねに注意されたから、自覚はちゃんとある。
「仁斗が本当にあげたいのなら、少し小さめの金庫を買うしかないな。」
うーん・・・どうだろうな。小さめの金庫があれば安心だが、私は、自分の部屋が無い。私は父の部屋の一部を借りて机と棚を置いているだけで、すぐバレる。金庫があったらパパに不自然に思われてしまうし、お姉ちゃんは私が所持している漫画を勝手に読む。金庫の番号がバレなければ良いのだが、すぐに開けてしまうだろう。お姉ちゃんは気になる物がすぐ目に入り、好奇心が勝ってしまって我慢することができないから、多分、私の金庫を開けるだろう。
「天聖の言う通り、引っ越すことも頭に入れといたほうがいいと思うよ。」
私のことを気遣って、優しい声で言ってくれた。
「おーい。閉店まであと2時間だぞ。時間内から早くした方がいいんじゃないか?」
「わっ早くまわりましょう!金庫とか、引っ越しの話はまた後日しましょう!」
うーーーーんこの人達と一緒にショッピングするのマージ?????
父→[漢字]雅彦[/漢字][ふりがな]まさひこ[/ふりがな]はコンピューター会社、[漢字]伊木白[/漢字][ふりがな]いぎしろ[/ふりがな]で働いている。
母→[漢字]雛子[/漢字][ふりがな]ひなこ[/ふりがな]は[漢字]那比[/漢字][ふりがな]なび[/ふりがな]設備で働いていて、会社の人と仲が良い。
長女→[漢字]明日咲[/漢字][ふりがな]あずさ[/ふりがな]は[漢字]桜道[/漢字][ふりがな]さくらみち[/ふりがな]高校に通っていて、制服が可愛い。小説を書いていて、いつか読んでみたい。
次女→[漢字]那珠咲[/漢字][ふりがな]なずさ[/ふりがな]は凪砂中学校に通っていて、家から近いから羨ましい。ダンスが上手で、覚えたダンスは大体踊れる。
三女→[漢字]夏鈴咲[/漢字][ふりがな]かずさ[/ふりがな]は凪砂小学校に通っていて、恋愛小説が大好き。笑い方が独特(キモい)。
と、こんなふうに出来ている。でも、私達は三姉妹だけど、全然顔が違う。
私は、明日咲のことを「お姉ちゃん」と呼んでいて、那珠咲のことを「ねぇね」と呼んでいる。小さい頃にお姉ちゃんに紛らわしいと言われたから・・・。
今日は、お姉ちゃん達がテストが終わったら「お疲れ様」としてプレゼントを渡すために、さがらわショッピングモールに来ている。とりあえず買うものは決めているので、すぐに買い物は終わったから、ママの買い物が終わるまで、お店の前に設置されてある椅子に座って「極上男子は、地味子を奪いたい。」を読んでいた。そしたら、何やら歓声のような嬉しそうな悲鳴が少し遠くの方から聞こえてきた。少々気になるけど、私は本に集中したいので無視した。
やがて、声が大きくなってきた。騒がしくて正直、五月蝿いと思ってしまった。その五月蝿いと同時に、なんで声があちこちから上がっているのか興味が湧いてきてしまった。
思わず本から目を離して、声が上がる正体の方を見てしまった。
そこにあった姿は___
「___え?」
思わず、小さな声を上げてしまった。
「なぜここにいるのか。」それは誰もが思った。でも、私の「なぜここにいるのか。」は、他の人とは、違う。
何故なら、「極上男子は、地味子を奪いたい。」の「[漢字]長王院 天聖[/漢字][ふりがな]ちょうおういん てんせい[/ふりがな]」と「[漢字]一ノ瀬 花恋[/漢字][ふりがな]いちのせ かれん[/ふりがな]」、「[漢字]椿 仁斗[/漢字][ふりがな]つばき じんと[/ふりがな]」、「[漢字]榊 大河[/漢字][ふりがな]さかき たいが[/ふりがな]」、「[漢字]泉 充希[/漢字][ふりがな]いずみ みつき[/ふりがな]」の姿があったからだ。
私は困惑している頭で思ったことは、なぜ、本の登場人物が目の前にいるのか、というもの。本当に、顔や体型などが全て一致している。本はイラストで姿が描かれていたけど、現実でもこの世の人とは思えないオーラが漂っていた。
「なっなんで沼津に長王院様とカレンが!?しかも仁斗様と大河様と充希様まで・・・!」
「私、本物 初めて見た!やっぱり目の保養だわ〜!長王院様カッコよすぎ。」
「えっカレンがいるじゃん・・・マジで天使だ・・・かわい過ぎる・・・。」
などなど、極奪(極上男子は、地味子を奪いたい。の省略)に出てくる人達の名前がどんどんと出てきて、私は思わず息を呑んでしまった。
(ほっ本当に・・・実在したんだ・・・。)
しかし、私は目を逸らした。イケメンをずっと見ていると、目が潰れてしまうから。バルスみたいな感じで、「目がぁ目があぁ」となってしまう。(((無視してOKです!
