聞こえなくなった声を辿って【our fantasy】
??視点
「貴方はこういう日が好きでしたね、[太字]真人[/太字]さん」
初夏の花の咲き誇る公園で、貴女が不意にそんな話を切り出してくる。
真人「そういう貴女も、とても可憐で楽しげな笑顔だが。[太字]冬美[/太字]さん?」
子供が訊かれたことに反発するように、誘い文句と本音のブーケを言い放つ。
冬美「ええ。私、暖かい初夏が好きなのよ」
冬美「というか、冬が嫌いなの」
真人「…、そうでしたね、会ったときそんな話をしていた。」
冬美「けれど、貴方に会ってからは冬も少し楽しいのよ、なぜだかわかる?」
水色の瞳が挑発するように笑う。
その瞳に映る紫のシャクヤクは見なかったことにした。
真人「…さぁ、知らないな。貴女はいつだってそんな話をしたっけ?」
冬美「初めてよ、貴方にも周りにも」
冬美「私が最近冬を好きなのは、貴方の誕生日があるから」
冬美「大切な人を祝えるのってこんなに嬉しいことだって、恥ずかしいけど最近分かったの」
笑う貴女を暖かな光が照らす。
対照的に自分が暗くなってしまいそうで恐ろしい。
真人「そうですか、嬉しいな」
その純愛を返したい。
俺だって返したい。
でも、もう後戻りはできないんだよ。
どうか不運な貴女に神の加護を。
[漢字]俺みたいな奴[/漢字][ふりがな]結婚詐欺師[/ふりがな]に恋をしてしまった貴女に…
[水平線]
「成程、それは辛いでしょうね」
ふふ、と笑いながら目の前の彼___[太字]円山えりか[/太字]さん、は言う。
えりか「けれど私にそれを言ってしまって良いのですか?」
真人「えりかさんなら俺を否定しないでしょう?」
えりか「…貴方までそんなことを…ヒノさんが増えたようですよ」
真人「似てるからな、[太字]日ノ丸[/太字]と俺は」
やはり、この人の前では俺は素直になれる。
話すとき、遠まわしで美的な表現がいらないからだろうな。
えりか「そうだ、楽座さんにはもう会いましたか?」
真人「楽座?なんであいつに会わなきゃいけないんです」
えりか「天楼さんから聞きまして。どうやら女の子を拾ったと」
真人「うっわ、二人目じゃねぇですか。絶対手出してる」
えりか「そんなに言うなら一緒に住んで守ってあげるのはどうですか、従兄妹なんでしょう?」
真人「その義理もないし何より俺が楽座と一緒に住むのが嫌なもんで。」
えりか「楽座さん何したんですか…((」
手首の腕時計で時刻を確認してから、残っていたカフェオレを飲んで席を立つ。
真人「そろそろ時間なんで俺は行きますよ、お代は払っておきますから」
えりか「そうですか、なんだか申し訳ないな…ありがとうございます」
えりか「…あっ、そうだ、真人さん。」
[水平線]
夕方の都会はちっとも綺麗じゃなくて、ネオンも光らない中途半端な世界が広がるのみ。
真人「…楽座か…」
ついでだし会いに行くことにする。面倒ごとは先にやる主義だから。
ピンポーン
すぐにドアが開いて、出てきたのは天楼だった。
真人「天楼?」
天楼「よっ、真人。しばらく数か月ぶりじゃん」
真人「楽座はどこにいるんだ?」
天楼「あぁ?楽にぃに用とかお前らしくなさすぎるだろ、ドッペルゲンガーか?」
真人「俺をなんだと思ってんだよ」
天楼「楽にぃーーーー、真人なんだけど上げていいかーーー?つうかお前も出てこーーーーい」
後ろを向いて天楼が叫ぶ。こいつは昔から声が通るな…((
楽座「おー真人やん!ひっさびさやなぁーー!」
真人「お邪魔しますよ」
楽座「どーぞどーぞ!あ、オレンジジュースあるんやけど飲むー?」
真人「[漢字]子供か[/漢字][ふりがな]死ね[/ふりがな]」
楽座「ルビで本音言うな?((」
こいつの前でも俺は俺のままでいられる。
____すごく癪だが。
[水平線]
楽座「紹介するな、こいつは音無」
