「ほ、ほんとにいいのかな？」
「かまわへんやろ。どうせ誰も来んし」

私は何度もシャルさんに同じことを確かめる。
ぐいぐいと背中を押され、おそるおそる建物の中に足を踏み入れた。

「わあ...！素敵！」

小ぢんまりとした部屋からは、木の温もりが感じられる。
この建物は、何とシャルさんの家のものらしい。
実はお金持ちだったみたい。
勝手に使ってもいいのかとだいぶ心配したけれど、シャルさんがけろりとしているものだから、私も開き直った。

いいお店になりそうだ、と妄想が膨らむ。
私は興奮して、部屋のなかを駆け回った。
開け放たれたドアから、ティーの声がした。

「おい、邪魔だ。退けよ」
「えっ、ごめん」

慌てて部屋の端っこに寄る。
どっこいしょ、と、ティーがテーブルを床に下ろした。
シャルさんもそれに続いてテーブルを運んでくる。

この小さい空間にはテーブルが３席と、カウンターくらいしか置くことはできない。
でもそんなにたくさんお客さんが来ても手がまわらないから、丁度いいかな。
イスとテーブル、その他もろもろを運び終えて疲れはてている二人に冷たいお茶を出す。

「お疲れ様、ありがとう」

ちなみにシャルさんはあんまり外に出たくないみたいだから、キッチンを任せることにした。
幸いなことに、シャルさんは料理も出来るみたい。
でもきっとそれだけじゃ売れないから、私の前世...つまり日本の料理、和食を提供しようと思う！(ドヤ)
ティーが接客担当で、私はサポート担当。
キッチンとフロアを行ったり来たりする予定だ。

この建物の二階は私たちの生活フロアになっている。
キッチンも二階にあるから、料理の持ち運びがちょっと大変だ。

私たちは掃除をしたり、メニューを作ったり、看板を用意したり、たくさん働いた。
それと、エプロンはおそろい！
ティーは一応この世界では不細工な部類だから、仮面を着けて接客するみたい。
その分、私がサポートするつもりだ。



さあ、いよいよ、明日が開店の日だ。