聞こえなくなった声を辿って【our fantasy】
日ノ丸「…だからさ…」
日ノ丸「お願い♡」
真人「…は?」
[水平線]
真人視点
いやいやいや。
急に?明日から?楽座と?天楼と?そのほか()と?
一緒に?暮らせと?????
真人「正気か?」
日ノ丸「まぁ、正気じゃないねー」
俺が真顔で訊いたにもかかわらず、呑気にポ〇キー食ってる日ノ丸。
…さっき出会ったコンビニで買ったんだろうけど、ここ喫茶店なんだが。
真人「とにかく、俺はあんたらと住むつもりはないんだって。
…仕事が山場なんだよ。あとちょっとで全財産が俺のものだから」
日ノ丸「へぇー。それ俺に言っちゃっていいの?」
真人「えりかさんもそう言ってたけど。俺が今「俺」で喋るやつは全員、信用してるからさ」
真人「それに、この情報を持ったってあんたは何にもできないだろ?」
日ノ丸「…ま、ね。」
俺もあんたも[太字]指名手配犯[/太字]。
そういう点では、俺たちは似てんだよな。
日ノ丸「…どうなの、冬美さんとはさ。」
真人「どうもこうも。俺にとって女は道具。」
真人「顔やお金で群がる蛾だよ」
酷い言葉に皮肉を混ぜて。
…道具と、冬美さんを見れない俺を見ないふりをして。
日ノ丸「…まぁ、その辺俺ら[太字]サキュバス[/太字]にも重なるかもね。」
日ノ丸「俺はえりさん以外に興味ないけど。」
真人「だな。やっぱり似てる。…嫌だけど」
日ノ丸「何で嫌なんだよ」
窓の外は日が傾き始めているのか。雨のせいでわからない。
[水平線]
日ノ丸視点
真人さんと話して、喫茶店から出たところで、しとしと降る雨に気づいた。
日ノ丸「雨降ってるし…気づかなかったな」
雨が苦手とかはないけど、いい気はしない。
というか、そんなことより。
日ノ丸「…なんで気づかなかったんだろ。やっぱもう少し精気の頻度増やしたほうがいいかな…」
自慢じゃないけど[太字]サキュバス[/太字]で、人間を超えてる…一応…俺は、
まぁ精気吸いたて1週間とか調子いい時は気圧でなんとなく天気がわかったりするんだよな。
勘だけど。
しっかし、一昨日精気貰ったばっかなんだけどなぁ…
日ノ丸「ん?」
あそこに歩いて…あっ今路地入った人…
日ノ丸「…確か、[太字]フレア[/太字]だっけ?」
…でもこっちに気づいてないし、危害も加えてきそうにないから…
日ノ丸「まぁ、いいか。可能な限り接点は持たないに越したことはないし」
[水平線]
真人視点
真人「ただいま」
豪勢な屋敷のドアを開ける。
冬美「おかえりなさい。真人さん。」
すぐに出迎えてくれる冬美さんに、嬉しさを感じてしまう。
…本当に、夫婦になれたらいいのに。
真人「やっと帰ってこれた。貴女に会いたくて仕方がなかったんだよ」
冬美「そんな。時間は全然遅くないのに」
照れて笑う顔にぎゅっと心が締まった。
[水平線]
冬美視点
夕飯を二人で食べて、バルコニーに出る。
さっきまで降っていた雨は止んで、雲の向こうに月も見える。
____あぁ、満月だったら。
綺麗な満月で、雲一つ無かったら、今ここに真人さんを呼ぶのにな。
…それとも、やっぱり叶わないのかな。
真人さんは、やっぱり…
「こんにちは、マドモアゼル?」
冬美「…誰」
「迎えに参りました。…なんてね?」
冬美「ねぇ、誰なの…」
「俺のことは気兼ねなく『[太字]マニキュア[/太字]』と呼んでくれ。」
冬美「マニキュア…?」
マニキュア「さぁ、美しく憐れなマドモアゼル。私と共に来てくれないか?」
冬美「どこに連れていくつもりなの?」
マニキュア「なに、簡単さ」
マニキュア「[太字]君の能力を最大限に使える場所[/太字]だよ」
