白紙の記憶
「あの、私ってどこで寝ればいいんですか?」
家は意外と大きかった。だから一部屋ぐらいは余っているだろう、と思った。
「えーっと、部屋余ってないんだよね。だから[漢字]陽[/漢字][ふりがな]ひかる[/ふりがな]と同じ部屋でもいい?」
え……私は止まった。体も、頭も。
隣に布団を敷いて……私の想像だが。
「それって……」
早乙女くんの母が「そう。陽の隣に布団を敷いて寝るってこと」と私が考えていた事が分かったかのように言った。
「はい」と私はただそれだけしか言えなかった。
寝る時間になった。
早乙女くんと私は無言で階段を登った。
「ここ」と早乙女くんは自分の部屋のドアを開けた。
少し広めの部屋だった。
丁寧に布団が敷かれていた。
よし、これですぐに寝れる。早乙女くんと会話しないで。
「おやすみ」と私は一言言い、まぶたを閉じた。まぶたを閉じただけなので、寝ていない。つまり、早乙女くんが何をしているかが分かる。
──あ、今電気を消した。
早乙女くんは布団に入った。
「寝たのか」
早乙女くんの声が微かに聞こえ「僕らのエンドロールはまだ先」と続けて言った……気がした。
もしもその言葉を本当に言っていたら、なぜ知っているのだろうと思う。
「僕らのエンドロールはまだ先」は早乙女くん本人が出ているアニメだから。
……あれ? でも何で私も知っているのだろう。
今まで思い出せなかった。見覚えある人で止まっていたのに。
──記憶が蘇ってくる。
そうだ。早乙女くんは私の……
思い出せそうだったが、思い出せなかった。何回も考えたが結果は同じく思い出せない。
だけど、大切な人なのは知ってる。
長い夜が明け、朝になった。
雀の元気がいい鳴き声で私は目が覚めた。
「おはよう」と早乙女くんが私の顔を覗く。
私は驚き、勢いよく起き上がった。
その拍子でごちん、と頭がぶつかった。
「いてて。あ、ごめん!」
「大丈夫。俺が悪いから」
一日がスタートする。
今日は曇一つ無い快晴。気温も丁度よく過ごしやすい。桜が満開だ。
登下校は早乙女くんと一緒だ。
「……」
無言。気まずい。
「えっと。桜、綺麗だね」
話の話題が思いつかない。
「そうだな」
会話が終わった。それから一言も喋らなかった。
「僕らのエンドロールはまだ先」と私は誰にともなく呟いた。
早乙女くんは私の顔をじーっと見つめた。
「え?」私も早乙女くんの顔を見つめた。
「僕らのエンドロールはまだ先って……」
早乙女くんも知っているのか。その物語──アニメは早乙女くんが主人公だ。
自分がそのアニメの主人公だと分かっているのだろうか。
「知ってるの? それ、私が好きなアニメなんだ」
「まあ」と早乙女くんはそれだけしか言わなかった。
自分がそのアニメの主人公だと分かっていることは「まあ」という一言では分からなかった。
家は意外と大きかった。だから一部屋ぐらいは余っているだろう、と思った。
「えーっと、部屋余ってないんだよね。だから[漢字]陽[/漢字][ふりがな]ひかる[/ふりがな]と同じ部屋でもいい?」
え……私は止まった。体も、頭も。
隣に布団を敷いて……私の想像だが。
「それって……」
早乙女くんの母が「そう。陽の隣に布団を敷いて寝るってこと」と私が考えていた事が分かったかのように言った。
「はい」と私はただそれだけしか言えなかった。
寝る時間になった。
早乙女くんと私は無言で階段を登った。
「ここ」と早乙女くんは自分の部屋のドアを開けた。
少し広めの部屋だった。
丁寧に布団が敷かれていた。
よし、これですぐに寝れる。早乙女くんと会話しないで。
「おやすみ」と私は一言言い、まぶたを閉じた。まぶたを閉じただけなので、寝ていない。つまり、早乙女くんが何をしているかが分かる。
──あ、今電気を消した。
早乙女くんは布団に入った。
「寝たのか」
早乙女くんの声が微かに聞こえ「僕らのエンドロールはまだ先」と続けて言った……気がした。
もしもその言葉を本当に言っていたら、なぜ知っているのだろうと思う。
「僕らのエンドロールはまだ先」は早乙女くん本人が出ているアニメだから。
……あれ? でも何で私も知っているのだろう。
今まで思い出せなかった。見覚えある人で止まっていたのに。
──記憶が蘇ってくる。
そうだ。早乙女くんは私の……
思い出せそうだったが、思い出せなかった。何回も考えたが結果は同じく思い出せない。
だけど、大切な人なのは知ってる。
長い夜が明け、朝になった。
雀の元気がいい鳴き声で私は目が覚めた。
「おはよう」と早乙女くんが私の顔を覗く。
私は驚き、勢いよく起き上がった。
その拍子でごちん、と頭がぶつかった。
「いてて。あ、ごめん!」
「大丈夫。俺が悪いから」
一日がスタートする。
今日は曇一つ無い快晴。気温も丁度よく過ごしやすい。桜が満開だ。
登下校は早乙女くんと一緒だ。
「……」
無言。気まずい。
「えっと。桜、綺麗だね」
話の話題が思いつかない。
「そうだな」
会話が終わった。それから一言も喋らなかった。
「僕らのエンドロールはまだ先」と私は誰にともなく呟いた。
早乙女くんは私の顔をじーっと見つめた。
「え?」私も早乙女くんの顔を見つめた。
「僕らのエンドロールはまだ先って……」
早乙女くんも知っているのか。その物語──アニメは早乙女くんが主人公だ。
自分がそのアニメの主人公だと分かっているのだろうか。
「知ってるの? それ、私が好きなアニメなんだ」
「まあ」と早乙女くんはそれだけしか言わなかった。
自分がそのアニメの主人公だと分かっていることは「まあ」という一言では分からなかった。