好きな小説の登場人物がこっちに来ているとはいえ、〇〇様〜とか言うつもりはない。〇〇様〜なんて、ただの超超超超オタクな人だけが言うことだから、私には関係ない。そのまま引き続き本を読み始めた。そしたら、周りにいた人の、ある声が私の耳にスッと入ってきた。
「そういえば、[漢字]星ノ望学園[/漢字][ふりがな]ほしののぞみがくえん[/ふりがな]、こっち(※どこの都道府県にするかめんどくさかったためこっちorここにします。)に移転する予定らしいよ。」
「あっ確かに、ニュースでやってたね。新しい大きなショッピングモールを作るために、星ノ望学園の土地が欲しかったらしいって言ってたよね。」
「そうそう。それで、星ノ望学園の理事長がすぐに受け止めて、こっちに新しい星ノ望学園を建てるって、大ニュースだったよね。私、その時発狂しちゃったもん!長王院様がここに来るなんて思っていなかったから!しかもカレンまで来るのよ?えげつないって。」
その会話を聞いて私は正直、「えー」と思ってしまった。なんで快く受け止めちゃうの。・・・なんて納得してる場合かああぁぁ!なんでこんな平凡なここに移転するの!?私のクラスのことだけど、多分ここヤンチャな人多いし。それにしても、小説には、理事長は出てきてなかったけど、あんなに優しかったの?
そう自分の心の中で早口で言っていたけど、考え過ぎて汗がダバダバと出てきた。
冬よりの秋なのに、夏なのかというぐらい汗が吹き出してきた。
そして、その後は、汗が止まらなくなるという現象のピークに達した。人生最大の歓喜と困惑がきたからだ。
「あっ天聖さん。あの子、私と似ているイラストが描かれてる小説読んでます![小文字]あっちの絵の方が可愛いな・・・私なんて可愛さの欠片なんて・・・。[/小文字]」
「確かに似てっけど、花恋とは比べ物になんねぇな。花恋の方が可愛っ_」
ゴッ
「って・・・なんだよ天聖!」
「気安く可愛いと言うな。言って良いのは俺だけだ。」
「は!?」
充希が花恋を自慢しているように喋っているときは、顔を赤らめていたけど、その言葉を聞いて、確かに近くにいる花恋はこの世の人かと思えるぐらい綺麗だ。
けれど、正直ガッカリした。なぜなら、小説の方だって私は好きだからだ。思わず唸ってしまった。充希にほんのちょっと、嫌気がさしちゃった・・・。
そう思っていたら、隣から大いなる圧みたいなのを覆った足音が聞こえた。まさか、とは思ったけど、そのまさかのまさかだった。
(ママ・・・早く買い物終わって!)
心からの叫びだったけど、ジャストタイミングでやってきてしまった。
「ねぇ、何読んでるの?恋愛小説?」
目の前に神々しい人が座った。
花恋だ。華麗な歌で人々を虜にさせる、世界に一人の美女。その超超超超超超凄い人が、私の隣に座り、話しかけてくれたんだ。
返事をしないと、天聖に殺されると思った。 それは瞬時に察知した。まるで、返事をしなければ殺すことを悟るオーラが、天聖の周りに纏わりついていた。
「ぁっ・・・はいっ恋愛小説です。恋愛小説好きなので。」
私はできるだけ冷静に答えた。でも、私の頭の中は、地球外生命体がウニョウニョしているかのようだ。目の前に超超超超美人な花恋がいるのだから。しかも、そのすぐ後ろに、美形のモデルでもやってんのかレベルの仁斗達がいる。
でも、充希は私のことをまるでGを見ているかのような目でこっちを見てた。
多分、大好きな花恋が知らんチビに、花恋と一緒にいる時間が取られてしまったから私を恨んでるんだ。
「夏鈴・・・あっ。」
このタイミングで!?っていうタイミングでママがやって来てしまった。どうしよう。なんでめっちゃ有名な長王院 天聖が、我が娘の夏鈴咲に絡んでいるのかと。絡まれてる私でさえ困惑しているのに、ママも困惑してしまっては状況が理解できない。あのぅ・・・マジで誰か助けてください。
周りの人も、そんな羨ましそうな目で見ないでほしいし。私だって話しかけてくれ、なんて願ってないもん!会いたいとは思っていたけどさ!嫌な奇跡としかいいようがないよこの状況!
