枯れゆく国
#1
文面の中の世紀
[中央寄せ][太字]探求課題[/太字][/中央寄せ]
2017年3月4日。春休みも間近に迫っていた。[漢字]悠[/漢字][ふりがな]ゆう[/ふりがな]は、歴史の授業で習った日露戦争について教科書で調べてくるという課題があった。
「3年生になったら、ロシア革命が出てくるからな。第一次革命と混同するなよ。レーニンも重要語句だ。覚えとけよ。3年生になったら出てくるからな。」
あーあ。めんどくせ。覚えとけよって、カツアゲかよ。悠には、窓から吹きぬけてくる春一番のように耳を通っていった単語のまとまりにしか聞こえなかった (聞こえなかったというより、聞いていなかった)。
パラパラと教科書をめくって、分からないところを先生に聞こうとした。
「あの、」「悠」先生もタイミングよく呼ぼうとしてたのか。パパっと済めばいいな…。しかし、こちらに視線を集めていたのは、先生だけではなかった。クラスメートの視線が集まる。何事か。
「悠。これは不要物か?光る教科書だなんてな。」
[中央寄せ][太字]消えた教科書[/太字][/中央寄せ]
いててて。ここはどこだ?先生、ここはどこですか?
「分かるわけがないだろう、まったく、不要物を持ってきたのに加えて、先生を誘拐か?お前のとぼけた面じゃ、騙してることなんてバレバレだ。」
まったく、この教師は被害妄想の塊だ。なんでこの人教師になったんだろ。そういう意味では反面教師か。
「騙してないですけど。教科書を光らせる奴のほうがが先生に質問する頭の悪い生徒よりもよっぽどバカだと思います。」
「お前はそのどっちもに含まれてるって言ってんだ。まったく近頃の若者は。」
「そういう考えになる先生が一番バカだと思います。」
「何だと貴様。大人に対して子供がそんな口のきき方とは。」
よくこれで教師を解雇されないできたな。ゴマすりもいいところだ。
「そもそも僕らはなぜここに来たのでしょうか??」
「お前が誘拐したからだろ。」ああ、先生はそういう考えなんだった。
「僕はあの教科書のせいだと思うのですが。僕が誘拐した証拠もないですし」
「あー…。確か、に、そう、かもしれん。超常現象的な、何か、か?」
ほら。大人は根拠に疎い。子供がいつも悪者とは限らないんだよヴァ~カめ。
「先生はとにかく人を探して聞いてみる。ここがどこか。なぜここにいるのかを。」
「なぜここにいるのかはわからないと思いますよ。」
「確かにそうだな。論点の隙間を突いてくる、それが子供の悪いとk...」
「良いところ、でしょ?」ああすまない、と言って先生は去っていった。まったく、教科書も消え、クラスメートも消え、今ではすべての事実がひっくり返ってしまっている。何が起こったのかさっぱりわからない。ここは大人に頼っとこ。
[太字][中央寄せ]ウラジーミル・イリイチ・ウリヤーノフって誰?[/中央寄せ][/太字]
「すみません、ここはどこですか??ん?外国の方?あ、アイムソーリー...。」
「いや、そのままで大丈夫だ。日本語が世界共通語だからな。要件は何だったかな?ここがどこか、ここはチューリッヒだが?」
「は、はあ。ん?チューリッヒって、スイスの!?日本語が世界共通語?英語ではなく!?」
「他にチューリッヒがあるか。英語なんて古い慣習の一つだ。日本も時代を変えるインテリゲンツィアにまたふさわしい存在だと思うのだがね。見たところ、君はアジア人じゃないか。あなたは日本人かい?身なりも我々と、当の日本人とも全く違うようだが。」
「あ、へえ、その。私もみたところ、あ、あなたはレーニンさんではないでしょうか...?」先生は恐る恐る質問した。
「ウラジーミルと呼びたまえ。そちらは?」
「え、あああ、すみません…、ヒカルです、久保田光。」
「ヒカルか。それで、ここはどこかと聞いてきたが、その真意をお聞かせ願いたい。」
先生は事のすべてを語った。
「なるほど。にわかには信じがたい話であるな…。英語が世界共通語で、しかもあなたと悠は2017年から来たんだろう…。今からちょうど100年後だな。」
「はい、そのようですね…。ウラジーミルさんはここへ何しに来られたのですか?」その質問に彼は微笑んで答えて見せた。
「楽園を創るためだ――列車に乗ってな。」
[明朝体][中央寄せ]続[/中央寄せ][/明朝体]
2017年3月4日。春休みも間近に迫っていた。[漢字]悠[/漢字][ふりがな]ゆう[/ふりがな]は、歴史の授業で習った日露戦争について教科書で調べてくるという課題があった。
「3年生になったら、ロシア革命が出てくるからな。第一次革命と混同するなよ。レーニンも重要語句だ。覚えとけよ。3年生になったら出てくるからな。」
あーあ。めんどくせ。覚えとけよって、カツアゲかよ。悠には、窓から吹きぬけてくる春一番のように耳を通っていった単語のまとまりにしか聞こえなかった (聞こえなかったというより、聞いていなかった)。
パラパラと教科書をめくって、分からないところを先生に聞こうとした。
「あの、」「悠」先生もタイミングよく呼ぼうとしてたのか。パパっと済めばいいな…。しかし、こちらに視線を集めていたのは、先生だけではなかった。クラスメートの視線が集まる。何事か。
「悠。これは不要物か?光る教科書だなんてな。」
[中央寄せ][太字]消えた教科書[/太字][/中央寄せ]
いててて。ここはどこだ?先生、ここはどこですか?
