白紙の記憶
「ふあー」と大きなあくびをする。
時計を見ると七時を回っていた。「あれ⁈ アラーム六時半にセットしておいたのに⁈」
ベッドから降り、制服に着替え、パンを咥えて「行ってきます!」と家を飛び出した。
私は[漢字]西依ゆか[/漢字][ふりがな]にしよりゆか[/ふりがな]だ。神本中学校の三年生だ。
「やばい。どうしよう」
まだパンを食べているので周りの人から見ればパンを咥えてもごもご何かを喋って急いでいる変な学生だと思われているだろう。
パンを食べ終わった。
「ごちそうさまでしたっ!」としっかり手を合わせて言った。勿論走りながら。
すると、ぶうーんという不快な音が背後から聞こえた。
「え⁈」と驚き、振り返ると蜂らしき虫がいて、追いかけてきた。
「うわああああっっっっ!」
私は石につまづき、勢いよく転んだ。
「あれ? 痛くない」
ごつごつのコンクリートの上で転んだのに。そう思い、下を見た。
ごつごつとしていない。つるつるした灰色の床が広がっていた。しかも妙に騒がしい。
「ここはどこ⁈」と顔を上げると、沢山人がいた。みんな私の事を見ていた。多分学校なのだろう。どけど、私は知らなかった。制服も違う。私の学校よりも可愛い憧れの制服でもあり、見覚えある制服でもあった。
すると、「大丈夫?」と私に近づき、言ってくれた。
「あ、えっと、大丈夫です」
「良かった」と彼は微笑んだ。
あの笑い方と顔、なんか見覚えあるな、私はそう思った。だが、誰だか分からない。どんな人で、どんな関係だった事も分からない。唯一分かる事は“大切な人”ということだけだ。
すると、先生が駆け「西依ゆかさんですか? 職員室に来てください」と呼び出しをくらった。
少しどきどきした。廊下で寝転んで何か言われそう。
結果、転校関係だった。私は転校生なんだな、と感じた。
先生がOKサインを出し、私は教室の中に入った。
「西依ゆかです。よろしくお願いします」そう私は言った。私は一人の男の子に目が行った。
こちらを見ているが、私には遠くを見ているような目に見えた。
あの人って、心配してくれた人なのだろうか。
「じゃあ、[漢字]早乙女[/漢字][ふりがな]そうとめ[/ふりがな]の隣へ」先生が言った。
「えーっと、早乙女くんは?」
名前が呼ばれたのに気付き「あ、はいっ」と手を挙げた。
確かにさっき助けてくれた人だ。
「よろしく」
休み時間、クラスメイトが私の席に集まってきた。
「家はどこ?」「家族構成は?」と聞かれた瞬間、私の時間が止まった。
どう答えればいいのだろう。私には家はない。家族もいない。別の世界から来たから。
「えっと、ごめん。答えられない」
私は思い切って言ったが、心配だった。
「へえー」と感情がこもっていない風に言われそうで。後々悪口言われそうで。
だけど周りの人は優しかった。「そっか、聞きづらい事を聞いてごめんね!」と。
私には家がない。どうしようかと悩んでいると、ぴこーんとひらめいた。
ホテルで泊まれば大丈夫じゃない? と。
私はホテルに向かおうとした。
すると、肩をぐいっと掴まれた。振り返ると早乙女くんがいた。
「帰ろう」
え? 何で……? よく分からない。
「住むんだよ。俺の家に」
ええーっ⁈
急すぎる。まだ会って一日も経っていない。初対面の人の家に住むことになるということか。
「迷惑かけない?」と私は恐る恐る訊いた。
「大丈夫。家の人にも連絡済みだから」
準備が早いっっ!
「えーっと、その、ありがとう」
「ただいまー」と元気に早乙女くんが言った。
なんか聞き覚えのある声だった。
「おじゃまします」
「あなたが西依ゆかさん? よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
時計を見ると七時を回っていた。「あれ⁈ アラーム六時半にセットしておいたのに⁈」
ベッドから降り、制服に着替え、パンを咥えて「行ってきます!」と家を飛び出した。
私は[漢字]西依ゆか[/漢字][ふりがな]にしよりゆか[/ふりがな]だ。神本中学校の三年生だ。
「やばい。どうしよう」
まだパンを食べているので周りの人から見ればパンを咥えてもごもご何かを喋って急いでいる変な学生だと思われているだろう。
パンを食べ終わった。
「ごちそうさまでしたっ!」としっかり手を合わせて言った。勿論走りながら。
すると、ぶうーんという不快な音が背後から聞こえた。
「え⁈」と驚き、振り返ると蜂らしき虫がいて、追いかけてきた。
「うわああああっっっっ!」
私は石につまづき、勢いよく転んだ。
「あれ? 痛くない」
ごつごつのコンクリートの上で転んだのに。そう思い、下を見た。
ごつごつとしていない。つるつるした灰色の床が広がっていた。しかも妙に騒がしい。
「ここはどこ⁈」と顔を上げると、沢山人がいた。みんな私の事を見ていた。多分学校なのだろう。どけど、私は知らなかった。制服も違う。私の学校よりも可愛い憧れの制服でもあり、見覚えある制服でもあった。
すると、「大丈夫?」と私に近づき、言ってくれた。
「あ、えっと、大丈夫です」
「良かった」と彼は微笑んだ。
あの笑い方と顔、なんか見覚えあるな、私はそう思った。だが、誰だか分からない。どんな人で、どんな関係だった事も分からない。唯一分かる事は“大切な人”ということだけだ。
すると、先生が駆け「西依ゆかさんですか? 職員室に来てください」と呼び出しをくらった。
少しどきどきした。廊下で寝転んで何か言われそう。
結果、転校関係だった。私は転校生なんだな、と感じた。
先生がOKサインを出し、私は教室の中に入った。
「西依ゆかです。よろしくお願いします」そう私は言った。私は一人の男の子に目が行った。
こちらを見ているが、私には遠くを見ているような目に見えた。
あの人って、心配してくれた人なのだろうか。
「じゃあ、[漢字]早乙女[/漢字][ふりがな]そうとめ[/ふりがな]の隣へ」先生が言った。
「えーっと、早乙女くんは?」
名前が呼ばれたのに気付き「あ、はいっ」と手を挙げた。
確かにさっき助けてくれた人だ。
「よろしく」
休み時間、クラスメイトが私の席に集まってきた。
「家はどこ?」「家族構成は?」と聞かれた瞬間、私の時間が止まった。
どう答えればいいのだろう。私には家はない。家族もいない。別の世界から来たから。
「えっと、ごめん。答えられない」
私は思い切って言ったが、心配だった。
「へえー」と感情がこもっていない風に言われそうで。後々悪口言われそうで。
だけど周りの人は優しかった。「そっか、聞きづらい事を聞いてごめんね!」と。
私には家がない。どうしようかと悩んでいると、ぴこーんとひらめいた。
ホテルで泊まれば大丈夫じゃない? と。
私はホテルに向かおうとした。
すると、肩をぐいっと掴まれた。振り返ると早乙女くんがいた。
「帰ろう」
え? 何で……? よく分からない。
「住むんだよ。俺の家に」
ええーっ⁈
急すぎる。まだ会って一日も経っていない。初対面の人の家に住むことになるということか。
「迷惑かけない?」と私は恐る恐る訊いた。
「大丈夫。家の人にも連絡済みだから」
準備が早いっっ!
「えーっと、その、ありがとう」
「ただいまー」と元気に早乙女くんが言った。
なんか聞き覚えのある声だった。
「おじゃまします」
「あなたが西依ゆかさん? よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」