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北海道はでっかいどう

#1


北海道の冬、特に大雪が降る季節。空は鉛色に覆われ、風は冷たく町を吹き抜ける。その中でも、温かな思い出が胸に残る場所がある。それが、北海道の北端、稚内(わっかない)だった。

主人公の翔太(しょうた)は、高校三年生。冬の寒さもあって、毎日学校に通うのも億劫だったが、卒業を控えたこの季節には、どこか胸がざわざわする感覚を覚えていた。進路のこと、これからのこと、そして何より、今まで一緒に過ごしてきた仲間との別れが怖かった。

「翔太、また後でな!」

放課後、友達の健太(けんた)が声をかけてきた。翔太は頷きながらも、どこか浮かない顔をしていた。仲の良い友達と過ごしたこの高校生活が、終わりを迎えようとしている。卒業後、みんながそれぞれの道に進むと思うと、なんだか寂しさが込み上げてきた。

その日は、授業後に仲間たちと一緒に「稚内大豆(わっかないだいず)」を使った料理を食べに行く予定だった。稚内大豆は、この地方の特産物で、寒冷な気候で育ったその豆は、普通の大豆よりも甘みが強く、味噌や豆腐にぴったりだった。地元のカフェでその豆を使った温かい料理を食べることが、冬の楽しみの一つだった。

「おい、翔太、早く行こうぜ!」

健太の声で我に返った翔太は、みんなと一緒にカフェに向かうことにした。店に着くと、いつもと変わらず賑やかな雰囲気が広がっていた。窓の外には雪が舞い、暖炉の火がパチパチと音を立てている。

「いつも通りだな。こんな風景、当たり前に思ってたけど、もうすぐ終わるんだよな…」

翔太はそんなことを考えながら席に着いた。目の前には、「稚内大豆の味噌汁」と「手作り豆腐」が並んでいる。どれもあたたかくて、心も体もほっとする味だ。

「これ、うまいよなー」と健太が言いながら、豆腐を口に運んだ。

「うん、北海道にしかない味だよな。これが食べられるのも、もうすぐ終わりか…」

翔太はつい、そんな言葉を漏らしてしまった。その言葉に、隣の席にいた涼子(りょうこ)が静かに返す。

「翔太、卒業後はどうするの?」

涼子は、翔太がずっと密かに思いを寄せていた女の子だ。彼女は地元の農家の娘で、北海道の大地と共に育った。彼女の実家では、稚内大豆やジャガイモを育てていて、涼子自身も農業に対する強い想いを持っていた。

翔太は少し間をおいてから答えた。「僕は、東京に行こうと思ってる。進学するんだ」

涼子は一瞬驚いたように目を大きくしたが、すぐににっこりと笑った。「そうなんだ。でも、たまには帰ってきてよね。おいしい大豆の味噌汁、待ってるから」

その言葉に、翔太は少し照れくさそうに笑った。「もちろん。でも、涼子はどうするの?」

涼子は少し考えてから答えた。「私は、しばらく実家を手伝うつもり。でも、いつかは北海道を出て、もっと大きな世界を見たいと思ってる」

翔太はその言葉に驚きながらも、涼子の強さを感じた。彼女の瞳には、どこか遠くを見つめるような強い意志があった。

「そうか、涼子は大丈夫だな」

翔太は心の中でそう思いながらも、どこか胸が苦しくなった。この小さな町で過ごした日々が、もうすぐ終わるのだと思うと、やはり寂しさが込み上げてきた。

その夜、翔太は雪の中を一人で歩いていた。雪が降りしきる中、足音が静かに響く。手袋をはめた手が冷たく、雪が顔に当たるが、翔太はその冷たさが心地よく感じられた。

「俺、まだ何も決めてないな…」

心の中でそうつぶやきながら、翔太はふと、昔涼子が言った言葉を思い出した。

「翔太、いつか大豆を育ててみなよ。北海道の大豆は、どこにも負けないんだから」

その言葉が、今でも心の中で響いている。翔太は、その言葉を大切にしながら、前に進むべき道を考えていた。東京での生活が待っているけれど、ここに帰ってきた時、やっぱり「北海道の大豆」の味をもう一度感じたくなるだろう。

翔太は雪の中で立ち止まり、深呼吸をした。そして、静かに決意した。

「いつか、また帰ってくる。北海道の大地に、何かを残すために」

その日から、翔太の心には新たな目標ができた。それは、ただ進学するだけではなく、いつか北海道に戻り、自分の手でこの大地を育てていくという夢だった。

作者メッセージ

『北海道はでっかいどう』をお読みいただき、ありがとうございます!本作は、北海道の大自然と温かな思い出をテーマにした物語です。実は、このシリーズは他の都道府県にも広がっていく予定ですので、どうぞご期待ください!決してネタが尽きたわけではありませんので、その点はご安心を…。とは言いつつ、実はネタ切れで必死に新しいアイデアをひねり出しているところだったりしますが、それもまたご愛敬ということで!次回作もお楽しみに!

2025/03/31 21:45

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