U-Boot ‐海中の狼‐
「ハぁ・・・・・良く寝たぁ・・・・・。」
目を覚まし、ベット内から体を伸ばそうとしたが、伸ばす為の上下空間が無い。体格が小さい日本人なだけまだこういうのはマシなのだが、体格が結構でかいドイツ人からしたらもっと狭いのだろう。大体、この艦自体が小さいのだ。装備品を入れる倉庫も小さく、長期航海となれば廊下の天井に食料などを括り付けることなど日常茶飯事だ。それにより、生活環境も悪い。食料も燃料の重油の臭いが染みつき、重油の味・・・潜水艦の味となってしまう。ああ、日本へ帰りたい。『ほーむしっく』ってやつになりそうだ。そう思いながら、狭い通路をあくびをしながら歩いた。
現在時刻は、午後9時。あと1時間は眠れるが、艦内の様子が少し心配で早く起きてしまった。交代まで少し時間がある。艦内の見回りでもするか。士気は目に出る。誰の言葉かは知らぬが、どうやら本当らしい。黙々と働いているが、皆、その瞳には闘志が宿っている。俺は、そのまま司令室へ入った。その瞬間、その物音の方に司令室内の全員が目を向けた。
「艦長!!まだ休んでていいですよ。」
「いや、そろそろ輸送船団に接敵するだろうからな。」
そそくさと走って、潜望鏡を俺は覗いた。霧に覆われ、波によって水平線が見え隠れしている。索敵には最悪の天候。だが、それは敵も同じ。こんな状況で襲撃されたらたまったもんじゃないだろう。
「ソナーがなにか水上の音を複数捉えました!!」
右の画面を見ながら座るソナー要員のフォルカが口走ったその時である。複数の船の影が水平線から見えた。10隻の輸送船が2列に並び、その列の前後を挟むように駆逐艦が4隻配置されている。
「こっちでも確認した。どうやら目標の船団らしい。総員戦闘配置に着け!!対洋上戦闘!!前方魚雷発射管1から4番装填!!」
そういった瞬間白い灯りが赤く変わり、ハッチが閉められて各部屋との行き来が不可能となる。浸水対策だ。
「水中に多数の音!!味方のUボートです!!」
ソナー員が歓喜をのせて叫んだ。あの知らせを聞きつけてきたのは俺達だけでは無かったってことだな。だが、あれほどの船団って事は、護衛が確実についているはずだ。護衛艦を退けなければ輸送船の襲撃など不可能。その役目を誰がするのか。それを行うのは危険なことだが・・・・。やるしかあるまい。俺は、また潜望鏡を覗いた。やっぱりいたか。ロイヤル・ネイビーのE級駆逐艦だ。戦間期の旧式駆逐艦だが、駆逐艦は駆逐艦。コイツらをどうにかせねば他の潜水艦が攻撃できまい。
「どうします?艦長。輸送船を攻撃しますか?」
パウス、分かっているだろ。
「いや、本艦は駆逐艦を殺ろう。距離は、現在8キロ。速力は、輸送船に合わせているから遅いな。10ノット・・・か。
散布角2度、1、2番発射!!」
『ドン』という重たい水中音が響いた。魚雷が白い航跡を残して颯爽と海中から駆逐艦へ突進していく。敵艦は気が付かないようで、まだ腹を晒している。
「命中まで・・・・5・・4・・・」
「2・・・1・・・」
駆逐艦が急に転舵した。ようやく気がついたのか。だが遅い。魚雷2発がどてっぱらに命中した。駆逐艦にはでか過ぎる程の衝撃が2回走る。そして、耐えきれずにぽっきりと艦中央部から真っ二つに船体が両断した。それと共にさっきまで美しい列を形成していた艦が滅茶苦茶になった。さっきの雷撃で驚いて慌てたのだろうか。だが、これは俺達にとってこれほどの好機は無い。
「全速前進!!艦隊の中に入り込むぞ!!」
「全速ぜーんしん!!」
「目標、輸送船!!3、4番魚雷発射!!」
次々と船団に魚雷が襲う。Uボートが狼の如く混乱した艦隊の中に入り込み、より一層混乱を招いた。
「まだ行くぞ!!魚雷1番から2番装填!!」
「装填完了!!」
「目標、敵駆逐艦!!撃て!!」
食い荒らされていく艦隊は、逃げ惑う事しか出来なかった。次々と水柱を上げて、真っ黒い煙を上げて沈んでいく。それを見て俺達は歓喜の渦に包まれた。先程まで暗い、霧に包まれた海域が一変。火炎の赤に包まれ、血生臭い空気の流れる戦場になった。だが、俺達は敵も人間である事など忘れ、敵艦が沈む様子を眺めていた。全艦が沈み切った事を確認後、俺達は海域から離脱した。
『十月十二日敵輸送船団を襲撃。
本艦の戦果
敵駆逐艦(E級・エクリプス級)2隻(計2,700トン)
輸送船1隻(1,3000トン級)』
と自伝に書き込みながら、未だに歓喜の余韻を楽しむ隊員達を眺めた。今回の出撃で半分以上の魚雷を消費したため、またどこか軍港によって補充せねばなるまい。まあ、またすぐ出撃だろうが。