音無「こ、こんばんわ…」
真人「こんばんは、初めまして。…楽座、どうやって拾ったんだこいつ」
楽座「それがなあ…(説明中)」
真人「そういう…、というかお前、ほんと無責任に子供拾うのやめろよな」
楽座「ならお前も一緒に住めばええのにぃ…、天楼に勉強教えたってぇ」
天楼「あいにくですが人に教えられなくてもできるんですがねぇ。」
真人「うん、まぁ…そうだったなそういえば。」
真人「それと、今移住するとこっちも不都合なんだよ」
楽座「またお前詐欺してんのかよ、いい加減やめーやー」
真人「もう無理だな、今やめてもサツには捕まるしな。それに辞めると俺金無くなるし」
天楼「クズだなーお前やっぱ。」
真人「あぁ?」
楽座「そんで、要件それだけか?」
真人「…まぁ。…あと、えりかさんからの受け売り」
楽座「えりかさんから?」
真人「…[太字]スイートピーという男の名を知らないか?[/太字]と」
楽座「…スイートピー…って花だよな?」
天楼「というか、なんで今になってそんなこと…」
真人「さぁ、なんだか思いがあるんじゃないか?俺もそれしか聞いてないから知らないし」
それにしてもスイートピーか…
花言葉に隠し事があるのか?
[水平線]
???視点
ふわりとカーテンが揺れた。
真夜中の中途な月明かりに照らされて、その顔が映る。
えりか「…まさか、今日がそうですかね?ヒノさん」
「うん。そうだよ、えりさん。」
深い赤の髪、ほのかに笑う口元に見える牙。
彼は[太字][漢字]櫂野[/漢字][ふりがな]かいや[/ふりがな] [漢字]日ノ丸[/漢字][ふりがな]ひのまる[/ふりがな][/太字]さんだ。
えりか「まったく仕方のない人なんですから…」
日ノ丸「俺が死んで困るのはえりさんもでしょ?」
えりか「…そうですね」
指先から、髪、牙。それが首に触れていく。
日ノ丸「いただきます」
暗がりを照らす月明かりはカーテンの隙間から、細く伸びるまでだった。
「貴方はこういう日が好きでしたね、[太字]真人[/太字]さん」
初夏の花の咲き誇る公園で、貴女が不意にそんな話を切り出してくる。
真人「そういう貴女も、とても可憐で楽しげな笑顔だが。[太字]冬美[/太字]さん?」
子供が訊かれたことに反発するように、誘い文句と本音のブーケを言い放つ。
冬美「ええ。私、暖かい初夏が好きなのよ」
冬美「というか、冬が嫌いなの」
真人「…、そうでしたね、会ったときそんな話をしていた。」
冬美「けれど、貴方に会ってからは冬も少し楽しいのよ、なぜだかわかる?」
水色の瞳が挑発するように笑う。
その瞳に映る紫のシャクヤクは見なかったことにした。
真人「…さぁ、知らないな。貴女はいつだってそんな話をしたっけ?」
冬美「初めてよ、貴方にも周りにも」
冬美「私が最近冬を好きなのは、貴方の誕生日があるから」
冬美「大切な人を祝えるのってこんなに嬉しいことだって、恥ずかしいけど最近分かったの」
笑う貴女を暖かな光が照らす。
対照的に自分が暗くなってしまいそうで恐ろしい。
真人「そうですか、嬉しいな」
その純愛を返したい。
俺だって返したい。
でも、もう後戻りはできないんだよ。
どうか不運な貴女に神の加護を。
[漢字]俺みたいな奴[/漢字][ふりがな]結婚詐欺師[/ふりがな]に恋をしてしまった貴女に…
[水平線]
「成程、それは辛いでしょうね」
ふふ、と笑いながら目の前の彼___[太字]円山えりか[/太字]さん、は言う。
えりか「けれど私にそれを言ってしまって良いのですか?」
真人「えりかさんなら俺を否定しないでしょう?」
えりか「…貴方までそんなことを…ヒノさんが増えたようですよ」
真人「似てるからな、[太字]日ノ丸[/太字]と俺は」
やはり、この人の前では俺は素直になれる。
話すとき、遠まわしで美的な表現がいらないからだろうな。
