唐津の古い屋敷の縁側で、水野愛がのんびりお茶を飲んでいた。窓から入る風が気持ちよくて、彼女の髪が軽く揺れている。そこに、紺野純子が丁寧にトレーを持ってやって来た。
「愛さん、お茶のおかわりはいかがでしょうか？少し冷たいものも用意しましたので。」
純子が言うと、愛は小さく微笑んでカップを差し出した。
「ありがとう、純子。気が利くわね。さすがだわ。」
純子はトレーを置いて、愛の隣に腰を下ろした。縁側からは唐津の田園風景が見えて、遠くに海の気配も感じられる。しばらく二人は黙って座っていたけど、愛がふと口を開いた。
「純子って、ほんと落ち着いてるよね。私が昔アイドルやってた頃は、こんな静かな時間なんてなかったわ。」
純子は少し驚いたように目を丸くして、それから丁寧に答えた。
「愛さんのお話を聞くと、昭和のアイドルとはまた違った大変さがあったのですね。私には想像もつかないような忙しさだったのではないでしょうか。」
愛はクスッと笑って、
「まあね。ファンの前では常にキラキラしてなきゃいけなかったし。でも、純子だって昔はすごかったんでしょ？昭和のトップアイドルなんだから。」
純子は少し照れたように首を振った。
「いえ、そんな大したものでは…。ただ、私の時代は今ほど競争が激しくなかっただけかもしれません。愛さんのように、現代で輝くのはもっと難しいことだと思います。」
愛は純子の謙虚な態度に小さくため息をついて、
「純子ってほんと真面目よね。もっと自分を褒めてもいいと思うわ。私なんか、自分のことばっかりだった時期もあるのに。」
二人はお互いを見つめて、軽く笑い合った。愛がカップを手に持ったまま、ふと言った。
「でもさ、純子とこうやって話してると、なんか落ち着くのよね。さくらやサキみたいに騒がしくないし。」
純子は微笑んで、
「それは嬉しいお言葉です、愛さん。私も、愛さんとこうしてお話しできるのは貴重な時間だと思います。普段は巽さんや皆さんに振り回されていますから。」
縁側に置かれたお茶が少し揺れて、午後の陽光が二人の影を長く伸ばしていた。愛が立ち上がって、
「ねえ、純子。たまには二人でどこか出かけない？リリィやたえも連れてっちゃうと騒がしくなるし、静かに楽しみたいわ。」
純子は少し考えてから、穏やかに頷いた。
「はい、愛さん。それも素敵ですね。唐津の町を少し歩いてみるのもいいかもしれません。」
二人は軽く笑いながら、次の予定を立て始めた。愛のキラキラした雰囲気と純子の落ち着いた空気が、屋敷の縁側で穏やかに混ざり合っていた