冬美「…っ、」
能力…
嫌だ…
冬美「嫌…!」
マニキュア「釣れないなぁ。愛おしく強情な乙女よ」
ガチャと後ろの扉が開く。
真人「冬美さん…!?」
冬美「真人さん!…助けて…!」
マニキュア「おや、立ち位置弁えぬ哀れな牡鹿よ。」
真人「冬美さんを返せ!」
マニキュア「貴方に救う権利はない。…彼女はこれから、最大限に能力を。
俺たちのために使ってもらうんだから」
冬美「嫌だ…私に能力を使わせないで!」
マニキュア「そういうわけにもいかないんだなぁ」
背中にひし形の結晶を集めて、翼を作り出す。
マニキュア「これも俺らの責務のためなんだ。じたばたしてもさらってくよ」
冬美「離して!」
私は抗えず、彼に腕を引っ張られて空に舞う。
真人「冬美さん!」
マニキュア「…[太字]能力も使おうとしない。[/太字]」
真人「…っあ」
マニキュア「[太字]何も守れない[/太字]」
冬美「何を…?」
マニキュア「[太字]…牡鹿はみじめに震えるのみか[/太字]」
私の腕をつかむ男は、ひどく冷酷に真人さんに言い放って。
マニキュア「そんな男の元より、俺の隣がもっといいだろう。行くぞ」
ぱっと笑顔に変わる。…恐い…
冬美「ちょっと…!」
真人「…っ…」
雨の匂いと頬を撫でる冷たい風が気持ち悪かった。
[水平線]
真人視点
真人「…」
能力が使えないのは、逃げることしかできない影だから。
何も守れないのは、しょせん詐欺の相手で守ろうとしなかったから。
みじめに震えるのは…それは……
真人「…その、とおりだ」
何を、心まで騙している?
俺は守れなかった。
愛したあの[漢字]女[/漢字][ふりがな]ひと[/ふりがな]を。
守りたくても、「影分身」しかできない俺じゃ何もできなかった。
…結局、みじめに震えていた。
ほんとうにそのとおりじゃないか!
真人「…俺は…どうしたらいい?」
日ノ丸「お願い♡」
真人「…は?」
[水平線]
真人視点
いやいやいや。
急に?明日から?楽座と?天楼と?そのほか()と?
一緒に?暮らせと?????
真人「正気か?」
日ノ丸「まぁ、正気じゃないねー」
俺が真顔で訊いたにもかかわらず、呑気にポ〇キー食ってる日ノ丸。
…さっき出会ったコンビニで買ったんだろうけど、ここ喫茶店なんだが。
真人「とにかく、俺はあんたらと住むつもりはないんだって。
…仕事が山場なんだよ。あとちょっとで全財産が俺のものだから」
日ノ丸「へぇー。それ俺に言っちゃっていいの?」
真人「えりかさんもそう言ってたけど。俺が今「俺」で喋るやつは全員、信用してるからさ」
真人「それに、この情報を持ったってあんたは何にもできないだろ?」
日ノ丸「…ま、ね。」
俺もあんたも[太字]指名手配犯[/太字]。
そういう点では、俺たちは似てんだよな。
日ノ丸「…どうなの、冬美さんとはさ。」
真人「どうもこうも。俺にとって女は道具。」
真人「顔やお金で群がる蛾だよ」
酷い言葉に皮肉を混ぜて。
…道具と、冬美さんを見れない俺を見ないふりをして。
日ノ丸「…まぁ、その辺俺ら[太字]サキュバス[/太字]にも重なるかもね。」
日ノ丸「俺はえりさん以外に興味ないけど。」
真人「だな。やっぱり似てる。…嫌だけど」
日ノ丸「何で嫌なんだよ」
窓の外は日が傾き始めているのか。雨のせいでわからない。
[水平線]
日ノ丸視点
真人さんと話して、喫茶店から出たところで、しとしと降る雨に気づいた。
日ノ丸「雨降ってるし…気づかなかったな」
雨が苦手とかはないけど、いい気はしない。
というか、そんなことより。
日ノ丸「…なんで気づかなかったんだろ。やっぱもう少し精気の頻度増やしたほうがいいかな…」
