唐津の海沿いの道を、源さくらがトボトボ歩いとった。夕日が海に映って、オレンジ色にキラキラしとるのがきれいやった。私は買い物袋をぶら下げて、ちょっと疲れた顔をしとった。
「うー、疲れたばい…幸太郎さんに頼まれた買い物、重かばい。なんでも『天才的晩飯の材料』とか言いよったけど…。」
唐津弁でブツブツ呟きながら歩いとると、後ろから優しげな声が聞こえてきた。
「さくら、お疲れみたいね。何か重そうなもの持ってるけど、大丈夫？」
振り返ると、水野愛がいつものキラキラした笑顔で立っとった。夕日に照らされて、愛ちゃんの髪がふわっと揺れとる。
「愛ちゃん！びっくりしたったい。うん、ちょっと疲れただけやけど…大丈夫よ。」
私はニコッと笑って、買い物袋を軽く振ってみせた。
「幸太郎さんがうるさか言いよったけん、仕方なく買い物してきたとよ。」
愛ちゃんは小さく笑って、私の横に並んだ。
「さくらってほんと真面目よね。私が代わりに持ってあげようか？」
そう言って手を伸ばしてくる愛ちゃんに、私は慌てて首を振った。
「い、いや！愛ちゃんにそんなことさせられんとよ！自分で持つけん、大丈夫たい！」
私達は並んで歩き始めた。海風が気持ちよくて、私は少し元気を取り戻したみたいやった。
「愛ちゃん、今日は練習なかったけん、どこ行っとったと？」
私が聞くと、愛ちゃんは目を細めて夕日を見ながら答えた。
「ちょっと街を散歩してたの。さくらと一緒だと、こういう時間も楽しいわね。」
私は照れくさそうに笑って、
「愛ちゃんにそう言われると、なんか嬉しかばい。ゾンビになっても、こうやって愛ちゃんと歩けるなんて思わんやったもん。」
唐津弁がポロッと出ると、愛ちゃんは優しく頷いた。
「私もよ、さくら。生きてた頃はアイドルとして一人で頑張ってたけど…今はさくらと一緒で、幸せだなって思うの。」
私達はしばらく黙って歩いた。波の音とカモメの声が遠くに聞こえて、穏やかな時間が流れた。
「愛ちゃん、ありがとう。疲れとったけど、なんか元気出てきたったい。」
私が言うと、愛ちゃんは笑顔で返した。
「さくらこそ、いつも頑張ってくれてありがとうね。私、さくらがいてくれるから頑張れるんだから。」
夕日が沈む頃、私達は屋敷に向かって歩き出した。私の買い物袋はまだ重かやったけど、心は軽くなっとった。
「愛ちゃんと一緒なら、なんでもやれそうやね！」
私が笑うと、愛ちゃんも「うん、私もそう思う」と柔らかく笑った。