枯れゆく国
[中央寄せ][太字]国家概念の死滅[/太字][/中央寄せ]
ラズリーフ湖から離れる前(8月ごろだった)、ウラジーミルさんは何かを書いていた。悠は何を書いているのか、何一つ分からなかったが、先生曰く「暴力革命によるブルジョワを廃絶すべし」という内容だそうだ。悠は震えた。なぜかはよく分からなかったが、やはりペトログラードが寒いのは確かであった。というのも、日本よりも高緯度でさらに100年前は現代より寒いのだ。グリゴリーさん(グリゴリー・ジノヴィエフ。のちに処刑される)とウラジーミルさんでさえできるだけ体力を消耗しないように歩いていた。
悠は自分たちがせっかく「ロシアの地」に行くために乗った列車に、今度は背を向けて乗ることを少し躊躇していた。先生も同じことを想っていたのだろう、憂鬱そうな顔をしながら外を見つめていた。
[中央寄せ][太字]潜伏とクーデター[/太字][/中央寄せ]
ウラジーミルだ。私たちは8月10日にヘルシンキの隠れ家に着いた。精神を患った私の髪のように、戦線が後退しないことを祈っている。戦線といえば、ロシア共和国軍の最高司令官コルニーロフが軍事クーデターを試みたようだ。首相ケレンスキーはペトログラードのソビエトに支援を要請した。コルニーロフのクーデターはペトログラードに到達する前に鎮圧されたのだが、この一見はボリシェヴィキの返り咲きに大いに役立った。メンシェヴィキも社会革命党ももう大衆からの支持は無いに等しい。もう少しで祖国に帰れる。私の手で改革すべき祖国に。話し合いでは大衆の信用が無くなるだけだ。
[太字][中央寄せ]帰還[/中央寄せ][/太字]
2か月間の潜伏は悠にとってストレス過多な生活であり、ウラジーミルさんも先生も心配した。しかし悠は楽しんでいた;悠は冒険や秘密基地が好きであり、過酷とはいえ恐怖を感じるほどでは無かった。ボリシェヴィキが巻き返したとの知らせを受けると、すぐにペトログラードへ戻る準備を始めた。
「ウラジーミルさんは、結局話し合いを放棄したんですか?」悠は質問した。「話し合いで解決するならば、講和も大衆の支持も全てうまくいっていたはずだ。この国を変えるには、もはや暴力しかない」ウラジーミルさんの答えに、悠は少々[漢字]蟠[/漢字][ふりがな]わだかま[/ふりがな]りを覚えたが、自分たちが帰るためにも、これを受け入れるほかなかった。党中央委員会での結果、多数決で暴力革命の決行が採択された。
[太字][中央寄せ]十月革命[/中央寄せ][/太字]
ボリシェヴィキ専属の軍事機関である軍事革命委員会は、ペトログラードにある公共機関などを全て制圧し、臨時政府の置かれている冬宮殿を包囲するように兵に指示した。臨時政府の閣僚は逮捕され、ペトログラードは概ね無血でボリシェヴィキの手に渡ったのだった。
「今、戦争を継続し、搾取を続ける臨時政府は打倒された。そうだろう、ヒカル、悠。この二人を含む偉大な同志の力によって共和国は完全にソビエトの手に渡り、共産主義社会を実現する大きな足掛かりになったとして後世に語られるであろう」ウラジーミルさんは高らかに宣言した。熱狂する群衆、微笑むウラジーミルさん...悠は共産主義は詐欺なのではないか、と思いそうになった。でも、資本主義も同じような手口を使っているのかもしれない。義理と人情で心が揺れ動いて先生のほうをちらりと見た。
[明朝体][中央寄せ]続[/中央寄せ][/明朝体]
ラズリーフ湖から離れる前(8月ごろだった)、ウラジーミルさんは何かを書いていた。悠は何を書いているのか、何一つ分からなかったが、先生曰く「暴力革命によるブルジョワを廃絶すべし」という内容だそうだ。悠は震えた。なぜかはよく分からなかったが、やはりペトログラードが寒いのは確かであった。というのも、日本よりも高緯度でさらに100年前は現代より寒いのだ。グリゴリーさん(グリゴリー・ジノヴィエフ。のちに処刑される)とウラジーミルさんでさえできるだけ体力を消耗しないように歩いていた。
悠は自分たちがせっかく「ロシアの地」に行くために乗った列車に、今度は背を向けて乗ることを少し躊躇していた。先生も同じことを想っていたのだろう、憂鬱そうな顔をしながら外を見つめていた。
[中央寄せ][太字]潜伏とクーデター[/太字][/中央寄せ]
ウラジーミルだ。私たちは8月10日にヘルシンキの隠れ家に着いた。精神を患った私の髪のように、戦線が後退しないことを祈っている。戦線といえば、ロシア共和国軍の最高司令官コルニーロフが軍事クーデターを試みたようだ。首相ケレンスキーはペトログラードのソビエトに支援を要請した。コルニーロフのクーデターはペトログラードに到達する前に鎮圧されたのだが、この一見はボリシェヴィキの返り咲きに大いに役立った。メンシェヴィキも社会革命党ももう大衆からの支持は無いに等しい。もう少しで祖国に帰れる。私の手で改革すべき祖国に。話し合いでは大衆の信用が無くなるだけだ。
[太字][中央寄せ]帰還[/中央寄せ][/太字]
2か月間の潜伏は悠にとってストレス過多な生活であり、ウラジーミルさんも先生も心配した。しかし悠は楽しんでいた;悠は冒険や秘密基地が好きであり、過酷とはいえ恐怖を感じるほどでは無かった。ボリシェヴィキが巻き返したとの知らせを受けると、すぐにペトログラードへ戻る準備を始めた。
「ウラジーミルさんは、結局話し合いを放棄したんですか?」悠は質問した。「話し合いで解決するならば、講和も大衆の支持も全てうまくいっていたはずだ。この国を変えるには、もはや暴力しかない」ウラジーミルさんの答えに、悠は少々[漢字]蟠[/漢字][ふりがな]わだかま[/ふりがな]りを覚えたが、自分たちが帰るためにも、これを受け入れるほかなかった。党中央委員会での結果、多数決で暴力革命の決行が採択された。
[太字][中央寄せ]十月革命[/中央寄せ][/太字]
ボリシェヴィキ専属の軍事機関である軍事革命委員会は、ペトログラードにある公共機関などを全て制圧し、臨時政府の置かれている冬宮殿を包囲するように兵に指示した。臨時政府の閣僚は逮捕され、ペトログラードは概ね無血でボリシェヴィキの手に渡ったのだった。
「今、戦争を継続し、搾取を続ける臨時政府は打倒された。そうだろう、ヒカル、悠。この二人を含む偉大な同志の力によって共和国は完全にソビエトの手に渡り、共産主義社会を実現する大きな足掛かりになったとして後世に語られるであろう」ウラジーミルさんは高らかに宣言した。熱狂する群衆、微笑むウラジーミルさん...悠は共産主義は詐欺なのではないか、と思いそうになった。でも、資本主義も同じような手口を使っているのかもしれない。義理と人情で心が揺れ動いて先生のほうをちらりと見た。
[明朝体][中央寄せ]続[/中央寄せ][/明朝体]