「分かるわけがないだろう、まったく、不要物を持ってきたのに加えて、先生を誘拐か?お前のとぼけた面じゃ、騙してることなんてバレバレだ。」
まったく、この教師は被害妄想の塊だ。なんでこの人教師になったんだろ。そういう意味では反面教師か。
「騙してないですけど。教科書を光らせる奴のほうがが先生に質問する頭の悪い生徒よりもよっぽどバカだと思います。」
「お前はそのどっちもに含まれてるって言ってんだ。まったく近頃の若者は。」
「そういう考えになる先生が一番バカだと思います。」
「何だと貴様。大人に対して子供がそんな口のきき方とは。」
よくこれで教師を解雇されないできたな。ゴマすりもいいところだ。
「そもそも僕らはなぜここに来たのでしょうか??」
「お前が誘拐したからだろ。」ああ、先生はそういう考えなんだった。
「僕はあの教科書のせいだと思うのですが。僕が誘拐した証拠もないですし」
「あー…。確か、に、そう、かもしれん。超常現象的な、何か、か?」
ほら。大人は根拠に疎い。子供がいつも悪者とは限らないんだよヴァ~カめ。
「先生はとにかく人を探して聞いてみる。ここがどこか。なぜここにいるのかを。」
「なぜここにいるのかはわからないと思いますよ。」
「確かにそうだな。論点の隙間を突いてくる、それが子供の悪いとk...」
「良いところ、でしょ?」ああすまない、と言って先生は去っていった。まったく、教科書も消え、クラスメートも消え、今ではすべての事実がひっくり返ってしまっている。何が起こったのかさっぱりわからない。ここは大人に頼っとこ。
[太字][中央寄せ]ウラジーミル・イリイチ・ウリヤーノフって誰?[/中央寄せ][/太字]
「すみません、ここはどこですか??ん?外国の方?あ、アイムソーリー...。」
「いや、そのままで大丈夫だ。日本語が世界共通語だからな。要件は何だったかな?ここがどこか、ここはチューリッヒだが?」
「は、はあ。ん?チューリッヒって、スイスの!?日本語が世界共通語?英語ではなく!?」
「他にチューリッヒがあるか。英語なんて古い慣習の一つだ。日本も時代を変えるインテリゲンツィアにまたふさわしい存在だと思うのだがね。見たところ、君はアジア人じゃないか。あなたは日本人かい?身なりも我々と、当の日本人とも全く違うようだが。」
「あ、へえ、その。私もみたところ、あ、あなたはレーニンさんではないでしょうか...?」先生は恐る恐る質問した。
「ウラジーミルと呼びたまえ。そちらは?」
「え、あああ、すみません…、ヒカルです、久保田光。」
「ヒカルか。それで、ここはどこかと聞いてきたが、その真意をお聞かせ願いたい。」
先生は事のすべてを語った。
「なるほど。にわかには信じがたい話であるな…。英語が世界共通語で、しかもあなたと悠は2017年から来たんだろう…。今からちょうど100年後だな。」
「はい、そのようですね…。ウラジーミルさんはここへ何しに来られたのですか?」その質問に彼は微笑んで答えて見せた。
「楽園を創るためだ――列車に乗ってな。」
[明朝体][中央寄せ]続[/中央寄せ][/明朝体]
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