美醜逆転の世界でこの世界の不細工(つまりイケメン)に助けられました
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「一人で」
「かしこまりました、こちらのお席にどうぞ」
もうそろそろ営業は終わりの時間だ。
店内にお客さんはいないが、せっかく来てくれたのだ。
最後のお客さんを席にご案内して、看板を裏に向けておいた。
看板の裏にはティーお手製の私の似顔絵が描かれていて、「また明日、おこしください!」という吹き出しが添えられている。
言っておくが、決して上手くはない。
でも看板娘だと言われて、ちょっと嬉しい。
前世と違って、今は絶世の美女だからね。ドヤ。
ティーが二階に向かったので、私は最後に来たお客さんの注文を聞きに行く。
「ご注文はお決まりですか?」
「...初めて見るものばかりで、どれがいいのか分からないんだ」
「ええと、それなら...」
外国人(異世界人)って、どんなものが好きなんだろう?
でもどうせなら和食の美味しさを知って欲しい。
「竜田揚げはどうですか?揚げたてを提供できますよ」
竜田揚げと漬物、それからご飯を一緒に食べる感動は言葉では表せないからね。うんうん。
ちなみにこの世界では、お米は存在するけど家畜のエサになっているらしい。
ひえー!もったいないよお...。皆さん、お米を食べるべきです!
お客さんはうなずいて言った。
「君がそう言うのならそうしよう」
「ありがとうございます!ティー、竜田揚げ定食1つねーっ」
私は二階にいるティーに届くようにそう叫んだ。
くすくすと笑い声が聞こえてきて、はっとお客さんを見ると、目が合った。
...と、言っても、このお客さんは仮面をしていて、本当に目が合ったかはあんまりよく分からない。
「すみません、大きな声を出して」
「いや、いいんだ。少しばかり豪快だなと思っただけで」
「あ......ありがとうございます?」
「ふふ...うん」
また笑われた。恥ずかしい...。
「......どうやら本当だったみたいだ」
「?何がですか?」
じっと見つめられて、少したじろぐ。
「看板だよ」
ティーの描いた私の似顔絵が浮かんでくる。
似てるってこと?ちょっと心外だなあ。
ぴんときていない私を見て、お客さんは付け足した。
「『どんな人でも大歓迎』って、書いたあったでしょ」
「ああ......」
そんなことも確かに書いた気がする。
でも今考えると、ちょっと...いやだいぶ危ない。
危険な人が入ってきたりするかもしれない。
今度、『お店で暴力をふるわない人』と書き足しておこう。
......もしかしてこのお客さんはシャルさんたちと同じで、この世界では不細工判定なのかもしれない。それを気にしていたりするのかな?
というか、仮面を着けているからほぼ確定でそうだと思う。
そういうことならノープロブレム。
むしろ大歓迎です!目の保養、目の保養。
「もちろんです。お兄さんのことも大歓迎してますよ」
「...ありがとう」
ふわりと、お客さんが笑った...と思う。
口元まで隠されたお面のせいで表情が分からない。
でも何故か凄い...凄いイケメンオーラを感じる!!
私がひそかに感動していると、竜田揚げの香りが漂ってきた。
「お待たせしましたーっ、揚げたての竜田揚げでーす」
どん、とお盆が置かれる。
ちょっと、大事なお客さんなんだから、もう少し丁寧に接客してよ...。
まあ言っても仕方がないか。
ジト目でティーを見つめていると、ティーが手招きをしてきた。
不思議に思いながらも、ティーに近づく。
「ほらよ」
「え?......アッツ!あふい(熱い)!ひほい(酷い)!おいひい(美味しい)!」
口に熱いものが放り込まれた。た、竜田揚げだ。
もう...何か言ってよ!
涙目になりながらも、放り込まれた竜田揚げを頬張る。
うん、アツアツサクサクで美味しい!
ぐっとサムズアップをする。
ティーもドヤ顔でサムズアップを返してきた。
ぽかんとしているお客さんに気付いた私は、慌てて彼に向き直る。
「ああ、ごめんなさい!うるさくて!熱いですから、気を付けてくださいね!」
「いや...構わないけれど、......仲がいいんだね」
「あはは...はい。そうなんですよ」
お客さんは話しながらも、竜田揚げに夢中のようだ。目線がずっとお盆に向いている。
私が居ては食べづらいだろうと、窓の拭き掃除をすることにして、その場を離れた。
しばらくして、「ごちそうさま」と声が聞こえた。
感想を聞きたくて、ついお客さんの方を向いてしまう。
「どうでしたか?竜田揚げ。美味しかっ...............あっ」
「な...............」
しまった。まだ仮面を着けていなかったみたいだ。
思いっきりお客さんの顔を直視してしまって......目が離せなくなった。
な..............................なんてイケメンなの!?!?!?
サラサラの金髪に、真っ青の瞳。
言葉にできない美しさ。
THE·王子様系イケメンだっ!!!
私の顔は真っ赤に染まっていることだろう。
動けない私と同様、向こうも固まってしまっている。
私は何とか口を開いた。
「す、すみません。ついうっかり」
ちらりと様子をうかがう。
お、怒っているだろうか.........。
「.........君............」
「はい?...って、ええ!?」
お客さんの顔を見ると、彼の目から水が......。
はっ!イケメンが涙を流している。何ということだろう。
私が!!イケメンを!!泣かせた!!!
