秋田県の小さな町、寒風山のふもとに、タケシという男が住んでいた。タケシは秋田の特産物、きりたんぽや大豆が大好きな、ちょっとおっちょこちょいな若者だ。秋田の厳しい冬を乗り越えるために鍛えられたタケシは、地元の伝統を何より大切にしていた。

ある日、都会から来た友達のユウコが、タケシの家に遊びに来ることになった。ユウコは初めての秋田旅行で、タケシが案内役を買って出たのだ。

「ほんじゃ、ユウコ、来たらきりたんぽ食べてみろ！秋田の本場の味だべ！」
タケシは鼻を膨らませて自信満々に言った。

ユウコは少し心配そうに、でも興味津々な様子で言った。
「でも、タケシ…きりたんぽって、ただのご飯棒だよね？本当に美味しいの？」

タケシは一瞬真顔になったが、すぐに大きな声で答える。
「おお、きりたんぽはただのご飯棒じゃねえんだよ！これが秋田の魂だべ！食べてみて、きっと感動するぞ！」

二人はタケシの家に到着し、温かい鍋が待っていた。タケシが作ったきりたんぽの鍋を前に、ユウコは一口食べると、顔をしかめて言った。
「うん…まあ、美味しいかも？」と少しだけ褒める。

タケシは満足そうに言った。
「ほらな！これが本場の味だべ！」
その瞬間、きりたんぽが鍋から飛び出してユウコの顔にぶつかり、タケシの目の前でぐるぐる回り始めた。

「ああっ、すみません、きりたんぽが暴れやがった…」タケシがうろたえながら言う。

ユウコはその不意の出来事に驚きながらも、笑いを堪えきれずに「いや、タケシ、これ、すごく面白いよ！」と大声で笑い出す。

「やっぱり秋田の食文化って、こういう予測不可能な展開も楽しみなんだべ！」タケシも笑いながら言った。
ユウコは「秋田って本当に、食べ物も面白いんだね」と感心しきり。

「でも、秋田ってこんなに寒いのかぁ…」ユウコが震えながら言う。
タケシは真剣な表情をして言った。
「うん、寒風山が近いからな。秋田の冬は、ただ寒いんじゃねえ、風がきつくてね。あんた、寒さをなめてかかっちゃいけねぇ！」

ユウコはしばらく黙って雪を見つめる。
「雪が積もりすぎて、どこに行っても雪だらけだね…」ユウコがぽつりと言うと、タケシは目を輝かせて言った。

「そりゃあ、雪かきはただの作業じゃないんだよ！秋田の雪かきは、戦いだからな！」
タケシは自信満々に雪かきスコップを手に取り、腕を組んだ。
「雪かきの技術を磨くことこそ、真の秋田人の証だべ！」

ユウコは驚きながら言った。
「雪かき…戦い…？」

タケシは頷きながら言う。
「雪を掻くことで鍛えられるんだ。体力も、精神力も、根性もな！だって、秋田の雪はただの雪じゃねぇからな！」
「本当にそんなに大事なの？」ユウコが疑問を口にする。

その時、年配の男性が雪道を歩いて通りかかり、タケシに声をかけた。
「おお、タケシ、久しぶりだな！雪かき、順調か？」
タケシはニコニコしながら、スコップを差し出して言う。
「雪かきは戦いだべ！今日も勝つぞ！」

「それ、ほんとに戦いだねぇ…」ユウコが呆れながらも笑う。

タケシは自信満々に言った。
「じゃ、ユウコも参加しなきゃいけねぇべ！雪かきはみんなでやるもんだ！ほら、スコップ持って！」

ユウコはしばらくためらっていたが、結局スコップを取って雪かきを始める。最初はぎこちなかったが、少しずつ慣れてきた。タケシはその姿を見て満足そうに言った。
「おお、いい感じだな！これが秋田の雪かきだべ！」

ユウコが雪かきに疲れ果てながら言う。
「雪かきって、ほんとに大変だねぇ…でも、ちょっと楽しいかも？」

その時、タケシがパッと顔を明るくし、言った。
「まだまだ楽しみがあるぞ！秋田の冬には他にも楽しいことがたくさんあるんだ！」

「本当？」ユウコが目を輝かせて聞くと、タケシはにやりと笑って言った。
「次は、秋田名物『稲庭うどん』だべ！これを食べないと秋田の冬は越せねぇぞ！」

ユウコはちょっと疲れた様子だったが、目を輝かせて言った。
「じゃ、次はうどんか！それなら楽しみにしてる！」

タケシは満足げにうなずく。
「うん、秋田のうどんは、世界一だべ！」

その日、二人は雪かきの後に暖かいうどんを食べ、笑いながら寒風山を眺めていた。秋田の厳しい冬の中にも、楽しさと温かさがあることを二人は実感したのであった。