だけど、頭の隅で状況を理解する。できる限り、冷静に理解する。
「スゥ・・・で、私になんか・・・用ですか?母が待って・・・るので・・・。」
あーヤバい殺されるかもしれませんすいませんママ。だって・・・天聖がこっちをめっちゃ不機嫌そうに見てるし、殺気しか察知できない。ヤバい。死ぬ、以外に頭の中にはなかった。しかし、花恋が殺気を消してくれた。
「その小説、好きなの?」
しかし、話しかけてくれた花恋でさえ、冷や汗をかいていた。多分、花恋も天聖の殺気を感じて、必死に和らげようとしてくれているのだろう。それでも、花恋はその雰囲気を感じさせないような声でみんなを圧倒した。
「あの子いいなぁ。カレンに話しかけられて。」
「羨ましい。」
いや別に私は羨ましく思われたくないからね!?まるでコントみたいにツッコんでしまった。
でも、羨ましく思われたくないのは事実だ。有名人になりたくて花恋に金渡して話しかけてくれなんて私は一切やらないし、そもそも金が無いから無理です、断言できます。しかし、誤解されるのだけは御免だ。だって恨みで殺されるのはマジで嫌だもん。ストーカーだって、相手が他の奴と接触したら、独占したいからって相手を殺すことだってあるからマジのマジのマジで警戒しかできなくなる。
本当に誤解だけでも解きたい・・・けれど、今ここで宣言するのも自分でも恥ずかしいし嫌だ。花恋には申し訳ないけれど、話しかけないでほしかった。
「あの・・・母が待っているのでそろそろ・・・宜しいですか?」
そう言うと、花恋はハッとして、突っ立っている私のママを見た。そしたら、花恋に見られたママはギョッとして。一歩後ろに下がった。そうしたら、花恋が申し訳無さそうに天聖の方を見て、ママの方に駆け寄り
「申し訳ございませんお母さん。私つい・・・すみませんご迷惑おかけして。」
「・・・!?!?えあっぅえ!?」
深々と頭を下げた花恋の後、3秒くらい黙って、驚いた顔をして少し醜い声を上げて声に答えたママ。ママは、あの由姫に何をしたんだという顔で私を見た。そしたら、花恋の後ろにいた天聖が声をかけた。その一言は、私と花恋、仁斗達でさえも驚いた一言だった。
「しばらくあいつを借りる。帰りは送るから電話番号教えろ。」
私はめちゃめちゃ焦ったし、なぜ借りるの!?と思わず口に出そうなほどツッコみたくなった。
ママも、案の定困惑していた。そしたら、ママは少し震えている口を開けてやっと言葉を発した。
「あの、なんで夏鈴咲・・・私の娘を借りる?のでしょうか。」
私は驚愕した。今まで、家族ではない人にしか言わない甲高い声で人に話しかけていたけど、今のママは、誰かを恐れているときのような声で言った
でも、口を震わせて、誰かを恐れているときのような声で言うのも無理はない。私だってこの状況で普通の声で言葉を発することは出来ない。こんな状況で冷静に言える人は・・・天聖しかいないだろう。恐るべし、長王院 天聖・・・。
私のことをガン見している周りの人たちでさえ困惑している。
最悪、としか言いようがない。
「わからないのか?花恋があいつに興味があるから借りるんだ。理解しろ。」
うわーなんだその上から目線。ドス黒い上から目線だーママに謝れー・・・なんて思ってる場合じゃない。花恋が私に興味を持ってる!?天聖の言葉だけど、天聖の後ろで少し顔を赤らめている花恋がいるから、本当のことだろう。信じたくないけど。
「えっと・・・xxx-xxxx-xxxxです。」
いやマジで言いやがったと思ってしまった。でも気持ちはわかる。天聖の圧は、仁斗と大河以外、誰も耐えられないだろう。
「夏鈴咲・・・。」
ママが心配そうな顔で私の名前を呼んだ。
「ママ、大丈夫だよ!何かあったらすぐ連絡するから!」
私は、そう言った。でも、本当は大丈夫じゃない。本当の本当は整形をして天聖や花恋、仁斗達になりすましている可能性もある。でも、これ以上心配させたくないから大丈夫と言った。
花恋達と買い物をする直前に、ママと私はハグをした。いつもより少し、強く。
「ママも気をつけてね!」
「また後でね。」
私は何故、ママが「また後でね。」と言ったのはすぐにわかった。それは、私が寂しがらないように、あえて「また後で」と言ってくれたんだ。視界が水っぽくなった。涙を一粒流した。これ以上出したら不自然に思われてしまうから、全部拭き取った。
「じゃあね。」
