ただ儚く美しく
#1
夏の儚い出会いの話。
ある夏。
確かあの時、私はまだ17歳だった。
夏休み。大量の課題に中々手をつけられず、暇を持て余していた時。部屋は蒸し暑く、開け放った窓から絶え間なく蝉の鳴き声が聞こえてきた。母子家庭でほとんど母が家にいない私、水瀬なぎさは、ある素晴らしいことを思いついた。
「自転車で旅に出よう!」
と。
その時期は母も出張で2週間県外へ出ていたので、ちょうど良かっただろう。
とにかくこの蒸し暑く閉鎖的な部屋から出たかった私は、小さめのボストンバックに荷物と申し訳程度の着替えを詰め込み、部屋を飛び出した。
アパートの階段を駆け下り、自転車へ飛び乗る。
近所の人たちがかけてくる声を適当に流し、坂を越えて当てもなく自転車を漕いだ。
今思えば馬鹿みたいなことをしたと思う。補導されることも考えず、なにを考えていたんだろうか。
風を受けて靡く髪と、はためくTシャツの裾。これほど気持ちの良い瞬間はないと当時は思っていた。
住んでいる町を出て、少し車通りが少なくなった辺りだった。海が見えた。
「わぁぁ、、、」
きらきらと太陽光を反射して輝く水面に惹かれ、少し寄り道をすることにしたのだ。
「冷たっ!気持ちいぃ〜」
サンダルを脱いで砂浜を走り、水に足をつけると、自他車を漕いで疲れた足の疲れが取れていくようだった。
その時の時刻は確か午後5時を回っていて、そろそろ泊まる場所を考えなければいけないところだった。
「どうしようかなぁ、、、」
居心地のいい海からなんとなく離れる気にならず、悩んでいた時だった。
「さがせ、さがせよ海の星、無限の海の彼方には、必ずそれが待っている。別れと出会いを繰り返し、ひとりの宝を得るだろう」
そんな歌が聞こえてきた。透き通るような綺麗な歌声に、無意識に歌が聴こえる方へ足を進めていた。
「誰が歌ってるんだろ、」
気づかれないようにこっそり進むと、
「!!!」
嘘だと思った。だってそんなのあるわけないから。見間違えだと思いたかったんだ。歌を止め、見開いたまでこちらを見ているのは、まぎれもない人魚だったから。
「あなたは、、、」
そう呟くと、人魚はやってしまったという顔で海に入ろうとした。
「待って!」
咄嗟に駆け寄り細く華奢な腕を掴むと、
「離してください!」と言われた。
「あなたはなに?人魚?」
話しかけると、逃げられないと思ったのか、抵抗をやめて質問に答えた。
「そう、私は人魚。どうしましょう、お父様に人間に見られたなんて知られたら、、、」
「どうして上に上がっていたの?」
「この時間はほとんど人が来ないから。人間の景色を見るのが好きなの。」
改めて見ると、彼女の美しさに肝を抜かれた。白い肌、大きな桜色の瞳、月のような髪の毛、瞳の色と同じ鰭は、驚くほど美しく輝いていた。
「いいなぁ、、、私も人間に生まれたかった。」
「それを言うなら私だって人魚になりたかったわ!」
その瞬間、2人同時にプッと吹き出し、腹を抱えて大笑いした。いまでもあの会話のなにが面白かったのかは分からないが。
「あなたとはいい友達になれそう、あなた名前は?」
私がそう問うと、
「エリーよ。エリー・トリアンナ」
「私はなぎさ。よろしくね」
「ねぇ、さっき人魚になりたいって言ったでしょ?」
丸い瞳に見つめられながらきかれた。
「うん、そうだけど、、、それがなにか?」
その瞬間、彼女は信じられないことを言ったのだ。
「じゃあそれ、叶えてあげるよ」
と。
確かあの時、私はまだ17歳だった。
夏休み。大量の課題に中々手をつけられず、暇を持て余していた時。部屋は蒸し暑く、開け放った窓から絶え間なく蝉の鳴き声が聞こえてきた。母子家庭でほとんど母が家にいない私、水瀬なぎさは、ある素晴らしいことを思いついた。
「自転車で旅に出よう!」
と。
その時期は母も出張で2週間県外へ出ていたので、ちょうど良かっただろう。
とにかくこの蒸し暑く閉鎖的な部屋から出たかった私は、小さめのボストンバックに荷物と申し訳程度の着替えを詰め込み、部屋を飛び出した。
アパートの階段を駆け下り、自転車へ飛び乗る。
近所の人たちがかけてくる声を適当に流し、坂を越えて当てもなく自転車を漕いだ。
今思えば馬鹿みたいなことをしたと思う。補導されることも考えず、なにを考えていたんだろうか。
風を受けて靡く髪と、はためくTシャツの裾。これほど気持ちの良い瞬間はないと当時は思っていた。
住んでいる町を出て、少し車通りが少なくなった辺りだった。海が見えた。
「わぁぁ、、、」
きらきらと太陽光を反射して輝く水面に惹かれ、少し寄り道をすることにしたのだ。
「冷たっ!気持ちいぃ〜」
サンダルを脱いで砂浜を走り、水に足をつけると、自他車を漕いで疲れた足の疲れが取れていくようだった。
その時の時刻は確か午後5時を回っていて、そろそろ泊まる場所を考えなければいけないところだった。
「どうしようかなぁ、、、」
居心地のいい海からなんとなく離れる気にならず、悩んでいた時だった。
「さがせ、さがせよ海の星、無限の海の彼方には、必ずそれが待っている。別れと出会いを繰り返し、ひとりの宝を得るだろう」
そんな歌が聞こえてきた。透き通るような綺麗な歌声に、無意識に歌が聴こえる方へ足を進めていた。
「誰が歌ってるんだろ、」
気づかれないようにこっそり進むと、
「!!!」
嘘だと思った。だってそんなのあるわけないから。見間違えだと思いたかったんだ。歌を止め、見開いたまでこちらを見ているのは、まぎれもない人魚だったから。
「あなたは、、、」
そう呟くと、人魚はやってしまったという顔で海に入ろうとした。
「待って!」
咄嗟に駆け寄り細く華奢な腕を掴むと、
「離してください!」と言われた。
「あなたはなに?人魚?」
話しかけると、逃げられないと思ったのか、抵抗をやめて質問に答えた。
「そう、私は人魚。どうしましょう、お父様に人間に見られたなんて知られたら、、、」
「どうして上に上がっていたの?」
「この時間はほとんど人が来ないから。人間の景色を見るのが好きなの。」
改めて見ると、彼女の美しさに肝を抜かれた。白い肌、大きな桜色の瞳、月のような髪の毛、瞳の色と同じ鰭は、驚くほど美しく輝いていた。
「いいなぁ、、、私も人間に生まれたかった。」
「それを言うなら私だって人魚になりたかったわ!」
その瞬間、2人同時にプッと吹き出し、腹を抱えて大笑いした。いまでもあの会話のなにが面白かったのかは分からないが。
「あなたとはいい友達になれそう、あなた名前は?」
私がそう問うと、
「エリーよ。エリー・トリアンナ」
「私はなぎさ。よろしくね」
「ねぇ、さっき人魚になりたいって言ったでしょ?」
丸い瞳に見つめられながらきかれた。
「うん、そうだけど、、、それがなにか?」
その瞬間、彼女は信じられないことを言ったのだ。
「じゃあそれ、叶えてあげるよ」
と。
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