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聞こえなくなった声を辿って【our fantasy】

#3

ブーケ

??視点



「貴方はこういう日が好きでしたね、[太字]真人[/太字]さん」





初夏の花の咲き誇る公園で、貴女が不意にそんな話を切り出してくる。






真人「そういう貴女も、とても可憐で楽しげな笑顔だが。[太字]冬美[/太字]さん?」







子供が訊かれたことに反発するように、誘い文句と本音のブーケを言い放つ。






冬美「ええ。私、暖かい初夏が好きなのよ」





冬美「というか、冬が嫌いなの」





真人「…、そうでしたね、会ったときそんな話をしていた。」





冬美「けれど、貴方に会ってからは冬も少し楽しいのよ、なぜだかわかる?」





水色の瞳が挑発するように笑う。






その瞳に映る紫のシャクヤクは見なかったことにした。






真人「…さぁ、知らないな。貴女はいつだってそんな話をしたっけ?」





冬美「初めてよ、貴方にも周りにも」






冬美「私が最近冬を好きなのは、貴方の誕生日があるから」




冬美「大切な人を祝えるのってこんなに嬉しいことだって、恥ずかしいけど最近分かったの」





笑う貴女を暖かな光が照らす。






対照的に自分が暗くなってしまいそうで恐ろしい。





真人「そうですか、嬉しいな」




その純愛を返したい。



俺だって返したい。




でも、もう後戻りはできないんだよ。






どうか不運な貴女に神の加護を。





[漢字]俺みたいな奴[/漢字][ふりがな]結婚詐欺師[/ふりがな]に恋をしてしまった貴女に…



[水平線]





「成程、それは辛いでしょうね」





ふふ、と笑いながら目の前の彼___[太字]円山えりか[/太字]さん、は言う。






えりか「けれど私にそれを言ってしまって良いのですか?」





真人「えりかさんなら俺を否定しないでしょう?」





えりか「…貴方までそんなことを…ヒノさんが増えたようですよ」





真人「似てるからな、[太字]日ノ丸[/太字]と俺は」





やはり、この人の前では俺は素直になれる。





話すとき、遠まわしで美的な表現がいらないからだろうな。






えりか「そうだ、楽座さんにはもう会いましたか?」





真人「楽座?なんであいつに会わなきゃいけないんです」





えりか「天楼さんから聞きまして。どうやら女の子を拾ったと」





真人「うっわ、二人目じゃねぇですか。絶対手出してる」





えりか「そんなに言うなら一緒に住んで守ってあげるのはどうですか、従兄妹なんでしょう?」




真人「その義理もないし何より俺が楽座と一緒に住むのが嫌なもんで。」





えりか「楽座さん何したんですか…((」





手首の腕時計で時刻を確認してから、残っていたカフェオレを飲んで席を立つ。






真人「そろそろ時間なんで俺は行きますよ、お代は払っておきますから」




えりか「そうですか、なんだか申し訳ないな…ありがとうございます」





えりか「…あっ、そうだ、真人さん。」


[水平線]




夕方の都会はちっとも綺麗じゃなくて、ネオンも光らない中途半端な世界が広がるのみ。





真人「…楽座か…」






ついでだし会いに行くことにする。面倒ごとは先にやる主義だから。









ピンポーン





すぐにドアが開いて、出てきたのは天楼だった。






真人「天楼?」





天楼「よっ、真人。しばらく数か月ぶりじゃん」





真人「楽座はどこにいるんだ?」





天楼「あぁ?楽にぃに用とかお前らしくなさすぎるだろ、ドッペルゲンガーか?」





真人「俺をなんだと思ってんだよ」





天楼「楽にぃーーーー、真人なんだけど上げていいかーーー?つうかお前も出てこーーーーい」






後ろを向いて天楼が叫ぶ。こいつは昔から声が通るな…((





楽座「おー真人やん!ひっさびさやなぁーー!」





真人「お邪魔しますよ」





楽座「どーぞどーぞ!あ、オレンジジュースあるんやけど飲むー?」






真人「[漢字]子供か[/漢字][ふりがな]死ね[/ふりがな]」






楽座「ルビで本音言うな?((」





こいつの前でも俺は俺のままでいられる。






____すごく癪だが。




[水平線]




楽座「紹介するな、こいつは音無」





音無「こ、こんばんわ…」





真人「こんばんは、初めまして。…楽座、どうやって拾ったんだこいつ」







楽座「それがなあ…(説明中)」






真人「そういう…、というかお前、ほんと無責任に子供拾うのやめろよな」






楽座「ならお前も一緒に住めばええのにぃ…、天楼に勉強教えたってぇ」





天楼「あいにくですが人に教えられなくてもできるんですがねぇ。」





真人「うん、まぁ…そうだったなそういえば。」






真人「それと、今移住するとこっちも不都合なんだよ」





楽座「またお前詐欺してんのかよ、いい加減やめーやー」





真人「もう無理だな、今やめてもサツには捕まるしな。それに辞めると俺金無くなるし」




天楼「クズだなーお前やっぱ。」





真人「あぁ?」





楽座「そんで、要件それだけか?」





真人「…まぁ。…あと、えりかさんからの受け売り」






楽座「えりかさんから?」





真人「…[太字]スイートピーという男の名を知らないか?[/太字]と」






楽座「…スイートピー…って花だよな?」





天楼「というか、なんで今になってそんなこと…」





真人「さぁ、なんだか思いがあるんじゃないか?俺もそれしか聞いてないから知らないし」






それにしてもスイートピーか…






花言葉に隠し事があるのか?



[水平線]





???視点






ふわりとカーテンが揺れた。






真夜中の中途な月明かりに照らされて、その顔が映る。








えりか「…まさか、今日がそうですかね?ヒノさん」





「うん。そうだよ、えりさん。」






深い赤の髪、ほのかに笑う口元に見える牙。





彼は[太字][漢字]櫂野[/漢字][ふりがな]かいや[/ふりがな] [漢字]日ノ丸[/漢字][ふりがな]ひのまる[/ふりがな][/太字]さんだ。






えりか「まったく仕方のない人なんですから…」






日ノ丸「俺が死んで困るのはえりさんもでしょ?」






えりか「…そうですね」






指先から、髪、牙。それが首に触れていく。







日ノ丸「いただきます」





暗がりを照らす月明かりはカーテンの隙間から、細く伸びるまでだった。

作者メッセージ

マジで書いてて楽しすぎて炭素繊維になっちゃう。


もう2話時点で伏線が7個ある話しますか?(((

2025/05/20 23:49

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