どうして……！？
　私、相川優美は、忘れ物を教室に取りに来たら、彼氏と親友の瀬里華が付き合っている事実を目撃してしまった。
「瀬里華、やっぱり君の方が綺麗だよ。あんなブスより。」
「やぁだ。優美がかわいそう。でも、あのブス、私たちが付き合ってること全然気づかないんだから。ほんと、とろい。」
　私が見ていることに気づかず、カラカラと笑う二人を見て、胸がきゅっと痛んだ。
　確かに私は、他の女子と比べて体格が太くて体重は七十キロを超えている。
　ブスと言われることも慣れていたが、瀬里華のことは一番の親友だと思っていたのに……。
　彼氏も瀬里華に紹介してもらったけど今思えばあんなイケメンが私のこと好きなわけない。
　きっと、みんな私のことからかっていたんだろう。
　溢れる涙を、音のしない様に拭いてそっと帰宅した。
　
　自分の部屋にある鏡には、顔色の悪い自分の醜い巨体が映し出されていた。
　散々泣いたせいかもう涙は枯れて、一粒も出てこない。
　鏡の前の台に置いてある瀬里華にもらった、いかにも、安っぽいメイク商品が目に入り、目障りだったのでゴミ箱に乱暴に入れた。
　もう、瀬里華のせいで悲しむことも心を乱されることも嫌だった。
　だが、ふと、一度捨てたメイク商品を出してまじまじと見つめた。
　瀬里華は、こんな派手なピンクのチークもアイシャドウもよく似合うほど派手な美人だった。
　一緒に出掛けた時も、自分と歩く瀬里華が不釣り合いすぎて居心地が悪かった。
　なら、瀬里華に負けないくらい綺麗になれば、もう誰にもからかわれない。
　私のことを、馬鹿にした瀬里華にも彼氏にも意趣返しができる。
　鏡には、決意を宿した優美の蘭々とした瞳がくっきりと映っていた。