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聞こえなくなった声を辿って【our fantasy】

#2

物語の始まり

「ッハッ、ハッ、ハァッ…!!」



曇天の夜、隙間から覗く月明かりが一人の、一心不乱に駆ける少女を照らす。




「逃げなきゃ……」




少女は冷たく張り裂けそうな喉から、ただそれを呟きながら走る。





けして恵まれたものではないワンピースに、




ここまでの過酷を想像させるような汚れと怪我にまみれた裸足。





それらに構わず、ただひたすらに少女は走った。







[水平線]


??視点




「はぁ…今日も客来ぉへんかったなぁ…」





カラカラと軽快な音を立てて、商品を載せた荷車が揺れる。





畳んだ「何でも屋」の幟は、役目を果たせずどこか寂しそうに見える。






「ってーのは俺の思いすぎかなぁ…
まともに活躍させてくれない持ち主のことなんか好いてへんわなぁ…」





空っ風が頬を撫でていく。悲しいでほんま。





「…ん?」






どこか遠くで足音がした気がして、集中して耳をすましてみる。






「ハァ、ハァッ…」




「な?!」



夜道をただ走っている女の子…って、今真夜中やで?!






ドンッ





「わっ____!!」





咄嗟の事で動けなかった俺に衝突したその女の子は、俺の姿を見て固まる。






「えぇー…大丈夫か?」





どことなく[太字]あの頃のアイツ[/太字]に似てるなと思いつつも、俺は話しかけてみる。





すると。





「…助けて…」







「追われているの…」






絞り出したような声が聞こえた。






「えっ…そう、いうてもなぁ…」







「お願い…」






「…」




[水平線]








「そら、着いたで」






家に女の子上げちまったよ…。





いや、あれで守らないとか男やないやん。俺罪悪感でクリーチャーなってまうて。






「あの…お名前は?」






「あぁ、俺は[太字][漢字]玲陵寺[/漢字][ふりがな]れいりょうじ[/ふりがな][漢字]楽座[/漢字][ふりがな]らくざ[/ふりがな][/太字]。まぁ好きに呼んでや」






「楽座…さん…私は[漢字][太字]音無[/太字][/漢字][ふりがな]おむ[/ふりがな]。」







楽座「音無…珍しい名前やな。…て、苗字は?」







音無「…苗字?」








楽座「え…まさか、無い?」







音無「それは______







ドンッ!!!!






