枯れゆく国
[中央寄せ][太字]真実を知る[/太字][/中央寄せ]
「それって、民意に反するのでは?」悠は矛盾を覚えた。
「私も頭を悩ませた。ソビエトは評議会なのに、それに全権集中をしていいものか。しかし私は仕方のないことだと思う。人民のためにすべてを尽くせば、それもいい政治なのではないだろうか。政党が乱立して国内を混乱させ、せっかくの良い意見が否決されるようであれば、民主主義の意味がない。少々強引にでも、このロシアの地を復興させなければ。」
悠はヴァイマル共和政(ワイマール共和国:世界一民主的と言われたドイツの共和政治)の欠点を思い出した。民主主義が独裁を生むきっかけになってしまったのだ。
「現代日本の政治も、若者が文句を言うくせに投票に行きません。」
「つまり、日本は未来では民主的な政治を取り入れているというわけだな。」――その通りです。しかし、政治家や国民全体の高齢化が進んでいることも重なって少ない若者が多くの老人を支えてしまっています。
「ソビエトはどうなってしまうのだ?」
どうだっけ?いつなくなったんだ?
「1991年12月26日、ソビエトという組織は改革もむなしく崩壊しました。いくつもの国家に分断されています」あ、先生がいてよかった…のか?
「…それは本当か?」
「少なくとも我々の世界では。」
そう、なのか…ウラジーミルさんは言葉を失っていた。まさか自分がこれから作るであろう国家の滅亡を国家が興る前に知るとは、誰が予測できたであろう?
「私にできることはあるのだろうか?」彼はぽつりと[漢字]呟[/漢字][ふりがな]つぶや[/ふりがな]いた。
[中央寄せ][太字]ヘルシンキ[/太字][/中央寄せ]
それから僕たちはウラジーミルさんと資本主義と共産主義のそれぞれの矛盾点について語り合った。毎日かそれを繰り返したある日、ついに列車が止まった。「ここがペトログラード?」
「いいや、ここはヘルシンキだ。サウナに入ってみたいし、色々食べてもみたいが、それよりまずは国内が優先。」
何と皮肉なことだろう。ウラジーミルさんはフィンランドの独立や文化に興味を持っていたのに、ずーっと後にレーニン像が撤去されることになるなんて。
「さて、列車を降りよう。乗り換えてペトログラードに向かわなければ。」
日本人としては、いったん風呂に入りたい。
[太字][中央寄せ]フィンリャンツキー駅へ[/中央寄せ][/太字]
日は暮れて(まだ白夜でも極夜でもない時期らしい)、夜の11頃になってようやく、ペトログラードのフィンリャンツキー駅についた。
「降りよう」あ、はい。眠いな―…
外からは色々な人の声が聞こえる(寝ていたから分らなかったが、国境駅ではウラジーミルさんが演説していたらしい)
「同志レーニン、この花束を!」「その2人は誰ですか??」彼ほど人気な政治家は、現代日本にはいるだろうか。
「この2人は私にとって重要な同志だ、クルプスカヤ(奥さんの名前)と同じくらい。新しい時代が幕を開けるだろう!」
ウラジーミルさんが高らかに宣言したとき、一人が「社会主義世界革命万歳!」と叫んだ。波のように叫んでいた。気が付くと、悠と先生を含めたそこにいるすべての人が連呼していた。
「すべての権力をソビエトに。これは、我々の最初であり最後の目標である」まるで絵を描くようにテーゼを発表する姿。誰もが息を吞んだ。
[明朝体][中央寄せ]続[/中央寄せ][/明朝体]
「それって、民意に反するのでは?」悠は矛盾を覚えた。
「私も頭を悩ませた。ソビエトは評議会なのに、それに全権集中をしていいものか。しかし私は仕方のないことだと思う。人民のためにすべてを尽くせば、それもいい政治なのではないだろうか。政党が乱立して国内を混乱させ、せっかくの良い意見が否決されるようであれば、民主主義の意味がない。少々強引にでも、このロシアの地を復興させなければ。」
悠はヴァイマル共和政(ワイマール共和国:世界一民主的と言われたドイツの共和政治)の欠点を思い出した。民主主義が独裁を生むきっかけになってしまったのだ。
「現代日本の政治も、若者が文句を言うくせに投票に行きません。」
「つまり、日本は未来では民主的な政治を取り入れているというわけだな。」――その通りです。しかし、政治家や国民全体の高齢化が進んでいることも重なって少ない若者が多くの老人を支えてしまっています。
「ソビエトはどうなってしまうのだ?」
どうだっけ?いつなくなったんだ?
「1991年12月26日、ソビエトという組織は改革もむなしく崩壊しました。いくつもの国家に分断されています」あ、先生がいてよかった…のか?
「…それは本当か?」
「少なくとも我々の世界では。」
そう、なのか…ウラジーミルさんは言葉を失っていた。まさか自分がこれから作るであろう国家の滅亡を国家が興る前に知るとは、誰が予測できたであろう?
「私にできることはあるのだろうか?」彼はぽつりと[漢字]呟[/漢字][ふりがな]つぶや[/ふりがな]いた。
[中央寄せ][太字]ヘルシンキ[/太字][/中央寄せ]
それから僕たちはウラジーミルさんと資本主義と共産主義のそれぞれの矛盾点について語り合った。毎日かそれを繰り返したある日、ついに列車が止まった。「ここがペトログラード?」
「いいや、ここはヘルシンキだ。サウナに入ってみたいし、色々食べてもみたいが、それよりまずは国内が優先。」
何と皮肉なことだろう。ウラジーミルさんはフィンランドの独立や文化に興味を持っていたのに、ずーっと後にレーニン像が撤去されることになるなんて。
「さて、列車を降りよう。乗り換えてペトログラードに向かわなければ。」
日本人としては、いったん風呂に入りたい。
[太字][中央寄せ]フィンリャンツキー駅へ[/中央寄せ][/太字]
日は暮れて(まだ白夜でも極夜でもない時期らしい)、夜の11頃になってようやく、ペトログラードのフィンリャンツキー駅についた。
「降りよう」あ、はい。眠いな―…
外からは色々な人の声が聞こえる(寝ていたから分らなかったが、国境駅ではウラジーミルさんが演説していたらしい)
「同志レーニン、この花束を!」「その2人は誰ですか??」彼ほど人気な政治家は、現代日本にはいるだろうか。
「この2人は私にとって重要な同志だ、クルプスカヤ(奥さんの名前)と同じくらい。新しい時代が幕を開けるだろう!」
ウラジーミルさんが高らかに宣言したとき、一人が「社会主義世界革命万歳!」と叫んだ。波のように叫んでいた。気が付くと、悠と先生を含めたそこにいるすべての人が連呼していた。
「すべての権力をソビエトに。これは、我々の最初であり最後の目標である」まるで絵を描くようにテーゼを発表する姿。誰もが息を吞んだ。
[明朝体][中央寄せ]続[/中央寄せ][/明朝体]