今は、もう何も言いたくない。ママも泣いてしまうから。
花恋達について行った。もう泣きたくないから。
でも、花恋達について行ったことが、私の人生を大きく変わったことは、まだ誰も知らない___
ママと別れてから一分間、私は突っ立ってた。何をしていいのか分からず、蓮達の会話を聞いているしかなかったからだ。
「えっと・・・天聖さん少し強引だったんじゃ・・・。」
「そうだぞ。花恋がこの子の母親を、天聖が強引に離したもんだから心配してるぞ。」
仁斗が天聖を責めた。そしたら、天聖がほんの少し眉毛を下げて、驚くほど甘い声で由姫に言った。
「強引だったか?すまないな花恋。」
私は思わず、「謝る相手は私だろ!!」とツッコむところだったけど、今はそんな状況じゃない。
もちろん、小説で天聖が花恋にものすごく甘いことは知っていたけれど、こんなに重症なんて思ってなかった。あはは・・・気まず。
買い物に行きたいところに花恋達がついてきてくれるが、視線がすごい。私は正直、目立つことが苦手だから、花恋が変装した姿で来てくれれば良かった、なんて心の中で、愚痴を言ってしまった。
多分、言ったら天聖に殺されるだろうな。怖い・・・。
「て、天聖さん、謝るのは私じゃありませんよ!この子です!」
「花恋が天聖のせいで困っているぞ。しかも花恋の言う通り、この子に謝るんだぞ。・・・ってそういえば名前聞いてなかったね。」
この状況で名前を言わなければならないのはおかしいが、確かに仁の言う通り、「この子」と言われるのは嫌だから言っとくか。
「えっと・・・橋本 夏鈴咲です。夏に鈴、咲くと書いて夏鈴咲です。宜しくお願いします。」
「へぇ可愛い名前だね。俺達の名前は、知ってる?」
申し訳ないけど・・・絶対こう思ったよね?「まだ小学生だから、流石に知らないか。」って。
馬鹿にしないでよ!さっき説明したけど、あなた達は私が愛読している、恋愛小説の登場人物です!なので名前ぐらい知ってるよ!
でも、怒りは顔に出さずに答えてみる。
「えーと、金髪の綺麗なお兄さんが泉 充希さんで、赤髪の優しそうな人が椿 仁斗さん。そして、緑色のメガネのお兄さんが榊 大河さん・・・ですよね?合ってますか?」
私は、わざと「合ってますか?」と言った。なぜなら、「絶対そうですよね!?」なんて言ったら私も仁斗達もイラつくから。そしたら、仁斗がほんの少しだけ驚いた顔をした。でも、それを感じさせないように冷静に口を開けた。
「そうだよ。よくわかったね!漢字も難しいのに。」
「おい、気安く俺の名前を言うんじゃねえぞ!」
充希が突然大きな声を出すからビクッとしてしまったけれど、私が通っている学校のクラスの男子よりにはあまり達していなかったので、まぁまぁと思った。
「充希さん、あまりここで大きい声を出したら・・・。夏鈴咲ちゃんも吃驚してますよっ。」
夏鈴咲ちゃん・・・も?ということは、花恋も吃驚した、ということかな?まぁオタク以外の叫び声はあまり聞いたことがない環境で育ったと思うから、さほど驚くことではないな。
「え〜っと・・・買い物したいのでそろそろ進みましょうか?」
「あっごめんね!で、どこ行くの?」
「もうお姉ちゃんちへのプレゼントはもう済ましたので、あとは自分が欲しいものを買おうと思いまして。」
「お金は?」
「ぅっ・・・だいじょうっぶだとおもいま・・・す。」
「絶対大丈夫じゃないでしょ。お金はどうしたの?」
仁斗が、ズイズイ質問してくるから心が傷んだ。正論で質問をしてくるから、まともに返事ができない。
「うぅ・・・お姉ちゃん達が欲しいものが少し高くて・・・。あま・・・り・・・・。」
「やっぱり。プレゼントだからって、お金をかけるものではないよ。」
うっ・・・やっぱりバレてたか・・・。実は、プレゼントでお金を使いすぎてしまったんだ。でも、仁斗は鋭いな。ここまで見通すとは想定外だった。
「ちょっとATM行ってくるよ。」
「・・・???」
なぜこのタイミングで?さっき行けばよかったのに・・・と、思いつつも、お金の話をしたらお金関係を思い出すこともあるんだから別に気にすることじゃないか、と思った。
そしたら、大金を持ってきて、私に差し出した。羨ましがる庶民の姿を見たいから、見せびらかしてんのかと思った。
「はい、あげる。これで買いな。」
・・・・・・・・ん?え?「これで買いな」?何を言ってるんだ?