ドアが突然突き破られて、一人の女性が出てくる。






黒髪ロングに[漢字]錆浅葱[/漢字][ふりがな]さびあさぎ[/ふりがな]色のメッシュ



…どこかで見たような…髪色の女性が。








「おとなしくしてくれないかなぁ。あたし、アイス食べたいんだよねー」






楽座「ちょい待ち。人んちのドア蹴破って、お前何者やねん」






「こっちだって初めて会う男に名乗る義理はないわぁ。

それより音無ちゃん。お姉さん奢ってあげるからキャンディー食べない?」








音無「…いらない…」





「え?」






音無「…いらない…」





「…あなたはほんとーに貴重なのよぉ?ちょっと身体提供してくれたら世界のすべてが覆っちゃうのに」






音無「嫌だ…私は協力なんてしない…」







音無「[太字]友達を否定するような、あなたたちには[/太字]…!」







「…ふん。」






「だったら力づくよねぇ。ボスの言う通りに♡」






腰のムチを伸ばして床を力強く叩く。まずい_____





楽座「待て!こいつをどうする気や?!」






「あんたは関係ないでしょぉ?!……



でも庇ってるなら一緒かしら?じゃあ…先にあんたから始末してあげる!!」






そう言うと女はムチを振りかぶる。








楽座「そっちがその気ならええで、付き合ったる!!」






手のひらから蔦を伸ばし、伝いに花を付けていく。






ムチと蔦はしっかと結びつき、互いに動けなくなる。






「植物系の能力ね……でもどうする気?ただの蔦に何ができるかしら?!」







楽座「よぉ気づいたなお嬢さん?これはただの蔦やない__」







伝いに咲かせた花が爆発する。火花が散り、ムチを焦がす。







楽座「爆発する[太字]花火[/太字]っつーわけや」










「アンタ…!小癪ね…」






ジュっと音を立てて焦げた鞭を持ち直して振りかぶる。







楽座「さらにこんな使い方もできるねん、[太字]「一輪挿し」[/太字]!!」








手の周囲から花を生み出し周囲にまき散らす。







振りかぶった動きをとっさに止められず、ムチはその花を打ってしまう。






楽座「点火!」





ボンッ!と音を立て、花が爆発する。







「きゃああ!?」






巻き込み爆発も含め相当数を引火させたようで、女は吹っ飛び気絶する。







音無「すごい…!」





楽座「見とったか?これが楽座お兄さんの実力や___」







音無「…待って!!」







どたどたと、倒されたドアからたくさんの男共が来る。十中八九さっきの女の手下やろな。






楽座「ボスのあとに来るとは随分と腰抜けな手下共やなぁ…」





皮肉を込めつつ内心焦る。花はそこまでたくさんは作れない…





数が増えれば増えるほどこちらの消費が大きくなる、だとしたら一輪で多数を巻き込んで…いや…






「騒がしいな…何事だよ」






ガチャ、と向こうのドアが開く音と共に、寝起きっぽい女子が部屋に入ってくる。_____[太字]天楼[/太字]だ。








天楼「あ?楽にぃ以外の全員誰だよ…おい、説明しろ」






楽座「あーちょうどよかったわ天楼、手伝ってくれ。この数俺じゃ捌けんわ」




天楼「説明しろっつってんだよクソが」





と言いつつ、バールを持ってきてこちらに来てくれる天楼。優しいやっちゃ。






「誰だかは知らんが、害を為すなら容赦はしないぞ!皆、撃て!」






楽座「うっわ遠距離かよ最悪や!!」





腕から伸ばす蔦でとっさに自分と音無を守る。






天楼「はー…めんどくせーなぁ…仕方ない。早めに終わらすか。「[太字]カメレオン[/太字]」!!!」






そう言うと天楼は周りの色と同化して消えていく。






「ぐあっ!?」





一人仕留められる。





「落ち着け!足音は聞こえる!耳を澄ませ、集中するんだ!!!」





楽座「それはさせへんで!「[太字]ブーケトス[/太字]」!!」







手のひらから複数の花を生み出す。





楽座「ふぅッ…」






疲労が来て、少しため息をついてしまう。





ボン!と花は不規則に爆発し、一人気を取られ、またやられた。






「花に気を取られるな!」






楽座「あんさんも叫んでてええんか~?」






「な____」






ドカッと蹴りを入れられたように、そいつが伸す。





「何…っ」





どうやら手下たちの中でも技量が高かったようで、倒れたことで周囲がどよめく。





「退却だ!!逃げろー!!」





まもなくそいつらは倒れた仲間たち持って逃げ出していった。____俺の家のドア返せ…((





天楼「んで…このガキどうする?殴る?」





楽座「やめろ」




音無「あ、あの…ありがとうございます…」




天楼「説明して。こいつについてはマジで説明して。じゃないと殴る」



楽座「どっちをや…まぁええわ、こいつは音無。さっきの奴らに狙われてたところを俺が助けてきた」





天楼「うん一回悪く言ってみよう、誘拐じゃね」




楽座「本人合意やで!?」




音無「あの…あなたの名前は…」




天楼「あ?あー…あたしは[太字][漢字]天宮[/漢字][ふりがな]あまみや[/ふりがな] [漢字]天楼[/漢字][ふりがな]てんろう[/ふりがな][/太字]」






音無「天楼さん……」



楽座「あ怖がらんといてな、こいつ普通にええやつやねん。…まぁ指名手配されてますけど…」




天楼「あれは指名手配じゃない、みんながあたしを愛してんだ」


楽座「どっから沸くねんその自信は」







音無「…私、どうしよう…」





楽座「え?あぁ…どうする?警察に…」





天楼「住まわせれば?」




楽座「お前がそれ言うんか?!」




天楼「ふつうはだいぶ問題あるだろけどね幼女と27歳ジジイの同居ってのは。」




楽座「ジジイか!?27歳ってジジイか!?!?」





天楼「まぁこのピチピチJKのあたしも住んでるし。いんじゃね」





音無「でも…私がいたらまたあんな人たちが…」





楽座「それはまぁ大丈夫やろ。俺たち強いってさっきわかったやろ?」





天楼「ヒーローナメてもらったら困るね」





音無「…じゃあ、住みたい」





楽座「いよーし決定や!まずは飯やろ、おなか減って____」





天楼「今深夜3時ですが???」






楽座「う…じゃひとまず寝るってことで…((」






俺たちはまだ知らんかった。






この時の出会いが、あまりに壮大すぎるストーリーの始まりを告げていたことを。





いや、もしかしたらもう気づいていたかもしれないか。





作者メッセージ

2期やっと書けた…!!!!!!!

2025/05/17 12:44

おとうふ ID:≫ 3aqFVNFsPVo.c
続きを執筆
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