永遠の絆と変わる世界
少し前、
黄夏視点
シエル「…ねぇ、…一緒に、神殿に行こう」
手を差し伸べて、シエルさんはそう言った。
レイル「アルト君とソプラノさんが待ってるわ」
アルトさん…ソプラノさん…
黄夏「……どうして?」
待ってくれていてありがとうと思いつつ、どうして待っているのかわからない。
神威「なんでって……あなたの望みをかなえるために…」
黄夏「…わたし、何を望んでたんだっけ?」
シエル「…え」
思い出せそうで思い出せない、この感じが狂おしく気持ち悪い。
黄夏「…わからない」
[水平線]
神威視点
絞り出すように出したその声には、絶望と困惑が入り混じっていた。
レイル「…黄夏ちゃ
「あれ?もう来ちゃったの?」
シエル「!」
ドアを蹴り開けてこちらを見ているのは、王巳だった。
王巳「駆けつけがびみょいヒーローだこと」
神威「…は?」
王巳「[太字]あんたの知る黄夏はもういない[/太字]」
王巳「[太字]黄夏の大事に大事にしてたもの……「神への探求心」は、多分もうないよ![/太字]」
シエル「…それって、どういうことなの」
王巳「私は至極真っ当よ?これから世界は私によって救われる!」
レイル「何言ってんの?黄夏ちゃんをいたずらに操って、よくそんなことが言えるわね!」
王巳「…あんた、まだ知らないんだ?お気楽なこと」
王巳「[太字]もうすぐ滅ぶのよ、この世界。[/太字]」
シエル「…え」
そんな言葉を、今さっき聞いた気がする。
神威「アステミと同じことを…」
王巳「精霊が狂ってるとかなんとか。あと10年ですべてのエネルギーの源が消滅して地球は崩壊するのよ」
シエル「でも…あたしたちには影響全然なかったし…そんなに危機なら…」
王巳「私たちだって例外じゃない!ちゃんと影響を受けてる!!…今もね?」
レイル「それってどういうこと?」
王巳「私たちも、空気の精霊のせいで無気力になってる」
王巳「…[太字]そこの黄夏を除いて![/太字]」
指さされた当の本人である黄夏さんは、何が起こっているかわからずきょとんとしていた。
黄夏「わたしが…?」
王巳「あんただけ、特別なの」
王巳「[太字]あんたの周りの人は、不思議と狂った精霊の影響を受けない[/太字]」
レイル「………それで、私たちは…ずっと今まで黄夏ちゃんと動けてたってこと…?」
王巳「知らんけどそうね、きっと。だから私は、黄夏のすべてを使って、ワクチンを作った」
王巳「心、細胞。それから作られたこれがあれば、少なくとも私は生きられる。
そうしたら、地位の高い人にこれを売って、世界に行きわたらせる。
それで世界が救われたら万々歳、だめでも私だけはずっと生きられる!」
神威「…そんなことのために黄夏さんを監禁したのか!?」
王巳「そんなこととは心外ね、私は世界のヒーロー予備軍よ?」
シエル「私には、それは世界を救うためじゃなくて、自分の利己的理由に聞こえたけどね?!」
王巳「世界のヒーローに動機は関係ないでしょ、
例え世界が滅んだって私がなんとかできるかもしれない!望み薄だけどね!」
そう言い放ってからしばらくして、黄夏さんがぽつりと言った。
黄夏「…[太字]そんなに生きて、何がしたいの…?[/太字]」
王巳「……」
黄夏「[太字]どうして、死にたくないの?[/太字]」
黄夏「[太字]…わたしには、わからない[/太字]」
レイル「……」
王巳「それ…は」
王巳「死ぬのが怖いだけで____________
グサッ
[太字]俺がまともに見たとき、王巳さんの心臓は、見たことのない武器で貫かれていた。[/太字]