えりか「そうだ、楽座さんにはもう会いましたか?」
真人「楽座?なんであいつに会わなきゃいけないんです」
えりか「天楼さんから聞きまして。どうやら女の子を拾ったと」
真人「うっわ、二人目じゃねぇですか。絶対手出してる」
えりか「そんなに言うなら一緒に住んで守ってあげるのはどうですか、従兄妹なんでしょう?」
真人「その義理もないし何より俺が楽座と一緒に住むのが嫌なもんで。」
えりか「楽座さん何したんですか…((」
手首の腕時計で時刻を確認してから、残っていたカフェオレを飲んで席を立つ。
真人「そろそろ時間なんで俺は行きますよ、お代は払っておきますから」
えりか「そうですか、なんだか申し訳ないな…ありがとうございます」
えりか「…あっ、そうだ、真人さん。」
[水平線]
夕方の都会はちっとも綺麗じゃなくて、ネオンも光らない中途半端な世界が広がるのみ。
真人「…楽座か…」
ついでだし会いに行くことにする。面倒ごとは先にやる主義だから。
ピンポーン
すぐにドアが開いて、出てきたのは天楼だった。
真人「天楼?」
天楼「よっ、真人。しばらく数か月ぶりじゃん」
真人「楽座はどこにいるんだ?」
天楼「あぁ?楽にぃに用とかお前らしくなさすぎるだろ、ドッペルゲンガーか?」
真人「俺をなんだと思ってんだよ」
天楼「楽にぃーーーー、真人なんだけど上げていいかーーー?つうかお前も出てこーーーーい」
後ろを向いて天楼が叫ぶ。こいつは昔から声が通るな…((
楽座「おー真人やん!ひっさびさやなぁーー!」
真人「お邪魔しますよ」
楽座「どーぞどーぞ!あ、オレンジジュースあるんやけど飲むー?」
真人「[漢字]子供か[/漢字][ふりがな]死ね[/ふりがな]」
楽座「ルビで本音言うな?((」
こいつの前でも俺は俺のままでいられる。
____すごく癪だが。
[水平線]
楽座「紹介するな、こいつは音無」
音無「こ、こんばんわ…」
真人「こんばんは、初めまして。…楽座、どうやって拾ったんだこいつ」
楽座「それがなあ…(説明中)」
真人「そういう…、というかお前、ほんと無責任に子供拾うのやめろよな」
楽座「ならお前も一緒に住めばええのにぃ…、天楼に勉強教えたってぇ」
天楼「あいにくですが人に教えられなくてもできるんですがねぇ。」
真人「うん、まぁ…そうだったなそういえば。」
真人「それと、今移住するとこっちも不都合なんだよ」
楽座「またお前詐欺してんのかよ、いい加減やめーやー」
真人「もう無理だな、今やめてもサツには捕まるしな。それに辞めると俺金無くなるし」
天楼「クズだなーお前やっぱ。」
真人「あぁ?」
楽座「そんで、要件それだけか?」
真人「…まぁ。…あと、えりかさんからの受け売り」
楽座「えりかさんから?」
真人「…[太字]スイートピーという男の名を知らないか?[/太字]と」
楽座「…スイートピー…って花だよな?」
天楼「というか、なんで今になってそんなこと…」
真人「さぁ、なんだか思いがあるんじゃないか?俺もそれしか聞いてないから知らないし」
それにしてもスイートピーか…
花言葉に隠し事があるのか?
[水平線]
???視点
ふわりとカーテンが揺れた。
真夜中の中途な月明かりに照らされて、その顔が映る。
えりか「…まさか、今日がそうですかね?ヒノさん」
「うん。そうだよ、えりさん。」
深い赤の髪、ほのかに笑う口元に見える牙。
彼は[太字][漢字]櫂野[/漢字][ふりがな]かいや[/ふりがな] [漢字]日ノ丸[/漢字][ふりがな]ひのまる[/ふりがな][/太字]さんだ。
えりか「まったく仕方のない人なんですから…」
日ノ丸「俺が死んで困るのはえりさんもでしょ?」
えりか「…そうですね」
指先から、髪、牙。それが首に触れていく。
日ノ丸「いただきます」
暗がりを照らす月明かりはカーテンの隙間から、細く伸びるまでだった。