聞こえなくなった声を辿って【our fantasy】
えりか視点
ザー…
食べ終わった後の皿を片付けながら、いろいろと思考を巡らせてみた。
「これをお前が読んでるころには、きっと俺はいないんだろうな。
でも最初に読まれるのがお前であることを、俺は心から願うぜ。
もし俺の弟に会ったらさ、伝えてくれよ。
「ごめんな」って。
「お前の兄ちゃんは、人に言えねえ仕事で死んじまった。」
「ふがいない兄で、本当に……ごめんな。」って。
追伸 前隊長へ 円山えりかを隊長に推薦します。
chord:スイートピー」
えりか「……見つけてあげないとですよね。その弟さんを。」
失うには、貴方はあまりにも綺麗な光だった。
ガチャ
楽座「お、お疲れ様。風呂あがったから入ってもええで」
扉が開く音がしたと思ったら、入ってきたのは楽座さんだった。
えりか「ああ楽座さん。はい、わかりました」
楽座「…」
楽座さん。
私の記憶の中の「スイートピー」と、時々似ていると思う時がある。
あまりにも惨くて、耐えられなくて、消し去った記憶に残った、あの底抜けの優しさが。
楽座「ん?どうした」
気づけば私はこんなことを聞いていた。
えりか「…[太字]楽座さんって、兄弟とかいらっしゃるんですか?[/太字]」
楽座「……」
楽座「[太字]ああ。…居る。[/太字]」
楽座「[太字]…何でもできて最高に最悪な兄やで、ほんまに。[/太字]」
そう返す楽座さんの顔は、見たことのない悲しさをまとった笑顔で、
記憶の中のスイートピーに、やっぱり似ていた。
外では小雨が降っていた。
[水平線]
日ノ丸視点
日ノ丸「ん…。……んあ?」
寝ぼけてベッドがさがさしてたら異変に気付いた。
えりさんがいない。
日ノ丸「えー…どこ行ったんだろ。」
とはいえ、だいたいえりさんが行きそうなところなんて目星はついてるけどさ。
寝ぼけながらも外に出ようとしたとき、姿見に映る自分の姿でちょっと正気に返った。
日ノ丸「あ…やべ、仕事服だった」
突然ですが俺の寝巻はサキュバスの仕事着です。涼しいので愛用中です。
つまりこのまま外出たら捕まります。
日ノ丸「パーカー借りるね」
えりさん不在中に服を借りることになんとなく敬意を払いながら、俺はようやく外に出た。
[水平線]
蒸し暑かった。さっきちょっと雨降ってたからかな。
日ノ丸「たぶんここ。あー……懐かしいなぁ…」
数十分ぐらい歩いただろうか。俺は廃れたビルを見上げながらそうつぶやく。
他でもない、[太字]俺とえりさんが出会った所であり、えりさんにとっての傷痕だ。[/太字]
裏に歩いていく。…やっぱり居た。えりさんだ。
日ノ丸「えりさん」
えりか「…ヒノさん?行先教えてなかったはずですよね…?」
カモミールの花を何束か、抱えたえりさんが振り返る。
日ノ丸「教えてないけど俺にはわかるよ。…だってここは俺にとっても思い出の場所だし」
えりか「…そうでしたね。」
えりさんの歩くあとについていく。
何本も花の添えられた盛り上がった土が無数に並ぶこの場所は、
きっとえりさんが作った[太字]昔の仲間たちの墓[/太字]なんだろう。
えりか「今日はカモミールにしてみました。カンパニュラの季節は過ぎちゃいましたし。りんごみたいでいい香りでしょう?」
墓ひとつひとつに話しかけながら花を添える姿は、やっぱり美しいはずなのに、
どこか未練と薄い狂気すら感じられる。
日ノ丸「…カンパニュラの花言葉って[太字]後悔[/太字]だったっけ。」
えりか「……っ」
えりか「そうですね。…ちゃんと覚えていてえらいですよヒノさん。」
曇った夜をバックに、彼は微笑む。
えりか「これは私の[漢字]後悔[/漢字][ふりがな]お墓[/ふりがな]参り。
…何度訪れても、何度話しかけても、現実は変わってくれないのに。」
一輪余ったカモミールを顔に寄せる。
えりか「…私も変わらなきゃいけない。いつまでも過去に囚われててはいけないと思っています。
…失うことに、そろそろ慣れないと」
日ノ丸「………」
えりか「さて、そろそろ帰りましょうか。もう遅いですし_____
刹那、えりさんに向けて何かが飛んできた。
日ノ丸「っ!」
とっさに手で払う。とくに響くこともなく地面に落ちたそれは[太字]注射器[/太字]だった。
えりか「…誰か、いるんですか?」
俺はこれをよく知ってる。