目を覚まし、ベット内から体を伸ばそうとしたが、伸ばす為の上下空間が無い。体格が小さい日本人なだけまだこういうのはマシなのだが、体格が結構でかいドイツ人からしたらもっと狭いのだろう。大体、この艦自体が小さいのだ。装備品を入れる倉庫も小さく、長期航海となれば廊下の天井に食料などを括り付けることなど日常茶飯事だ。それにより、生活環境も悪い。食料も燃料の重油の臭いが染みつき、重油の味・・・潜水艦の味となってしまう。ああ、日本へ帰りたい。『ほーむしっく』ってやつになりそうだ。そう思いながら、狭い通路をあくびをしながら歩いた。
現在時刻は、午後9時。あと1時間は眠れるが、艦内の様子が少し心配で早く起きてしまった。交代まで少し時間がある。艦内の見回りでもするか。士気は目に出る。誰の言葉かは知らぬが、どうやら本当らしい。黙々と働いているが、皆、その瞳には闘志が宿っている。俺は、そのまま司令室へ入った。その瞬間、その物音の方に司令室内の全員が目を向けた。
「艦長!!まだ休んでていいですよ。」
「いや、そろそろ輸送船団に接敵するだろうからな。」
そそくさと走って、潜望鏡を俺は覗いた。霧に覆われ、波によって水平線が見え隠れしている。索敵には最悪の天候。だが、それは敵も同じ。こんな状況で襲撃されたらたまったもんじゃないだろう。
「ソナーがなにか水上の音を複数捉えました!!」
右の画面を見ながら座るソナー要員のフォルカが口走ったその時である。複数の船の影が水平線から見えた。10隻の輸送船が2列に並び、その列の前後を挟むように駆逐艦が4隻配置されている。
「こっちでも確認した。どうやら目標の船団らしい。総員戦闘配置に着け!!対洋上戦闘!!前方魚雷発射管1から4番装填!!」
そういった瞬間白い灯りが赤く変わり、ハッチが閉められて各部屋との行き来が不可能となる。浸水対策だ。
「水中に多数の音!!味方のUボートです!!」
ソナー員が歓喜をのせて叫んだ。あの知らせを聞きつけてきたのは俺達だけでは無かったってことだな。だが、あれほどの船団って事は、護衛が確実についているはずだ。護衛艦を退けなければ輸送船の襲撃など不可能。その役目を誰がするのか。それを行うのは危険なことだが・・・・。やるしかあるまい。俺は、また潜望鏡を覗いた。やっぱりいたか。ロイヤル・ネイビーのE級駆逐艦だ。戦間期の旧式駆逐艦だが、駆逐艦は駆逐艦。コイツらをどうにかせねば他の潜水艦が攻撃できまい。
「どうします?艦長。輸送船を攻撃しますか?」
パウス、分かっているだろ。
「いや、本艦は駆逐艦を殺ろう。距離は、現在8キロ。速力は、輸送船に合わせているから遅いな。10ノット・・・か。
散布角2度、1、2番発射!!」
『ドン』という重たい水中音が響いた。魚雷が白い航跡を残して颯爽と海中から駆逐艦へ突進していく。敵艦は気が付かないようで、まだ腹を晒している。
「命中まで・・・・5・・4・・・」
「2・・・1・・・」
駆逐艦が急に転舵した。ようやく気がついたのか。だが遅い。魚雷2発がどてっぱらに命中した。駆逐艦にはでか過ぎる程の衝撃が2回走る。そして、耐えきれずにぽっきりと艦中央部から真っ二つに船体が両断した。それと共にさっきまで美しい列を形成していた艦が滅茶苦茶になった。さっきの雷撃で驚いて慌てたのだろうか。だが、これは俺達にとってこれほどの好機は無い。
「全速前進!!艦隊の中に入り込むぞ!!」
「全速ぜーんしん!!」
「目標、輸送船!!3、4番魚雷発射!!」
次々と船団に魚雷が襲う。Uボートが狼の如く混乱した艦隊の中に入り込み、より一層混乱を招いた。
「まだ行くぞ!!魚雷1番から2番装填!!」
「装填完了!!」
「目標、敵駆逐艦!!撃て!!」
食い荒らされていく艦隊は、逃げ惑う事しか出来なかった。次々と水柱を上げて、真っ黒い煙を上げて沈んでいく。それを見て俺達は歓喜の渦に包まれた。先程まで暗い、霧に包まれた海域が一変。火炎の赤に包まれ、血生臭い空気の流れる戦場になった。だが、俺達は敵も人間である事など忘れ、敵艦が沈む様子を眺めていた。全艦が沈み切った事を確認後、俺達は海域から離脱した。
『十月十二日敵輸送船団を襲撃。
本艦の戦果
敵駆逐艦(E級・エクリプス級)2隻(計2,700トン)
輸送船1隻(1,3000トン級)』
と自伝に書き込みながら、未だに歓喜の余韻を楽しむ隊員達を眺めた。今回の出撃で半分以上の魚雷を消費したため、またどこか軍港によって補充せねばなるまい。まあ、またすぐ出撃だろうが。