3日後の話である。出港が決定した。総員が、俺達のUボートを背に岸壁に集合した。
「今回の出撃は、ドーバー海峡の哨戒である。敵機がかなり対潜哨戒を行っている海域であるので、今回も危険と隣り合わせの任務となるだろう。だが、Uボート乗りは、死を恐れてはならぬ。死を恐れた瞬間に人は死ぬのだ。その恐怖からもたらされる一瞬の判断の遅れ、ミスがこのUボートの全員・・・・44名を死に至らしめる事になるだろう。総員の奮闘に期待している。・・・・・・・・・あと、この戦いで生きて帰ったら、オーバーザルツベルクへ連れてってやろう。」
その言葉と共に、冷たい闘志を滾らせた目が歓喜の顔に変わった。
「まぁ、クリスマスにまでに帰ってこれるか怪しいんだが・・・。」
ボソッとあいつら以外に行ってない事実を目を泳がせながら言ってしまった。自分は、嘘はかなり下手な部類で隠し事もあまり得意ではないのだ。
『ファ？！』
「まぁ、出港準備！！錨を上げろ！！総員、配置につけ。」
士気の低下は起きてないよね・・。多分。

潜水艦の艦内の四畳あるかないかぐらいの発令所に俺達は、立って作戦会議をしていた。そこにソナーの画面、海図を広げる為の机、潜望鏡などでごちゃごちゃしていて一人通るのがやっとなほどしかない通路が形成されている。ここを狭いと言ってしまうと、他のところはもっと狭くエンジンルームなんて機械の騒音が響き、入れる所ではない。
「キールからイギリス本土南部の西、ドーバー海峡の出入りしようとする艦船を沈めよとのことだ。」
「民間船も・・・ですよね？」
「そういうことだな。イギリス本土を封鎖するのが任務だ。まあ、民間船を沈めるのは好きではないが・・・・。」

『1時の敵機と思わしきエンジン音！！視認！！距離32キロメートル、サンダーランド飛行艇！！』
「イギリスの哨戒機ですね・・・。機銃で落とします？艦長。」
「いや、ここでそんな事したら、警戒される。見張り員は直ちに艦内へ入れ！！急速潜航！！深度50メートル、艦内非常閉鎖！！潜望鏡収納！！総員戦闘配置に付け！！」
「急速潜航！！」
「艦内非常閉鎖！！」
「戦闘配置に付け！！」
次々と艦内の部屋と部屋の出入り口のハッチが閉められいく。
「推進器をディーゼルエンジンからモーターに変更。不要な機材の電源を落とせ。音で艦の位置がバレるぞ！！」
艦内の白い灯りを放つ洋灯が一瞬消えて、赤い非常用電源が入れ替わるようについた。艦内が緊張に包まれる。バレたら終わりだ。爆雷の嵐に見舞われるのだ。海中では、あまり速度が出せない。見つかれば、回避のしようが無いのだ。敵機の音が海中にまで届いている。すぐ近くを周回しているのだろうか？
「不味いな・・・。」
だが、段々と音が小さくなっていき、消えていった。
「浮上。総員戦闘配置解除。」
「危なかったぁ・・・・・。」
哨戒機め、北海まで飛んできてるのか。ドーバー海峡を抜けるのも、かなり難しいかもしれい。艦内がまた、白い洋灯の灯りに照らされ、いつもの日常が戻った。
1時間後・・・・
「そろそろ飯時だな。」
大量の料理が小さな卓上を占領していく。生野菜が生きている数日は良い飯にありつけれるな。今のうちにたくさん食べとこ。Uボート乗りは、度胸も胃袋もでかいのだ。