自慢じゃないけど[太字]サキュバス[/太字]で、人間を超えてる…一応…俺は、
まぁ精気吸いたて1週間とか調子いい時は気圧でなんとなく天気がわかったりするんだよな。
勘だけど。
しっかし、一昨日精気貰ったばっかなんだけどなぁ…
日ノ丸「ん?」
あそこに歩いて…あっ今路地入った人…
日ノ丸「…確か、[太字]フレア[/太字]だっけ?」
…でもこっちに気づいてないし、危害も加えてきそうにないから…
日ノ丸「まぁ、いいか。可能な限り接点は持たないに越したことはないし」
[水平線]
真人視点
真人「ただいま」
豪勢な屋敷のドアを開ける。
冬美「おかえりなさい。真人さん。」
すぐに出迎えてくれる冬美さんに、嬉しさを感じてしまう。
…本当に、夫婦になれたらいいのに。
真人「やっと帰ってこれた。貴女に会いたくて仕方がなかったんだよ」
冬美「そんな。時間は全然遅くないのに」
照れて笑う顔にぎゅっと心が締まった。
[水平線]
冬美視点
夕飯を二人で食べて、バルコニーに出る。
さっきまで降っていた雨は止んで、雲の向こうに月も見える。
____あぁ、満月だったら。
綺麗な満月で、雲一つ無かったら、今ここに真人さんを呼ぶのにな。
…それとも、やっぱり叶わないのかな。
真人さんは、やっぱり…
「こんにちは、マドモアゼル?」
冬美「…誰」
「迎えに参りました。…なんてね?」
冬美「ねぇ、誰なの…」
「俺のことは気兼ねなく『[太字]マニキュア[/太字]』と呼んでくれ。」
冬美「マニキュア…?」
マニキュア「さぁ、美しく憐れなマドモアゼル。私と共に来てくれないか?」
冬美「どこに連れていくつもりなの?」
マニキュア「なに、簡単さ」
マニキュア「[太字]君の能力を最大限に使える場所[/太字]だよ」
冬美「…っ、」
能力…
嫌だ…
冬美「嫌…!」
マニキュア「釣れないなぁ。愛おしく強情な乙女よ」
ガチャと後ろの扉が開く。
真人「冬美さん…!?」
冬美「真人さん!…助けて…!」
マニキュア「おや、立ち位置弁えぬ哀れな牡鹿よ。」
真人「冬美さんを返せ!」
マニキュア「貴方に救う権利はない。…彼女はこれから、最大限に能力を。
俺たちのために使ってもらうんだから」
冬美「嫌だ…私に能力を使わせないで!」
マニキュア「そういうわけにもいかないんだなぁ」
背中にひし形の結晶を集めて、翼を作り出す。
マニキュア「これも俺らの責務のためなんだ。じたばたしてもさらってくよ」
冬美「離して!」
私は抗えず、彼に腕を引っ張られて空に舞う。
真人「冬美さん!」
マニキュア「…[太字]能力も使おうとしない。[/太字]」
真人「…っあ」
マニキュア「[太字]何も守れない[/太字]」
冬美「何を…?」
マニキュア「[太字]…牡鹿はみじめに震えるのみか[/太字]」
私の腕をつかむ男は、ひどく冷酷に真人さんに言い放って。
マニキュア「そんな男の元より、俺の隣がもっといいだろう。行くぞ」
ぱっと笑顔に変わる。…恐い…
冬美「ちょっと…!」
真人「…っ…」
雨の匂いと頬を撫でる冷たい風が気持ち悪かった。
[水平線]
真人視点
真人「…」
能力が使えないのは、逃げることしかできない影だから。
何も守れないのは、しょせん詐欺の相手で守ろうとしなかったから。
みじめに震えるのは…それは……
真人「…その、とおりだ」
何を、心まで騙している?
俺は守れなかった。
愛したあの[漢字]女[/漢字][ふりがな]ひと[/ふりがな]を。
守りたくても、「影分身」しかできない俺じゃ何もできなかった。
…結局、みじめに震えていた。
ほんとうにそのとおりじゃないか!
真人「…俺は…どうしたらいい?」