だって、大金をこんなに軽々とATMから持ってきて、人にあげるなんて、余っ程金持ちじゃない限りできない。
小説でも、仁斗は椿グループという、有名なグループの御曹司で、金持ちで頭が良いのは知っているけれど、簡単にお金を渡すという、少し頭が欠けた人だとは思わなかった。
お金は欲しいけれど、受け取ったらママになんと言われることか・・・。
私は、絶対に奮発して買い物しすぎてママに怒られる、という未来が見えている。
「ほっ欲しいですけれど、受け取れません!ママに怒られてしまいますし、仁斗さんのお金がなくなってしまうかもしれないので、受け取れません。」
思わず正直に喋ってしまったけれど、本心をそのまま言ったので、気持ちは伝わっただろう。欲しいは欲しいけれど、ママに怒られる、というのが本当に嫌なので、受け取れない。隠したとしても、すぐに見つかると思うから、貰えない。そもそも、恋愛小説や漫画、推しグッズで机がいっぱいで置く場所もない。
「引っ越せばいいだろ。」
サラッと言った一言が、色んな意味でデカい。部屋を造る、ではなく引っ越す、という発想は無かったから、めちゃくちゃ吃驚した。
「引っ越せませんよ!家族と離れるの寂しいし、友達と離れるのも嫌ですよ!」
「「流石に引っ越すはないんじゃないか?」」
仁斗と大河がカバーしてくれたのは良かったけれど、サラリと規格外を言ってしまう天聖はどうかしていると思う。家族や友達と別れる勇気があるならば引っ越すけれど、私は泣き虫だしホームシックだし一人は怖いし・・・引っ越すと、色々と嫌なことがあるから、引っ越しはしたくない。せめて、家を近くにするとかにしてくれよ。
「てっ天聖さんっ、今は買い物をしましょう!調べてみたんですけど、さがらわショッピングモールって、可愛いものが沢山あるらしいんです!私も、丁度来たかったので、時間がある限りまわってみませんか?」
少し重い空気が出ていたところを、花恋が見事に花を咲かせてくれたので助かった。しかも、花恋がさがらわショッピングモールに来たいって聞いたのは、正直嬉しかった。私が住んでいる沼津市は、正直に言うと、富士山が綺麗に見えるのと、さがらわショッピングモール以外魅力が無いと思ったから、嬉しい。
でも・・・もう一つ私にとっての問題がある。私の手元にある__
「この大金・・・どうしたらいいですか?」
そう、さっき仁斗から貰ったこの大金。
さっきからずっと持っていたけれど、どうすればよいのか分からない。
「あー持ってて。」
「使えません。欲張って全部使ってしまうので。」
「自覚はあるんだね。」
仁斗の言う通り、お年玉を使い過ぎてねぇねに注意されたから、自覚はちゃんとある。
「仁斗が本当にあげたいのなら、少し小さめの金庫を買うしかないな。」
うーん・・・どうだろうな。小さめの金庫があれば安心だが、私は、自分の部屋が無い。私は父の部屋の一部を借りて机と棚を置いているだけで、すぐバレる。金庫があったらパパに不自然に思われてしまうし、お姉ちゃんは私が所持している漫画を勝手に読む。金庫の番号がバレなければ良いのだが、すぐに開けてしまうだろう。お姉ちゃんは気になる物がすぐ目に入り、好奇心が勝ってしまって我慢することができないから、多分、私の金庫を開けるだろう。
「天聖の言う通り、引っ越すことも頭に入れといたほうがいいと思うよ。」
私のことを気遣って、優しい声で言ってくれた。
「おーい。閉店まであと2時間だぞ。時間内から早くした方がいいんじゃないか?」
「わっ早くまわりましょう!金庫とか、引っ越しの話はまた後日しましょう!」
うーーーーんこの人達と一緒にショッピングするのマージ?????