日ノ丸「…[太字]いるんだろ、リュンヌ。出てこいよ。[/太字]」
ザー…
食べ終わった後の皿を片付けながら、いろいろと思考を巡らせてみた。
「これをお前が読んでるころには、きっと俺はいないんだろうな。
でも最初に読まれるのがお前であることを、俺は心から願うぜ。
もし俺の弟に会ったらさ、伝えてくれよ。
「ごめんな」って。
「お前の兄ちゃんは、人に言えねえ仕事で死んじまった。」
「ふがいない兄で、本当に……ごめんな。」って。
追伸 前隊長へ 円山えりかを隊長に推薦します。
chord:スイートピー」
えりか「……見つけてあげないとですよね。その弟さんを。」
失うには、貴方はあまりにも綺麗な光だった。
ガチャ
楽座「お、お疲れ様。風呂あがったから入ってもええで」
扉が開く音がしたと思ったら、入ってきたのは楽座さんだった。
えりか「ああ楽座さん。はい、わかりました」
楽座「…」
楽座さん。
私の記憶の中の「スイートピー」と、時々似ていると思う時がある。
あまりにも惨くて、耐えられなくて、消し去った記憶に残った、あの底抜けの優しさが。
楽座「ん?どうした」
気づけば私はこんなことを聞いていた。
えりか「…[太字]楽座さんって、兄弟とかいらっしゃるんですか?[/太字]」
楽座「……」
楽座「[太字]ああ。…居る。[/太字]」
楽座「[太字]…何でもできて最高に最悪な兄やで、ほんまに。[/太字]」
そう返す楽座さんの顔は、見たことのない悲しさをまとった笑顔で、
記憶の中のスイートピーに、やっぱり似ていた。
外では小雨が降っていた。
[水平線]
日ノ丸視点
日ノ丸「ん…。……んあ?」
寝ぼけてベッドがさがさしてたら異変に気付いた。
えりさんがいない。
日ノ丸「えー…どこ行ったんだろ。」
とはいえ、だいたいえりさんが行きそうなところなんて目星はついてるけどさ。
寝ぼけながらも外に出ようとしたとき、姿見に映る自分の姿でちょっと正気に返った。
日ノ丸「あ…やべ、仕事服だった」
突然ですが俺の寝巻はサキュバスの仕事着です。涼しいので愛用中です。
つまりこのまま外出たら捕まります。
日ノ丸「パーカー借りるね」
えりさん不在中に服を借りることになんとなく敬意を払いながら、俺はようやく外に出た。
[水平線]
蒸し暑かった。さっきちょっと雨降ってたからかな。
日ノ丸「たぶんここ。あー……懐かしいなぁ…」
数十分ぐらい歩いただろうか。俺は廃れたビルを見上げながらそうつぶやく。
他でもない、[太字]俺とえりさんが出会った所であり、えりさんにとっての傷痕だ。[/太字]
裏に歩いていく。…やっぱり居た。えりさんだ。
日ノ丸「えりさん」
えりか「…ヒノさん?行先教えてなかったはずですよね…?」
カモミールの花を何束か、抱えたえりさんが振り返る。
日ノ丸「教えてないけど俺にはわかるよ。…だってここは俺にとっても思い出の場所だし」
えりか「…そうでしたね。」
えりさんの歩くあとについていく。
何本も花の添えられた盛り上がった土が無数に並ぶこの場所は、
きっとえりさんが作った[太字]昔の仲間たちの墓[/太字]なんだろう。
えりか「今日はカモミールにしてみました。カンパニュラの季節は過ぎちゃいましたし。りんごみたいでいい香りでしょう?」
墓ひとつひとつに話しかけながら花を添える姿は、やっぱり美しいはずなのに、
どこか未練と薄い狂気すら感じられる。
日ノ丸「…カンパニュラの花言葉って[太字]後悔[/太字]だったっけ。」
えりか「……っ」
えりか「そうですね。…ちゃんと覚えていてえらいですよヒノさん。」
曇った夜をバックに、彼は微笑む。
えりか「これは私の[漢字]後悔[/漢字][ふりがな]お墓[/ふりがな]参り。
…何度訪れても、何度話しかけても、現実は変わってくれないのに。」
一輪余ったカモミールを顔に寄せる。
えりか「…私も変わらなきゃいけない。いつまでも過去に囚われててはいけないと思っています。
…失うことに、そろそろ慣れないと」
日ノ丸「………」
えりか「さて、そろそろ帰りましょうか。もう遅いですし_____
刹那、えりさんに向けて何かが飛んできた。
日ノ丸「っ!」
とっさに手で払う。とくに響くこともなく地面に落ちたそれは[太字]注射器[/太字]だった。
えりか「…誰か、いるんですか?」
俺はこれをよく知ってる。
日ノ丸「…[太字]いるんだろ、リュンヌ。出てこいよ。[/太字]」