やばいやばい。どうしよう。
「ごめんなさいごめんなさい、そんなつもりはなくて...っ!」
「ち、違うんだ。嬉しくて」
「嬉しい?」
はて。どういうことだろうか。
「一人で」
「かしこまりました、こちらのお席にどうぞ」
もうそろそろ営業は終わりの時間だ。
店内にお客さんはいないが、せっかく来てくれたのだ。
最後のお客さんを席にご案内して、看板を裏に向けておいた。
看板の裏にはティーお手製の私の似顔絵が描かれていて、「また明日、おこしください!」という吹き出しが添えられている。
言っておくが、決して上手くはない。
でも看板娘だと言われて、ちょっと嬉しい。
前世と違って、今は絶世の美女だからね。ドヤ。
ティーが二階に向かったので、私は最後に来たお客さんの注文を聞きに行く。
「ご注文はお決まりですか?」
「...初めて見るものばかりで、どれがいいのか分からないんだ」
「ええと、それなら...」
外国人(異世界人)って、どんなものが好きなんだろう?
でもどうせなら和食の美味しさを知って欲しい。
「竜田揚げはどうですか?揚げたてを提供できますよ」
竜田揚げと漬物、それからご飯を一緒に食べる感動は言葉では表せないからね。うんうん。
ちなみにこの世界では、お米は存在するけど家畜のエサになっているらしい。
ひえー!もったいないよお...。皆さん、お米を食べるべきです!
お客さんはうなずいて言った。
「君がそう言うのならそうしよう」
「ありがとうございます!ティー、竜田揚げ定食1つねーっ」
私は二階にいるティーに届くようにそう叫んだ。
くすくすと笑い声が聞こえてきて、はっとお客さんを見ると、目が合った。
...と、言っても、このお客さんは仮面をしていて、本当に目が合ったかはあんまりよく分からない。
「すみません、大きな声を出して」
「いや、いいんだ。少しばかり豪快だなと思っただけで」
「あ......ありがとうございます?」
「ふふ...うん」
また笑われた。恥ずかしい...。
「......どうやら本当だったみたいだ」
「?何がですか?」
じっと見つめられて、少したじろぐ。
「看板だよ」
ティーの描いた私の似顔絵が浮かんでくる。
似てるってこと?ちょっと心外だなあ。
ぴんときていない私を見て、お客さんは付け足した。
「『どんな人でも大歓迎』って、書いたあったでしょ」
「ああ......」
そんなことも確かに書いた気がする。
でも今考えると、ちょっと...いやだいぶ危ない。
危険な人が入ってきたりするかもしれない。
今度、『お店で暴力をふるわない人』と書き足しておこう。
......もしかしてこのお客さんはシャルさんたちと同じで、この世界では不細工判定なのかもしれない。それを気にしていたりするのかな?
というか、仮面を着けているからほぼ確定でそうだと思う。
そういうことならノープロブレム。
むしろ大歓迎です!目の保養、目の保養。
「もちろんです。お兄さんのことも大歓迎してますよ」
「...ありがとう」
ふわりと、お客さんが笑った...と思う。
口元まで隠されたお面のせいで表情が分からない。
でも何故か凄い...凄いイケメンオーラを感じる!!
私がひそかに感動していると、竜田揚げの香りが漂ってきた。
「お待たせしましたーっ、揚げたての竜田揚げでーす」
どん、とお盆が置かれる。
ちょっと、大事なお客さんなんだから、もう少し丁寧に接客してよ...。
まあ言っても仕方がないか。
ジト目でティーを見つめていると、ティーが手招きをしてきた。
不思議に思いながらも、ティーに近づく。
「ほらよ」
「え?......アッツ!あふい(熱い)!ひほい(酷い)!おいひい(美味しい)!」
口に熱いものが放り込まれた。た、竜田揚げだ。
もう...何か言ってよ!
涙目になりながらも、放り込まれた竜田揚げを頬張る。
うん、アツアツサクサクで美味しい!
ぐっとサムズアップをする。
ティーもドヤ顔でサムズアップを返してきた。
ぽかんとしているお客さんに気付いた私は、慌てて彼に向き直る。
「ああ、ごめんなさい!うるさくて!熱いですから、気を付けてくださいね!」
「いや...構わないけれど、......仲がいいんだね」
「あはは...はい。そうなんですよ」
お客さんは話しながらも、竜田揚げに夢中のようだ。目線がずっとお盆に向いている。
私が居ては食べづらいだろうと、窓の拭き掃除をすることにして、その場を離れた。
しばらくして、「ごちそうさま」と声が聞こえた。
感想を聞きたくて、ついお客さんの方を向いてしまう。
「どうでしたか?竜田揚げ。美味しかっ...............あっ」
「な...............」
しまった。まだ仮面を着けていなかったみたいだ。
思いっきりお客さんの顔を直視してしまって......目が離せなくなった。
な..............................なんてイケメンなの!?!?!?
サラサラの金髪に、真っ青の瞳。
言葉にできない美しさ。
THE·王子様系イケメンだっ!!!
私の顔は真っ赤に染まっていることだろう。
動けない私と同様、向こうも固まってしまっている。
私は何とか口を開いた。
「す、すみません。ついうっかり」
ちらりと様子をうかがう。
お、怒っているだろうか.........。
「.........君............」
「はい?...って、ええ!?」
お客さんの顔を見ると、彼の目から水が......。
はっ!イケメンが涙を流している。何ということだろう。
私が!!イケメンを!!泣かせた!!!
やばいやばい。どうしよう。
「ごめんなさいごめんなさい、そんなつもりはなくて...っ!」
「ち、違うんだ。嬉しくて」
「嬉しい?」
はて。どういうことだろうか。